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Drug Atlas · B30 Biologics & immunomodulators / 生物学的製剤 · 必修

ベドリズマブ

vedolizumab

分類
Biologics & immunomodulators / 生物学的製剤
商品名(日本)
エンタイビオ
商品名(EU)
Entyvio
科目
Pharmacology
トピック
B30: Immunopharmacology III (Antibodies and fusion proteins)
承認適応
クローン病潰瘍性大腸炎
副作用
頭痛関節痛悪心皮疹掻痒
影響検査値
アミノトランスフェラーゼ
対象疾患
回腸嚢炎免疫関連大腸炎免疫関連有害事象

🧠 全体像:は同じであるから標的を1つに絞り込んだ薬である。が(α4β1・α4β7の両方)を阻害して中枢神経系・腸管の両方に作用するのに対し、はだけを狙い、腸管血管内皮のMAdCAM-1との結合のみを阻害する。この「腸管選択性」により中枢神経系のへの影響は理論上小さく、リスクはより低いとされるが、完全には否定できないという一点が、この薬の安全性プロファイルを理解するうえでの核心になる。

薬効群の中での位置づけ

薬剤 標的 作用範囲 リスク
(MAdCAM-1のみ) 腸管選択的 低いが否定はできない
(VCAM-1・MAdCAM-1の両方) 中枢神経系+腸管 JCウイルス抗体で層別化が必須なほど高い
など 全身性 該当なし(別の感染症リスク)
全身性 該当なし(血栓症・悪性腫瘍リスク)

⭐ 「同じでも、狙う相手の数で安全性プロファイルが変わる」というのがこの2剤(・)比較の核心。 は中枢神経系のまで弱めるため層別化(JCウイルス)が必須運用になるのに対し、は腸管選択的である分だけ日常臨床でのモニタリングの負担は軽い。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vedolizumab'>ベドリズマブ</span>が活性化リンパ球表面の<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='alpha4beta7 integrin'>α4β7インテグリン</span>に結合"] --> B["腸管血管内皮のMAdCAM-1との<br>結合を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='competitive'>競合的</span>に阻害"]
    B --> C["リンパ球が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intestinal mucosa'>腸管粘膜</span>へ<br>遊走できなくなる"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intestinal mucosa'>腸管粘膜</span>の炎症が抑制される"]
    A -.->|"α4β1・αEβ7には結合しない"| E["VCAM-1を介した<br>中枢神経系への遊走経路は温存"]
    E --> F["中枢神経系の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='immune surveillance'>免疫監視</span>への影響が<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='natalizumab'>ナタリズマブ</span>より小さい"]

💡 標的の「引き算」が安全性を作る。 がを介してVCAM-1・MAdCAM-1の両方をブロックするのに対し、はMAdCAM-1との結合だけを阻害しVCAM-1経路には手をつけない。この差が「腸管だけを狙う」という薬効の選択性そのものであり、リスクの違いの根拠にもなる1。

薬物動態

項目 値・特徴
IV(導入)、皮下注(維持への切替可)
半減期 約26日1
定常状態 でおおむね46週までにが定常化

適応

領域 使いどころ
消化器 中等症〜重症の(他の生物学的製剤に不応・不耐の高度治療)2
消化器 中等症〜重症の(有効性の区分は高度治療の使用歴で変わる。下記参照)3

⚠️ での位置づけは、の使用歴で入れ替わる。 米国のガイドラインは、高度治療未使用例ではを・・・・・と並ぶ高有効性薬に置くが、1剤以上の高度治療(とくに)の使用歴がある例では低有効性薬の側へ移し、・・と同じ区分にしている。既往例で高有効性薬として残るのは・・の3剤である。どちらの推奨も「高有効性薬または中等度有効性薬を、低有効性薬より用いる」という選言の弱い推奨(提案)で、エビデンスの確実性は低である3。

💡 それでも既往例からが消えるわけではない——有効性の格付けと安全性が逆を向く薬だからである。 同じガイドラインは、と抗薬がよりの頻度が低い可能性があり、免疫抑制に伴う感染症・悪性腫瘍のリスクが高い患者では選好されうるとしたうえで、高度治療既往例ではこの「より安全な薬」のほうが有効性の格付けが低いため、安全性の利点を有効性の差と衡量する必要があると明記している3。

用法・用量

IV導入は0週・2週に300mgをし、以後8週ごとに300mgをする。導入後は108mgの皮下注を2週ごとに投与する形へ切り替えることもできる。14週までに治療効果が得られなければ中止を検討する。実際の用量・切替のタイミングは施設のプロトコル・添付文書で確認する1。

禁忌・注意

  • 禁忌:またはに対する重篤な過敏症の既往
  • ⚠️ 腸管選択的とはいえを完全には否定できない。 新規または急速に進行する神経症状(・・・など)が出現した場合はを鑑別に含め、精査・専門科紹介を行う
  • 投与前に結核などの感染症スクリーニングを行い、投与中も重篤な感染症(敗血症、日和見感染を含む)の徴候に注意する
  • ・ビリルビンの上昇がみられることがあり、黄疸が出現したら中止を検討する
  • 中〜数時間後に過敏症反応(アナフィラキシーを含む)が起こりうる

副作用

頻度 内容
高頻度 、頭痛、関節痛、悪心、発熱、、皮疹、掻痒
モニタリング ・
重篤・まれ 重篤な感染症(敗血症・結核・日和見感染)、アナフィラキシー、(否定できない)

まとめ

  • はだけを狙うで、MAdCAM-1との結合を阻害し腸管選択的に作用する。
  • 同じの(α4β1・α4β7の両方を阻害)と比べ、中枢神経系への影響が小さくリスクは低いとされるが完全には否定できない。
  • ・いずれの中等症〜重症例でも高度治療の選択肢として位置づけられる。ただしでは、高度治療未使用例では高有効性薬、高度治療(とくに)の使用歴がある例では低有効性薬と区分が入れ替わる(いずれも弱い推奨)。感染症・悪性腫瘍のリスクが高い患者では、この有効性の差と腸管選択性による安全性の利点を衡量する。
  • IV導入(0・2週)ののち8週ごとの維持、または皮下注108mgを2週ごとへの切替が可能。半減期は約26日と長い。
  • 投与前の、投与中の感染症・・新規神経症状の監視が重要。

出典

  1. 1.ENTYVIO (vedolizumab) for injection, for intravenous use; ENTYVIO (vedolizumab) injection, for subcutaneous use — Highlights of Prescribing Information(U.S. Food and Drug Administration(DailyMed)・2014)ベドリズマブがα4β7インテグリンに結合しMAdCAM-1との結合のみを阻害しα4β1・αEβ7には結合しないこと、初回承認が2014年であること、IV導入は0週・2週に300mg・以後8週ごと、SC維持は108mgを2週ごと(IV導入2回後に切替可)であること、血清半減期が約26日であること、感染症・肝毒性の注意喚起とPMLを否定できない旨の記載を確認した。閲覧 2026-08-10
  2. 2.ACG Clinical Guideline: Management of Crohn's Disease in Adults(American College of Gastroenterology・2025)中等症〜重症クローン病における高度治療(抗インテグリン抗体を含む)の早期導入の位置づけを確認した。閲覧 2026-08-10
  3. 3.AGA Living Clinical Practice Guideline on Pharmacological Management of Moderate-to-Severe Ulcerative Colitis(American Gastroenterological Association・2024)PMCの著者最終稿(PMC12162142。PMID 39572132。誌上版は Gastroenterology 167巻7号1307-1343頁)の推奨3・4で確認した。高度治療未使用例ではベドリズマブは高有効性薬に分類されるが、1剤以上の高度治療の使用歴がある例(対象試験の90%超が抗TNF薬の使用歴)では低有効性薬へ移り、アダリムマブ・オザニモド・エトラシモドと同じ区分になる。いずれの集団でも推奨の形は「高有効性薬または中等度有効性薬を低有効性薬より用いる」という選言で、強さは conditional recommendation(提案=弱い推奨)、エビデンスの確実性は low である。実装上の考慮として、ベドリズマブと抗インターロイキン薬は抗TNF薬より感染性合併症の頻度が低い可能性があり免疫抑制関連の感染症・悪性腫瘍のリスクが高い患者で選好されうること、およびこの安全性の利点は高度治療既往例で有効性の差と衡量する必要があることが本文に明記されている。閲覧 2026-09-14