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Disease Atlas · 感染症 · 症候群

不明熱

Fever of unknown origin

臓器系
感染症
科目
Internal Medicine
トピック
内科学 L-70:発熱と高体温、不明熱
鑑別疾患
クローン病サルコイドーシス家族性地中海熱感染性心内膜炎急性骨髄性白血病巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)結核高安動脈炎深部静脈血栓症全身性エリテマトーデス伝染性単核球症肺血栓塞栓症
検査値
血算好中球減少
画像所見
FDG-PET

🧠 全体像:は単一の疾患ではなく、「反復する評価にもかかわらず原因不明の発熱が持続する」という診断そのものを指す操作的な定義である。感染症、性疾患(自己免疫・血管炎)、悪性腫瘍、その他という4つの病因群のいずれかに最終的に落ち着くが、その内訳は年代・地域で大きく変遷してきた。網羅的な「shotgun検査」ではなく、反復する病歴・診察から得た手掛かりに沿って段階的に検査を絞り込むことが診断の中心であり、十分な評価後も約3割は診断に至らないまま自然軽快しうる。

定義:古典的不明熱の基準

Petersdorf & Beeson基準(1961年)は、①38.3℃以上の発熱が複数回、②3週間以上持続、③入院1週間の検査でも診断不明、という3条件でを定義した。Durack & Street による1991年の改訂では、外来診療が主体となった現状に合わせ、③の入院1週間という条件を「外来3回の受診、入院3日間、または1週間の徹底した外来精査を行っても診断不明」へ置き換えた。1

💡 「48時間以上の培養を含む3日間の評価」という但し書きは、ではなく・・関連の各分類に付されている条件である。で3日間の入院と並置されているのは「1週間の徹底した外来精査」であって、培養時間の規定ではない。1

💡 「1週間入院して検査する」という古い基準は現在ほぼ使われない。 外来で画像・血液培養・血清学的検査を効率的に組み合わせれば、入院しなくても同等の評価が可能になったためである。現在重要なのは日数そのものより、「反復診察と標準的な初期検査を一通り完了したか」という評価の完成度である。

Durack & Street の4分類

以外にも、患者背景によって鑑別すべき病原体や評価のが大きく異なる3つの特殊な状況があり、Durack & Street はこれらを合わせた4分類を提唱した。

分類 定義・評価期間 評価の要点 代表的な原因
≥38.3℃の発熱が複数回、3週間以上持続。外来3回の受診、入院3日間、または1週間の侵襲的な外来精査の後も診断不明1 市中・外来主体で、反復診察と手掛かりに沿った段階的評価を進める 感染症、性疾患、悪性腫瘍、その他
入院後24時間以上経過し、入院時点でが明らかでなかった患者の発熱で、3日間(培養48時間以上を含む)の評価後も不明1 、、、、術後合併症を優先的に検索 、、
好中球数500/μL未満、または1〜2日でその水準まで低下すると見込まれる患者の発熱で、48時間以上の培養を含む3日間の評価後も不明1 化・敗血症へ急速に進行しうるため、培養採取後ただちに広域経験的抗菌薬(必要に応じ抗真菌薬)を開始する 細菌感染症、症(Aspergillus等)
関連(-associated FUO) 感染者の発熱が、外来4週間または入院3日間の評価後も不明 CD4数に応じて日和見感染の検索順位を調整する 結核、、感染、リンパ腫

⚠️ とな患者では、「だから診断確定まで治療を待つ」というの原則は当てはまらない。培養採取後、診断を待たずに経験的抗菌薬・抗真菌薬を速やかに開始する。

病因の内訳とその変遷

の鑑別は大きく4群に整理できる。かつては感染症が最多とされてきたが、血液培養・画像診断(超音波・・)や血清学的検査の普及により、この内訳は近年大きく変化している。

病因群 代表例 近年の傾向
感染症 、結核(特に肺外・)、、()、感染 先進国では血液培養・画像診断の普及で早期に診断される例が増え、相対的な頻度は低下した。開発途上地域では今なお最多の病因群である
性疾患 、、、、、などの 近年の報告では感染症に代わり最多の病因群になったとするものが増えている。高齢層では・の頻度が高い
悪性腫瘍 (の悪性腫瘍のうち最多)、などの、、 画像診断の進歩によりが早期に診断されやすくなり、の原因としての頻度はやや低下傾向にある
その他・未診断 、・、、() 十分な評価後も診断に至らない例が先進国で最多カテゴリーになりつつあり、その多くは自然軽快し予後良好である

⭐ 地域差をできない。 開発途上地域では今も感染症(結核を含む)がの主因であり続けるが、先進国では性疾患と「診断に至らない例」が感染症を上回るようになってきた。同じ「」でも、診療している地域の疫学によって検査の優先順位を調整する。

日本の統計は欧米のコホートとそのまま重ならない。日本病院総合診療医学会の16施設が参加した前向き(141例、年齢中央値62歳)では、性疾患が34.0%と最多で、感染症17.0%、悪性腫瘍15.6%、その他12.1%、6か月追跡後も原因不明が21.3%であった。2 「性疾患が最多」という近年の傾向は日本でも同じだが、未診断例の割合は欧米の一部コホートで報告される30〜50%より低い。2

診断アプローチ:段階的な評価

の診断は、可能性のあるすべての疾患を一度に検査する「shotgun検査」ではなく、反復する病歴・診察から得た手掛かりに沿って段階的に検査を絞り込む。

flowchart TD
    A["反復する<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Anamnesis'>病歴聴取</span>と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='physical examination'>身体診察</span>"] --> B["旅行歴・動物曝露・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='occupational history'>職業歴</span>・薬剤歴・免疫状態・処置歴を確認"]
    B --> C["基本検査:血算・生化学・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='C-reactive protein'>CRP</span>/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='erythrocyte sedimentation rate'>ESR</span>・尿検査・血液培養・胸部画像"]
    C --> D{"病歴・診察・基本検査に局所化する手掛かりがあるか"}
    D -->|"ある"| E["手掛かりに応じた標的検査・画像・生検"]
    D -->|"ない"| F["胸腹部造影CTなど非侵襲的な広域画像検索"]
    F --> G{"それでも診断がつかないか"}
    G -->|"はい"| H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='FDG PET/CT'>FDG-PET/CT</span>を検討<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Meta-analysis'>メタ解析</span>の診断収率56%、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='computed tomography'>CT</span>を終えた後の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='add-on (incremental benefit)'>上乗せ</span>は32%)"]
    G -->|"いいえ"| E
    H --> I{"異常な集積部位があるか"}
    I -->|"ある"| J["集積部位を標的に生検・培養で確定診断"]
    I -->|"ない"| K["経過観察を継続。約3割は診断に至らず自然軽快しうる"]
  • 皮疹、リンパ節腫脹、の圧痛、、眼底、関節、口腔粘膜、カテーテルなどは、1回の診察で見落とすことがあるため繰り返し診察する。
  • (・・・・)は病歴整理の補助にはなるが、単独での診断特異度は低く、だけで原因を決めない。
  • ⭐ の役割は年々大きくなっている——同じ論文のDelphi合議でも「利用可能性が増し役割は生まれつつある(emerging role)が、実践のばらつきが大きい」と合意されている3。 (・)、脊椎炎・感染などの深部炎症巣、の検出に有用である。18研究・905例を統合したでは、におけるの診断収率は56%(95%CI 50〜61%)であった。3 ⚠️ この56%は先行画像検査の有無を問わない全体の値である。 従来のを終えたうえでのの診断収率に限ると32%(95%CI 22〜44%)と推定されており、同じは現時点の根拠ではの検査アルゴリズムにおけるの位置づけを支持するには不十分としている。3 また炎症・感染・悪性腫瘍のいずれでも集積しうるため特異度は高くなく、集積部位の生検・培養による組織学的・微生物学的確定が引き続き必要である。

⚠️ 経験的な抗菌薬・ステロイドは感染症やの像を修飾し、以後の診断をかえって困難にする。安定したでは、による視力危機切迫など緊急性の高い例外を除き、診断が確定するまでを開始しない。一方、好中球減少やを伴う場合は、前述のとおりを優先する。

転帰:診断に至らない例をどう考えるか

十分な段階的評価を行っても、相当数のは診断に至らないまま経過する。特に先進国のコホートではこの「未診断」群が最大のカテゴリーになりつつある。診断未確定のまま数か月にわたり全身状態が安定している患者の多くは、最終的に自然軽快し、重篤な基礎疾患(進行する悪性腫瘍など)が後になって顕在化する例は少数にとどまる。

  • 診断がつかないことは治療の失敗ではなく、という定義自体に織り込まれた頻度の高い転帰である。
  • 経過観察中に新たな症候(体重減少の進行、新規の身体所見、の変化)が出現すれば、それを新たな手掛かりとして評価を再開する。
  • 診断未確定のままや全身ステロイドを漫然と継続することは避け、必要性を定期的に再評価する。

まとめ

  • は単一疾患ではなく、「反復評価後も原因不明の発熱が持続する」という操作的な診断であり、Petersdorf & Beeson基準を土台にDurack & Streetが古典的・院内・好中球減少性・関連の4分類へ整理した。
  • 病因は感染症・性疾患・悪性腫瘍・その他の4群に大別され、近年は先進国で性疾患と診断未が感染症を上回る傾向にある一方、開発途上地域では感染症が依然として最多である。日本の前向きでは性疾患34.0%・感染症17.0%・悪性腫瘍15.6%・未診断21.3%であった。
  • 診断は網羅的な検査ではなく、反復する病歴・診察で得た手掛かりに沿った段階的評価が中心であり、手掛かりを欠く場合に(の診断収率56%、を終えた後のは32%)を検討する。
  • 好中球減少性・例を除き、診断確定前の経験的抗菌薬・ステロイドは避ける。安定したの相当数は診断に至らないまま自然軽快しうる。
  • 各病因の個別の診断・治療(、結核、、、、など)は、それぞれの疾患ノートに譲る。

出典

  1. 1.Fever and Fever of Unknown Origin: Review, Recent Advances, and Lingering Dogma(Open Forum Infectious Diseases・2020)Petersdorf & Beeson(1961年)の原定義を "fever higher than 38.3°C (100.9°F) on several occasions, persisting without diagnosis for at least 3 weeks in spite of at least 1 week's investigation in hospital" と逐語で引用し、Durack & Street(1991年)による古典的不明熱の改訂定義を "Temperature >38.3ºC recorded on several occasions occurring for >3 weeks in spite of investigations on 3 outpatient visits or 3 days of stay in the hospital or 1 week of invasive ambulatory investigations" として表に示す。「48時間以上の培養を含む3日間の評価」という但し書きは古典的不明熱ではなく、院内・好中球減少性・HIV関連の各下位分類の定義に付されている(好中球減少性は好中球数 <500/μL または1〜2日でその水準へ低下が見込まれる患者、HIV関連は外来4週間または入院3日間)。閲覧 2026-09-04
  2. 2.Key diagnostic characteristics of fever of unknown origin in Japanese patients: a prospective multicentre study(BMJ Open・2019)日本病院総合診療医学会の16施設で2016〜2017年に前向きに集めた不明熱141例(年齢中央値62歳、女性55.3%)の最終診断は、非感染性炎症性疾患48例(34.0%)が最多で、感染症24例(17.0%)、悪性腫瘍22例(15.6%、うち悪性リンパ腫11例)、その他17例(12.1%)、6か月追跡後も原因不明が30例(21.3%)であった。考察では、欧米の症例集積では100日以上の追跡後も30〜50%が原因不明であったと対比している。閲覧 2026-09-04
  3. 3.Diagnostic yield of FDG-PET/CT in fever of unknown origin: a systematic review, meta-analysis, and Delphi exercise(Clinical Radiology・2017)18研究・905例を統合した不明熱におけるFDG-PET/CTの診断収率は56%(95%CI 50〜61%、I2=61%)であり、これは先行画像検査の有無を問わない全体の値である。先行画像を報告していた5研究のサブグループ解析では、従来のCTを超えた上乗せの診断収率は32%(95%CI 22〜44%、I2=66%)にとどまり、著者らは "There is insufficient evidence to support the value of FDG-PET/CT in investigative algorithms of FUO" と結論している。閲覧 2026-09-04