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Disease Atlas · 内分泌・代謝 · 先天性疾患

ビオチニダーゼ欠損症

Biotinidase deficiency

別名
遅発型マルチプルカルボキシラーゼ欠損症
臓器系
内分泌・代謝神経小児
科目
PediatricsMedical Genetics and Immunology (Genetics)
トピック
小児科 2-10:先天代謝異常を疑う状況と初期評価遺伝学 4.6:常染色体劣性遺伝(AR I)
上位概念
先天代謝異常症
鑑別疾患
多発性硬化症
関連疾患
複合カルボキシラーゼ欠損症
治療薬
ビオチン
症状
発達退行発作筋緊張低下視神経萎縮難聴小脳性運動失調
検査値
アシルカルニチン分析乳酸アンモニア
適応薬
ビオチン

🧠 全体像:は「を作れない病気ではなく、を再利用できない病気」である。に結合したを切り出して回収する酵素が欠けるため、体内のが枯れて4つのが同時に働かなくなる。臨床上の要点は2つ——⭐ 経口という安価な薬で発症を完全に防げること、⚠️ いったん生じた感音難聴はを開始しても不変にとどまり、も発症から治療開始までが長いほど戻りにくいこと。だから「発症してから治す病気」ではなく「発症前に見つける病気」である。

病態

は・・・という4つののである。はタンパクに結合したを遊離させる酵素で、これを欠くとの再利用が止まり、4酵素の活性が同時に低下する(MCD)の病像になる1。

先天性代謝異常症はもう1つ、にを結合させる(HCS)欠損症がある。従来は「新生児=HCS欠損症、乳幼児=」と対応づけられてきたが、HCS欠損症にも乳幼児発症例があり、⚠️ 臨床病型と原因酵素は必ずしも一致しない1。である2。

酵素活性で2型に分ける2。

型 血清活性(平均正常値比) 特徴
10%未満 未治療ならほぼ全例が発症しうる
10〜30% 感染など負荷がかかったときにのみ症状が出うる

💡 p.Asp444Hisの読み方。 アレルとのでは活性が約20〜25%()になるが、p.Asp444Hisのホモ接合は約45〜50%で治療を要しない2。

臨床像(未治療の場合)

未治療のの症状は生後1週から10歳の間に現れ、平均発症年齢は3.5か月である2。

  • 神経:最も多いのはけいれん(通常は。・・の報告もある)と。年長児ではと発達遅滞が加わり、の形で気づかれる。年長児・思春期例では進行性のとが現れうる2。
  • 感覚器:未治療で症候性のの約76%に感音難聴があり、⚠️ を開始しても改善も消失もせず不変にとどまる。・もみられる2。
  • 皮膚・呼吸・哺乳:、脱毛、細胞性免疫の障害によるウイルス・真菌感染の反復、・・、哺乳の問題。⭐ これらは治療で通常消失する2。

⚠️ 思春期・成人発症型はとされる。 未治療のまま思春期・成人期に至った例が、突然のを伴う・末梢神経障害・で発症し、初診時にまたはと診断されることが多い。⭐ GeneReviewsは、治療可能であることを理由に、これらと診断された人は全員の検査を受けるべきだと勧告している2。数か月の治療で眼所見が改善・消失し、も改善しうる2。

検査所見

  • 、軽度の2
  • 。MCDに特徴的な・・・・乳酸の排泄増加を示し、とくにとの同時上昇が重要である1
  • ⚠️ のみのこともあり、症候性であってもが正常でありうる2

新生児マススクリーニング——日本と欧米で入口が違う

⚠️ 同じ疾患を拾うのに使っている検査が違う。

欧米 日本
一次検査 の活性(・)2 「」としてのC5-OH()。は1.0 μmol/Lとされるが施設により若干異なる1
位置づけ 各国のスクリーニング計画に組み込まれている として1

日本での頻度には大きな開きがある。HCS欠損症は100万人に1人であるのに対し、は欧米では6万人に1人とされる一方、⚠️ わが国で確認されたのはこれまで数例のみで、日本のMCDではHCS欠損症の診断が優先される1。世界的なスクリーニング成績では13万7401人に1人・10万9921人に1人・合計6万1067人に1人、保因者は約120人に1人である2。

C5-OHが上がる疾患は他にもあるため、鑑別が要る——、児の母が同症の罹患者である場合、欠損症、(の欠乏を含む)、、1。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='newborn mass screening'>新生児マススクリーニング</span>で異常<br>(欧米:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='biotinidase'>ビオチニダーゼ</span>活性低値/日本:C5-OH高値)"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='confirmatory test'>確認検査</span>と並行して<span class='jp-term jp-term-diagram' title='biotin'>ビオチン</span>投与をただちに開始"]
    B --> C["血清・血漿の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='biotinidase'>ビオチニダーゼ</span>活性を測定"]
    C --> D{"活性は平均正常値の何%か"}
    D -->|"10%未満"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='profound deficiency'>高度欠損</span>"]
    D -->|"10〜30%"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='partial deficiency'>部分欠損</span>"]
    D -->|"結果が曖昧"| G["BTDの<span class='jp-term jp-term-diagram' title='genetic analysis'>遺伝子解析</span>"]
    E --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='free biotin'>遊離型ビオチン</span>5〜10 mg/日を生涯継続"]
    F --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='free biotin'>遊離型ビオチン</span>2.5〜10 mg/日を生涯継続"]

⚠️ 偽陽性がある。 早産児、および十分に乾燥する前にへ入れた検体でスクリーニングの偽陽性が起こりうる。それでも異常の報告を受けた時点で、を待たずにを開始する2。日本ではMCDのうちHCS欠損症かかの確定にまたはを要し、活性測定はごく限られた施設でしか行われていない1。

治療と経過観察

治療は型ではない遊離型のをし、生涯続ける。で5〜10 mg/日、で2.5〜10 mg/日である2。日本のガイドラインはMCDに対して10 mg/日からの投与を示し、重症型の多い日本のHCS欠損症では100 mg/日に及ぶ超大量を要する場合があるとしている1。

とアシドーシスには輸液とで対応するが、⭐ 投与により代謝異常そのものは数時間から数日で急速に是正される2。難聴には補聴器を、高度ならを検討する2。

⚠️ 生卵を避ける。 卵白のがと結合して利用性を下げるためで、十分に加熱した卵は加熱によりが失活するので問題ない2。

項目
遺伝・代謝専門医の診察 年1回 2年に1回
眼科・ 年1回 2年に1回

治療中に症状がしたら、低下の評価としてを考慮する2。同胞に患者がいる新生児は、確定検査の結果を待たずに出生時からを開始する2。

予後

けいれんと生化学的異常は開始後すみやかに改善し、皮膚所見の改善が続き、脱毛のある小児では数週から数か月でが戻る。⚠️ と難聴は、発症から治療開始までの期間が長いほど治療抵抗性になる。 生涯にわたる補充を続ける限り、正常な寿命が期待される2。

まとめ

  • の再利用が止まり4つのが同時に働かなくなるので、の一方の原因(他方はHCS欠損症)である。
  • 血清活性10%未満が、10〜30%が。p.Asp444Hisのホモ接合は約45〜50%で治療を要しない。
  • 未治療なら平均3.5か月でけいれん・・皮疹・脱毛を発症し、⚠️ 感音難聴(約76%)は治療しても不変にとどまり、は発症から治療開始までが長いほど治療抵抗性になる。思春期以降の発症例はとされやすい。
  • 日本ではとしてC5-OHで拾うだが、確認例は数例にとどまり、MCDではHCS欠損症の診断が優先される。
  • 治療はの(5〜10 mg/日)を生涯継続。スクリーニング異常の報告を受けた時点で、確定を待たずに開始する。

出典

  1. 1.新生児マススクリーニング対象疾患等診療ガイドライン2019 17 複合カルボキシラーゼ欠損症(日本先天代謝異常学会・2019)PDFを自分で取得し第17章(164〜167ページ)を確認した。先天性ビオチン代謝異常症がホロカルボキシラーゼ合成酵素(HCS)欠損症とビオチニダーゼ欠損症の2種類に大別され、いずれもプロピオニルCoAカルボキシラーゼ・メチルクロトニルCoAカルボキシラーゼ・ピルビン酸カルボキシラーゼ・アセチルCoAカルボキシラーゼの活性が同時に低下する複合カルボキシラーゼ欠損症(マルチプルカルボキシラーゼ欠損症、MCD)を呈すること、ビオチニダーゼがビオチンの結合したタンパクからビオチンを遊離させる酵素でありビオチニダーゼ欠損症はビオチンの再利用の障害であること、従来はMCDを新生児早発型と乳幼児遅発型に分けおもに前者がHCS欠損症・後者がビオチニダーゼ欠損症にあたるとされたがHCS欠損症にも乳幼児発症例があり臨床病型分類と原因分類は必ずしも一致しないこと、いずれも常染色体劣性遺伝形式をとり薬理量のビオチン(10〜100 mg/日)の経口投与により臨床的・生化学的に軽快すること、いずれも新生児マススクリーニングの一次対象疾患であること、わが国でのHCS欠損症の発症頻度が100万人に1人であるのに対しビオチニダーゼ欠損症は欧米では6万人に1人であるがわが国でこれまで確認されたのは数例のみでありわが国のMCDではHCS欠損症の診断が優先されること、わが国のHCS欠損症には高頻度変異c.710T>C(p.L237P)とc.780delG(p.G261Vfs*20)があり症例の80%がいずれかをもつこと、臨床病型が発症前型(マススクリーニングで発見される無症状例)・急性発症型(呼吸障害・多呼吸・けいれん・意識障害などで急性に発症し代謝性アシドーシス・ケトーシス・高アンモニア血症・低血糖・高乳酸血症を呈する)・慢性進行型(食思不振・反復性の嘔吐・難治性の湿疹)に分けられること、マススクリーニングの指標が3-ヒドロキシイソバレリルカルニチン(C5-OH)でカットオフ値は1.0 μmol/Lとされるが施設により若干異なること、C5-OHと同時にプロピオニルカルニチン(C3)が上昇していればMCDが強く疑われる一方でC5-OHの上昇のみを呈するMCDもありC5-OHはメチルクロトニルグリシン尿症やβケトチオラーゼ欠損症でも上昇するため鑑別が必要であること、C5-OH高値の鑑別に3-メチルクロトニルCoAカルボキシラーゼ欠損症・対象児の母が同症の罹患者である場合・HMG-CoAリアーゼ欠損症・ビオチン欠乏症(早産低出生体重児の潜在性ビオチン欠乏を含む)・3-メチルグルタコン酸血症・βケトチオラーゼ欠損症が挙がること、尿中有機酸分析で3-ヒドロキシプロピオン酸・メチルクエン酸・3-ヒドロキシイソ吉草酸・3-メチルクロトニルグリシン・乳酸の排泄増加というMCDに特徴的なパターンを示し、とくに3-メチルクロトニルグリシンとメチルクエン酸の排泄増加が同時に認められることが重要であること、確定診断が疑診に加えて尿中有機酸分析の所見と栄養性ビオチン欠乏症の否定によること、MCDのうちHCS欠損症かビオチニダーゼ欠損症かの確定には遺伝子解析または酵素活性測定を要し、ビオチニダーゼ活性測定はごく限られた施設で実施されていること、確定診断後の治療がビオチン10 mg/日からの投与であり、日本のHCS欠損症には重症型が多くコントロールのため100 mg/日に及ぶ超大量を要する場合があることを確認した閲覧 2026-09-03
  2. 2.Biotinidase Deficiency(GeneReviews (University of Washington, Seattle)・2026)Europe PMC経由でNBK1322の全文XMLを自分で取得して確認した(2023年5月25日包括改訂、2026年2月19日改訂)。新生児マススクリーニングなどで発症前に診断されビオチンで治療された者は正常発達をたどり、症状はビオチン治療前の者にのみ生じること、高度(profound)欠損が血清ビオチニダーゼ活性の平均正常値の10%未満、部分(partial)欠損が10〜30%と定義されること、未治療の高度欠損の症状が生後1週から10歳までに現れ平均発症年齢が3.5か月(Wolfら1985)であること、最も多い神経学的所見がけいれん(通常はミオクロニー発作だが全般発作・焦点発作もあり点頭てんかんの報告もある)と筋緊張低下で、年長児では運動失調と発達遅滞がしばしばみられること、未治療の年長児・思春期例に進行性の痙性不全麻痺・四肢の脱力・脊髄症が現れうること、未治療で症候性の高度欠損の約76%に感音難聴があり通常はビオチン治療で改善も消失もせず不変であること(Wolfら2002)、視神経萎縮と暗点を含む眼所見があること、皮膚所見(皮疹・脱毛・細胞性免疫の障害によるウイルス/真菌感染の反復)と呼吸器症状(過換気・喉頭性喘鳴・中枢性無呼吸)と哺乳の問題はビオチン治療で通常消失すること、思春期・成人期まで無症状だった未治療例が突然の視力低下を伴う進行性視神経症・末梢神経障害・痙性対麻痺を発症し多発性硬化症と初診時に診断されることが多く数か月のビオチン治療で眼所見が改善または消失し痙性対麻痺も改善しうること、部分欠損では感染など負荷がかかったときにのみ症状が出うること、支持的検査所見が代謝性ケト乳酸アシドーシス・有機酸尿(3-ヒドロキシイソ吉草酸のみのこともある)・軽度の高アンモニア血症であり症候性でも尿中有機酸が正常でありうること、脳画像は多くが正常だが大脳萎縮と脳室拡大が報告されており治療で改善・消失しうること、新生児マススクリーニングが濾紙血のビオチニダーゼ活性に対する蛍光法または比色法に基づき、早産児や十分に乾燥する前にプラスチックへ入れた検体で偽陽性が起こりうること、スクリーニング異常の報告を受けた時点で確認検査と並行してただちにビオチン投与を開始すべきこと、確定診断が血清・血漿のビオチニダーゼ活性の低下、または酵素学的結果が曖昧なときのBTD両アレル病的バリアントの同定によること、p.Asp444Hisと高度欠損アレルの複合ヘテロ接合では活性が平均正常値の約20〜25%になり、p.Asp444Hisのホモ接合では約45〜50%でビオチン治療を要しないこと、世界的なスクリーニング成績(Wolf 1991)に基づく発生頻度が高度欠損13万7401人に1人・部分欠損10万9921人に1人・合計6万1067人に1人であり保因者頻度が約120人に1人であること、トルコやサウジアラビアなど近親婚率の高い集団で頻度が高いこと、治療がタンパク結合型ではない遊離型ビオチンの経口投与であり生涯続けること、用量が高度欠損で5〜10 mg/日・部分欠損で2.5〜10 mg/日であること、代謝失調とアシドーシスには輸液と重炭酸を用いるがビオチン治療により代謝異常は数時間から数日で急速に是正されること、難聴には補聴器を、高度なら人工内耳を検討すること、経過観察が高度欠損では年1回・部分欠損では2年に1回の遺伝・代謝専門医の診察と同じ間隔での眼科・聴力評価であり、治療中に症状が再燃したらアドヒアランス低下の評価として尿中有機酸分析を考慮すること、生卵に含まれるアビジンがビオチンと結合して利用性を下げるため生卵を避けるべきだが十分に加熱した卵は加熱によりアビジンが失活するため問題ないこと、同胞に患者がいる新生児は確定検査の結果を待たずに出生時からビオチン投与を行うこと、けいれんと生化学的異常はビオチン治療後速やかに改善し皮膚所見の改善が続き脱毛のある小児では数週から数か月で発毛が戻ること、視神経萎縮と難聴は発症から治療開始までの期間が長いほど治療抵抗性であること、生涯にわたるビオチン補充を続ける限り正常な寿命が期待されること、常染色体潜性遺伝であること、部分欠損がかつて遅発型(若年型)マルチプルカルボキシラーゼ欠損症と呼ばれたこと、早発型(乳児型)と呼ばれたホロカルボキシラーゼ合成酵素欠損症と混同してはならないことを確認した閲覧 2026-09-03