小児科学

小児科学 · 1-20

小児の肝腫大・脾腫

Hepatomegaly and Splenomegaly in Children

前提:正常
消化管内臓肝臓の組織脾臓の組織
疾患
Gaucher病Niemann-Pick病C型シアリドーシスランゲルハンス細胞組織球症肝芽腫糖原病
症状
肝腫大
画像所見
桜実紅斑

🧠 全体像: ・脾腫は局所臓器疾患だけでなく、感染、溶血、うっ血、腫瘍、蓄積病を示す。臓器の大きさだけでなく硬さ、圧痛、表面、黄疸、血球減少、成長・発達を組み合わせて評価する。

機序から考える

機序 の例 脾腫の例
炎症・反応性 、、薬物・毒物 、、細菌・、SLE
蓄積 、、、、Niemann– 病
浸潤・増殖 、、白血病、リンパ腫、組織球症 白血病、リンパ腫、血管腫、嚢胞
うっ血 心不全、、 門脈圧亢進1、心不全、
閉塞 胆道閉鎖、胆石、嚢胞、腫瘍 ―
血球処理 ― 、、鎌状赤血球症

小児では肝下縁を右下1〜2 cm触れることがあるが、正常肝は軟らかく吸気で動く。健常小児42例の超音波でも下の平均肝下縁は11.65±7.89 mmで、2 cmをのとすることが年齢を問わず妥当と報告されている2。脾についても正常径は年齢とともに増大するため、成人の脾腫の基準をそのまま小児に当てはめない3。硬い・結節性・圧痛のある肝、明らかな脾触知は病的所見として評価する。

代表的な組合せ

所見 疾患の方向性
発熱、咽頭炎、リンパ節腫大 /など
黄疸、貧血、 溶血性貧血
蒼白、紫斑、、リンパ節腫大 白血病・リンパ腫
低血糖、、
、貧血、腫 4
呼吸困難、浮腫、 心不全・うっ血
腹部腫瘤、体重減少、高値 など肝腫瘍

診断

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hepatomegaly'>肝腫大</span>・脾腫"] --> B["超音波で大きさ・構造・血流を確認"]
    B --> C["血算/塗抹・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='reticulocyte'>網赤血球</span>・肝機能/凝固を評価"]
    C --> D{"感染・溶血・うっ血・浸潤の手がかり"}
    D --> E["標的感染検査・溶血検査"]
    D --> F["心エコー・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='portal blood flow'>門脈血流</span>評価"]
    D --> G["代謝/酵素/遺伝学的検査"]
    D --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tumor markers'>腫瘍マーカー</span>・骨髄/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='histology'>組織診</span>"]
  • 血算・、、/、ビリルビン、/、アルブミン、/を基礎とする。
  • 感染曝露に応じ培養、・・肝炎、結核、マラリアなどを選ぶ。低血糖、乳酸、アンモニアは代謝・を疑う場合に測る。
  • 超音波が初期画像で、/、生検、は仮説と専門科判断に基づく。

💡 小児のは成人と原因の内訳が異なりうる。 成人では肝硬変などのが優位とされるのに対し、小児ではなどのが優位とする報告が多い。パキスタンの小児100例では63%・肝硬変19%・胆道閉鎖18%の順であった一方、イランのコホートでは93.3%が(はわずか4.4%)と対照的であり、地域・民族による差が大きい1。骨髄に脂質を貪食したを認めるでは、A型で黄斑部の桜実紅斑という特徴的眼所見を全例に認める5。

⚠️ 意識障害、低血糖、・延長、急速な黄疸はとして緊急紹介する。脾腫ではがあるため、原因確定までを避ける。

治療

感染、溶血、心不全、門脈圧亢進、代謝病、腫瘍を原因別に治療する。遺伝性・疾患では酵素補充、、遺伝カウンセリングを検討する。またはではと発熱時の迅速対応が重要である。

まとめ

  • 炎症、蓄積、浸潤、うっ血、閉塞という機序で整理する。
  • 超音波と血算・塗抹・評価が初期診断の軸である。
  • 肝不全徴候、血球減少、硬い腫瘤は専門科へ早期につなぐ。

出典

  1. 1.Frequency of Causes of Portal Hypertension in Children(Cureus・2022)パキスタンの三次医療施設で小児100例(生後1か月〜15歳)を対象とした横断研究で、門脈圧亢進症の原因は門脈血栓症63%が最多で、肝硬変19%、胆道閉鎖18%が続いた。考察では、成人は肝内性(主に肝硬変)が優位、小児は肝外性(門脈血栓症など)が優位とする先行研究が多い一方、イランのコホートでは93.3%が肝内性で門脈血栓症はわずか4.4%だったとする対照的な報告も引用しており、地域・民族によって内訳が大きく異なることを確認した。閲覧 2026-08-27
  2. 2.Diagnostic value of subcostal liver margin diameter measured by ultrasonography for identifying paediatric hepatomegaly(Ultrasound (Leeds, England)・2026)肝腫大群42例と18歳未満の健常対照群42例を比較した研究で、健常対照群の肋骨弓下正中鎖骨線での肝下縁の平均値は11.65±7.89 mmであり、2 cmを肝腫大のカットオフとすることが年齢を問わず妥当であったことを確認した(健常小児でも肋骨弓下に肝が触れうることの裏付け)。閲覧 2026-08-27
  3. 3.Spleen size evaluation in children: Time to define splenomegaly for pediatric surgeons and pediatricians(PLOS ONE・2018)白人小児317例を0〜3歳・4〜10歳・11〜18歳の3群に分けた前向き研究で、年齢とともに脾容積・横径が有意に増加する一方で脾容積/腹部容積比は有意に低下し、成人の脾腫の概念をそのまま小児外科に適用できないことを確認した。閲覧 2026-08-27
  4. 4.Gaucher Disease(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)Gaucher病はグルコセレブロシダーゼ欠損によりGaucher細胞が網内系に蓄積し、骨疾患・肝脾腫(しばしば著明な脾腫)・貧血・血小板減少を来すこと、中枢神経症状を欠くI型が最多であることを確認した。閲覧 2026-08-27
  5. 5.Niemann-Pick Disease(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)Niemann-Pick病では骨髄に脂質を貪食したマクロファージ(泡沫細胞)を認めること、A型では黄斑部の桜実紅斑という特徴的眼所見を全例に認めることを確認した("All patients with NPD type A have a classical eye finding called the cherry-red spot")。閲覧 2026-08-27