組織病理学

組織病理学 · H1-099

巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎、HE染色)

Arteritis temporalis (HE)

描出疾患
巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)

🧠 全体像:は、50歳以上に生じる中〜大型動脈ので、枝、とくにを侵しやすい。の、、を認め、系虚血による不可逆的視力喪失を防ぐため治療を検査結果待ちで遅らせない。

血管壁傷害

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='genetic predisposition'>遺伝的素因</span>と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='immune activation'>免疫活性化</span>"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dendritic cell'>樹状細胞</span>・T細胞が血管壁で活性化"]
    B --> C["マクロファージ・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='multinucleated giant cell'>多核巨細胞</span>を動員"]
    C --> D["中膜炎症と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='internal elastic lamina'>内弾性板</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='rupture (tear)'>断裂</span>"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intimal proliferation'>内膜過形成</span>・線維化"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='luminal narrowing'>内腔狭窄</span>"]
    F --> G["頭皮・顎・眼の虚血"]
    G --> H["頭痛・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='jaw claudication'>顎跛行</span>・視覚症状"]

そのものを単純なと断定するより、血管壁でのT細胞・マクロファージ性免疫応答が弾性線維を含む中膜を傷害すると理解する。

標本の読み方

所見 意味
病変 炎症が連続せず、正常部を挟む跳躍病変となる
内膜結節性肥厚 ・閉塞の主因
特徴的な壁傷害
リンパ球、マクロファージ、
周辺に出現しうるが、欠如例もある
中膜線維化 慢性炎症後の
外膜線維化 慢性病変でみられる支持所見

がなくても、、、中膜の単核球性炎症がそろえばを除外しない。

臨床像

症候 病態
新規頭痛・ 頭皮動脈の炎症・虚血
への血流不足
・・ 系虚血
発熱・倦怠感・体重減少 全身炎症
肩・痛を伴う関連疾患
大動脈病変 ・解離の長期リスク

診断と緊急対応

  1. 50歳以上の新規頭痛、、視覚症状、から疑う。
  2. 超音波または生検で血管炎を確認する。
  3. 跳躍病変があるため、陰性生検だけで臨床的疑いの高い症例を除外しない。
  4. 頭蓋外大型血管病変が疑われる場合は、、などを追加する。

⚠️ 生検陰性率は高い。「陰性だから違う」は成り立たない。 が新たに疑われた381例に超音波との両方を行った前向き(TABUL)では、生検の感度は39%(95%CI 33–46)にとどまり、従来報告よりはっきり低かった。同じ研究で超音波の感度は54%(95%CI 48–60)と生検を上回っている。ただし特異度は逆で、生検100%(95%CI 97–100)に対し超音波は81%(95%CI 73–88)である。つまり超音波は拾い上げに強く、生検は「陽性なら確定」に強い。この研究はが真の症例の9〜61%で陰性になりうるという既報の幅を前提としている1。

💡 跳躍病変の頻度は文献間で一致していない。 Mayoの古典的検討では炎60例中17例(28%)に跳躍病変があり、6,000枚超のを追うと他は正常な標本の中に長さ330マイクロメートルしかない動脈炎巣が見つかった。ここから「長い分節を採り、多数の切片を検鏡し、片側が正常なら対側も生検する」という実務が導かれている2。一方、連続102件の生検を後ろ向きに見た検討では、活動性動脈炎35件(34.3%)のうち跳躍病変が明らかだったのは3件(8.5%)にすぎず、報告頻度は系列によって最大28.3%から検出なしまで割れている3。跳躍病変だけで生検陰性率のすべては説明できない(治療先行、採取分節の短さ、頭蓋外病変が主体の症例なども寄与する)。

⚠️ 視覚症状または強い臨床疑いがある場合、治療を生検結果待ちで遅らせない。視力が脅かされる症例では静注を検討し、再発・ステロイド毒性低減にはなどを併用することがある。

💡 併用の根拠。 251例の無作為化試験(GiACTA)で、52週時点の率は週1回162mg皮下注群56%・隔週群53%に対し、+26週群14%、+52週群18%だった(P<0.001)。52週の量中央値は両群とも1,862mgに抑えられた4。IL-6が抑えられるととが下がるため、これらを疾患活動性の指標に使えなくなる点は覚えておく。

血管炎の位置づけ

血管炎は感染性とに大別される。では細菌・真菌などが血管壁へ直接侵入し、壁破壊、、血栓、梗塞を起こしうる。血管炎では免疫複合体、関連好中球活性化、T細胞性免疫など、病型ごとに異なる機序が働く。

血管径 代表疾患
大型血管 、
中型血管 、
小型血管 、など

他の血管炎との比較

項目
年齢 50歳以上 多くは50歳未満 幅広い
主な血管 頭蓋動脈・大動脈と分枝 大動脈と主要分枝 中型
組織 、 肉芽腫性と瘢痕 性動脈炎
通常陰性 通常陰性 通常陰性
典型的でない 典型的でない 典型的でなく、肺動脈は通常保たれる

をp-関連血管炎とは分類しない。p-は染色パターンであり、などとの関連を病型ごとに評価する。

では大動脈と主要分枝の・線維化により、上肢脈拍低下、血圧左右差、を起こす。では腎・腸間膜・冠・肝などの中型に性炎症が生じ、血栓、梗塞、出血を招く。B型肝炎関連例は存在するが、現在の全症例を説明するものではない。

まとめ

  • は50歳以上の中〜大型動脈に生じるである。
  • 、、単核球炎症を確認し、巨細胞欠如例も考慮する。
  • 跳躍病変のため、陰性生検だけで除外しない。
  • 視力喪失を防ぐため、強く疑う場合は診断手続きと並行して治療を開始する。

出典

  1. 1.The Role of Ultrasound Compared to Biopsy of Temporal Arteries in the Diagnosis and Treatment of Giant Cell Arteritis (TABUL): a diagnostic accuracy and cost-effectiveness study(Health Technology Assessment (NIHR)・2016)巨細胞性動脈炎が新たに疑われた381例で超音波と側頭動脈生検を両方施行した前向き多施設研究。生検の感度は39%(95%CI 33-46)で従来報告より有意に低く、超音波の54%(95%CI 48-60)に劣った。一方で特異度は生検100%(95%CI 97-100)が超音波81%(95%CI 73-88)に優った。側頭動脈生検は真の症例の9-61%で陰性になりうる。閲覧 2026-08-24
  2. 2.Skip lesions in temporal arteritis(Mayo Clinic Proceedings・1976)側頭動脈炎60例のうち17例(28%)に跳躍病変を同定した。6,000枚超の連続切片を検討すると、他は正常な生検標本の中に長さ330マイクロメートルしかない動脈炎巣が見つかることがある。長い動脈分節を採取し、多数の切片を検鏡し、片側の凍結切片が正常なら対側の側頭動脈も生検する必要がある。閲覧 2026-08-24
  3. 3.The importance of skip lesions in temporal arteritis(Journal of Clinical Pathology・2000)連続102件の側頭動脈生検のうち35件(34.3%)が活動性の頭蓋動脈炎で、そのうち跳躍病変が明らかだったのは3件(8.5%)にとどまった。跳躍病変の報告頻度は系列により最大28.3%から検出なしまで幅があり、一致していない。閲覧 2026-08-24
  4. 4.Trial of Tocilizumab in Giant-Cell Arteritis(The New England Journal of Medicine・2017)巨細胞性動脈炎251例の無作為化試験(GiACTA)。52週時点の持続寛解率はトシリズマブ週1回162mg皮下注群56%・隔週群53%に対し、プラセボ+26週プレドニゾン漸減群14%、プラセボ+52週漸減群18%(いずれもP<0.001)。プレドニゾン累積中央値は52週でトシリズマブ両群とも1,862mg。閲覧 2026-08-24