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Drug Atlas · B36 Targeted cancer therapy / 分子標的薬 · 必修

イピリムマブ

ipilimumab

分類
Targeted cancer therapy / 分子標的薬Biologics & immunomodulators / 生物学的製剤
商品名(日本)
ヤーボイ
商品名(EU)
Yervoy
科目
Pharmacology
トピック
B36: Drugs used in cancer treatment VI (Large molecule signal transduction inhibitors. Immunostimulant anticancer drugs)
副作用
下痢皮疹
影響検査値
甲状腺刺激ホルモン血糖
相互作用
ニボルマブ
対象疾患
悪性黒色腫悪性中皮腫腎細胞癌大腸癌
原因となる疾患
1型糖尿病免疫関連有害事象

🧠 全体像の中で唯一CTLA-4を狙う抗体で、PD-1PD-L1阻害薬とはブレーキを外す場所とタイミングが違う。CTLA-4はリンパ節でT細胞が最初に活性化される段階()のブレーキであるのに対し、PD-1/PD-L1は腫瘍局所で既に活性化したT細胞がするのを防ぐブレーキ——「そもそも動き出すT細胞を増やすか、動き出したT細胞を腫瘍の目の前で疲れさせないか」という違いが、そのまま(irAE)の頻度・重症度の差にもつながっている。

薬効群の中での位置づけ

代表薬 ブレーキが働く場所 irAEの頻度・特徴
CTLA-4 リンパ節(段階) 単剤でも高頻度。大腸炎・が目立つ
PD-1 腫瘍局所(したT細胞の再活性化) CTLA-4阻害より軽度なことが多い
PD-L1 腫瘍局所(腫瘍側リガンドを塞ぐ) PD-1阻害とほぼ同等

「CTLA-4阻害はPD-1/PD-L1阻害よりirAEが多い」というのが最重要の CTLA-4はT細胞活性化の最も上流(全身のリンパ節)でブレーキを外すため、に限らずに反応するT細胞まで広く活性化されやすい。Grade 3-4のirAEは単剤で約20〜30%であるのに対し、PD-1阻害薬単剤では10〜20%程度にとどまる。

機序

flowchart TD
    A["リンパ節で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='APC'>抗原提示細胞</span>が<br>T細胞にSignal 1(TCR-MHC)を提示"] --> B["APCのCD80/86がT細胞のCD28に結合<br>→Signal 2(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='costimulation'>共刺激</span>)でT細胞活性化"]
    B --> C["活性化したT細胞表面に<br>CTLA-4が誘導発現"]
    C --> D["CTLA-4がCD80/86を奪い合い<br>CD28との結合を阻害(負のフィードバック)"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='T cell priming'>T細胞プライミング</span>にブレーキがかかる"]
    F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ipilimumab'>イピリムマブ</span>がCTLA-4に結合"] -.->|"CD80/86の奪い合いを阻止"| D
    F --> G["ブレーキ解除→<span class='jp-term jp-term-diagram' title='T cell priming'>T細胞プライミング</span>増強"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tumor antigens'>腫瘍抗原</span>に対するT細胞応答↑"]
    G --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='autoantigen'>自己抗原</span>に対するT細胞も<br>広く活性化されやすくなる"]
    I --> J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='irAE'>免疫関連有害事象</span>:<br>大腸炎・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypophysitis'>下垂体炎</span>・皮疹など"]

💡 irAEは「効きすぎた自己免疫」と理解する。 は腫瘍だけを狙って作られた薬ではなく、T細胞のブレーキそのものを外す薬である以上、に対するも同時に壊れうる。大腸・肝臓・・皮膚・肺など、ほぼ全臓器に起こりうるという前提を常に持っておく。

適応

進行悪性黒色腫(単剤、またはとの併用)、大腸癌〔MSI-H〕/〔dMMR〕)・など、いずれもとの併用療法として用いられることが多い。

用法・用量

3〜6週毎の。単剤よりとの併用で用いられる場面が多く、併用時は毒性を考慮しての用量・投与回数を抑える設計(例:導入期のみ複数回投与し、その後は単剤で維持する)のレジメンが一般的。実際の用量・投与スケジュールは適応・施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • ⚠️ は自己免疫に似た機序で全臓器に起こりうる。 大腸炎・肝炎・皮膚炎・・甲状腺炎・副腎不全・1型糖尿病)・肺炎・腎炎・神経障害(様など)まで多岐にわたる
  • ⚠️ irAEの治療はステロイドが基本。 Grade 2以上は全身ステロイドを開始し、不応例には(大腸炎)などを追加する
  • ⚠️ は不可逆的なことが多い。 による下垂体機能低下、1型糖尿病、原発性症などはステロイドで炎症を抑えてもホルモン分泌そのものは戻らないことが多く、生涯にわたるが必要になりうる(ステロイドで治まる大腸炎・皮膚炎などとは経過が異なる)
  • ⚠️ との併用はirAEをに増やす。 Grade 3-4のirAEは単剤の約20%、単剤の約28%に対し、併用療法では約55〜60%まで上昇する(CheckMate 067試験)。併用時はより頻回なモニタリングを要する
  • 活動性の自己免疫疾患・免疫抑制状態ではとなり、リスクとを慎重に判断する

副作用

頻度 内容
高頻度 下痢・大腸炎、皮疹、疲労
注意 肝炎()、TSH異常、血糖異常)
重篤・まれ 重症大腸炎(穿孔)、、1型糖尿病(で発症することがある)、肺炎・腎炎・神経障害

まとめ

  • 抗CTLA-4抗体。段階(リンパ節)のブレーキを外し、抗腫瘍T細胞応答を増強する。
  • CTLA-4阻害はPD-1/PD-L1阻害よりirAEが多い——ブレーキを外す場所がT細胞活性化の最上流であるため。
  • irAEは全臓器に起こりうる自己免疫類似の病態。ステロイドが治療の基本だが、は不可逆的なことが多い。
  • 悪性黒色腫・・MSI-H/dMMR大腸癌などで、多くはとの併用療法として使う。
  • との併用はGrade 3-4 irAEを単剤の約20〜30%から約55〜60%へ押し上げるという数値は頻出ポイント。