内科学

内科学 · L-70

発熱と高体温、不明熱

Fever and hyperthermia. Fever of unknown origin (FUO)

前提:正常
体温調節
疾患
TNF受容体関連周期性症候群セロトニン症候群悪性高熱症悪性症候群家族性地中海熱高IgD症候群・メバロン酸キナーゼ欠損症成人発症Still病不明熱
症状
発熱
スコア
成人発症スチル病の重症度スコア

🧠 全体像:発熱は視床下部のが上昇した状態、はを変えずに熱産生が放散を上回る状態である。は、反復する病歴・診察から診断の手掛かりを拾い、感染、、悪性腫瘍、その他へ段階的に迫る。

発熱と高体温

特徴 発熱
機序 IL-1、IL-6、など→PGE2→視床下部上昇 過剰な熱産生、放散障害、行動調節不能
例 感染、炎症性疾患、、悪性腫瘍 、、、、
反応 悪寒・血管収縮後に体温上昇、が作用 、意識障害・筋障害を伴いうる。は無効
治療 原因治療、苦痛が強ければなど 迅速な、ABC、原因特異的治療

入院患者の新規発熱では、病状に応じ血算、電解質・腎肝機能、尿検査、培養、胸部画像、乳酸などを選ぶ。安定患者に「発熱だけ」を理由に抗菌薬を投与せず、敗血症・重症感染が疑われれば培養採取後速やかに開始する。

古典的なは病歴整理には役立つが、単独の診断特異度は低い。

経過 代表的関連病態
<1℃で高温が持続 肺炎、など
≥1℃だが平熱に戻らない 、ウイルス感染など
高熱後に平熱へ戻る 局所化膿感染、マラリア、結核など
数日の発熱とを反復 Borrelia感染など
月〜年単位で反復 など

不明熱

は、一般に ≥38.3℃の発熱が複数回、3週間以上持続し、適切な評価後も診断不明の状態を指す1。かつての「1週間入院検査」など時間基準は、現在は適切な標準評価を完了したことへ置き換えて考える23。院内発症、好中球減少/免疫不全、関連では病原体と評価速度が異なるため別枠で扱う2。

💡 の定義は3段階で動いてきた。 ① Petersdorf & Beeson(1961)が原因不明の発熱100例の報告のなかで「38.3℃以上・3週間以上・1週間の入院精査でも診断不明」として最初に成文化した1。② Durack & Street(1991)が、外来主体の診療に合わせて入院1週間という条件を外し、古典的・院内・好中球減少性・関連という4つの分類を設けて再定義した2。③ 2022年には、3週間という持続期間は残しつつ体温の閾値を38.0℃へ引き下げ、「1週間入院」に代えて最低限行うべき検査そのものを定義し直す提案が出ている3。つまり動いているのは「どれだけ調べたか」の基準であって、「原因不明の発熱が続いている」という本質ではない。試験では1961年の古典的定義で問われることがあるため、両方を対応づけておく。

大分類 代表例
感染症 心内膜炎、結核、、/、旅行・動物関連感染
性疾患 、、SLE、血管炎、、IBD
悪性腫瘍 リンパ腫、白血病、、
その他 、、甲状腺炎、
flowchart TD
    A["発熱を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='objective'>客観的</span>に確認"] --> B["反復する病歴・全身診察"]
    B --> C["旅行、動物、職業、薬剤、免疫状態、処置歴"]
    C --> D["血算・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='C-reactive protein'>CRP</span>/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='erythrocyte sedimentation rate'>ESR</span>・肝腎機能・尿・培養・胸部画像"]
    D --> E{"診断の手掛かりがあるか"}
    E -->|"ある"| F["標的検査・画像・生検"]
    E -->|"ない"| G["胸腹部<span class='jp-term jp-term-diagram' title='computed tomography'>CT</span>、必要に応じ<span class='jp-term jp-term-diagram' title='FDG PET/CT'>FDG-PET/CT</span>を検討"]
    G --> H["最も診断能の高い部位を生検"]

💡 は万能ではないが、手掛かりが尽きたときの収率はできない。 18件・905例を統合した系統的レビューでは、に対するの診断収率は56%(95%CI 50〜61%)だった4。残る半数近くは陰性または非特異的所見に終わるということでもあり、反復する病歴・診察で手掛かりを探す作業を置き換えるものではない。

発熱パターンだけで診断を決めない。皮疹、リンパ節、、、眼底、関節、口腔、カテーテル部位を繰り返し診察する。経験的ステロイドは感染・リンパ腫を隠すため、による視力危機などを除き診断前に安易に用いない。免疫不全やでは経験的抗を優先する。

まとめ

  • 発熱は上昇、は熱破綻で、治療が異なる。
  • FUOは一律の網羅検査ではなく、反復診察と手掛かりに基づく標的検査が中心である(の診断収率は56%)4。
  • 安定した古典的FUOでは診断前の抗菌薬・ステロイド乱用を避ける。

出典

  1. 1.Fever of unexplained origin: report on 100 cases(Medicine (Baltimore)・1961)原因不明の発熱100例を前向きに追跡した連載報告であり、古典的不明熱の定義がここで最初に成文化された原著である。閲覧 2026-08-25
  2. 2.Fever of unknown origin--reexamined and redefined(Current Clinical Topics in Infectious Diseases・1991)1961年の定義を再検討し、古典的不明熱に加えて院内不明熱・好中球減少性不明熱・HIV関連不明熱という下位分類を設けて再定義した文献である。閲覧 2026-08-25
  3. 3.Fever of Unknown Origin (FUO) - A Call for New Research Standards and Updated Clinical Management(The American Journal of Medicine・2022)38.3℃以上・3週間以上という不明熱の枠組みが1961年に成文化され、1991年に下位分類を伴う改訂を受け、1997年にも標準初期検査を定める提案があったと整理したうえで、3週間という持続期間は残しつつ体温の閾値を38.0℃へ引き下げ、最低限行うべき検査を定義し直すことを提案した。閲覧 2026-08-25
  4. 4.Diagnostic yield of FDG-PET/CT in fever of unknown origin: a systematic review, meta-analysis, and Delphi exercise(Clinical Radiology・2017)18件・905例を統合し、不明熱におけるFDG-PET/CTの診断収率は56%(95%CI 50〜61%、I2=61%)であった。閲覧 2026-08-25