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Disease Atlas · 生殖・産婦人科 · 先天性疾患

卵精巣性DSD

Ovotesticular DSD

別名
真性半陰陽True hermaphroditism卵精巣性性分化疾患
臓器系
生殖・産婦人科内分泌・代謝小児
科目
Internal MedicinePediatricsUrology
トピック
内科学 E-08:性腺機能異常小児科 3-19:小児性腺疾患泌尿器科学 U-03:尿道・男性外性器の発生異常
上位概念
性分化疾患(DSD)
関連疾患
混合性腺異形成症
検査値
染色体検査抗Müller管ホルモン

🧠 全体像:卵精巣性DSD(ovotesticular DSD、旧称 true hermaphrodite)は、(DSD)のなかで同一個体が卵巣組織と精巣組織の両方を持つという一点だけで定義される、きわめて稀な病型である1。⭐ 核型は「XXかXYか」を問わない。 ほとんどは46,XXだが、46,XX/46,XYや45,X/46,XYモザイクでも起こりうる——核型で除外できる病型ではない、という点が学習上の最大の落とし穴である2。診療の骨格は、①どの性腺の組み合わせかを腹腔鏡・生検で確認すること、②などの他病型と混同しないこと、③性別が確定するまで不可逆的な処置を急がないことの3点に尽きる。

定義と核型——「卵巣+精巣」であって「XXとXYの混在」ではない

⚠️ 「卵精巣性」という名前は組織の構成を指すのであって、染色体構成を指すのではない。 2006年のシカゴ・コンセンサスは、旧来「true hermaphrodite()」と呼ばれた病態を、卵巣組織と精巣組織の両方を持つという性腺所見に基づき ovotesticular DSD と呼び替えた3。

核型 頻度の傾向
46,XX 最多(自験14例中10例、71.4%)1。地域差があり、アフリカ(ケニア・南アフリカなど)で特に多いと報告される2
45,X/46,XYモザイク 少数だが一定数を占める(自験14例中3例、21.4%)1
46,XX/46,XY、46,XX/47,XXY 稀 2

💡 46,XXにもかかわらず精巣組織ができる機序は複数ある。 SRY遺伝子のX染色体への転座(ただし多くは卵精巣性ではなく46,XX精巣性DSDに至る)、SRY非依存性の精巣分化経路(SOX9領域の重複など)、卵巣分化を抑える遺伝子の機能低下が想定されているが、多くの症例では原因となる遺伝子異常が同定されていない。

性腺の組織像——ovotestisと非対称パターン

⭐ 「ovotestis(卵精巣)」は、1個の性腺の中に卵巣部と精巣部が共存する組織像を指す語である。 両者は通常、端と端が接する形か、を挟んで分離しており、免疫染色ではFOXL2が(卵巣部)を、SOX9が(精巣部)をそれぞれ標識する2。

性腺の組み合わせは症例によって幅がある。自験例では精巣+卵巣という左右非対称の組み合わせが最多(71.4%)で、次いで両側性ovotestisが続く1。外性器の表現型は、この性腺構成と精巣組織から分泌されるアンドロゲン量に応じて、ほぼ正常男性型から正常女性型まで連続的に分布する。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='non-conventional'>非典型的</span>外性器の新生児"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='karyotyping'>核型検査</span><br>(46,XX・45,X/46,XY・46,XX/46,XYなど何でもありうる)"]
    B --> C["腹腔鏡+性腺生検"]
    C --> D{"卵巣組織と精巣組織の両方があるか"}
    D -->|"あり(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pathway identity'>同一性</span>腺内=ovotestis、または左右別)"| E["卵精巣性DSDと診断"]
    D -->|"なし(精巣+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='streak gonad'>索状性腺</span>のみ)"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mixed gonadal dysgenesis'>混合性腺異形成症</span>など他病型を検討"]
    E --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anti-Müllerian hormone'>抗Müller管ホルモン</span>で精巣組織の機能を評価"]
    G --> H["性別・思春期の見通しに応じて<br>性腺の温存・摘除を個別に判断"]

診断

⚠️ 核型だけでは診断も除外もできない。 確定にはでの性腺の直接観察と生検によるが必要である2。は精巣のから分泌されるため、機能する精巣組織(ovotestisを含む)の存在を示唆する手がかりになる——精巣組織があると卵巣単独の場合よりはるかに高値をとる2。は原因の探索と遺伝カウンセリングのために必須だが、卵精巣性DSDを核型だけで診断・除外してはならない。

マネジメント——温存と摘除の判断

⭐ 卵精巣性DSDの悪性腫瘍リスクは、DSD一般(Y染色体を含む)に比べて低い。 自験例ではY染色体を持たない場合に特に低く2.6〜4.6%と報告され1、総説でも悪性腫瘍の報告は世界で9例にとどまるとされている(Y染色体の存在と精巣分化の不完全さが危険因子)2。⚠️ したがって「性腺があれば即摘除」という短絡は誤りである。 自験例で思春期の自然発来が期待できた7例では、ovotestisまたは卵巣を摘除し、機能する精巣を温存して自然な思春期発来を狙うという方針がとられた1。

⚠️ 性別が確定するまで、不可逆的な医学的・外科的処置は避けるのが原則である。 部分性腺摘除(卵精巣の一部だけを切除して機能する組織を残す)も選択肢になりうる2。の評価と性別割り当てに関する(評価の前に性別を決めない、で進める)は(DSD)に譲る。

混合性腺異形成症との違い

💡 卵精巣性DSDとは、臨床像・ホルモンプロファイルが重なり合い、実際の診療でもしばしば併せて論じられる1。ただし性腺の中身が違う——卵精巣性DSDは卵巣組織と精巣組織の両方を持つのに対し、は卵巣組織を持たず、片側のと対側の異形成精巣という組み合わせになる。両者を分けるのは、結局のところ腹腔鏡と生検による直接の組織学的確認である。

まとめ

  • 卵精巣性DSD(旧称 true hermaphrodite)は、同一個体が卵巣組織と精巣組織の両方を持つことだけで定義される病型で、核型は46,XXが最多だが45,X/46,XYモザイクなど多様でありうる。
  • ⭐ 核型だけで診断・除外できない。 確定診断にはの性腺観察と生検が必要で、は精巣組織の存在を示唆する補助的な手がかりになる。
  • 外性器の表現型は正常男性型〜正常女性型まで連続的に分布し、性腺の組み合わせ(両側ovotestis/精巣+卵巣など)によって幅がある。
  • ⭐ 悪性腫瘍リスクは他のDSDに比べて低く(Y染色体非保有例で2.6〜4.6%)、思春期の自然発来が見込める場合は機能する精巣を温存する方針がとられる。
  • ⚠️ 性別が確定するまで不可逆的な処置は避け、部分性腺摘除も選択肢になる。
  • とは臨床像が重なるが、卵巣組織の有無で区別される。

出典

  1. 1.Pubertal outcomes and sex of rearing of patients with ovotesticular disorder of sex development and mixed gonadal dysgenesis(Annals of Pediatric Endocrinology & Metabolism(Kim YM, Oh A, Kim KS, Yoo HW, Choi JH)・2019)Ovotesticular DSDが同一個体内に卵巣組織と精巣組織の両方が存在する状態と定義されること、自施設の卵精巣性DSD 14例では核型が46,XXが最多(10/14、71.4%)で次いで45,X/46,XYモザイクが3/14(21.4%)であったこと、性腺の組み合わせは精巣と卵巣の組み合わせが最多(10/14、71.4%)で次いで両側性ovotestisであったこと、卵精巣性DSDの悪性腫瘍リスクはY染色体を持たない場合には特に低い(2.6〜4.6%)と報告されていること、思春期の自然発来を期待できる7例では自然思春期発来を狙って精巣を温存しovotestisまたは卵巣を摘除する方針をとったことを、巻末の症例票(Ann Pediatr Endocrinol Metab. 2019 Dec 31;24(4):231-236)まで含めて確認した。同論文の混合性腺異形成症(MGD)9例では核型45,X/46,XYが6/9(66.7%)で、性別割り当ては男性が7/9(77.8%)、思春期に達した2例のうち1例は自然発来、もう1例は11.5歳から性ホルモン補充を要したこと、経過観察中に悪性腫瘍は検出されなかったことも同じ本文で確認した。閲覧 2026-09-07
  2. 2.Ovotesticular Difference of Sex Development: Genetic Background, Histological Features, and Clinical Management(Hormone Research in Paediatrics・2023)卵精巣性DSDが全DSD症例の5%未満・推定発生率20,000人に1人未満とされケニア・南アフリカなどアフリカでより一般的に報告されていること、染色体型はほぼ常に46,XXだが稀に46,XX/46,XYキメリズムや46,XX/47,XXYが報告されていること、ovotestisが同一性腺内に卵巣部と精巣部が共存する組織像で通常は端対端配置または移行帯で分離されFOXL2(顆粒膜細胞)・SOX9(セルトリ細胞)の免疫染色で確認されること、抗Müller管ホルモンが精巣組織の存在を示唆する検査として用いられ精巣組織があるとレベルが卵巣単独の場合よりはるかに高値になること、腹腔鏡検査と性腺生検が内性器構造・組織学的評価に用いられること、悪性腫瘍の報告例は9例にとどまり他のDSD病型に比べてリスクは低いがY染色体の存在と不完全な精巣分化が危険因子とされること、性別同一性が確定するまで不可逆的な医学的・外科的処置は避けるべきで部分性腺摘除も選択肢になることを確認した。閲覧 2026-09-07
  3. 3.Consensus statement on management of intersex disorders(Archives of Disease in Childhood(Lawson Wilkins Pediatric Endocrine Society/European Society for Paediatric Endocrinology Consensus Group;Hughes IA, Houk C, Ahmed SF, Lee PA)・2006)「intersex」「male/female pseudohermaphrodite」「true hermaphrodite」といった旧来の用語が患者にとって侮蔑的と受け取られうるため、性染色体・性腺・表現型のいずれかに不一致がある状態を包括して「disorders of sex development(DSD)」と呼び替えること、旧用語との対応がmale pseudohermaphrodite→46,XY DSD、female pseudohermaphrodite→46,XX DSD、true hermaphrodite→ovotesticular DSDであることを確認した。閲覧 2026-09-01