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Disease Atlas · 消化器 · 疾患

免疫関連大腸炎

Immune-related colitis

別名
免疫チェックポイント阻害薬関連大腸炎ICI関連大腸炎immune checkpoint inhibitor-induced colitis
臓器系
消化器免疫・膠原病腫瘍
科目
Oncology and Reconstructive Oncoplastic SurgeryPharmacology
トピック
腫瘍学 I-28:がん免疫療法の副作用薬理学 B36:抗がん薬VI(高分子シグナル伝達阻害薬・免疫賦活抗がん薬)
上位概念
免疫関連有害事象
鑑別疾患
クロストリディオイデス・ディフィシル感染症炎症性腸疾患(クローン病・潰瘍性大腸炎)顕微鏡的大腸炎
合併症
腹膜炎・消化管穿孔中毒性巨大結腸症
治療薬
プレドニゾロンメチルプレドニゾロンインフリキシマブベドリズマブ
原因薬剤
イピリムマブトレメリムマブニボルマブペムブロリズマブアテゾリズマブデュルバルマブ
症状
下痢腹痛血便

🧠 全体像:は、(ICI)が外したT細胞のブレーキがへも向かって起こるの大腸炎である。押さえる軸は3つ。①で頻度がまったく違う——抗CTLA-4抗体で最も多く、抗PD-1/PD-L1抗体では一桁少ない。②を先に外す——とくにとは、免疫抑制を始める前にも、治療が効かないときにも必ず調べ直す。③のグレードに応じて免疫抑制を段階的に強める。⚠️ 内視鏡像も病理像もと重なるが、そのものではない——薬剤に誘発された大腸炎であり、治療の組み立ても再発の考え方も違う。臓器横断のirAE全般の枠組みはのノートに譲り、ここでは大腸炎に固有の点を扱う。

薬剤クラスによる頻度の差がこの疾患の骨格

出典1。⭐ 抗CTLA-4抗体と抗PD-1/PD-L1抗体で10倍近い差がある——これがICIの副作用管理でクラスを意識する最大の理由の一つである。

⚠️ 報告される頻度の幅が大きいのは、「下痢」を数えているか「大腸炎」を数えているかで分子が変わるためである(分母はいずれもICI投与例)。 のノートが挙げるの27〜54%はの頻度で、同じ原著(Gupta 2015)は内視鏡的な大腸炎を8〜22%としている。論文の数値を引くときに、症状を数えたのか診断を数えたのかを確認する。

発症時期と臨床像

初回投与から下痢発症までのは約4〜8週だが、幅は広く、1週で出る例もあれば、ICI中止から数か月〜2年後に発症した報告もある1。⚠️ 「もうICIをやめたから関係ない」とは言えない。

症状は下痢92%、腹痛82%、血便64%、発熱46%1。いずれも非特異的で、症状だけで原因を決めることはできない。

CTCAE v5.0(2017年)のグレード

⚠️ 版を明示する。 以下は米国国立癌研究所の v5.0の定義である2。

Grade Colitis Diarrhea
1 無症状。臨床的・のみで治療を要さない ベースラインより1日4回未満の排便増加
2 腹痛、または血便 1日4〜6回の増加。の制限
3 高度の腹痛、 1日7回以上の増加。入院を要し、身の回りのを制限
4 生命を脅かす状態。緊急処置を要する 生命を脅かす状態
5 死亡 死亡

⚠️ のグレードだけで重症度を決めない。 排便回数は軽くても内視鏡で広範な潰瘍を認めることがあり、や広範な大腸炎は早期にへ進む適応になる1。

診断──まず感染を外す

flowchart TD
    A["ICI投与中・投与後に下痢・腹痛・血便"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='stool culture'>便培養</span>、C. difficileトキシン検査、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ova and parasite examination'>寄生虫検査</span>"]
    B --> C{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='infectious enteritis (infectious enterocolitis)'>感染性腸炎</span>か"}
    C -->|"あり"| D["感染症として治療<br>(免疫抑制を先に始めない)"]
    C -->|"なし"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lower gastrointestinal endoscopy'>下部消化管内視鏡</span>と生検を検討"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cytomegalovirus, CMV'>サイトメガロウイルス</span>の検索<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intranuclear inclusion body'>核内封入体</span>・免疫染色)"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='immune-related colitis'>免疫関連大腸炎</span>と判断し<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='Common Terminology Criteria for Adverse Events'>CTCAE</span>グレードで治療を決める"]
    G --> H{"ステロイド・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='infliximab'>インフリキシマブ</span>に<br>反応しない"}
    H -->|"はい"| I["C. difficile・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cytomegalovirus'>CMV</span>を<br>もう一度検索し直す"]

⚠️ 感染検索は「入口で1回」では足りない。 ステロイドにもにも反応しない症例では、日和見感染の合併を疑って・C. difficile・・をやり直すことが必須とされている1。免疫抑制を重ねた患者ほど、後から感染が乗ってくる。

内視鏡・病理所見

内視鏡像は正常粘膜から浮腫・発赤・びらん・・潰瘍まで幅がある。ある報告では潰瘍40%(21/53)、非潰瘍性炎症42%(22/53)、肉眼的炎症なし19%(10/53)で、分布は42%・左右両側40%・14%であった1。⚠️ 肉眼的に正常でも生検すると炎症があるので、内視鏡で「異常なし」でも生検を省かない。

病理ではのと、・が多い。42%、17%、陰窩構造の不整36%がみられ、約10%は(リンパ球性・性)のパターンをとる1。

炎症性腸疾患との鑑別

手がかり
経過 ICI投与を起点に急に始まる に始まり慢性に経過する
臓器 皮膚・甲状腺・肝など他臓器のirAEを伴いやすい 消化管中心(はあるが別の型)
みられる(本症を支持) まれ
乏しい みられる(を支持)
・瘻孔・・ 乏しい を支持

出典1。⚠️ 陰窩構造の不整は本症でも36%にみられるため、これだけを根拠にとしない。 そのものの分類・治療はのノートに譲る。

治療

Grade ICIの扱い 免疫抑制
1 継続し脱水を監視 不要
2 休止(grade 1以下へ回復すれば抗PD-1/PD-L1は再開しうる) 便の感染検索が陰性なら換算10 mg/日未満で開始。下痢が続けば1 mg/kg/日へ
3 休止 または1〜2 mg/kg/日。3〜5日以上持続またはなら静注ステロイドかへ
4 全ICIを永続中止 静注ステロイドで開始し、2〜3日で抵抗性なら5〜10 mg/kg

用量は1による。⚠️ ASCO 2021指針が明示するのは「grade 3では高用量ステロイドを開始し、4〜6週以上かけてする」までである3。約3分の2がステロイドの初期治療だけで軽快し、は通常4〜6週かけて行う1。

💡 ステロイド抵抗例にを選ぶ理由は「もっと強い免疫抑制」ではない。 はを標的として腸管へのリンパ球のを選択的に妨げるため、全身性の免疫抑制を伴わずに腸管の炎症だけを抑えられる。抗を落としたくないで、この選択性が意味を持つ1。

⚠️ 合併症は消化管穿孔とで、致死的になりうる。 高度の腹痛・( grade 3以上)が出たら、免疫抑制を強めるだけでなく外科への相談を並行させる。

まとめ

  • は抗CTLA-4抗体で最も多く(全grade 3.4〜15.5%)、抗PD-1/PD-L1単剤では0.7〜2.6%と一桁少ない。併用はその中間で重症例の比率が高い。
  • 発症は初回投与から中央値4〜8週だが、1週から中止後2年までの幅がある。症状は下痢92%・腹痛82%・血便64%と非特異的。
  • ⚠️ 免疫抑制を始める前に(とくにC. difficile・)を外す。治療抵抗例では再検索する。
  • 内視鏡・病理はと重なるが、は本症を、はを支持する。肉眼的に正常でも生検する。
  • v5.0のグレードで管理する(grade 1は継続、grade 2〜3は休止+ステロイド、grade 4は永続中止)。ただしグレードだけで決めず、や広範な大腸炎は早期にへ。抵抗例には腸管選択的な。
  • 消化管穿孔・を合併しうる。

出典

  1. 1.Differential diagnosis and management of immune checkpoint inhibitor-induced colitis: A comprehensive review(World Journal of Experimental Medicine・2021)大腸炎の頻度が抗CTLA-4抗体で全grade 3.4〜15.5%・grade 3〜4が2.3〜8.3%と最も高く、抗CTLA-4と抗PD-1の併用が全grade 0.7〜12.8%・grade 3〜4が0.5〜8.3%、抗PD-1/PD-L1単剤が全grade 0.7〜2.6%・grade 3〜4が0.3〜1.0%と最も低いこと、初回投与から下痢発症までの期間中央値が約4〜8週で1週から治療中止2年後までの幅があること、臨床症状が下痢92%・腹痛82%・血便64%・発熱46%であること、内視鏡像が潰瘍40%(21/53)・非潰瘍性炎症42%(22/53)・肉眼的炎症なし19%(10/53)で分布が左側大腸炎42%・左右両側40%・回腸結腸14%であること、病理では陰窩炎・陰窩膿瘍が多くアポトーシス細胞42%・上皮内リンパ球増多17%・陰窩構造の不整36%がみられ約10%が顕微鏡的大腸炎パターンをとること、炎症性腸疾患との鑑別では陰窩アポトーシスが免疫関連大腸炎を支持し基底部形質細胞増多は炎症性腸疾患を支持すること、CTCAE grade 1はICIを継続し脱水を監視、grade 2〜3はICIを休止しgrade 1以下へ回復すれば抗PD-1/PD-L1は再開しうる、grade 4は全ICIを永続中止すること、grade 2以上に糖質コルチコイドを初期治療とし便の感染検索が陰性ならプレドニゾン換算10 mg/日未満で開始し下痢が持続すれば1 mg/kg/日へ、grade 3はプレドニゾンまたはメチルプレドニゾロン1〜2 mg/kg/日で開始し3〜5日以上症状が持続または再燃すれば静注ステロイドまたはインフリキシマブへ、grade 4は静注ステロイドで開始し2〜3日で抵抗性ならインフリキシマブ5〜10 mg/kgを開始すること、粘膜潰瘍または広範な大腸炎はインフリキシマブへの早期エスカレーションの適応であること、約3分の2がステロイド初期治療に反応し漸減は通常4〜6週で行うこと、ステロイドにもインフリキシマブにも反応しない場合は日和見感染(C. difficile・CMV)の再検索が必須であること、ベドリズマブがα4β7を標的とし全身性免疫抑制を伴わずインフリキシマブ抵抗例の選択肢になることを確認した閲覧 2026-09-02
  2. 2.Common Terminology Criteria for Adverse Events (CTCAE) Version 5.0(National Cancer Institute, Cancer Therapy Evaluation Program (CTEP)・2017)CTCAE v5.0の「Colitis」項目がGrade 1を無症状で臨床的または診断的所見のみ(治療を要さない)、Grade 2を腹痛・粘液便または血便、Grade 3を高度の腹痛・腹膜刺激徴候、Grade 4を生命を脅かす状態(緊急処置を要する)、Grade 5を死亡と定義していること、「Diarrhea」項目がGrade 1をベースラインより1日4回未満の排便増加、Grade 2を1日4〜6回の増加で手段的日常生活動作の制限、Grade 3を1日7回以上の増加で入院を要し身の回りの日常生活動作を制限、Grade 4を生命を脅かす状態、Grade 5を死亡と定義していることを確認した閲覧 2026-09-02
  3. 3.Management of Immune-Related Adverse Events in Patients Treated With Immune Checkpoint Inhibitor Therapy: ASCO Guideline Update(American Society of Clinical Oncology・2021)irAEの臓器別評価、休薬、ステロイド・追加免疫抑制、再投与判断と専門科連携の原則を確認した。閲覧 2026-09-02