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Drug Atlas · B3 Other / その他 · 必修

チアミン

thiamine

分類
Vitamins / ビタミン
商品名(日本)
メタボリン
科目
NeurologyPsychiatry
トピック
G1-29: Wernicke-Korsakoff syndromeB-04: Alcohol Use Disorder Including Alcohol Withdrawal and Alcohol Hallucinosis: Treatment and Rehabilitation
承認適応
ウェルニッケ・コルサコフ症候群妊娠悪阻
副作用
注射部位反応

🧠 全体像(ビタミンB1)を理解する軸は「を回すギアそのもの」という位置づけである。ビタミンB12・葉酸がDNA合成を支える補充基質であるのに対し、はピルビン酸からTCA回路へ入る反応のであり、欠乏すれば需要の高い脳・末梢神経・心臓から先に破綻する。臨床的に最も重要なのは、の急性期治療が単剤の非そのものであり、検査結果を待たず、ブドウ糖投与より前または同時に投与するという「順序」を外すと治療そのものが無効化しかねない点にある。

薬効群の中での位置づけ

分類 薬剤 支える経路 欠乏時の
=B1 (TCA回路・)の ・脚気(神経障害・
の補充=B12 ビタミンB12 (DNA合成・髄鞘維持)
の補充=葉酸 葉酸 DNA合成(プリン・ (神経症状を伴わない)

同じ「補充するビタミン」でも、B12・葉酸が主にの指標で欠乏を追えるのに対し、は血液検査より先に神経症状()として破綻することが多い。 血中濃度やは測定できるが結果を待つがなく、臨床的な疑いだけで治療を開始するという点が他のビタミン補充薬と最も違うところである。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thiamine'>チアミン</span>を吸収し<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='TPP'>チアミンピロリン酸</span>へリン酸化"] --> B["ピルビン酸脱水素酵素の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='coenzyme'>補酵素</span>として作用"]
    B --> C["ピルビン酸→アセチルCoA<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='glycolysis'>解糖系</span>からTCA回路への入口)"]
    A --> D["α<span class='jp-term jp-term-diagram' title='alpha-ketoglutarate (α-KG)'>ケトグルタル酸</span>脱水素酵素の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='coenzyme'>補酵素</span>として作用"]
    D --> E["TCA回路を回してATP産生"]
    A --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='transketolase'>トランスケトラーゼ</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='coenzyme'>補酵素</span>として作用"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pentose phosphate pathway (PPP)'>ペントースリン酸経路</span>を回し<br>NADPH・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nucleic acid synthesis'>核酸合成</span>材料を供給"]
    C --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='glucose metabolism'>糖代謝</span>からのATP産生が正常化"]
    E --> H
    H --> I{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thiamine'>チアミン</span>が欠乏すると"}
    I --> J["エネルギー需要の高い組織から破綻"]
    J --> K["脳(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='medial thalamus'>視床内側</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mammillary bodies'>乳頭体</span>等):<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Wernicke encephalopathy'>Wernicke脳症</span>"]
    J --> L["末梢神経:脚気(乾性)"]
    J --> M["心臓:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='high-output heart failure'>高拍出性心不全</span>(脚気、湿性)"]

💡 依存性の3つの酵素はいずれも「糖から使えるエネルギーを取り出す」経路の要所に位置する。 ピルビン酸脱水素酵素とα脱水素酵素はTCA回路を回してATPを作る反応そのものであり、でNADPH・材料を供給する。3つとも止まれば、糖はあってもエネルギーとして使えない状態になる。脳はブドウ糖への依存度が最も高い臓器であるため、この経路が止まったときに真っ先に症状が出る。

薬物動態

消化管からの吸収は低用量では能動輸送、高用量ではに依存するとされ、経口摂取だけに頼ると重症の欠乏例では吸収が追いつかない。非依存で吸収されるため、B12のような特有の禁忌はないが、ではそのものが低下しており、では欠乏を是正しきれないことが多い。過剰分は水溶性ビタミンとして腎から速やかに排泄されるため、は乏しい。

適応

領域 使いどころ
神経救急 例に対する緊急の非
など長期嘔吐例で、ブドウ糖投与に先立つ予防的投与
予防的補充 の入院患者、慢性の・摂食障害、消化管手術後、長期の例などリスクが高い患者への予防投与

用法・用量

例では非経口(多くは静注)投与が原則である。EFNS指針(2010)は200 mgを1日3回(8時間ごと)静注し、臨床的改善が頭打ちになるまで継続する案を示す一方1、英国では300〜500 mgを1日3回、3〜5日間の静注という用量幅が現行の全国指針として推奨されている2または5%ブドウ糖液100 mLに希釈し、30分ほどかけて緩徐に静注する方法が一般に用いられる1。急性期を脱した後は経口へ切り替えてする。地域・施設によって具体的な用量には差があるため、実際の投与量・は自施設のプロトコル・添付文書で確認する。

⚠️ 低血糖に対するブドウ糖投与を理由に投与を後回しにしてはならない。 リスクがある患者では、できるだけ早く、ブドウ糖と同時または投与前に非経口を投与する1。ブドウ糖を先行投与すると、依存性のがわずかに残った貯蔵をさらに消費し、を顕在化・増悪させうる。

禁忌・注意

  • そのものに対する既知の重篤な過敏症以外に、な禁忌はほとんどない
  • ⚠️ 反復静注時、特にではまれにアナフィラキシー様の過敏反応が起こりうる。 希釈して緩徐に投与し、蘇生設備のある環境で経過を観察する1
  • ⚠️ ブドウ糖投与の順序を誤らない。 が疑われる患者にブドウ糖を先行投与すると、を誘発・増悪させうるため、同時または前投与を徹底する
  • 依存性酵素の働きを支える補因子であり、欠乏があると投与への反応が乏しくなるため、あわせて評価・補正する

副作用

水溶性ビタミンとしては高く、重大な副作用は乏しい。

頻度 内容
高頻度 注射部位反応
重篤・まれ 反復静注時のアナフィラキシー様過敏反応

臨床上の注意点は副作用そのものより、疑ったら検査結果を待たず速やかに非を開始すること、そしてブドウ糖投与との順序を誤らないことにある。

まとめ

  • (ビタミンB1)はTPPとしてピルビン酸脱水素酵素・α脱水素酵素・となり、からのATP産生とを支える。
  • 欠乏はエネルギー需要の高い脳・末梢神経・心臓から破綻し、・脚気(乾性=末梢神経障害、湿性=)を来す。
  • 例では検査結果を待たず非経口を緊急投与する。用量幅は指針により異なるが(EFNS:200 mg×3/日、英国:300〜500 mg×3/日×3〜5日間)、いずれも高用量の反復静注が基本。
  • ブドウ糖投与より前または同時に投与する順序が最重要で、これを誤るとを誘発・増悪させうる。
  • は高いが、反復静注時にまれにアナフィラキシー様過敏反応が起こりうるため、希釈・緩徐投与・蘇生設備のある環境での観察が推奨される。

出典

  1. 1.Wernicke Encephalopathy(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2026)チアミンピロリン酸(TPP)がクレブス回路・ペントースリン酸経路の複数酵素(ピルビン酸脱水素酵素、αケトグルタル酸脱水素酵素を含む)の補酵素であること、非経口チアミンをブドウ糖投与前または同時に行う原則、EFNS指針の200 mgを8時間ごとに静注する案とUK指針の500 mgを8時間ごとに3日間投与後250 mgを1日1回継続する案という用量例、反復静注時にまれに生じる過敏反応(アナフィラキシー)と生理食塩水または5%ブドウ糖液100 mLに希釈し30分かけて投与するという方法閲覧 2026-08-10
  2. 2.Using and prescribing thiamine in alcohol dependence(NHS Specialist Pharmacy Service(英国OHID専門家会議のアルコール関連指針を要約)・2025)英国における現行のWernicke脳症治療指針は、静注チアミン300〜500 mgを1日3回、3〜5日間投与し毎日評価するという用量幅を推奨している閲覧 2026-08-10