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Disease Atlas · 運動器 · 疾患

痛風

Gout

臓器系
運動器内分泌・代謝
科目
Internal MedicinePharmacologyPathology
トピック
内科学 R-06:痛風内科学 S-17:痛風薬理学 A13:痛風治療薬・頭痛治療薬病理学 C-94:変性性・炎症性関節疾患
鑑別疾患
化膿性関節炎(敗血症性関節炎)化膿性屈筋腱鞘炎化膿性肩峰下滑液包炎関節リウマチ偽痛風丹毒・蜂窩織炎変形性関節症変形性足関節症
続発疾患
尿路結石症
治療薬
アロプリノールフェブキソスタットプロベネシドコルヒチンインドメタシンナプロキセンカナキヌマブペグロチカーゼ
原因薬剤
フロセミドヒドロクロロチアジドインダパミドアセチルサリチル酸シクロスポリンAピラジナミド
症状
急性痛風腫脹痛風結節発熱
検査値
尿酸尿酸結晶
画像所見
二重輪郭徴候
元疾患
糖原病
原因となる疾患
Lesch-Nyhan症候群鉛中毒慢性腎臓病
適応薬
カナキヌマブフェニルブタゾンプロベネシドペグロチカーゼ
禁忌薬
ピラジナミド

🧠 全体像:痛風は、を背景にした(monosodium urate:MSU)結晶が自然免疫を活性化するである。「発作中は消炎に徹する→間欠期にの適応を判断する→開始したら血清尿酸6 mg/dL未満を目標に低用量から漸増し、で発作を予防しながら結晶を溶かす」という時間軸の切り替えが診療の幹となる。より低い目標をどう扱うかはガイドラインで割れており、は重症痛風(・慢性・頻回発作)に限って結晶が溶け切るまでの暫定目標として5 mg/dL未満を置く1のに対し、ACR 2020は重症例についても6 mg/dL未満より先の閾値を定めていない2。

定義と病態

痛風は、なを背景にが関節・軟部組織へし、自然免疫を活性化して発作性の関節炎を来す疾患である。があっても必ず発症するわけではなく、逆に急性発作中のが正常域のこともあり、尿酸値だけで痛風を否定・確定してはならない。

大半のは、プリン体産生過剰よりも腎・腸管からの低下が主体である。原発性(原因不明の家族性素因、まれに欠損によるのような)と二次性(既知の原因による)に分けて捉えると整理しやすい。

機序 代表的な原因
排泄低下(最多) ()、脱水、乳酸・ケトン体増加、・、低用量アスピリン、、
産生増加 、・白血病、溶血、乾癬、高プリン食
混合 、肥満・
flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='uric acid excretion'>尿酸排泄</span>低下(多くはこちら)または産生増加"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hyperuricemia'>高尿酸血症</span>"]
    B --> C["関節・軟部組織への<span class='jp-term jp-term-diagram' title='monosodium urate crystal'>MSU結晶</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='precipitation'>析出</span>"]
    C --> D["自然免疫細胞がNLRP3 inflammasomeを活性化"]
    D --> E["IL-1βを介した<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neutrophilic inflammation'>好中球性炎症</span>"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acute gout attack'>急性痛風発作</span>"]
    C --> G["結晶負荷が持続"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Tophi'>痛風結節</span>・骨びらん・慢性関節炎・腎障害"]
病態要素 学習上の意味
針状で下に強いを示す(結晶軸と平行光で黄色)
NLRP3 inflammasome 結晶を貪食したマクロファージがIL-1βを放出し、好中球を急速に呼び込む
発作中は正常・低値にもなり得るため、発作が落ち着いてから再測定して評価する
炎症細胞に囲まれたのな。耳介、、、などに好発

臨床像

臨床経過は4病期に分けて理解する。

病期 特徴
無症候性 があっても症状はない
4〜12時間で最大となる激痛・発赤・熱感・腫脹。(podagra)が典型だが、・膝など単関節性のことが多い
発作間は無症状でも結晶は関節内に残存する
慢性結節性痛風 多関節化、、(punched-out erosion)との張り出し(overhanging edge)、・機能障害

誘因には(特にビール)・(赤身肉・魚介などプリン豊富な食品)、脱水、手術、外傷、急激な尿酸変動(開始直後を含む)がある。

(OA)・関節リウマチ(RA)とはいずれも関節炎を来すため鑑別に挙がるが、機序・分布・が大きく異なる。

特徴 (OA) 関節リウマチ(RA) 痛風
機序 の・変性 自己免疫性の 沈着
好発関節 DIP・PIP、膝、股関節 MCP・PIP、手関節(DIPは免れる) 第1MTP(podagra)など単・
分布 非対称性 対称性 単・、非対称
こわばり 朝30分未満 朝1時間超 発作性の急激な激痛
検査 は正常 RF・抗CCP陽性、/上昇 血清尿酸上昇(発作中は正常のこともある)
特徴的結節 (DIP)、(PIP) リウマチ結節

⚠️ 痛風とは併存し得る。発熱、初回発作、免疫不全、人工関節などの状況では、を確認できてもの・培養を省略しない。

診断

確定診断は穿刺によるの同定である。他の原因でよりよく説明できないかを常に考えながら進める。

flowchart TD
    A["急性の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='monoarthritis or oligoarthritis'>単・少関節炎</span>"] --> B{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='arthrocentesis'>関節穿刺</span>は可能か"}
    B -->|"可能"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='polarization microscope'>偏光顕微鏡</span>で結晶確認+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Gram stain'>Gram染色</span>・培養"]
    C --> D{"針状・強い<span class='jp-term jp-term-diagram' title='negative birefringence'>負の複屈折</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='monosodium urate crystal'>MSU結晶</span>"}
    D -->|"あり"| E["痛風と診断"]
    D -->|"なし"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='crystal-induced arthritis'>結晶誘発性関節炎</span>以外・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='septic arthritis'>化膿性関節炎</span>などを再検討"]
    B -->|"不能・非典型"| G["超音波の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='double-contour sign'>二重輪郭徴候</span><br>または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dual-energy CT'>デュアルエナジーCT</span>を補助に"]
    G --> E
    E --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='septic (infectious) arthritis'>感染性関節炎</span>の併存を必ず除外"]
検査・画像 所見・注意点
針状・強いを示す。診断確定に最も有用
発作中は正常・低値になり得るため、落ち着いてから再測定して評価する
超音波 、を検出できる
(dual-energy ) を非侵襲的に可視化。結晶同定が困難な例に有用
単純X線 ・の張り出しは慢性期の所見であり、には不向き

治療

急性発作の消炎と、間欠期以降のによる結晶溶解は目的も薬剤選択も異なるため、明確に切り分けて考える。

急性発作の治療

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acute gout attack'>急性痛風発作</span>を疑う"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='septic (infectious) arthritis'>感染性関節炎</span>を除外"]
    B --> C["発症早期に治療開始"]
    C --> D{"腎機能・消化管・心血管の禁忌は"}
    D -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nonsteroidal anti-inflammatory drug'>NSAID</span>可"| E["NSAIDs"]
    D -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nonsteroidal anti-inflammatory drug'>NSAID</span>不可"| F["低用量<span class='jp-term jp-term-diagram' title='colchicine'>コルヒチン</span>またはグルココルチコイド"]
    E --> G["安静・冷却を併用"]
    F --> G
    G --> H["既に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='urate-lowering therapy'>ULT</span>内服中なら原則中断しない"]
選択肢 注意点
腎障害、消化管出血、心不全、抗凝固薬併用では慎重に選択する
低用量 腎・肝機能と/P-gp阻害薬との相互作用を確認する。2009年以降は少量短期投与が標準で、下痢が出るまで頻回投与を続ける旧来の高は行わない。静注は重篤な毒性のため用いない
グルココルチコイド 経口・筋注・関節内のいずれか。を十分に除外してから用いる

尿酸降下療法(ULT)

適応 判断の目安
強い適応 、画像上の痛風性関節障害、年2回以上の発作
初回発作でも検討 3以上、血清尿酸9 mg/dL超、の既往

目標尿酸値をどこに置くか

到達目標として6 mg/dL未満を置く点はACRとで一致するが、それより低い目標の扱いは割れている。 「があれば5 mg/dL未満」という覚え方はの推奨に由来するものであって、ACR 2020の推奨ではない。

ガイドライン 目標 位置づけ
ACR 2020 血清尿酸6 mg/dL未満を達成・維持 全使用者への強い推奨(エビデンスの確実性は高)。加えて、用量固定ではなく血清尿酸を追って漸増する目標達成型戦略そのものも強い推奨である2
ACR 2020 6 mg/dL未満より低い閾値 定めていない。 「従来のACRおよびのガイドラインと異なり、本ガイドラインは例など重症度の高い患者層について、6 mg/dL未満より先の閾値を定めない」と明記する。根拠づけは「より低い尿酸値がの消退を早め発作を減らすという十分な証拠があり、負担の大きい痛風の患者ではより低い閾値のほうが望ましい可能性を示唆する。しかし、6 mg/dL未満を目標とした戦略がで検証されているのに対し、そうした患者でより低い特定の閾値を支持する試験データが無い」というもので、過去の推奨を否定・論駁する意図ではないとも書き添えている2
2016(2017年誌上公開) 重症痛風では5 mg/dL未満 対象は・慢性・頻回発作を含む重症痛風で、だけではない。しかも結晶が完全に溶けて痛風が消退するまでの暫定目標であり、溶解後はを減量して6 mg/dL未満の維持へ戻す。同じ推奨6が長期に3 mg/dL未満まで下げることは推奨しないと明記する(推奨6の格付けはcategory of evidence 3・grade C)1

💡 5 mg/dL未満が「重症痛風で、溶け切るまで」に限られるのは、結晶の溶解速度がに依存するためである。結晶負荷の大きい重症痛風ほど深く下げて早く溶かす意味があり、溶解が完了したあとはを減量して6 mg/dL未満を維持すれば新たな尿酸塩結晶の形成を防げる、というのがの組み立てである。3 mg/dL未満まで長期に下げることを推奨しない理由としては、尿酸がに対して保護的に働く可能性を示した研究があること(ただし一致した知見ではない)と、尿酸値を大きく下げうるが利用可能になったことを挙げている1。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='urate-lowering therapy'>ULT</span>の適応を確認"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='allopurinol'>アロプリノール</span>を低用量から開始(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chronic kidney disease'>CKD</span>例も含め第一選択)"]
    B --> C["血清尿酸を測定しながら漸増"]
    C --> D{"6 mg/dL未満を維持?"}
    D -->|"いいえ"| C
    D -->|"はい"| E["同用量を維持"]
    B --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='colchicine'>コルヒチン</span>または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nonsteroidal anti-inflammatory drug'>NSAID</span>などで<span class='jp-term jp-term-diagram' title='prophylaxis against attacks'>発作予防</span>を併用"]
    F --> G["少なくとも3〜6か月は<span class='jp-term jp-term-diagram' title='prophylaxis against attacks'>発作予防</span>を継続"]
    A --> H{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='allopurinol'>アロプリノール</span>不耐・効果不十分"}
    H --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='febuxostat'>フェブキソスタット</span>などへ変更"]
段階・薬剤 実践上の要点
(第一選択) を含め第一選択。低用量(100 mg/日以下、3〜4では50 mg/日以下)から開始し、血清尿酸を追いながら目標まで漸増するが推奨される2。東南アジア系(漢民族・韓国系・タイ系など)・アフリカ系米国人では-B*58:01の保有率が高く(それぞれ7.4%・3.8%。白人・ヒスパニック系は各0.7%)、ACR 2020はこれらの集団での開始前スクリーニングを条件付きで推奨する。日本人はこれとは別の尺度であるで欧州系と同じ区分に置かれ約1〜2%と、他のアジア集団(漢民族 約10〜15%、韓国系 約12%、タイ系 約6〜8%)より低い3。陽性例ではのリスクを踏まえ使用を避ける
不耐・効果不十分な場合の代替。CARES試験を受けたのは現在も維持されるが、その後のFAST試験では心血管リスク因子を有するでに対しで、長期使用による死亡・の増加は認めなかった4。心血管疾患の既往があれば個別にリスクを評価する
。の既往や高度腎機能低下では適さない
他ので制御できない重症・難治例の選択肢。に用いるとは別の薬剤で、通常の風治療薬ではない点に注意する
の併用 開始・増量時は・・低用量グルココルチコイドのいずれかを併用し、通常3〜6か月以上継続する

は「発作が完全に治るまで待つ」必要はなく、によるを併用すれば発作中に開始してもよい。すでにを内服中の患者では、発作が起きても原則として中断しない。長期的には体重、飲酒、飲料、高プリン食、血圧・脂質・腎機能といった併存因子の管理も並行する。

まとめ

  • 痛風はが誘発するで、大半のは低下による。
  • 発作中のは正常・低値のこともあり、否定に使えない。確定診断はの同定で、同時に感染の併存を除外する。
  • 急性発作は・低用量・グルココルチコイドのいずれかで治療し、静注は用いない。
  • は・頻回発作・画像所見のある例で強く適応となり、を低用量から漸増して血清尿酸6 mg/dL未満を目指す。ACR 2020はこれより低い閾値を定めていない。5 mg/dL未満はが重症痛風(・慢性・頻回発作)に、結晶が溶け切るまでの暫定目標として置くもので、長期に3 mg/dL未満まで下げることは推奨されない。
  • は薬を併用すれば発作中に開始してよく、は心血管リスクを踏まえて選択する。

出典

  1. 1.2016 updated EULAR evidence-based recommendations for the management of gout(EULAR・2017)誌上版の全文PDF(Ann Rheum Dis 76巻1号29-42頁。出版社サイトは403のためWayback経由で取得)で確認した。推奨6の逐語は「A lower SUA target (<5 mg/dL; 300 µmol/L) to facilitate faster dissolution of crystals is recommended for patients with severe gout (tophi, chronic arthropathy, frequent attacks) until total crystal dissolution and resolution of gout」で、5 mg/dL未満の対象は痛風結節だけでなく慢性関節症・頻回発作を含む重症痛風であり、結晶が溶け切るまでの暫定目標である。同じ推奨は長期に3 mg/dL未満まで下げることは推奨しないと明記する。推奨6の格付け(表題「Evidence, grade of recommendation and level of agreement for each recommendation」のTable 2に載る。Table 1は格付け列を持たない推奨本文の表)はcategory of evidence 3・grade of recommendation Cである閲覧 2026-09-17
  2. 2.2020 American College of Rheumatology Guideline for the Management of Gout(American College of Rheumatology・2020)アロプリノールは低用量(100 mg/日以下、CKDステージ3〜4では50 mg/日以下)から開始し血清尿酸を指標に漸増するtreat-to-target戦略を強く推奨閲覧 2026-08-02
  3. 3.Allopurinol Therapy and HLA-B*58:01 Genotype(NCBI Medical Genetics Summaries(CPIC/ACRガイドラインに基づく)・2020)HLA-B*58:01スクリーニングはACR 2020で東南アジア系(漢民族・韓国系・タイ系など)・アフリカ系米国人に条件付きで推奨。⚠️ 本文献には尺度の異なる2組の数値がある。ACRガイドラインの節が引く保有率(prevalence)は漢民族・韓国系・タイ系7.4%、アフリカ系米国人3.8%、白人・ヒスパニック系各0.7%。別に本文が示すアレル頻度(allele frequency)は漢民族 約10〜15%、韓国系 約12%、タイ系 約6〜8%で、日本人は欧州系と同じ区分に置かれ約1〜2%である(日本人の保有率そのものは本文献に示されていない)閲覧 2026-09-17
  4. 4.Long-term cardiovascular safety of febuxostat compared with allopurinol in patients with gout (FAST)(The Lancet(FAST investigators)・2020)心血管リスク因子を有する高齢患者でフェブキソスタットはアロプリノールに対し主要心血管イベントで非劣性、長期使用で死亡・重大有害事象の増加なし閲覧 2026-08-02