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Symptoms · Published

女性化乳房

Gynecomastia

臓器系
内分泌・代謝生殖・産婦人科
科目
PathologyPathophysiologyInternal MedicineUrology
トピック
病理学 C/81:精巣腫瘍病態生理学 I-24:男性性腺機能低下症とアンドロゲン不応症内科学 S-15:男性性腺機能低下症泌尿器科学 N-10:精巣腫瘍
関連疾患
クラインフェルター症候群精巣腫瘍男性性腺機能低下症
起因薬
エチオナミドケトコナゾールシメチジンフルタミドプロチオナミドラニチジン

🧠 全体像を評価する最初の分かれ道は「触れているのは乳腺組織か、ただの脂肪か」であり、次の分かれ道は「エストロゲン作用とアンドロゲン作用の比が、どちらの方向に・どの経路でずれているか」である。比のずれは、エストロゲンが増える経路(産生増加・末梢での変換増加・肝でのクリアランス低下)と、アンドロゲンが減る・効かなくなる経路のどちらかに必ず整理できる。頻度でいえば新生児・思春期・高齢期の生理的変化が圧倒的に多いが、片側性・・可動性不良・皮膚固定・血性乳頭分泌のいずれかがあれば生理的では説明がつかず、腫瘍性病変の除外を最優先にする。

定義と用語の整理

「胸がふくらんだ」という訴えの背後には、性質の異なる3つの病態が隠れている。

鑑別 触知組織 硬さ・可動性 分布
下の乳腺組織そのものの増殖 ゴム様〜やや硬、可動性は保たれる 両側性が多いが片側先行もある
脂肪沈着のみで腺組織の増殖はない 軟らかく境界不明瞭 肥満に伴い両側性
から偏心性に触れる腫瘤 硬く不整、可動性不良、皮膚固定を来しうる 片側性がほとんど

💡 視触診ではの直下を親指とでつまむように挟み、円板状のを触れるかどうかを確認する。この所見があれば腺組織の増殖=であり、単なる脂肪との区別になる。

病態生理

拡張の機序は「エストロゲン作用とアンドロゲン作用の比」を軸に、大きく5群へ整理できる。

flowchart TD
    A["エストロゲン/アンドロゲン作用比の偏り"] --> B["生理的<br>新生児・思春期・高齢期"]
    A --> C["薬剤性"]
    A --> D["内分泌疾患<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypogonadism'>性腺機能低下</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hyperprolactinemia'>高プロラクチン血症</span>・甲状腺機能亢進"]
    A --> E["肝硬変・腎不全<br>エストロゲンクリアランス低下"]
    A --> F["腫瘍性<br>hCG産生腫瘍・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Leydig cell tumor'>Leydig細胞腫</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Sertoli cell tumor'>Sertoli細胞腫</span>"]

生理的な3つの時期は機序が異なる。

時期 主な機序 経過
胎盤経由の母体エストロゲンの残存 数週間で自然消退
思春期 テストステロン上昇に先行する一過性のエストロゲン優位 半数前後にみられ、多くは1〜2年で自然消退
高齢期 テストステロン低下+脂肪組織アロマターゼ活性の増加 加齢・肥満とともに頻度が上がる

薬剤性は機序で4つに分けると覚えやすい。

機序 代表薬 補足
拮抗。前立腺でのは高頻度
アンドロゲン変換の阻害 阻害でDHT低下、相対的にエストロゲンが優位になる
エストロゲン活性の増加 ジゴキシン 前者はステロイド骨格の弱いエストロゲン様作用、後者は末梢アロマターゼ変換の基質過剰(乱用も同機序)
を介する など プロラクチン↑→GnRH抑制→続発性

⚠️ 見逃してはいけない徴候

⚠️ :片側性・硬い・可動性不良・皮膚固定・血性乳頭分泌のいずれかがあれば、良性のとして経過観察せず乳癌を疑い画像検査・生検に進む。の頻度が高いだけでなくのリスクも上がるため、持続する高度なや乳腺腫瘤では鑑別に加える。

⚠️ hCG産生:急速に進行する、とくにのようなからのhCG著増を伴うでは、が精巣腫瘤より先にされることがある。精巣の視触診とを省略しない。

⚠️ はアンドロゲン・エストロゲンいずれも産生しうる稀なで、成人のや小児の思春期の原因になる。腫瘤を疑ったら経皮的な生検ではなく精巣超音波での評価と根治的精巣摘除を検討する。

⚠️ 成人男性の新規・急速進行の:新規薬剤の開始、体重変化、肝硬変腎不全の進行、の発症を必ず確認する。原因が特定できない急速進行例は腫瘍性病変を除外してから経過観察に切り替える。

鑑別の進め方

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gynecomastia'>女性化乳房</span>を訴える"] --> B["視触診:腺組織か脂肪のみか"]
    B -->|"脂肪のみ"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pseudogynecomastia'>偽性女性化乳房</span>として体重管理"]
    B -->|"腺組織あり"| D{"片側性・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='induration'>硬結</span>・血性分泌・皮膚固定"}
    D -->|"あり"| E["乳癌を疑い画像検査・生検"]
    D -->|"なし"| F["病歴:薬剤・体重変化・肝腎機能"]
    F --> G["テストステロン・LH/FSH・エストラジオール・hCG・プロラクチンを測定"]
    G --> H{"hCG高値"}
    H -->|"はい"| I["精巣超音波でhCG産生腫瘍を検索"]
    H -->|"いいえ"| J{"LH/FSH高値かつテストステロン低値"}
    J -->|"はい"| K["原発性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypogonadism'>性腺機能低下症</span>を評価"]
    J -->|"いいえ"| L["中枢性・薬剤性・肝腎機能を再評価"]

・体重変化・肝腎機能を先に押さえ、腺組織の性状での高い経路(乳癌・hCG産生腫瘍)を最初に分岐させると、検査の順序で迷わない。

・思春期のは珍しくなく、多くは経過とともに自然消退する。一方、成人男性に新たに生じたを生理的と片づけない。 この年齢の線引きが、薬剤・肝腎機能・内分泌・腫瘍の評価へ進むかどうかのになる。

対応の考え方

生理的な・思春期)は経過観察が原則で、多くは自然消退する。薬剤性はの中止・変更で軽快することが多く、原因薬剤の同定そのものが治療になる。内分泌疾患・肝硬変・腎不全に伴う例は原疾患の治療が主軸で、自体を先に治療の対象にしない。腫瘍性(hCG産生腫瘍、)を疑う場合は生検ではなく根治的精巣摘除で断と治療を同時に行い、は原疾患切除後に軽快することが多い。可逆的原因を是正しても疼痛・整容上の問題が持続する例では、などの、外科的切除が選択肢になるが、まず可逆的原因の是正を尽くしてから検討する。

まとめ

  • はまず腺組織の増殖か脂肪沈着()かを視触診で区別する。
  • 機序はエストロゲン/アンドロゲン作用比の偏りとして、生理的・薬剤性・内分泌疾患・肝硬変腎不全・腫瘍性の5群に整理する。
  • 片側性・・可動性不良・皮膚固定・血性乳頭分泌はを疑う所見であり、生理的変化として片付けない。
  • hCG産生を疑ったら、生検ではなく精巣超音波と根治的精巣摘除で評価する。
  • が高頻度なだけでなくのリスクも上げる。
  • 薬剤性は・アンドロゲン変換阻害・エストロゲン活性増加・の4機序に分けると原因薬を探しやすい。
  • 治療は原因ごとに異なり、可逆的原因の是正を優先したうえで、持続例にのみ薬物療法・手術を検討する。