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Disease Atlas · 運動器 · 外傷

椎体骨折

Vertebral compression fracture

別名
椎体圧迫骨折
臓器系
運動器
科目
Traumatology and OrthopedicsInternal MedicinePathology
トピック
外傷学 11:椎体骨折の固定と脊椎・脊髄損傷のリハビリテーション内科学 L-35:骨粗鬆症病理学 C/91:後天性骨疾患(骨粗鬆症・くる病・骨軟化症)
鑑別疾患
多発性骨髄腫
治療薬
テリパラチド
原因薬剤
プレドニゾロン
症状
背部痛後弯骨変形
スコア
Genant半定量分類

🧠 全体像:は「が椎体の構造的強度を上回る」という1つの力学的破綻が、骨粗鬆症性(低エネルギー・最多)・(高エネルギー・若年)・病的(などの腫瘍性)という3系統の原因から生じる。臨床の分かれ目は、①レッドフラグ(・多発病変・体重減少)で腫瘍性を疑うか、②画像分類(OFスコア・AO Spine重症度スコア)で保存療法と手術のどちらに倒すか、の2点である。一度生じると次の骨折リスクが跳ね上がるため、骨粗鬆症の治療そのものがになる。

疫学

米国で年間約100〜150万件が発生し、50歳以上女性の推定25%が少なくとも1回経験、80歳を超えると40〜50%に既往または偶発的所見として見つかる。好発部位は移行部(T12〜L2)で全体の60〜75%を占め、残りの約30%はL2〜L5に生じる1。

⭐ は年齢層でまったく違う。 高齢者では30%がベッド上で、つまり寝返りのようなだけで生じるのに対し、若年者では50%が自動車事故・25%が転倒というによる12。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='axial load'>軸圧</span>が椎体の構造強度を超える"] --> B{"骨強度は正常か"}
    B -->|"低下している(骨粗鬆症・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='osteomalacia'>骨軟化症</span>)"| C["低エネルギーの<span class='jp-term jp-term-diagram' title='routine physical activity'>日常動作</span>でも骨折<br>(寝返り・くしゃみ等)"]
    B -->|"正常だが局所が腫瘍で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='detrusor weakness'>脆弱化</span>"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='multiple myeloma, MM'>多発性骨髄腫</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Metastatic Tumors'>転移性腫瘍</span>による<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pathologic fracture'>病的骨折</span>"]
    B -->|"正常"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='high-energy trauma'>高エネルギー外傷</span>でのみ骨折<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='road traffic injury'>交通外傷</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='flying-falling'>転落</span>)"]
    C --> F["前柱の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='wedge deformity'>楔状変形</span><br>(安定型が多い)"]
    D --> F
    E --> G["後壁・中柱を巻き込むburst骨折<br>(不安定型になりうる)"]

分類

脊柱を前柱(・椎体前方)・中柱(椎体後方・)・後柱(・・)に分ける古典的モデルでは、前柱だけの破綻を安定型の、中柱を含むものをburst骨折(不安定型)として区別してきた。現行のAO Spine分類・(OF)分類はこの境界を修正し、後壁の一部破綻を伴うも一つの連続体として扱う1。

分類系 主な用途 骨折型・スコア への反映
OF分類・OFスコア(DGOU/AO Spine) 低エネルギー・ OF1(変形なし-のみ)〜OF5(前後柱の高度不安定) OFスコア5点以下は保存療法、6点は個別判断、6点超は手術
AO Spine損傷重症度スコア 骨折形態0〜8点+状態0〜4点+臨床 合計3点以下は保存療法、4〜5点は個別判断、6点以上は手術
Genant半定量分類 StatPearlsでは主になどの腫瘍性骨折の文脈で紹介されているが、の評価にも広く使われる grade 1(20〜25%減)・grade 2(25〜40%減)・grade 3(40%超減) 重症度の記載・経過観察の基準
SINS(腫瘍スコア) 腫瘍性(等)による骨折 0〜6点安定、7〜12点手術相談、13〜18点不安定 手術適応の判断

⚠️ 一般的な「」という言葉には、これら複数の分類系が重なっている。 どの分類を使うかは、外傷の種類(高エネルギーか低エネルギーか)と原因(骨粗鬆症性か腫瘍性か)で変わる。GenantとTLICS/AO Spineスコアを混同しない——前者は変形の重症度、後者はを決める安定性の指標である1。

臨床像とレッドフラグ

急性のが中心症状だが、多くは無症候か軽度の不快感にとどまり、気づかれないまま経過することも多い。未治療のまま進行すると、変形・慢性疼痛・に至る1。

⚠️ でも腫瘍性病変を必ず考える。 、複数の位にわたる痛み、原因不明の体重減少、癌の既往といったレッドフラグがあれば、などのを含めて精査する1。

💡 小児・青年期のは「骨粗鬆症性」という枠に収まらないことがある。 慢性炎症性骨疾患(など)、白血病、長期のグルココルチコイド治療も椎体をさせ、成人のと同じ力学的破綻(が構造強度を超える)を若年で起こしうる。

診断

初期画像は脊柱の立位前後・側面単純X線である。⚠️ 臥位での撮影はがかからず、変形の程度を過小評価するため、外傷急性期の後は立位での再評価が推奨される1。は骨折形態の評価に、は急性/の鑑別と良悪性の鑑別に有用である。

所見 示唆する病態
高信号 急性期(浮腫を反映)
に接する帯状の低信号域、「fluid sign」 良性(骨粗鬆症性)骨折
・後方要素の骨髄信号異常、/傍脊椎への 悪性(病的)骨折を強く示唆

X線が陰性でも臨床的に疑わしければ・を追加する(推奨グレードC)2。が疑われる場合は、・モノクローナル蛋白・・クレアチニンを測定する1。

治療

保存療法が第一選択である(推奨グレードB)。・に加え、胸(TLSO、・骨折)または(骨折)を4〜12週間装着し、疼痛消失と画像上の治癒を確認して終了する。骨折後2週間からリハビリテーションを開始する2。・カルシトニン・などの抗骨粗鬆症薬は疼痛改善にも寄与する(推奨グレードB)2。

⚠️ 保存療法は無害ではない。 長期の固定・安静は、とくに高齢・肥満患者で可動性低下・肺合併症・皮膚トラブルを助長しうる1。

4〜10週間の保存療法がしない場合、・などのを検討する(推奨グレードB)2。はより椎体高の部分的回復・矯正に優れ、漏出率が低い1。ではAO Spine損傷重症度スコアに従い、合計6点以上・を伴う不安定例で手術を推奨する1。

合併症

  • 保存療法:慢性、進行性変形、、可動性低下、偽関節
  • セメント補強術:漏出(多くは無症候)。まれに神経損傷や、肺・脳への塞栓という重篤な合併症
  • 器械的固定術:、緩み、神経損傷
  • ⭐ 1つのは、次の骨折リスクを大きく高める。 骨粗鬆症治療を並行することで隣接椎体の二次骨折率が低下する2。

まとめ

  • はが椎体の構造強度を超えて生じ、骨粗鬆症性(低エネルギー・最多)・(高エネルギー・若年で二峰性)・病的(等)の3系統に分かれる。好発部位は移行部(T12〜L2)で60〜75%を占める。
  • 分類系は目的で使い分ける。OF分類/スコアとAO Spine重症度スコアは(保存 vs 手術)を、Genant分類は変形の重症度を、SINSは腫瘍性骨折の安定性を評価する。
  • レッドフラグ(・多発部位・体重減少・癌の既往)があればなどの腫瘍性病変を疑う。の高信号・fluid signは良性を、の信号異常・は悪性を示唆する。
  • 治療は保存療法(鎮痛・4〜12週・抗骨粗鬆症薬)が第一選択。4〜10週間でしなければ・を検討する。
  • 小児・若年のは骨粗鬆症性とは限らず、慢性炎症性骨疾患・白血病・長期ステロイド治療でも同じ力学的破綻が生じうる。一度生じると次の骨折リスクが跳ね上がるため、骨粗鬆症治療の併行がになる。

出典

  1. 1.Vertebral Compression Fractures(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2025)NCBI本体が接続不可のためEurope PMCのbookXMLスナップショット(2025年5月4日改訂と記載)で全文を確認した。米国で年間約100〜150万件が発生し50歳以上女性の推定25%が少なくとも1回経験し80歳超では40〜50%に既往または偶発的所見として認められること、胸腰椎移行部(T12〜L2)が60〜75%、L2〜L5が約30%を占めること、女性1000人あたり年10.7件・男性1000人あたり年5.7件の発生率であること、30%がベッド上で(日常動作で)生じること、若年者では50%が自動車事故・25%が転倒という高エネルギー外傷で二峰性の受傷機転を示すこと、脊柱を前方・中央・後方の3柱に分ける古典的モデルでは前柱の破綻のみを椎体骨折(安定型)、中柱を含むものをburst骨折(不安定型)と区別してきたが、AO Spine胸腰椎損傷分類のtype A3・A4は後壁破綻を伴う圧迫骨折を含み、骨粗鬆症性骨折(OF)分類もOF3〜5で後壁病変を含むこと、OF分類がOF1(変形なし・MRI-STIRでのみ浮腫)からOF5(前後柱の高度不安定性)まであり、OFスコア(OF分類×2点+骨粗鬆症の重症度・変形進行・疼痛VAS・神経学的欠損・可動性・全身状態の各項目を加減点)が5点以下で保存療法、6点で個別判断、6点超で手術を示唆すること、Genant半定量分類が椎体高の減少率でgrade 1(20〜25%・軽度)・grade 2(25〜40%・中等度)・grade 3(40%超・重度)に分けること、SINS(脊椎不安定性腫瘍スコア)が0〜6点で安定・7〜12点で手術相談を要する可能性・13〜18点で不安定と判定すること、高エネルギー外傷ではAO Spine胸腰椎損傷重症度スコア(骨折形態0〜8点+神経学的状態0〜4点+臨床修飾因子)の合計が3点以下で保存療法、4〜5点で個別判断、6点以上で手術を推奨すること、レッドフラグ症状(夜間痛、多発する骨病変部位、原因不明の体重減少、癌の既往)は多発性骨髄腫などの腫瘍性病変を疑わせること、画像はまず立位の前後・側面単純X線(臥位撮影は軸圧が働かず変形を過小評価しうる)で開始しCTが骨折形態の評価に有用でMRIは急性・慢性の鑑別(STIR高信号)と良悪性の鑑別(良性は終板に接する帯状の低信号域と『fluid sign』、悪性は椎弓根・後方要素の骨髄信号異常と硬膜外・傍脊椎への軟部腫瘤)に有用であること、保存療法(鎮痛・理学療法・胸腰仙椎装具または腰仙椎装具を4〜12週間)が骨粗鬆症性椎体骨折の主体であること、セメント補強術(椎体形成術・バルーン後弯形成術)は疼痛管理に有効な低侵襲手技で後弯形成術は椎体形成術より椎体高の部分的回復・後弯矯正に優れ骨セメント漏出率が低いこと、セメント漏出は多くが無症候だが神経損傷・肺塞栓や脳塞栓に至る骨セメントの血管内塞栓はまれながら重篤な合併症であること、非手術管理でも慢性腰背部痛・進行性後弯変形・呼吸機能低下・可動性低下をきたしうること、多発性骨髄腫による病的骨折の評価にはβ2ミクログロブリン・モノクローナル蛋白・遊離軽鎖・クレアチニンの測定が骨折の重症度と関連することを確認した。閲覧 2026-09-05
  2. 2.Vertebral Compression Fractures(American Academy of Family Physicians / American Family Physician・2026)全文を確認した。椎体骨折が骨粗鬆症の最も一般的な合併症であり寝返り・くしゃみなどの日常動作でも生じうること、脊柱の前後2方向単純X線を初期画像とし放射線学的に陰性でも臨床的に疑わしい場合はMRI・CTを追加すべきこと(推奨グレードC)、保存療法(鎮痛薬・理学療法、ビスホスホネート・カルシトニン・テリパラチドなどの抗骨粗鬆症薬による疼痛改善、推奨グレードB)が第一選択であり骨折後2週間からリハビリテーションを開始すべきこと、4〜10週間の保存療法が奏効しない場合に椎体形成術・後弯形成術などの低侵襲手術を検討すること(推奨グレードB)、骨粗鬆症治療により隣接椎体の二次骨折率が低下することを確認した。閲覧 2026-09-05