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Disease Atlas · 運動器 · 疾患

槌指

Mallet finger

別名
Doigt en maillet
臓器系
運動器
科目
Traumatology and Orthopedics
トピック
外傷学 21:手の軟部組織・腱損傷と手感染症

🧠 全体像:は「だけを連続伸展位に保てるか」で治療のほぼすべてが決まる病態である。伸展の力を作る終止腱がする腱性と、その腱の付着部ごと骨がはがれる骨性の2型があり、骨性ではさらに骨片の大きさと関節適合性が保存か手術かを分ける。⚠️ DIPが治療中に一度でも屈曲すると、治癒過程は振り出しに戻る。 が「軽い処置」に見えて実は最も厳格な管理を要する理由はここにある。

何が起きているか

はにおけるの損傷である1。を伸展させる終止腱(terminal extensor tendon)が、のところで腱実質そのものがする(腱性)か、付着部の骨ごとはがれる(骨性・)かのいずれかで機能を失う。結果としてを自力で伸展できなくなり、DIPが自然に屈曲したままになる古典的な変形を呈する1。

典型的なは、伸展位のに突然強いが加わること——ボールが指先に当たる、ベッドメイキング中に指を引っかけるなど——である。

⭐ 若年〜中年男性と高齢女性に多く発生し、の小指・・が最も障害されやすい1。

骨性槌指の分類——Doyle分類

骨片の有無と大きさはに直結するため、骨性はさらに細分される1。

型 内容
Type I 閉鎖損傷(小さな背側の有無を問わない)
Type II 裂傷による
Type III 皮膚・腱の欠損を伴う損傷
Type IV-A 小児の経骨折
Type IV-B 関節面の20〜50%を占める骨片
Type IV-C 関節面の50%を超える骨片

💡 骨片の大きさだけでなく「関節がずれているか」も見る。 骨片が大きくても関節面がそろっていれば保存でよいことがあり、逆に骨片が小さくてもがあれば手術を要する。骨片サイズと関節適合性は別の軸として評価する。

診察と画像

診察では、患側DIPを的に伸展させたうえで自力で保持できるかを確認する。腱性では骨傷を伴わないことが多いが、骨性かどうか、またDoyle分類上の骨片の大きさやの有無を判定するには単純X線側面像の評価が欠かせない。だけで腱性・骨性を見分けることはできないため、DIP伸展不能を見たら画像評価を省略しない。

保存療法——装具の期間が治療そのもの

⭐ 保存療法の適応は、関節面の1/3未満でが無い骨片、腱性、そして療法を守れる患者である1。

項目 内容
固定 を(0〜10度の)に保つ
期間 連続(終日)6〜8週間、その後夜間のみ2〜6週間
隣接関節 現行のガイドラインではの固定は不要1
の種類 Stack/Stax型、熱のカスタム、アルミニウム・フォームなど。原則はでのDIP固定である点で共通する

⚠️ DIPが一度でも屈曲すると、6〜8週間の固定期間は最初からやり直しになる1。入浴・皮膚の観察のときも指を伸展位に保ったままだけを外す指導が要る。下の皮膚・にも注意する。

手術適応

⚠️ 手術適応は「骨片が大きいから」だけで決めない。

手術を検討する所見 出典
の 1
骨片が関節面の30〜40%を超える 1
関節間隙が2mm以上 1
でも完全伸展が得られない 1

術式には経皮ピン固定(K鋼線)、、での直接腱縫合、高度なに対する固定がある1。

⚠️ 「手術のほうが良い」と決めつけない。 44件の臨床研究を対象とした系統的レビューでは、手術治療後の平均DIP伸展ラグが5.7度、後が7.6度と近く、合併症も手術14.5%・非手術12.8%で同程度だった。両治療を直接比較した研究どうしでも結果と推奨が一致せず、手術介入をいつ選ぶべきかを決めるだけのエビデンスは不十分とされている2。骨片の大きさや関節間隙は手術を検討する目安であって、な閾値として一人歩きさせない。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='distal interphalangeal joint, DIP joint'>DIP関節</span>の伸展不能<br>受傷後の評価"] --> B{"骨片の有無をX線で確認"}
    B -->|"骨片なし(腱性)"| C["DIP<span class='jp-term jp-term-diagram' title='full extension'>完全伸展位</span>で<br>連続6〜8週固定"]
    B -->|"骨片あり(骨性)"| D{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='palmar (side)'>掌側</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='subluxation'>亜脱臼</span>・<br>関節面30〜40%超・<br>間隙2mm以上か"}
    D -->|"いいえ"| C
    D -->|"はい"| E["手術を検討<br>経皮ピン固定・ORIF"]
    C --> F{"固定期間中にDIPが<br>屈曲した"}
    F -->|"はい"| G["固定期間を最初から再開"]
    F -->|"いいえ"| H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='night splint'>夜間装具</span>へ移行<br>2〜6週間"]

合併症

⭐ 最も頻度が高いのは伸展ラグである。 平均5〜20度(多くは約10度)の残存伸展ラグが起こるが、機能障害は少ない1。

  • swan neck変形:PIPとDIP屈曲を特徴とする、伸筋機構全体の不均衡から生じる変形1
    • 💡 なぜ遠位の問題が近位に波及するか。 終止腱の伸展力が失われると、を介した伸展力がPIPへ相対的に強くかかるようになり、時間をかけてPIP側のを誘発する。DIPの問題を放置すると、隣の関節が代償して変形するという構図であり、早期の固定はこの連鎖を断つ意味も持つ
  • :による可動域制限
  • 不正癒合・偽関節:持続的な変形・機能障害につながる
  • :長期的な疼痛・の狭小化・変形

鑑別

出典は、指骨骨折(急性・不正癒合)、Seymour骨折(を巻き込む小児の遠位指骨骨折)、swan neck変形、損傷、より近位のを鑑別に挙げている1。⚠️ からの出血やの変形を伴う小児例では、Seymour骨折を見落とさない——開放骨折として抗菌薬と洗浄を要し、単なるとしてだけで済ませると感染やを残す。

まとめ

  • はでのの損傷。腱実質の(腱性)と付着部骨ごとの(骨性)の2型がある。
  • 骨性はDoyle分類IV-A〜Cで骨片サイズを表すが、サイズだけでなくの有無を必ず併せて見る。
  • 保存療法はDIPでの連続6〜8週固定+夜間2〜6週。PIP固定は不要。屈曲が起きれば固定期間はやり直し。
  • 手術適応は、関節面30〜40%超の骨片、間隙2mm以上、完全伸展が得られない場合。⚠️ ただし系統的レビューでは手術と保存療法の転帰・は同程度で、閾値を絶対視しない。
  • 合併症は伸展ラグが最多。swan neck変形、、不正癒合、も起こりうる。
  • 小児のを巻き込む損傷はSeymour骨折を疑い、単純なとして扱わない。

出典

  1. 1.Mallet Finger Injuries(StatPearls Publishing (NCBI Bookshelf)・2025)槌指がDIP関節での伸筋腱の裂離損傷であり、腱断裂または遠位指骨背側基部の骨折によって指尖を伸展できない古典的な屈曲変形を生じること、Doyle分類でType Iが小さな背側剥離骨折の有無を問わない閉鎖損傷・Type IIが裂傷による開放損傷・Type IIIが皮膚腱喪失を伴う擦過損傷・Type IVが槌指骨折でIV-Aが経骨端線骨折・IV-Bが関節面の20〜50%を占める骨片・IV-Cが50%を超える骨片であること、若年〜中年男性と高齢女性に多く利き手の小指・環指・中指が最も障害されること、保存療法の適応が関節面の1/3未満でDIP関節脱臼のない骨片・腱性槌指・装具療法に従える患者であること、手術適応がDIP関節の掌側脱臼・関節面の30〜40%を超える骨片・2mm以上の関節間隙・完全伸展が得られない場合であること、DIP関節を完全伸展位(0〜10度の過伸展)で6〜8週間連続固定しその後2〜6週間夜間装具を継続すること、最新のガイドラインではPIP関節の固定は不要とされていること、DIP屈曲が一度でも起こると全治療期間を再開する必要があること、手術技法として経皮ピン固定・観血的整復内固定・開放損傷での直接腱縫合・高度な変形性関節症でのDIP関節固定があること、合併症として5〜20度(平均約10度)の伸展ラグが最も頻度が高く機能障害は少ないこと、PIP過伸展とDIP屈曲を特徴とするswan neck変形、関節強直、不正癒合・非癒合、外傷性関節症が起こりうること、鑑別診断に変形性関節症・指骨骨折・Seymour骨折・swan neck変形・中手指節関節損傷・近位伸筋腱損傷が挙がることを確認した閲覧 2026-09-07
  2. 2.Surgical and Nonsurgical Management of Mallet Finger: A Systematic Review(The Journal of Hand Surgery (American Volume)(Lin JS, Samora JB)・2018)抄録を取得して確認した(全文は未取得)。槌指損傷の管理には複数の手術的・非手術的手技が記載されているが手術適応についてコンセンサスが無いこと、44件の臨床研究(手術治療22件・非手術治療17件)を対象とした系統的レビューであること、手術治療後の平均DIP関節伸展ラグが5.7度、非手術治療後が7.6度であったこと、手術と非手術治療の合併症発生率が同程度(それぞれ14.5%と12.8%)であったこと、両治療を直接比較した5件の研究は結果と推奨が一致しなかったこと、手術・非手術いずれも良好な臨床転帰を得るが手術介入の適応を決めるだけのエビデンスは不十分で治療は患者ごとに個別化すべきと結論していることを確認した閲覧 2026-09-07