小児科学

小児科学 · 3-19

小児性腺疾患

Gonadal Disorders

前提:正常
泌尿生殖器系:生殖器系染色体異常
疾患
Frasier症候群Kallmann症候群アロマターゼ欠損症ミュラー管無形成混合性腺異形成症性分化疾患卵精巣性DSD
スコア
Prader分類

🧠 全体像:性腺疾患は、染色体、性腺、、外性器、ホルモン作用を別々に評価する。・では、子宮の有無と/が診断のになる。

性腺形成異常と性分化

では正常な胚細胞を欠くとなり、と一部でリスクを来す。核型、/・性ステロイド、()、画像、遺伝学的検査を、で本人・家族へのとともに行う。

💡 「」という用語は2006年の国際コンセンサス(通称シカゴ・コンセンサス)で提案された。 それ以前に使われていたintersex・pseudohermaphroditism・hermaphroditismという用語は患者・家族に不快感を与えうるとして置き換えられたが、旧用語は文献・過去のカルテに現れるため意味は知っておく。DSDは染色体(DSD:・など)・性腺(46,XY DSD:、アンドロゲン合成/作用異常など)・解剖学的性(46,XX DSD:による男性化など)の3群に分類される。のうちは電解質異常・副腎不全を伴いうるため、新生児の初期評価には・測定を含める。性別の判定は専門的評価が終わるまで急がず、経験豊富なで長期管理するのが原則である1。

病態 核型・性腺 子宮 主な特徴
多くは45,Xまたはモザイク; あり 、卵巣機能不全、、心血管・
46,XY異常(Swyer症候群) 機能しない性腺 あり 女性型外性器、;Y染色体を含む性腺の
無形成() 46,XX、機能する卵巣 欠如/低形成 ・は通常正常、
完全型 46,XY、精巣あり なし 女性型外性器、あり、・が少ない

では精巣由来がを退縮させ、子宮を欠く。テストステロンの一部はエストロゲンへされ乳房が発育するが、アンドロゲン作用がないため由来構造も十分発達しない。プロゲステロンへの変換で乳房が発育するわけではない。

性腺摘出の要否・時期は病型別、自然な思春期、本人のを考慮し個別化する。すべてのを一律に即時摘出するわけではない。456例の系統的レビューでは6.14%・1.3%が検出されたが、はすべて思春期後の症例で思春期前の悪性化はみられず、自然な思春期発来まで性腺摘出を延期しうる根拠になっている2。

💡 はDSDとは別軸の、頻度の高いの性腺位置異常である。 自体も思春期後のリスク上昇と関連し、標準治療はで、・悪性化リスクを減らすため早期治療が求められる(2016年の欧州指針は遅くとも生後18か月まで3、現行の2026年版指針は生後6か月から治療を始め、12か月まで、遅くとも18か月までにを終えるよう推奨する4)。DSDに伴うの評価はこれとは別に、上記のように病型別に行う。

低ゴナドトロピン性性腺機能低下

  • :ニューロンとの発生異常により、/低値、、を来す。
  • などの視床下部・下垂体病変:頭痛、、、他の欠乏を伴い得る。
  • 、慢性疾患、過度の運動では機能性抑制が起こる。

性ホルモン補充でと骨量を支え、妊孕性を希望する場合はゴナドトロピンまたはを検討する。

クラインフェルター症候群

典型核型は47,XXYで、男性で最も頻度の高い異常であり、一部は無症候性のため小児期には見過ごされやすい5。障害によるを来す。・長い四肢、小さい硬い精巣、、、不妊、学習・言語の困難、骨量低下や代謝異常がみられる。核型で確定し、思春期頃からテストステロン補充を個別化する。妊孕性温存は早期にへ相談する。

ターナー症候群

は女児出生2,000〜2,500人に1人の頻度でみられ6、、卵巣機能不全、手足の、、などを示す。、、大動脈拡張・解離、高血圧、、を系統的に検索する(診断自体が遅れがちで平均診断年齢は約15歳)7。

成長期のGH治療と、11〜12歳頃から低用量エストロゲン(が推奨され、結合型エストロゲンは推奨されない)を開始して2〜3年かけて漸増し、その後を加える8。Y染色体物質が検出される場合はリスクのため性腺摘出を検討する。妊娠前には大動脈リスクを専門評価する。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='primary amenorrhea'>原発性無月経</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='delayed puberty'>思春期遅発</span>"] --> B["子宮の有無"]
    B --> C["子宮あり"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='luteinizing hormone'>LH</span>/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='follicle-stimulating hormone'>FSH</span>高値:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gonadal dysgenesis'>性腺形成異常</span>"]
    C --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='luteinizing hormone'>LH</span>/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='follicle-stimulating hormone'>FSH</span>低値:視床下部・下垂体性"]
    B --> F["子宮なし"]
    F --> G["46,XX:MRKHを考える"]
    F --> H["46,XY:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='androgen insensitivity syndrome, AIS'>アンドロゲン不応症</span>を考える"]

まとめ

  • 子宮の有無、核型、/を組み合わせる。
  • Y染色体を含む形成不全性腺ではを病型別に評価する。
  • 心血管・骨・妊孕性・心理社会面を含む長期支援が必要である。

出典

  1. 1.Consensus statement on management of intersex disorders(Archives of Disease in Childhood(LWPES/ESPE Consensus Group)・2006)2006年の国際コンセンサス会議(通称シカゴ・コンセンサス)で、intersex・pseudohermaphroditism・hermaphroditismなどの旧来の用語を「性分化疾患(disorders of sex development, DSD)」に置き換えることを提案したこと、DSDを染色体(性染色体DSD:45,X Turner症候群・47,XXY Klinefelter症候群など)・性腺(46,XY DSD:性腺形成異常、アンドロゲン合成/作用異常など)・解剖学的性(46,XX DSD:先天性副腎過形成による男性化など)の3群に分類したこと、先天性副腎過形成のうち塩喪失型は電解質異常・副腎不全を伴いうるため新生児の初期評価に血清電解質・17-ヒドロキシプロゲステロン測定を含めるべきこと、新生児の性別判定は専門的評価が終わるまで急がず経験豊富な多職種チームで長期管理すべきことを確認した閲覧 2026-08-27
  2. 2.Complete androgen insensitivity syndrome and risk of gonadal malignancy: systematic review(Annals of Pediatric Endocrinology & Metabolism・2021)完全型アンドロゲン不応症で性腺摘出または性腺生検を受けた456例の系統的レビューで、前癌病変6.14%・悪性病変1.3%が検出されたが悪性病変はすべて思春期後の症例で、思春期前の悪性化はみられなかったこと閲覧 2026-08-27
  3. 3.Management of undescended testes: European Association of Urology/European Society for Paediatric Urology Guidelines(2016)停留精巣の標準治療は精巣固定術であり、妊孕性低下・悪性化リスクを減らすため遅くとも生後18か月までの早期治療が必要であること、性分化疾患とは異なる頻度の高い孤発性の性腺位置異常であること閲覧 2026-08-27
  4. 4.EAU Guidelines on Paediatric Urology — Management of Undescended Testes(European Association of Urology (EAU)・2026)停留精巣の章で、推奨「Perform surgical orchidofunicolysis and orchidopexy before the age of 12 months, and by 18 months at the latest」(Strong)と、治療は生後6か月(それ以降の自然下降はまれ)から始め、陰嚢内に固定する治療は12か月まで、遅くとも18か月までに終えるべきとする本文を確認した閲覧 2026-09-24
  5. 5.New Horizons in Klinefelter Syndrome: Current Evidence, Gaps, and Research Priorities(Endocrine Reviews・2025)Klinefelter症候群が男性で最も頻度の高い性染色体異常であること、一部の患者は無症候性で小児期には見過ごされやすいこと、不妊は生殖補助医療で克服できる場合があること閲覧 2026-08-27
  6. 6.Autoimmune Thyroid Disease in Specific Genetic Syndromes in Childhood and Adolescence(Frontiers in Endocrinology・2020)Turner症候群が女児出生2,000〜2,500人に1人の頻度でみられる染色体疾患であること、Down症候群では甲状腺機能異常が最も頻度の高い内分泌疾患で7〜66%にみられ、Graves病の頻度が一般人口の1.07%に対しDown症候群では6.5%と高く、抗甲状腺抗体陽性率が13〜46%に達すること閲覧 2026-08-27
  7. 7.Turner syndrome: mechanisms and management(Nature Reviews Endocrinology・2019)Turner症候群がX染色体の完全または部分的欠失を伴う多様なモザイク核型を含み、先天性心奇形・内分泌疾患・骨粗鬆症・自己免疫疾患など多臓器にわたる合併症のため生涯を通じた多職種管理を要すること、診断が遅れがちで平均診断年齢が約15歳であること閲覧 2026-08-27
  8. 8.Estrogen Replacement in Turner Syndrome: Literature Review and Practical Considerations(The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism・2018)Turner症候群のエストロゲン補充は11〜12歳頃に低用量で開始し2〜3年かけて漸増すべきこと、経皮エストラジオールでの開始が支持され結合型エストロゲンは推奨されないこと、開始を遅らせることは骨・子宮の健康に不利益になりうること閲覧 2026-08-27