内科学

内科学 · R-06

痛風

Gout

前提:病態
自己免疫性関節疾患:関節リウマチと強直性脊椎炎痛風治療薬・頭痛治療薬
前提:正常
自然(先天)免疫の原理
薬剤
プロベネシド
疾患
化膿性関節炎(敗血症性関節炎)痛風
症状
急性痛風
検査値
尿酸尿酸結晶
画像所見
二重輪郭徴候

🧠 全体像:痛風は、を背景にした(monosodium urate:MSU)結晶が自然免疫を活性化するである。急性発作を消炎し、長期的には血清尿酸6 mg/dL未満を目標に結晶を溶かす。は重症痛風(・慢性・頻回発作)では、結晶が完全に溶けるまでの暫定目標として5 mg/dL未満を推奨する一方、長期に3 mg/dL未満まで下げることは推奨していない。1

尿酸が蓄積する機序

大半は産生過剰より腎・腸管からの排泄低下が主体である。があっても必ず発症するわけではなく、発作中の血清尿酸が正常でも痛風を否定できない。

機序 代表的原因
排泄低下 、脱水、乳酸・ケトン体増加、・、、、
産生増加 腫瘍崩壊、、溶血、乾癬、高プリン食
混合 、肥満・
flowchart TD
  A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='uric acid excretion'>尿酸排泄</span>低下または産生増加"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hyperuricemia'>高尿酸血症</span>"]
  B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='monosodium urate crystal'>MSU結晶</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='precipitation'>析出</span>"]
  C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='NLRP3 inflammasome'>NLRP3インフラマソーム</span>活性化"]
  D --> E["IL-1βと<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neutrophilic inflammation'>好中球性炎症</span>"]
  E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acute gout attack'>急性痛風発作</span>"]
  C --> G["結晶負荷の持続"]
  G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Tophi'>痛風結節</span>・骨びらん・腎結石"]

臨床経過

段階 特徴
無症候性 前後でも症状がない
急性発作 4〜12時間で最大となる激痛、発赤、熱感、腫脹;第一MTPのが典型
間欠期 発作間は無症状でも結晶は残る
慢性結節性痛風 多関節化、、との張り出し(overhanging edge)、機能障害

誘因には飲酒・、脱水、手術、外傷、急な尿酸変動がある。は耳介、、指、、などに生じる。

診断

で針状・強いを示すを確認するのが確実である。結晶確認が困難な場合は臨床像と画像を統合する。2

⚠️ 痛風とは併存し得る。発熱、初回発作、免疫不全、人工関節などでは、結晶を認めても・培養を省略しない。

  • 発作中の血清尿酸は正常・低値になり得るため、落ち着いてから再測定する。
  • 超音波のや、二重エネルギー(dual-energy )のは診断を補助する。
  • 単純X線の典型的骨びらんは所見である。

急性発作の治療

発症早期に、併存症と禁忌に応じて次のいずれかを選ぶ。

選択肢 注意点
腎障害、消化管出血、心不全、抗凝固中では慎重
低用量 腎・肝機能と/P-gp相互作用を確認;静注は重篤毒性のため用いない
グルココルチコイド 経口、筋注または関節内;を除外して用いる

ACR 2020はこの3者を同格の第一選択として強く推奨しており、3剤間に優先順位を付けていない。は低用量が高用量より強い推奨である。3

すでに適切な(urate-lowering therapy:)を内服中なら、も原則中断しない。

長期管理

の開始時期には地域差がある。日本痛風・尿酸核酸学会のガイドライン(第3版2022年追補版)は、無症候性について合併病態がなければ尿酸9.0 mg/dL以上から、合併病態があれば8.0 mg/dL以上からを考慮し、6.0 mg/dL以下を目指す——ACRが無症候性への薬物開始を条件付きで推奨しない立場(下表)を取るのと対照的である。の定義も日本は「7.0 mg/dLを超える」、米国は「6.8 mg/dL以上」で、痛風患者の目標値も日本が「6.0 mg/dL以下」、米国が「6.0 mg/dL未満」と不等号が違う。4 は確定診断がついた全例と初診時から利益と害を話し合う立場で、反復発作・・尿酸塩・腎結石は適応、40歳未満の若年発症、尿酸8.0 mg/dL超、腎障害・高血圧・・心不全の併存では診断時に近い時期の開始を推奨する。1

ACRは適応を推奨の強さごとに段階化しており、この段階を潰さないことが重要である。3

ACR 2020の状況 推奨
皮下が1つ以上/痛風による画像上の損傷/年2回以上の頻回発作 開始を強く推奨
2回目以降の発作だが頻度は年2回未満 開始を条件付きで推奨
初回発作(下の例外を除く) を開始しないことを条件付きで推奨
初回発作でも3以上、尿酸9 mg/dL超、のいずれかがある 開始を条件付きで推奨
無症候性(発作も皮下結節もない) 薬物によるを開始しないことを条件付きで推奨
flowchart TD
  A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='urate-lowering therapy'>ULT</span>適応を確認"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='allopurinol'>アロプリノール</span>を低用量で開始"]
  B --> C["血清尿酸を測定し漸増"]
  C --> D{"6 mg/dL未満を維持?"}
  D -->|"いいえ"| C
  D -->|"はい"| E["同用量を継続"]
  B --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='colchicine'>コルヒチン</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nonsteroidal anti-inflammatory drug'>NSAID</span>等で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='prophylaxis against attacks'>発作予防</span>"]
  F --> G["少なくとも3〜6か月継続"]
  • は主要ガイドラインの第一選択で、低用量から開始して目標まで漸増する。ACRは3以上を含めてを第一選択とし、開始量を100 mg/日以下(ではさらに低用量)とすることを強く推奨する。地域指針も確認する。13
  • ⚠️ -B*58:01陽性例はによる()のハイリスクである。 ACR 2020は東南アジア系(例として漢民族・韓国系・タイ系)とアフリカ系米国人への開始前検査を条件付きで推奨し、それ以外の集団への一律検査は条件付きで推奨しない(いずれも確実性は very low)。本文が引く保有率は前2群で7.4%・3.8%、白人・ヒスパニック系は各0.7%である。3 ⚠️ これとは尺度の違うでは漢民族 約10〜15%、韓国系 約12%、タイ系 約6〜8%で、欧州系と日本人はともに約1〜2%とひとまとめに書かれている——2組の数値は分母が違うので並べて読まない。5
  • 不耐・不十分ならなどを検討し、心血管病歴も考慮する。
  • はや高度腎機能低下では適さない。
  • は他ので制御できない重症例の選択肢で、ACRは第一選択としての使用に強く反対している。は主にの薬で、風の標準ではない。3
  • は抗炎症予防を併用すれば発作中に開始してもよい。⚠️ ただしACR 2020ではこれは条件付き推奨であり、原文は「すべての条件付き推奨と同様に、発作が治まるまで開始を遅らせるという代替を妥当に支持する患者要因や希望がありうる」と明記している。「発作が治るまで待つ」を誤りとして切り捨てない。3

まとめ

  • 痛風はによる炎症で、発作中の尿酸正常値では否定できない。
  • 結晶を確認し、同時に感染を除外する。
  • を低用量から漸増し、尿酸6 mg/dL未満と3〜6か月以上のを目指す。

出典

  1. 1.2016 updated EULAR evidence-based recommendations for the management of gout(EULAR・2017)誌上版の全文PDF(Ann Rheum Dis 76巻1号29-42頁。出版社サイトは403のためWayback経由で取得)で確認した。推奨5は確定診断のついた全患者と初診時からULTを話し合うこととし、反復発作・痛風結節・尿酸塩関節症・腎結石では適応、40歳未満の若年発症・尿酸8.0 mg/dL超・腎障害/高血圧/虚血性心疾患/心不全の併存では診断時に近い時期の開始を推奨する。推奨6の逐語は「A lower SUA target (<5 mg/dL; 300 µmol/L) to facilitate faster dissolution of crystals is recommended for patients with severe gout (tophi, chronic arthropathy, frequent attacks) until total crystal dissolution and resolution of gout」で、5 mg/dL未満の対象は痛風結節だけでなく慢性関節症・頻回発作を含む重症痛風であり、結晶が溶け切るまでの暫定目標である。同じ推奨は長期に3 mg/dL未満まで下げることは推奨しないと明記する。推奨4の発作予防はコルヒチン0.5〜1 mg/日をULT開始後6か月間である閲覧 2026-09-17
  2. 2.2018 updated European League Against Rheumatism evidence-based recommendations for the diagnosis of gout(EULAR・2020)誌上版の全文PDF(Ann Rheum Dis 79巻1号31-38頁。出版社サイトは403のためWayback経由で取得)で確認した。8つの推奨の第1は痛風を疑うすべての人で関節液または痛風結節穿刺液の結晶検索を推奨し、MSU結晶の証明が確定診断になるとする。結晶同定ができない非典型例では画像、とくに超音波(二重輪郭徴候と痛風結節)または二重エネルギーCTでMSU沈着を探すことを推奨する。高尿酸血症のみを根拠に痛風と診断してはならないことも明記している閲覧 2026-09-17
  3. 3.2020 American College of Rheumatology Guideline for the Management of Gout(American College of Rheumatology・2020)全文(PMC10563586)で確認した。表1のULT適応は段階に分かれており、皮下痛風結節1つ以上(強い推奨・確実性 high)、痛風による画像上の損傷(強い推奨・moderate)、年2回以上の頻回発作(強い推奨・high)、2回目以降だが年2回未満の発作(条件付き推奨・moderate)、初回発作では原則としてULTを開始しないことを条件付きで推奨(moderate)、ただし初回発作でもCKDステージ3以上・尿酸9 mg/dL超・尿路結石のいずれかがあれば条件付きで開始を推奨(very low)、無症候性高尿酸血症(表1の逐語は「SU >6.8 mg/dl with no prior gout flares or subcutaneous tophi」)では薬物ULTを開始しないことを条件付きで推奨(high)である。アロプリノールはCKDステージ3以上を含む第一選択で、開始量の逐語は「≤100 mg/day [and lower in patients with CKD] for allopurinol or ≤40 mg/day for febuxostat」。目標は尿酸6 mg/dL未満、ULT開始時の抗炎症予防は少なくとも3〜6か月併用が強い推奨。HLA-B*58:01の開始前検査は東南アジア系(例として漢民族・韓国系・タイ系)とアフリカ系米国人に条件付きで推奨し、それ以外の集団への一律検査は条件付きで非推奨(いずれも確実性 very low)、本文が引く保有率は前2群が7.4%・3.8%、白人・ヒスパニック系は各0.7%である。⚠️ 本ガイドラインはArthritis Care & Research 72巻6号744-760頁とArthritis & Rheumatology 72巻6号879-895頁への同時掲載で、Crossrefでは著者34名・参考文献118件・公開日が一致する同一文書である(本コーパスはacr.24180側のDOIに寄せている)閲覧 2026-09-17
  4. 4.高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版[2022年追補版](日本痛風・尿酸核酸学会 ガイドライン改訂委員会(Mindsガイドラインライブラリ収載)・2022)Mindsガイドラインライブラリの追補版PDF(HTTP 200・7,578,577バイト)をpdftotextにかけて逐語確認した。米国ガイドラインとの差を本追補版自身が整理しており、逐語は「無症候性高尿酸血症の基準尿酸値が米国ガイドラインでは『6.8 mg/dL 以上』となり,本ガイドラインの『7.0 mg/dL を超える』とは異なっている」「また本ガイドラインでは,合併病態がなければ『9.0 mg/dL 以上』から,あれば『8.0 mg/dL 以上』から尿酸降下薬を考慮し,『6.0 mg/dL 以下』を目指すが,米国ガイドラインでは無症候性高尿酸血症に対して尿酸降下薬の使用を推奨していない」「痛風関節炎や痛風結節を伴う患者を含め,尿酸の目標値は米国ガイドラインでは 6.0 mg/dL 未満であり,本ガイドライン(6.0 mg/dL 以下)とおおよそ一致している」である。⚠️ 目標値は日米で不等号が違う(日本は6.0 mg/dL以下、米国は6.0 mg/dL未満)。⚠️ 比較表は2段組で、pdftotextの出力では列の対応が崩れる行があるため、本ノートには散文で書かれている上記の3文だけを使った閲覧 2026-09-17
  5. 5.Allopurinol Therapy and HLA-B*58:01 Genotype(NCBI Medical Genetics Summaries(CPIC/ACRガイドラインに基づく)・2020)本文(Last Update 2020年12月9日)で確認した。⚠️ 本文献には尺度の異なる2組の数値がある。ACRガイドラインの節が引く保有率(prevalence)は漢民族・韓国系・タイ系7.4%、アフリカ系米国人3.8%、白人・ヒスパニック系各0.7%。別に本文が示すアレル頻度(allele frequency)は漢民族 約10〜15%、韓国系 約12%、タイ系 約6〜8%で、逐語は「The risk allele is less common among Europeans and Japanese with a frequency of only ~1–2%」=欧州系と日本人を同じ区分に置いており、日本人の保有率そのものは示されていない閲覧 2026-09-17