内科学

内科学 · L-35

骨粗鬆症

Osteoporosis

前提:病態
後天性骨疾患(骨粗鬆症・くる病・骨軟化症)骨ミネラル恒常性に作用する薬
前提:正常
カルシウム代謝と骨の生理学
疾患
顎骨壊死骨粗鬆症椎体骨折非定型大腿骨骨折
症状
転倒
スコア
Genant半定量分類

🧠 全体像:骨粗鬆症は骨強度低下によりを来す疾患で、骨折するまで無症状のことが多い。のT-scoreだけでなく既存骨折、、転倒、二次性原因を評価し、骨折リスクに応じてまたはを選ぶ。

原因と危険因子

分類 主な原因・危険因子
原発性 閉経後のエストロゲン低下、加齢
薬剤性 長期グルココルチコイド、aromatase阻害薬、、一部の、過量甲状腺ホルモン
内分泌・代謝 、甲状腺機能亢進、原発性、Cushing症候群、糖尿病
消化管・栄養 吸収不良、セリアック病、、摂食障害、Ca・ビタミンD不足
その他 、慢性炎症性疾患、、固定、喫煙、過量飲酒、転倒

は身長低下、、急性/慢性として現れ、・・も代表的な部位である。

診断とリスク評価

  • でと股関節を測定する。閉経後女性・50歳以上男性ではT-score ≤−2.5を骨粗鬆症、−1.0〜−2.5をとする。は「(または脊椎)のBMDが若年成人女性平均より2.5 SD以上低い」であり、T-scoreのはIOF・ESCEO・ISCD・・NOFが揃って20〜29歳女性のデータベースを用いる——男性にも同じ女性を当てる1。
  • 💡 は「軽い骨粗鬆症」という病名ではない。 欧州ガイダンスは、これを疾患カテゴリーとみなすべきでなく疫学的記述のための区分にすぎないと明記している1。この帯域の患者を治療するかどうかは、T-scoreではなくので決める。
  • 閉経後女性は65歳以上で全例を、65歳未満でも骨折リスクが高ければなどのリスク評価で層別化してを行う( Grade B)。男性のスクリーニングは益と害を判断できるだけの証拠が不十分とされている2。
  • 閉経前女性、50歳未満男性、小児ではZ-scoreを中心に解釈し、T-scoreだけで診断しない。
  • 低のまたはは、BMDにかかわらず骨粗鬆症として治療対象となる。
  • などで10年骨折確率を評価するが、最近の骨折、、複数骨折、グルココルチコイド量などを過小評価し得る。
  • ⚠️ 治療の線引きはT-scoreではなくの絶対確率で行い、その閾値は年齢とともに動く。 IOF/ESCEOの介入閾値は「同年齢で既存骨折のある女性と同等の確率」に置かれるため年齢依存で、欧州5か国のでは50〜54歳で7.8%、65〜69歳で19%、80〜84歳で31%(主要の10年確率)となる。「非常に高いリスク」は、この介入閾値の1.2倍に当たる評価閾値を超えた場合と定義される3。既存のがあれば少なくとも高リスクで、確率によっては非常に高いリスクに入る。
  • 身長低下、、、グルココルチコイド使用では椎体画像評価を考慮する。

血算、Ca、リン酸、、クレアチニン/、25-OHビタミンD、肝機能、などを基本に、病歴から、性腺機能、セリアック抗体、、尿中Caなど二次性原因を検索する。

治療の組み立て

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fragility fracture'>脆弱性骨折</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dual-energy X-ray absorptiometry'>DXA</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Fracture Risk Assessment Tool'>FRAX</span>"] --> B{"骨折リスク"}
    B -->|"高リスク"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intravenous bisphosphonate'>静注ビスホスホネート</span>など<span class='jp-term jp-term-diagram' title='antiresorptive agent'>骨吸収抑制薬</span>"]
    B -->|"非常に高リスク"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bone anabolic agent'>骨形成促進薬</span>/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='romosozumab'>ロモソズマブ</span>を先行"]
    D --> E["終了後は<span class='jp-term jp-term-diagram' title='antiresorptive agent'>骨吸収抑制薬</span>で維持"]
    C --> F["3–5年後に再評価"]
    F --> G{"低〜<span class='jp-term jp-term-diagram' title='medium risk'>中リスク</span>か"}
    G -->|"はい"| H["選択例で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intravenous bisphosphonate'>静注ビスホスホネート</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='drug holiday (treatment interruption)'>休薬</span>"]
    G -->|"いいえ"| I["継続・変更"]

全例で行うこと

  • 食事を含め十分なCaとビタミンDを確保し、欠乏を補正する。
  • 荷重・筋力・訓練、禁煙、過量飲酒回避、住環境・視力・鎮静薬を含む転倒予防を行う。
  • 新規骨折後はを遅らせず、と歯科・腎機能など薬剤固有の安全性を確認する。

薬物治療

薬剤群 位置づけ・注意点
多くの高リスク例の第一選択。は食道疾患・服薬法、静注薬は腎機能・に注意。⚠️ 高リスクの初期治療にどのを選ぶかは地域差が大きく、英国とIOF/ESCEOは経口を推奨する3
高リスク例の代替。6か月ごとの投与を遅延・中止すると亢進とがあり、必ず後続のを計画。ECTSは最終注射の6か月後に代替のを開始することを提言している4
/ 重症・など非常に高リスクで用い、終了後はへ
非常に高リスクで通常12か月。心筋梗塞・脳卒中リスクを評価し、終了後はへ
raloxifene 選択例でを減らすが、に注意

drug holidayは骨に残留するを3〜5年使用後、低〜となった選択例だけで考える。にはを設けない。治療中は通常1〜3年ごとにを再評価し、骨折、BMD低下、服薬不良、二次性原因を確認する。

⚠️ は「安全な標準手順」ではない。 欧州ガイダンスは、静注で3年・経口で5年の時点で見直すこと自体は支持するが、については中止群で新規の臨床骨折が20〜40%多く、リスクはおよそ2倍になったとする前向き・後ろ向き解析を挙げて慎重な立場を取る1。低〜へ再分類できた例に限る、という条件が本質であって、期間が来たら止めるという運用ではない。

💡 有害事象の頻度を数字で持っておくと、の判断がぶれない。 は、骨粗鬆症でを使う患者では10万人・年あたり1例程度と非常にまれで、一般人口よりわずかに高い程度にとどまる(癌でパミドロネート・を高用量使う場合とは桁が違う)1。についても、全体では1件のが生じるごとに約162件のが予防されているという便益・リスクの試算がある5。つまり既定の便益は害をはるかに上回る——問題は、リスクが下がった患者で漫然と続けることである。

まとめ

  • 骨折歴、、、転倒と二次性原因を統合して診断・治療強度を決める。
  • 高リスクはなど、非常に高リスクはを先行し、後者の終了後はへつなぐ。
  • は急に中止せず、のも再評価後の選択例に限る。

出典

  1. 1.European guidance for the diagnosis and management of osteoporosis in postmenopausal women(International Osteoporosis Foundation / European Society for Clinical and Economic Aspects of Osteoporosis and Osteoarthritis(Kanis et al., Osteoporosis International)・2019)骨粗鬆症の操作的定義がDXAで測った大腿骨頸部(または脊椎)のBMDが若年成人女性平均より2.5 SD以上低いこと(T-score −2.5以下)であること、低骨量(osteopenia)は疾患カテゴリーとみなすべきではなく疫学的記述のための区分にすぎないこと、T-score算出の基準値としてIOF・ESCEO・ISCD・WHO・NOFが20〜29歳女性のNHANES III大腿骨頸部データベースを推奨し男性にも同じ女性基準値を用いること、顎骨壊死の発生頻度は骨粗鬆症でビスホスホネートを使う患者では10万人・年あたり1例程度と非常にまれで一般人口よりわずかに高い程度であること、ビスホスホネートは静注で3年・経口で5年の時点で見直すべきだが休薬(drug holiday)については中止群で新規臨床骨折が20〜40%多く椎体骨折リスクはおよそ2倍になったとする前向き・後ろ向き解析があることを本文で確認した。閲覧 2026-08-25
  2. 2.Screening for Osteoporosis to Prevent Fractures: US Preventive Services Task Force Recommendation Statement(USPSTF・2025)閉経後女性は65歳以上で全例DXAスクリーニングを推奨する(Grade B)。65歳未満でも骨折リスクが高ければ臨床的リスク評価(FRAX等)で層別化してスクリーニングする(同Grade B)。男性でのスクリーニングは益と害の判断に足る証拠が不十分(I statement)。閲覧 2026-08-25
  3. 3.Algorithm for the management of patients at low, high and very high risk of osteoporotic fractures(International Osteoporosis Foundation / European Society for Clinical and Economic Aspects of Osteoporosis and Osteoarthritis(Kanis et al., Osteoporosis International)・2020)骨折リスクを低・高・非常に高いの3段階に分け、非常に高いリスクをFRAXによる主要骨粗鬆症性骨折確率が上位評価閾値(介入閾値の1.2倍)を超えることと定義したこと、介入閾値は年齢依存で欧州5か国の加重平均に基づくFRAX 10年確率として50〜54歳7.8%・65〜69歳19%・80〜84歳31%と示されること、高リスクでは骨吸収抑制薬から開始し英国NICEおよびIOF/ESCEOガイドラインは経口ビスホスホネートを推奨する一方で世界的には非常に幅広い薬剤が推奨されていること、非常に高いリスクでは骨形成促進薬を先行しその後に骨吸収抑制薬へつなぐのが適切であること、既存の脆弱性骨折がある患者は少なくとも高リスク・FRAX確率によっては非常に高いリスクに分類されることを本文で確認した。閲覧 2026-08-25
  4. 4.Fracture risk and management of discontinuation of denosumab therapy: a systematic review and position statement by ECTS(European Calcified Tissue Society・2020)デノスマブ中止時には、最終注射の6か月後に代替の骨吸収抑制療法を開始するよう提言した。閲覧 2026-08-25
  5. 5.Atypical femur fractures: current understanding and approach to management(Therapeutic Advances in Musculoskeletal Disease・2020)FREEDOM試験の10年延長コホートで長期デノスマブ投与群の非定型大腿骨骨折発生は各群1例と低頻度だったが、実臨床でデノスマブ投与患者の多くが過去にビスホスホネート治療歴を持つためデノスマブ単独の寄与は不確実であること。骨吸収抑制薬全体では、非定型大腿骨骨折1件が生じるごとにおよそ162件の骨粗鬆症性骨折が予防されているという便益・リスクの試算があること閲覧 2026-08-25