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Symptoms · Published

小眼球症

Microphthalmia

別名
小眼球microphthalmos
臓器系
眼科小児
科目
Microscopic Anatomy and Embryology (Embryology)Pediatrics
トピック
発生学 19.4:眼:臨床発生学 8.2:先天異常と出生前診断:催奇形学の原則小児科 08:新生児感染症
関連疾患
エドワーズ症候群・パトー症候群(18・13トリソミー)遺残胎児血管系先天性TORCH感染症先天性水痘症候群

🧠 全体像:は「眼が小さく見える」という印象ではなく、という値で決まる所見である。まず・と定義で切り分け、次に単独性かかで切ると、原因検索の広さが決まる。臨床で決めるのは病名ではなく2つ——背景に先天感染やがないかと、残った視機能をどう育てるかである。

定義と用語の整理

眼球の大きさをめぐる用語は、何を測っているかが違う。混同すると検索の範囲も治療も変わる。

用語 何が小さいか 基準
眼球そのもの() が年齢基準の−2SD未満。成人でおおむね21mm未満1。10mm未満・20mm未満とも記述される2
眼組織そのものが無い に眼球組織を認めない。ただし組織学的にはの遺残が見つかることが多く、純粋なは極めてまれ12
だけ 角膜が小さくてもが正常ならではない
(肥厚を伴う特殊型) を伴い18mm未満、8以上の2

💡 とは別カテゴリではなく連続体である。 画像や病理で眼組織の遺残が見つかる例は「」と呼ばれ、実体は極型のにあたる1。だからこの2つを同じ原因リストで探すのが正しい。

⚠️ ・・でも「眼が小さい」と見える。印象で診断せず、を測る。

病態生理

からが形成され、が閉鎖するという発生の連鎖のうち、どの段階で止まったかが表現型を決める。形成そのものが早期に破綻すれば〜極型になり、の閉鎖不全が加わればを合併する。眼球の成長は出生後も続くため、や炎症で発生が途中から阻害された場合にもは伸びない。

構造の異常を伴うかで、鑑別に使える情報量が変わる。

型 内容
構造的には正常な、小さい眼2
複合型 (、)または(、)の異常を伴う2。はの原因にもなる

はが10万あたり3、が10万あたり14で、合わせて最大30程度とされ、盲児の3.2〜11.2%を占める2。

単独性か症候群性か——鑑別が分かれる軸

⭐ 単独の眼所見として片づけない。 であれば、探すべき臓器と聞くべき曝露歴が一気に広がる。

群 代表 手がかり
先天感染 風疹(含む)、、、。環境要因のうち最も証拠が強い群2 、、、難聴、
染色体異常 (・(18・))2 、、多指、
単一遺伝子 SOX2(重症両眼性例の10〜20%)、OTX2、RAX、PAX6、CHX10、FOXE32 家族歴、下垂体・食道・泌尿生殖器の異常
、ワルファリン、アルコール、X線、2、3 曝露の時期()と量

💡 発生のどの時期に曝露したかで結果が変わる()ため、「何に曝露したか」だけでなく「妊娠何週に」を必ず聞く。

緊急・見逃してはいけないもの

⚠️ 先天感染の検索を最初に済ませる。 はの眼所見の一つで、・・・難聴と束になって現れる。感染が確定すれば児の治療と、次子の妊娠管理の両方が変わる——眼の所見だけを追って感染検索を後回しにしない。

⚠️ 視覚発達の窓は待ってくれない。 の眼にも視機能が残っていることがあり、解剖学的に説明のつかない残存視力を持つ例がある1。放置すればによるが加わって、本来得られたはずの視力まで失う。と治療を早期に始めるのが管理の柱である2。

⚠️ 眼窩の成長も時間制限がある。 が0〜45%の重症例では眼窩形態が明らかに異常で、速やかな治療開始(によるの確保)を要する。45〜75%は数か月以内、75〜100%ではは不要とされる1。眼球が小さいまま放置するとと眼瞼が育たず、後からを保持できなくなる。

⚠️ 神経発達のを眼科の外に置き去りにしない。 ・では約5分の1にを伴う2。とくに OTX2 変異例ではと知的障害が多く、PAX6・SOX2 も発生中の脳に発現するため眼以外のを伴う2。「見えないから発達が遅れている」で説明を止めると、の診断そのものを取り逃がす。

⚠️ 乳児期に症候群が同定できなかった例こそ、期限を切って診直す。 表現型の幅が広いため、管理は眼科・小児科・臨床遺伝の多職種で行い、乳児期に症候群が同定できなければ3〜4年後にもう一度診察することが望ましいとされる2。乳児期の診察では揃っていなかった所見が、発達が進んでから初めて形になることがあるからである。初回で「単独性」とした時点で終診にしない。

評価の進め方

flowchart TD
    A["眼が小さいという指摘"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='axial length'>眼軸長</span>を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='measuring'>計測</span>し年齢基準と比較する"]
    B --> C{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='axial length'>眼軸長</span>は−2SD未満か"}
    C -->|"いいえ"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='microcornea'>小角膜</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ptosis'>眼瞼下垂</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='phthisis bulbi'>眼球癆</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='orbital hypoplasia'>眼窩低形成</span>を鑑別"]
    C -->|"はい"| E["片眼性か両眼性か・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='structural aberration'>構造異常</span>を伴うかを評価"]
    E --> F["全身診察:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='head circumference'>頭囲</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='leontiasis ossea'>顔貌</span>・四肢・心・泌尿生殖器"]
    F --> G["先天感染の検索と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hearing assessment'>聴力評価</span>"]
    G --> H["妊娠中の曝露歴(薬剤・アルコール・放射線)と家族歴"]
    H --> I{"眼以外の所見があるか"}
    I -->|"あり"| J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='syndromic'>症候群性</span>として染色体・遺伝学的検査へ"]
    I -->|"なし"| K["単独性として経過を追う<br>単独性でも遺伝子変異はありうる"]
    J --> L["残存視機能の評価と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='refractive correction'>屈折矯正</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='amblyopia'>弱視</span>治療"]
    K --> L
    L --> M["眼窩発育の評価と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='conformer'>コンフォーマー</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ocular prosthesis'>義眼</span>の計画"]
    M --> N["発達評価を定期に組み込む<br>約5分の1に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='learning disability'>学習障害</span>"]
    N --> O["乳児期に症候群が同定できなければ<br>3〜4年後に再度診察する"]

所見そのものに対してできること

眼球を大きくする治療はない。介入の対象は眼球そのものではなく、その周りで進行する二次的な損失である。

  1. 残存視機能の最大化:と治療。視機能が残る例ではで追跡する21。
  2. 眼窩と眼瞼の発育:段階的に大きくする、の補填、適切な時期の2。
  3. 背景疾患の管理:感染・染色体異常・遺伝子異常それぞれの全身合併症の追跡と、家族への遺伝カウンセリング。
  4. 神経発達の追跡:約5分の1にを伴うため、発達評価を定期の項目として組み込む。乳児期に症候群が同定できなければ3〜4年後に診直す2。

⚠️ 「見えない眼だから」と経過観察だけにしない。 視機能・眼窩発育・全身検索の3つはいずれも時間依存で、待つほど取り返せなくなる。

まとめ

  • はが年齢基準の−2SD未満(成人でおおむね21mm未満)と定義される所見で、眼組織が全く無い、角膜だけが小さいとは定義が違う。
  • の多くは眼組織の遺残を持つ「」であり、と連続する。同じ原因リストで探す。
  • 単独性かかが鑑別の軸。は先天感染・染色体異常・単一遺伝子・の4群で整理する。
  • 先天感染の検索は児の治療と次子の妊娠管理を変えるため、眼所見だけを追って後回しにしない。
  • 残存視機能があれば治療の対象になり、眼窩発育にも治療開始の時期がある。「見えない眼」と決めつけた経過観察が最大の落とし穴。
  • 約5分の1にを伴うため、神経発達のを管理の柱に含める。乳児期に症候群が同定できなくても3〜4年後に診直すのが望ましい。

出典

  1. 1.Classification for treatment urgency for the microphthalmia/anophthalmia spectrum using clinical and biometrical characteristics(Acta Ophthalmologica・2020)小眼球症が画像上「年齢調整平均より2標準偏差小さい眼軸長」(成人でおおむね21mm未満)と定義されること、相対眼軸長による重症度3分類(0〜45%は明らかな左右差と眼窩形態の異常を伴い速やかな治療開始を要する、45〜75%は眼窩形態は正常だが左右差が目立ち数か月以内に治療を開始する、75〜100%は拡張性コンフォーマーを要さない)、純粋な無眼球症は極めてまれで多くは眼組織の遺残を持つ「臨床的無眼球症」=極型の小眼球症であること、解剖学的に説明のつかない残存視機能を持つ例があり残存視機能のある症例ではロービジョンリハビリテーションによる追跡と支援が必要であることを、Results と Discussion の各節で確認した。閲覧 2026-08-20
  2. 2.Anophthalmia and microphthalmia(Orphanet Journal of Rare Diseases・2007)小眼球症の定義(角膜径10mm未満かつ眼球前後径20mm未満、眼軸長が年齢調整平均の−2SD未満)と無眼球症の定義(眼窩内に眼組織が無いが組織学的には神経外胚葉遺残が見つかりうる)、真性小眼球症の基準(小角膜を伴い眼軸長18mm未満・8ジオプトリー以上の遠視)、単純型と複合型(強膜化角膜・Peters異常などの前眼部病変、遺残硝子体過形成症・網膜異形成などの後眼部病変を伴う)の区別、出生有病率が無眼球症3/10万・小眼球症14/10万で合わせて最大30/10万、盲児の3.2〜11.2%を占めること、症例の約5分の1に学習障害を伴うこと、患者の管理が眼科医・小児科医・臨床遺伝医から成る多職種チームで行われること、PAX6とSOX2が発生中の脳に発現するため変異例では眼所見に加えて中枢神経奇形を示し、OTX2変異例では中枢神経奇形と知的障害が多いこと、乳児期に症候群が同定できない場合はさらに3〜4年後の再診察が望ましいこと、環境要因として胎内感染(風疹・トキソプラズマ・水痘・サイトメガロウイルス)の証拠が最も強いこと、13トリソミーが全前脳症・コロボーマ・網膜異形成・口唇口蓋裂を伴う染色体原因であること、SOX2が重症両眼性例の10〜20%を占めPAX6・OTX2・CHX10・RAX・FOXE3の変異も報告されること、催奇形因子としてX線・有機溶剤・サリドマイド・ワルファリン・アルコールが挙げられること、管理として屈折矯正と弱視治療を行いコンフォーマーを段階的に大きくして眼窩容積を確保し義眼へつなぐことを、Definition and diagnostic criteria・Clinical description・Epidemiology・Aetiology・Management の各節で確認した。閲覧 2026-08-20
  3. 3.ISOTRETINOIN capsule(DailyMed(Sun Pharmaceutical Industries)・2020)妊娠中のイソトレチノイン曝露で記録された重大先天奇形のうち、外表奇形の一覧に「eye (including microphthalmia)」として小眼球症が明記されていること(頭蓋・耳・顔面形成異常・口蓋裂と並ぶ)、内部奇形として中枢神経系(大脳・小脳の奇形、水頭症、小頭症、脳神経障害)・心血管系・胸腺・副甲状腺ホルモン欠乏が挙げられることを、Section 8.1 Pregnancy(Human Data)で確認した。閲覧 2026-08-20