泌尿器科学

泌尿器科学 · U-03

尿道・男性外性器の発生異常

Developmental disorders of the urethra and the male genitalia

前提:正常
泌尿生殖器系:生殖器系泌尿生殖器系:臨床
疾患
5α還元酵素欠損症アロマターゼ欠損症陰嚢水腫混合性腺異形成症性分化疾患停留精巣尿道下裂卵精巣性DSD
症状
小陰茎
検査値
hCG負荷試験

🧠 全体像:生殖器系の発生で学んだ「男性化には男性化ホルモンによる“追加の指令”が必要」という原則がそのまま臨床像に対応する。()・(下降の停止)・陰茎の形態異常(包皮・血管系の異常)を機序ごとに整理する。

尿道下裂

  • 尿道口が陰茎先端に位置しない。(生殖器系の発生の)の癒合が亀頭先端に達する前に停止することで生じる。
  • 男児では次の3徴として定義される。
構成要素 内容
① 尿道口の異常な腹側開口 尿道口が陰茎腹側の異常な位置に開口する
② 陰茎の異常な により陰茎が腹側にする
③ 包皮分布の異常 背側に余剰な“フード”状包皮、腹側は包皮欠損
  • 病因:多くは原因を1つに特定できず、とアンドロゲン作用などのホルモン要因が複合して生殖器系の発生に影響する。アンドロゲン作用異常やは一部、特に近位型でやを伴う症例で考慮し、内分泌・遺伝学的なの評価を行う。1
  • 治療:、形成術、亀頭形成術などで外科的に修復する。一般に生後6〜18か月での手術が推奨される。1

包茎

  • 包皮をできない状態。
  • 出生時は包皮と亀頭の生理的癒着によるが正常であり、陰茎の成長・勃起・の分泌により自然に癒着が解離していく。
  • 4〜5歳を超えても続く場合や、を発症した場合はステロイドを包皮に塗布し、輪を弛緩させてに可能にする。

精巣発生の異常

  • 発生のどの段階でも起こりうる。
  • との鑑別が重要であり、真の精巣欠損()を疑う場合は・腹腔内精査で確認する。

停留精巣

  • 精巣の下降・移動の失敗(生殖器系の発生のに導かれた下降過程の停止、臨床相関)。
  • 在胎30週で出生した男児の30%に認められる(早産児ほど頻度が高い)。
  • 多くは生後6か月以内にするが、6か月以降のは期待しにくい。2
  • 診断:暖かい部屋で患児をリラックスさせた状態で、に沿った触診を陰嚢方向へ進め、を移動する手と陰嚢に置いた指の間で精巣を捕捉する。が中心で、超音波などの画像検査は専門医への紹介前にルーチンで行わない。2
  • 治療:
    • 生後6か月までを待つ。
    • :を陰嚢内へ移動し固定。
    • :乳幼児の標準はである。摘除は高度萎縮例や、正常な対側精巣がある思春期以降のなどで個別に検討する。

⚠️ 生後6か月までに下降しない場合は専門医へ紹介し、6〜12か月でを行い、遅くとも18か月までに完了する。放置すると将来の不妊・リスクの上昇と関連するため、「を待つ」を無期限の経過観察と誤解しない。2

陰嚢内の異常

疾患 機序 症状 治療
が閉鎖せず、腹膜液が精巣周囲腔へ流入。陰嚢と腹腔がトンネル状に交通する。早産児に多い 陰嚢腫大 多くは自然消退。高度・遷延例は開存の
精巣を還流するの拡張・。特発性:精索静脈の逆流防止機構不全→逆流→静脈叢内圧上昇→精巣組織障害。続発性:腹腔・による 多くは無症状。陰嚢の・重感、患側低下、将来のへの影響が問題となる 、連続する差、ドプラでの逆流、持続痛、反復して異常な精液所見などで経過観察と手術を個別化する3

💡 特発性は左側優位で、思春期に多く見つかる。はに合流するのに対し、右は下大静脈に直接流入するため、左側で逆流が生じやすい。診断は立位でのを基本とし、USで拡張した静脈叢と、ドプラ USでによる静脈逆流を評価する。3

尿道口の位置異常・陰茎形態の異常

  • :尿道が陰茎背側に開口する。軽度の亀頭部欠損から、尿失禁を伴う完全型まで幅がある。
  • 目立たない陰茎:陰茎自体は正常に発育しているが、外見上小さく見える状態。
病態 特徴
陰嚢皮膚が陰茎腹側まで延長している
正常発育した陰茎が恥骨上脂肪組織に覆われて隠れる(先天性または後の医原性)
後天性。後にが恥骨上脂肪組織に埋没する

尿道の管腔異常

  • :余分な尿道口を持つ。腹側型(様)、背側型(様)、会陰型に分類される。本来の尿道内腔が狭小化する場合は、2本の管の間の隔壁を切開する手術を行う。
  • :狭窄を伴わない尿道の拡張。
    1. 海綿体の欠如により背側・腹側の両方に拡張がみられる型
    2. 海綿体は正常で、腹側のみに拡張がみられる型
    • 治療:不要な尿道部分を切除する手術。

まとめ

  • は「尿道口の腹側開口・・背側フード状包皮」の3徴で定義され、テストステロン産生不全・不足・が背景にある。
  • は生後6か月以内のを待つが、遅くとも生後18か月までにを検討するのが現行標準である。
  • 陰嚢内の異常(、)はいずれも解剖学的な交通路・血行動態の異常に由来し、の左側優位はの還流経路の違いで説明できる。
  • 尿道口・陰茎形態の異常(、目立たない陰茎、、)は発生過程の癒合・退縮の異常として理解する。

出典

  1. 1.Hypospadias, all there is to know(2017)尿道下裂の三徴、多因子性の病因、近位型での性分化疾患評価、および乳幼児期の手術時期を確認した。閲覧 2026-08-13
  2. 2.Surgical treatment of cryptorchidism: current insights and future directions(2024)停留精巣は身体診察で評価し、生後6か月以降は自然下降が期待しにくく、早期の精巣固定術が推奨されることを確認した。閲覧 2026-08-13
  3. 3.Best practice in the diagnosis and treatment of varicocele in children and adolescents(2018)小児・思春期精索静脈瘤では身体診察、精巣容積差、ドプラ逆流、疼痛や精液所見により経過観察と手術を個別化する原則を確認した。閲覧 2026-08-13