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Disease Atlas · 内分泌・代謝 · 疾患

脚気

Beriberi

別名
ビタミンB1欠乏症チアミン欠乏症
臓器系
内分泌・代謝神経循環器
科目
Translational Medicine and Pathophysiology
トピック
病態生理学 P-2-3:消化管疾患 症例3
鑑別疾患
ウェルニッケ・コルサコフ症候群
治療薬
チアミン
症状
末梢神経障害筋力低下感覚異常末梢浮腫呼吸困難

🧠 全体像:は「(ビタミンB1)が枯渇したとき、どの臓器のが先に音を上げるか」で臨床像が二分される病気である。末梢神経が音を上げれば乾性(対称性の感覚運動障害)、心臓が音を上げれば湿性()になる——同じ欠乏症が、障害される臓器によって正反対に見える症候群を作る点が理解の軸になる。同じが(中枢神経)を引き起こすこともあり、とは「同じ欠乏の異なる表現型」として捉える。

定義・病態

は(ビタミンB1)欠乏によって生じる疾患で、(TPP)をとする酵素(など)の機能低下により、エネルギー需要の高い組織から障害が始まる1。障害される臓器によって、末梢神経が主体の乾性と、が主体の湿性に分かれる。

病型 主体となる障害 臨床像
乾性 末梢神経(脱髄。は伴わない) 対称性の末梢神経障害、筋力低下、を主体とする運動・感覚障害2
湿性 高拍出性、、。迅速な治療がなければ数日以内に死亡しうる2

⚠️ 湿性は「浮腫があるから見た目は重症感が少ない」わけではない。 は急速に進行しうるため、湿性を疑ったら緊急対応する。

危険因子

主要な危険因子は、慢性、、バリアトリック手術後、長期の利尿薬投与、、不足である2。これらはいずれも摂取不足・・喪失増加のいずれかを介して欠乏を来す。

Wernicke脳症との関係

⭐ とは、同じが異なる臓器に現れた表現型である。 は中枢神経(・等)が主体となる急性〜亜急性の脳症であるのに対し、は末梢神経・が主体となる1。両者は併存しうるため、を疑った患者ではを示唆する・・意識変容にも注意する。

診断

診断はの統合が中心で、乾性の対称性感覚運動障害、湿性のという特徴的な臨床像から疑う。としての測定や高速液体による定量が可能だが、いずれも結果判明までに時間を要するため、画像検査や血中濃度の結果を待たずに治療を開始する2。

鑑別診断

乾性・湿性いずれも、他疾患の除外を並行して進める必要がある。

病型 鑑別すべき疾患
湿性() 甲状腺機能亢進症(など)、アルコール性・糖尿病性など他の原因による心筋症、
乾性(末梢神経障害) 症候群、葉酸欠乏症
全身状態・精神症状 せん妄、うつ病、

⚠️ の患者では、これらの鑑別疾患もも同時に起こりうるため、として一つに絞り込もうとせず、疑わしければ補充を並行して開始する2。

治療

治療は補充である。急性期には200 mgを1日3回静注する方法や、500 mgを1日2〜3回、2日間投与した後に高用量経口へ移行する方法が用いられ、予防投与としては1日100〜200 mgが推奨される2。⚠️ ブドウ糖投与に先立つ、または同時の投与が原則である点はの治療と共通する——ブドウ糖を先行させると依存性のが乏しい貯蔵をさらに消費し、症状を顕在化・増悪させうる1。

まとめ

  • はにより、末梢神経が主体の乾性(対称性の末梢神経障害・筋力低下・)と、が主体の湿性(・浮腫・)に分かれる。
  • 湿性は迅速な治療がなければ数日以内に死亡しうるである。
  • 危険因子は慢性・・バリアトリック手術後・長期利尿薬投与・・不足である。
  • とは「同じの異なる表現型」の関係にあり、併存しうる。
  • 診断はの統合が中心で、などのを待たずに治療を開始する。治療は補充(急性期は高用量静注)で、ブドウ糖投与に先立つか同時に行う。

出典

  1. 1.Wernicke Encephalopathy(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2026)チアミンピロリン酸(TPP)がクレブス回路・ペントースリン酸経路の複数酵素(ピルビン酸脱水素酵素、αケトグルタル酸脱水素酵素を含む)の補酵素であること、非経口チアミンをブドウ糖投与前または同時に行う原則、EFNS指針の200 mgを8時間ごとに静注する案とUK指針の500 mgを8時間ごとに3日間投与後250 mgを1日1回継続する案という用量例、反復静注時にまれに生じる過敏反応(アナフィラキシー)と生理食塩水または5%ブドウ糖液100 mLに希釈し30分かけて投与するという方法を確認した。閲覧 2026-08-10
  2. 2.Vitamin B1 (Thiamine) Deficiency(StatPearls (NCBI Bookshelf)(Wiley KD, Singh J)・2026)乾性脚気が対称性の末梢神経障害(運動・感覚障害を伴う脱髄で急性炎症は伴わない)であるのに対し、湿性脚気は高拍出性うっ血性心不全と末梢浮腫を来し迅速な治療がなければ数日以内に死亡しうる医学的緊急事態であること、主要な危険因子が慢性アルコール依存症・低栄養・バリアトリック手術後・長期利尿薬投与・腎代替療法・経腸栄養不足であること、診断は臨床所見の統合が中心で赤血球トランスケトラーゼ活性測定や高速液体クロマトグラフィーによるチアミン定量が確認検査になりうるが画像等の結果を待つべきではないこと、急性期治療はチアミン200 mgを1日3回静注する方法や500 mgを1日2〜3回2日間投与後に高用量経口へ移行する方法があり予防投与は1日100〜200 mgが推奨されること、鑑別診断としてせん妄・うつ病、葉酸欠乏症、甲状腺機能亢進症、アルコール性・糖尿病性など他の原因による心筋症、妄想性障害、神経絞扼症候群、糖尿病性ケトアシドーシスが挙げられていることを確認した(2026年1月31日改訂版)。閲覧 2026-09-07