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Disease Atlas · 全身 · 中毒

アセトアミノフェン(パラセタモール)中毒

Acetaminophen (paracetamol) poisoning

別名
APAP中毒パラセタモール過量
臓器系
全身
科目
Internal Medicine
トピック
内科学 S-61:薬物中毒
続発疾患
急性肝不全
関連疾患
自殺と自傷行為
治療薬
アセチルシステイン
原因薬剤
パラセタモール
症状
悪心黄疸倦怠感出血傾向発汗嘔吐
検査値
クレアチニン血糖重炭酸乳酸乳酸アシドーシス

🧠 全体像は、初期に無症状でも遅れて致死的な肝障害を起こし得る。評価の軸は「量」だけではなく、摂取開始時刻、24時間未満の急性摂取か24時間を超える反復過量か、製剤、併用薬、血中濃度、肝障害である。急性摂取では適切な時刻の濃度をRumack–Matthewで判定し、適応があれば(acetylcysteine:NAC)を検査待ちで遅らせない。NACは固定時間で終了せず、、INR、全身状態が終了基準を満たすまで続ける。

病態

治療量のの大部分はされる。一部はCYP酵素により(N-acetyl-p-benzoquinone imine:NAPQI)となるが、通常はで無毒化される。

過量では通常の抱合経路が飽和し、NAPQIが増え、が枯渇して質へ結合する。を主体とするからへ進み、重症例では腎障害、、低血糖、脳症、を来す。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acetaminophen'>アセトアミノフェン</span>過量"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='glucuronic acid'>グルクロン酸</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sulfation'>硫酸抱合</span>が飽和"]
    B --> C["NAPQI産生が相対的に増加"]
    C --> D["肝<span class='jp-term jp-term-diagram' title='glutathione'>グルタチオン</span>が枯渇"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pericentral (perivenular)'>中心静脈周囲</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hepatocellular necrosis'>肝細胞壊死</span>"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='coagulopathy'>凝固障害</span>・低血糖・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lactic acidosis'>乳酸アシドーシス</span>"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acute liver failure, ALF'>急性肝不全</span>・脳症・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='multiple organ failure (MOF)'>多臓器不全</span>"]
    H["NACを適時に開始"] --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='glutathione'>グルタチオン</span>補充と毒性軽減"]
    I --> J["肝障害を予防・軽減"]

長期の、絶食・、重い基礎肝疾患、は病歴上重要だが、急性摂取のへ独自の低い治療線を付け加える根拠にはしない。判断が複雑な場合はまたは臨床中毒談する。

臨床像

経過は摂取量、治療開始時刻、吸収遅延、基礎疾患で変わり、典型的な段階を全例がたどるわけではない。

おおよその時期 主な所見
0〜24時間 無症状、悪心、嘔吐、発汗、感。極端な高濃度では早期の意識変容・
24〜72時間 症状が一時軽く見えてもAST・ALTが上昇し、右上腹部痛、、INR延長が現れる
72〜96時間 重症例で黄疸、、低血糖、、腎障害、肝性脳症、
4日以後 回復例では肝機能が徐々に改善する。進行例では移植評価を要する

⚠️ 初期の外見や症状だけで安全と判断しない。摂取では、合剤に含まれる製剤、オピオイド・など吸収を遅らせる併用薬、アルコール・他の肝毒性薬を確認する。身体的安定化後も意図、自殺リスク、、継続支援を評価する。

診断

初期評価

  • 気道・呼吸・循環、意識、血糖、体温を評価し、混合中毒では心電図も確認する。
  • 製品名、1錠量、摂取開始・終了時刻、総量、製剤、併用薬、意図、体重を確認する。不整合があれば時刻不明として扱う。
  • 血中濃度、AST・ALT、INR、電解質、、血糖、クレアチニンを測る。重症疑いでは血液ガス、乳酸、リン、意識状態を反復評価する。
  • 妊娠可能性、長期飲酒、、基礎肝疾患を確認するが、必要なNACを遅らせない。

摂取パターンによる判定

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acetaminophen'>アセトアミノフェン</span>過量を疑う"] --> B{"摂取時刻と期間は信頼できるか"}
    B -->|"いいえ"| C["濃度・AST・ALTを測定<br>中毒<span class='jp-term jp-term-diagram' title='expert'>専門家</span>へ相談"]
    B -->|"はい"| D{"摂取期間は24時間未満か"}
    D -->|"はい"| E["摂取開始4時間以後に濃度測定"]
    E --> F{"4〜24時間値が治療線以上か"}
    F -->|"はい"| G["NACを開始"]
    F -->|"いいえ"| H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sustained-release (extended-release)'>徐放</span>製剤・吸収遅延なら再検を検討"]
    D -->|"いいえ"| I["反復過量として濃度とAST・ALTで判定"]
    I --> J{"濃度が20 μg/mL超<br>またはAST・ALT異常か"}
    J -->|"はい"| G
    J -->|"いいえ"| K["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='clinical setting'>臨床状況</span>と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='expert'>専門家</span>助言で経過観察"]
    C --> L{"濃度が10 μg/mL超<br>またはAST・ALT異常か"}
    L -->|"はい"| G
    L -->|"いいえ"| K

Rumack–Matthewは、信頼できる摂取開始時刻があり、24時間未満に起きた急性経口摂取の4〜24時間値に用いる。4時間未満の値を治療判定に使わない。治療線は4時間値150 μg/mLから始まり、線上またはそれ以上ならNACを開始する。

製剤、オピオイド・併用などで吸収遅延が疑われ、4〜12時間値が治療線未満でも10 μg/mLを超える場合は、通常4〜6時間後に再測定する。24時間を超える反復過量にを使わず、濃度が20 μg/mLを超えるかAST・ALTが異常ならNACを開始する。

強くが疑われ、結果を待つと摂取8時間後を超えて治療開始が遅れる場合は、採血後にNACを経験的に開始する。2023年の米国・カナダ合意声明は、この目安を200 mg/kg超または10 g超としているが、申告量だけで治療終了や安全を決めない。

治療

初期処置と消化管除染

まず支持療法を行う。気道が保護され禁忌がなければ、肝の急性摂取で単回を検討する。高リスク量、製剤、吸収遅延では4時間を過ぎても有用な場合があるため、自己判断で一律投与せず中毒と相談する。

アセチルシステイン

は経口またはで投与でき、適応が判明した時点で速やかに開始する。地域・製剤ごとの承認されたレジメンに従い、初回20〜24時間に合計300 mg/kg以上を投与する。米国・カナダ合意では体重100 kg超もNAC用量計算は100 kgを上限とし、体重41 kg未満や水分制限例では輸液量を調整する。では発赤、喘鳴、低血圧などの過敏反応とを監視する。軽い反応だけで永久に治療を断念せず、重症度に応じて中断・治療・再開をと判断する。

⚠️ 「21時間投与した」という時刻だけでNACを終了しない。ACMT 2026声明では、次をすべて満たすことを終了の基準とする。

終了前に確認する項目 基準
濃度 検出不能、実務上は10 μg/mL未満
AST・ALT 、または上昇時はピークから25〜50%低下
INR 2.0未満
予後指標 クレアチニン、乳酸、pH、リンなどが改善

いずれかが満たされなければNACを延長し、濃度・・凝固・腎機能・酸塩基・意識を再評価する。NACは遅れて来院した肝障害・でも利益があり、血中薬物が消失したことだけを理由に開始または継続を断念しない。

高リスク中毒と肝不全

30 g以上またはの高リスク線以上では、吸収遅延と早期を警戒し、4時間を過ぎたや標準量を超えるNACの必要性を臨床中毒と直ちに検討する。申告量または血中濃度だけを根拠にを行わない。

EXTRIPおよび2023年合意声明では、NAC投与中でも血中濃度900 μg/mL以上に、毒性による意識変容、代謝性アシドーシス、乳酸上昇を伴う場合にを推奨する。を優先し、透析中もNACを少なくとも12.5 mg/kg/時で継続する。透析は持続的な臨床改善が得られるまで行い、中毒と個別化する。

AST・ALTとINRの進行性悪化、持続する、低血糖、腎障害、脳症、では、としてを行い、移植施設へ談する。

まとめ

  • 初期に無症状でも、摂取時刻・期間・製剤・併用薬を確認し、適切な時刻の濃度と肝機能を評価する。
  • は信頼できる時刻の24時間未満の急性経口摂取に使い、反復過量や時刻不明例には機械的に使わない。
  • NACは検査待ちで8時間を超えて遅らせず、遅発肝障害でも開始・継続する。
  • NACは固定時間で中止せず、、AST・ALT、INR、全身の予後指標がすべて改善してから終了する。
  • 重症酸塩基異常、意識障害、腎障害、では、中毒・移植施設へ早期に連携する。