検査値ノート一覧へ

Lab values · Published

染色体マイクロアレイ検査

Chromosomal microarray analysis

別名
CMAマイクロアレイ染色体検査アレイCGH
臓器系
全身小児
科目
Medical Genetics and Immunology (Genetics)
トピック
遺伝学 2.3:細胞遺伝学 I遺伝学 2.2:染色体異常遺伝学 10.2:出生前遺伝学
関連疾患
アンジェルマン症候群

🧠 全体像:検査(CMA)は、染色体を「並べて見る」と違い、ゲノムをプローブでタイル張りにしてを読む検査である。学習の軸はとの裏返しの関係——CMAは核型の見えない・微小重複をに拾える代わり、が変わらないを原理的に検出できず、低頻度モザイクにも感度の限界がある。もう1つの軸は臨床的意義不明の変異(VUS)——検出力が上がった分だけ「異常はあるが意味が分からない」結果が一定の割合で出る、という新しい種類の悩みを背負う。

検査の原理と実施方法

ゲノム全体に多数のプローブ(アレイCGHでは数万〜数百万、SNPアレイではさらにの座位)を配置し、患者をハイブリダイズさせて各座位のを読む。アレイCGHはの検出に特化する一方、SNPアレイは各プローブ位置の遺伝子型(アレルの数)も同時に読むため、長い連続した領域(LCSH)を検出でき、(UPD)・(血縁関係)・・細胞の検出にも利用できる——アレイCGHにはできない芸当である1。

flowchart TD
    A["患者<span class='jp-term jp-term-diagram' title='deoxyribonucleic acid'>DNA</span>をゲノム全体の<br>プローブにハイブリダイズ"] --> B{"アレイの種類"}
    B -->|"アレイCGH"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='copy number alteration'>コピー数変化</span>のみを検出"]
    B -->|"SNPアレイ"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='copy number alteration'>コピー数変化</span>に加え<br>各座位の遺伝子型も検出"]
    D --> E["長い連続<span class='jp-term jp-term-diagram' title='loss of heterozygosity'>ヘテロ接合性消失</span>(LCSH)から<br>UPD・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='consanguineous marriage'>近親婚</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='triploid'>三倍体</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chimerism'>キメリズム</span>も検出可能"]
    C --> F["検出した<span class='jp-term jp-term-diagram' title='copy number alteration'>コピー数変化</span>を<br>ACMG 5段階分類で判定"]
    E --> F

判読の指標と基準

検出した(欠失・重複)は、大きさ・含まれる遺伝子・既知データベースとの照合をもとに、ACMGの5段階分類(病的/病的の疑い/臨床的意義不明(VUS)/良性の疑い/良性)で報告する。

区分 意味
病的 既知の疾患関連領域と一致し、臨床像を説明する
病的の疑い 病的である可能性が高いが確実な既知知見がやや不足
VUS 良性か病的か現時点のデータでは判定できない
良性の疑い/良性 集団内で高頻度に見られる、または既知の良性多型と一致する

異常パターンの意味

パターン 臨床的意義
既知の・微小重複症候群と一致するCNV ・のように、では見えない大きさの欠失を確認できる
長い連続(LCSH)+領域 ・Angelman症候群で問題になる(UPD)を示唆する所見——SNPアレイでなければ拾えない1
臨床的意義不明の変異(VUS) ⭐ 中国人発達遅滞・知的障害710例(うち約8割がを伴う)のコホート全体で16%の頻度で生じる。両親の検体を追加検査し、か家族性かを確認して意義づけを進める2
病的なし 陰性。同コホート全体では56%を占める——「異常なし」が最も多い結果である2

⚠️ 実施上・判読上の注意

  • ⚠️ ・はが変わらないため原理的に検出できない。 ・家系内の再構成が疑われる場面ではに譲る3。
  • ⚠️ 低頻度モザイクにもがある(ただし原理的に不可能なのではなく、感度の限界である)。 アレイCGHを含む現行の大半のプフォームでは概ね20〜30%のモザイク率までしか拾えないが、SNPアレイは遺伝子型情報を併用する分解能の高さから場合によっては5%未満のモザイクも検出できる——とは異なり、プフォーム次第で拾える下限が変わる4。
  • はアレイの設計次第で見落とされる。 だけを読む解析では検出できないが、SNPプローブの遺伝子型情報を解析すれば同定できる——「CMAはを写せない」と一律に暗記せず、そのアレイがSNP情報を読む設計かを確認する3。
  • ⭐ VUSは「異常なし」でも「診断」でもない。 中国人発達遅滞・知的障害710例のコホート全体で16%の頻度に上り、両親の検体解析(新生か家族性か)や経過観察での再評価を要する、臨床的に最も扱いにくい結果区分である2。
  • (血縁関係)や非親子関係が偶発的に判明することがある——SNPアレイの遺伝子型情報が持つ副次的所見で、開示方針を検査前に決めておく必要がある1。

検査の選び方 / 使い分け

とCMAは代替ではなく補完関係にある。 原因不明の発達遅滞・知的障害・・多発では、CMAの診断率12.2%がの3%未満(など明らかな染色体症候群を除く)を大きく上回り、今も重要な第一段階の選択肢である4。一方、・家系内の染色体再構成が疑われる場面、あるいは臨床像から明らかな染色体症候群(など)を狙い撃ちできる場面ではを選ぶ——と低頻度モザイクという2つの死角がCMAにはあるためである43。のようなはCMA、UPD・を疑うならSNPアレイが適する。

⭐ 小児の・発達遅滞・知的障害で、検査順を「CMA陰性後にES/GS」と固定しない。 ACMGはを第一選択または第二選択として考慮するよう強く推奨している5。を重視する表現型か、を含む幅広い病因を早期に探す必要があるか、検査系のCNV検出能、費用・所要時間を踏まえてCMAとES/GSの順序または併用を決める。

まとめ

  • CMAはゲノム全体のプローブでを読む検査で、アレイCGHはのみ、SNPアレイはそれに加え遺伝子型(UPD・・・の検出)も読む。
  • 判読はACMGの5段階分類(病的〜良性)を用いる。中国人発達遅滞・知的障害710例(うち約8割に)のでは病的28%、VUS 16%程度、異常なし56%程度という内訳が報告されている。
  • ⚠️ はが変わらないため原理的に検出できない。低頻度モザイクは感度の限界であり原理的な不可能ではなく、アレイCGHでは概ね20〜30%未満が下限だがSNPアレイは5%未満まで拾える場合がある。もSNP情報を読まない設計のアレイでは見落とされる。
  • ⭐ VUSは診断でも陰性でもない中間区分で、両親検体の追加解析や経過観察での再評価を要する。
  • 原因不明の発達遅滞・多発奇形ではCMAは重要な第一段階の選択肢だが、ES/GSも第一・第二選択になりうる。CMA陰性後にのみES/GSへ進む固定順序ではなく、想定する変異の型と検査環境で選ぶ。

出典

  1. 1.The advantages of SNP arrays over CGH arrays(Molecular Cytogenetics・2014)アレイCGHがコピー数変化の検出に特化しているのに対し、SNPアレイはコピー数変化に加えて各プローブ位置での遺伝子型(アレルの数)も読むため、長い連続したヘテロ接合性消失領域(LCSH)の検出を通じて片親性ダイソミー(UPD)や血縁関係(近親婚)を検出でき、異数性(三倍体)や細胞キメリズムの検出、DNA混入や親子関係の齟齬の品質管理にも利用できることを確認した。閲覧 2026-08-28
  2. 2.Chromosomal microarray analysis in developmental delay and intellectual disability with comorbid conditions(BMC Medical Genomics・2018)中国人の発達遅滞・知的障害710例を対象とした後ろ向きコホート研究で、コホート全体のうち病的意義のあるコピー数異常が201例(28%)、臨床的意義不明の変異(VOUS)が109例(16%)、異常なしが400例(56%)であったこと、710例のうち発達遅滞・知的障害を主徴とし他の表現型を伴わない例は161例(約23%)にとどまり残りの約8割(549例)は先天性心疾患・顔貌異常など1つ以上の併存疾患を伴っていたこと、先天性心疾患(55%)・顔貌異常(39%)・小頭症(34%)・筋緊張低下(35%)を併存する例では診断率が全体の28%より明らかに高かったことを確認した。閲覧 2026-08-28
  3. 3.Chromosomal Microarray versus Karyotyping for Prenatal Diagnosis(New England Journal of Medicine・2012)マイクロアレイが核型で同定された均衡型再構成をいずれも検出できず、三倍体17例(0.4%)もすべて検出できなかったこと、これはコピー数だけを読む解析設計のためでSNPプローブの遺伝子型情報を解析すれば三倍体を同定できたはずであること、出生前検査用のアレイにはSNPプローブを含めるべきだと結論していることを確認した。閲覧 2026-08-28
  4. 4.Consensus Statement: Chromosomal Microarray Is a First-Tier Clinical Diagnostic Test for Individuals with Developmental Disabilities or Congenital Anomalies(American Journal of Human Genetics(International Standard Cytogenomic Array Consortium;Miller DT, Adam MP, Aradhya S, et al.)・2010)原因不明の発達遅滞・知的障害・自閉スペクトラム症・多発先天奇形における染色体マイクロアレイの診断率が全研究平均12.2%でG分染核型(ダウン症候群を除くと3%未満)を大きく上回ること、これらの患者ではCMAを第一選択検査とすべきこと、G分染核型は**明らかな染色体症候群(ダウン症候群など)**・家系内の染色体再構成の既往・反復流産の既往を持つ患者のために残すべきとしていること、真の均衡型再構成と低頻度モザイクは一般にアレイでは検出できないこと、分節性異数性のモザイクは現行の大半のプラットフォームで概ね20〜30%のモザイク率までしか検出できない一方、SNPアレイは遺伝子型情報とプローブ強度を組み合わせた分解能の高さから場合によっては5%未満のモザイクも検出できることを確認した。閲覧 2026-08-28
  5. 5.Exome and genome sequencing for pediatric patients with congenital anomalies or intellectual disability: an evidence-based clinical guideline of the American College of Medical Genetics and Genomics (ACMG)(Genetics in Medicine(American College of Medical Genetics and Genomics)・2021)1歳未満発症の先天異常または18歳未満発症の発達遅滞・知的障害がある小児では、ES/GSを診断評価の第一選択または第二選択として用いることを強く推奨していることを確認した。閲覧 2026-08-31