小児科学

小児科学 · 3-20

小児甲状腺疾患

Diseases of the Thyroid Gland

前提:正常
頭頸部:舌と甲状腺甲状腺ホルモン(T3/T4)の産生と作用。その分泌の調節。
疾患
先天性甲状腺機能低下症

🧠 全体像:新生児の甲状腺機能低下症は症状が乏しくても脳発達へ不可逆的影響を残すため、スクリーニングと早期治療が核心である。小児甲状腺機能亢進症ではGraves病が最多である。

先天性甲状腺機能低下症

分類 主な原因
原発性・ ・低形成・異所性、
中枢性 視床下部・下垂体形成異常、複合欠乏
一過性 母体の・阻害型抗体、ヨウ素過剰/欠乏、早産

母体T4の移行により出生時は無症状のことが多い。未治療では、傾眠、、便秘、低体温、、、、、成長・が出現する。

生後のを中心とするで検出し、異常時は血清・で速やかに確認する。中枢性ではが低値・正常・軽度高値にとどまりうるため、のみのスクリーニングで見逃し得る1。⚠️ 早産児・・重症新生児は初回スクリーニングを通過した後にが遅れて上昇することがあり、偽陰性になりうる。 これらの群では追加のを検討する1。疑いが強ければ画像による病因確定のために治療を遅らせず、10〜15 µg/kg/日を初期量の目安に開始する2。定期的な・、成長、聴覚、神経発達の評価が必要である。

💡 を過ぎてから発症する小児の甲状腺機能低下症は、このとは別に、自己免疫性のが主因である。 小児期のの頻度は0.3〜9.6%(おおむね3%前後)で、後天性甲状腺機能低下症の原因として最も頻度が高い。では甲状腺機能異常の頻度が7〜66%と高く、のスクリーニングとは別に生後の追加測定が推奨される31。でもの頻度は年齢とともに上昇し一般人口より明らかに高い3。1型糖尿病でも甲状腺自己抗体陽性率が健常児の1〜4%に対し5〜22%と高く、思春期患者の最大25%が甲状腺関連抗体を持つため、定期的なスクリーニングが推奨される4。

新生児甲状腺機能亢進症

多くはGraves病母体の受容体刺激抗体(TRAb)がして起こり、母体が過去に甲状腺切除・を受けていても生じ得る5。胎児・新生児の頻脈、甲状腺腫、、、体重増加不良、下痢、、心不全を来す。

母体TRAb、胎児所見、出生後の・をで追う。治療はと、症状に応じβ遮断薬を用い、重症例は専門管理する。母体抗体が消失すれば通常は一過性である。

小児バセドウ病

自己抗体による受容体刺激で、、頻脈、振戦、発汗、暑がり、体重減少、下痢、、、成長加速、、を来す。低値、/高値、TRAb陽性で診断する6。

治療 要点
小児の第一選択。発熱・ではを疑い中止して血算、黄疸では肝障害を評価
β遮断薬 頻脈・振戦などの一時的症状緩和
大きな甲状腺腫、圧迫症状、薬物不耐、確実な根治を希望する場合など
年齢、腺容量、活動性中等度〜重度の有無、地域基準を考慮する根治療法;幼少児では通常避ける

新規発症の小児ではを第一選択とし通常12〜18か月継続する6。は重篤な肝障害リスクのため、小児の通常治療には用いない。⚠️ この位置づけは2009年の米国による(boxed warning)を経て確立した。 小児例を中心とする重篤な肝毒性の報告を受け、学会・NIH・が連携してを追加し、以後の長期使用(特に小児)はされないという位置づけになった7。を「10歳超なら第一選択」と一律には扱わず、薬物療法の経過と本人・家族の希望を含め個別化する。

💡 甲状腺腫大を評価する際は結節の有無も確認する。小児で評価対象となったは成人よりも悪性の割合が高い(22〜26% 対 5〜10%)。 のと区別し、成人の基準をそのまま適用せず超音波所見・臨床背景に応じての適応を判断する8。

flowchart TD
    A["甲状腺機能異常を疑う"] --> B["TSHとFT4"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thyroid-stimulating hormone'>TSH</span>高値・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='free thyroxine'>FT4</span>低値"]
    C --> D["原発性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypothyroidism'>甲状腺機能低下</span>"]
    B --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thyroid-stimulating hormone'>TSH</span>低値・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='free thyroxine'>FT4</span>/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='free triiodothyronine'>FT3</span>高値"]
    E --> F["TRAbを測定"]
    F --> G["Graves病"]
    B --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='free thyroxine'>FT4</span>低値・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thyroid-stimulating hormone'>TSH</span>低値/不適切に正常"]
    H --> I["中枢性を評価し副腎不全も除外"]

まとめ

  • は症状を待たずスクリーニングで拾い、治療を急ぐ。
  • Graves病はが第一選択で、重篤な副作用教育が必要である。
  • 新生児甲状腺機能亢進症は母体の現在の甲状腺機能だけでなくTRAb歴を確認する。

出典

  1. 1.Congenital Hypothyroidism: A 2020-2021 Consensus Guidelines Update-An ENDO-European Reference Network Initiative Endorsed by the European Society for Pediatric Endocrinology and the European Society for Endocrinology(2021)中枢性先天性甲状腺機能低下症はTSHが低値・正常・軽度高値にとどまりうるためTSH単独のスクリーニングでは見逃されうること、早産児・低出生体重児・重症新生児は初回スクリーニングを通過した後にTSHが遅れて上昇し偽陰性になりうるため追加の再検査(postscreening strategy)を検討すべきこと、Down症候群では新生児期のスクリーニングとは別に生後の追加TSH測定を推奨すること閲覧 2026-08-27
  2. 2.Congenital Hypothyroidism: Screening and Management(2023)先天性甲状腺機能低下症の初期治療としてレボチロキシン10〜15 µg/kg/日を初期量の目安に用いる推奨を確認した閲覧 2026-08-27
  3. 3.Autoimmune Thyroid Disease in Specific Genetic Syndromes in Childhood and Adolescence(Frontiers in Endocrinology・2020)自己免疫性甲状腺疾患が小児期の後天性甲状腺機能異常の原因として最も頻度が高いこと(橋本甲状腺炎の頻度は0.3〜9.6%、おおむね3%前後)、Down症候群では甲状腺機能異常の頻度が7〜66%と高いこと、Turner症候群では橋本甲状腺炎の頻度が年齢とともに上昇し一般人口より明らかに高いことを本文で確認した閲覧 2026-08-27
  4. 5.Management of Neonates Born to Mothers With Graves' Disease(2016)Graves病母体から出生した児では母体のTRAbが胎盤を通過して新生児甲状腺機能亢進症を来しうること、母体が過去に甲状腺摘除・放射性ヨウ素治療を受けていてもTRAbが残存していれば同様のリスクがあること、出生後のFT4・TSHを反復して評価すべきこと閲覧 2026-08-27
  5. 6.2022 European Thyroid Association Guideline for the management of pediatric Graves' disease(2022)小児バセドウ病はTSH低値・FT4/FT3高値・TRAb陽性で診断し、新規発症例ではメチマゾールを第一選択として通常12〜18か月継続すること、プロピルチオウラシルは避けること、放射性ヨウ素・甲状腺全摘は年齢等を含め個別化すべきことを確認した閲覧 2026-08-27
  6. 7.63 years and 715 days to the "boxed warning": unmasking of the propylthiouracil problem(International Journal of Pediatric Endocrinology・2010)米国FDAが2009年にプロピルチオウラシルの肝毒性リスクについて黒枠警告(boxed warning)を発出したこと、これが学会・出版社・NIH・FDAの連携によるもので小児例の重篤な肝障害が背景にあったこと、特に小児での長期プロピルチオウラシル治療は正当化されないという位置づけになったことを本文で確認した閲覧 2026-08-27
  7. 8.Management Guidelines for Children with Thyroid Nodules and Differentiated Thyroid Cancer(Thyroid(American Thyroid Association)・2015)小児で評価対象となった甲状腺結節の悪性率が22〜26%と成人の5〜10%より高いこと、結節の大きさだけでなく超音波所見と臨床背景を組み合わせてFNAの適応を判断すべきことを本文で確認した閲覧 2026-08-27