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Disease Atlas · 神経 · 疾患

視神経脊髄炎スペクトラム障害

Neuromyelitis optica spectrum disorder

別名
NMOSDDevic病視神経脊髄炎Neuromyelitis optica
臓器系
神経免疫・膠原病眼科
科目
NeurologyPediatrics
トピック
神経内科 G1-23:多発性硬化症の症候と診断小児科 3-09:小児神経免疫疾患:ADEM・多発性硬化症・Guillain-Barré症候群
鑑別疾患
MOG抗体関連疾患多発性硬化症
治療薬
メチルプレドニゾロンエクリズマブイネビリズマブリツキシマブサトラリズマブ
症状
視神経炎吃逆悪心嘔吐
検査値
抗AQP4抗体
適応薬
イネビリズマブエクリズマブサトラリズマブ

🧠 全体像の核心は、中枢神経の脱髄が一次的な病態である(MS)とは違い、標的がを覆う髄鞘ではなく、(アストロサイト)のである4(AQP4)だという一点にある。がアストロサイトを傷害し、その結果として二次的に脱髄が起こる「アストロサイトパチー」であり、脱髄そのものがのMSとは根本的に機序が異なる。この違いが臨床的に最も重く効いてくるのがで、MSのβ・など)はNMOSDを悪化させ、重篤な増悪を招くことがある。したがってNMOSDの診療は「MSとしない」ことそのものが治療の第一歩になる。

病態

(NMO-IgG)はに発現するAQP4に結合し、とADCC()を介してアストロサイトを直接傷害する。アストロサイトは血液脳関門の維持、グルタミン酸の取り込み、髄鞘を作るの代謝支持を担うため、アストロサイトが壊れると二次的に・脱髄・が連鎖的に生じる。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anti-AQP4 antibody'>抗AQP4抗体</span>(NMO-IgG)"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='astrocyte'>星状膠細胞</span>のAQP4に結合"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='complement activation'>補体活性化</span>・ADCCによる<br>アストロサイト傷害"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='blood-brain barrier disruption'>血液脳関門破綻</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inflammatory cell infiltration'>炎症細胞浸潤</span>"]
    D --> E["二次的な脱髄・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='axonal injury'>軸索障害</span>"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='optic neuritis'>視神経炎</span>"]
    E --> G["長大な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='transverse myelitis'>横断性脊髄炎</span>(LETM)"]
    E --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='area postrema'>最後野</span>病変"]

💡 「脱髄が一次か二次か」がMSとの根本的な違い。 MSは・髄鞘そのものへの自己免疫が一次病態だが、NMOSDはアストロサイトが最初に壊れ、脱髄はその結果として起こる。が違うため、MSで有効な治療がNMOSDでは無効どころか悪化因子になりうる。

AQP4はアストロサイト以外に(延髄背側でに近い部位)にも高密度に発現するため、NMOSDに特徴的な症候群(治療抵抗性の吃逆・悪心・嘔吐)を説明する。

臨床像

  • 重度の MSのより視力予後が悪く、両側性・同時発症もMSより多い。
  • 長大な(LETM): MRIで3椎体以上に及ぶ連続病変を呈し、・膀胱直腸障害・感覚障害を来す。MSの脊髄病変が短くな点と対照的である。
  • 症候群: 他に説明のつかない吃逆悪心嘔吐が数日〜数週間持続する。しばしばに先行する初発症状になる。
  • 脳幹症候群(・難治性)、症候群(症候性、視床下部機能異常)、候群(脳症様の広範)を呈することもある。
  • ⭐ 中年女性に好発し(AQP4陽性例は女性が約9割)、単相性ではなく再発を繰り返す経過をとる。再発のたびに障害が蓄積し回復が不完全なことが多く、MSより1回の発作の重症度が高い。

診断

2015年IPND基準が現行の国際的な診断枠組みで、の有無で要件が分かれる1

診断要件
陽性 6つの中核的臨床的特徴(・急性症候群・急性脳幹症候群・症候性/症候群・症候性候群)のうち1つ以上+抗体陽性+他疾患の除外
陰性・不明 異なる部位にまたがる2つ以上の中核的特徴(うち1つは・LETMを伴う症候群のいずれか)+追加のMRI要件(脊髄病変では3椎体以上のLETM等)+他疾患の除外

LETMは3椎体以上に及ぶ連続病変と定義され、MSの短い病変との鑑別点になる1

MOGADとの区別

陰性でNMOSD様の臨床像を示す患者の一部は、(MOGAD)という別個の疾患単位に分類される2

項目 AQP4陽性NMOSD MOGAD
標的抗原 アストロサイトのAQP4 のMOG
好発年齢・性差 中年女性優位(女性約9割) 小児〜若年に多く男女ほぼ同数
経過 再発性が主体 約半数は単相性
の回復 不完全なことが多い 重症も比較的良好なことが多い

治療

急性期とで戦略が異なる。

急性期

高用量を第一選択とし、反応不良例にはを追加する。

維持期(再発予防)

⚠️ MSのβ・など)は、NMOSDでは重篤な増悪と関連するため使用しない3。NMOSDと診断したら、MS治療薬へ切り替える前に必ずこの点を確認する。

現行のは抗体・補体を標的とする生物学的製剤が中心である3

薬剤 標的 主な試験 結果の概要
補体C5 PREVENT 再発96例中3例 対 47例中20例(HR 0.06)
サトラリズマブ SAkuraSky/SAkuraStar いずれも有意な再発リスク低下
CD19(B細胞) N-MOmentum 発作174例中21例 対 56例中22例(HR 0.27)
リツキシマブ CD20(B細胞) RIN-1 リツキシマブ群は72週間で再発ゼロ

・サトラリズマブは試験でNMOSD向けに直接検証された薬剤であるのに対し、リツキシマブは古くから使われてきたが試験のエビデンスは限定的という位置づけの違いがある3

まとめ

  • NMOSDはによるアストロサイトパチーで、脱髄は二次的な現象である点がMSと根本的に異なる。
  • 3椎体以上に及ぶLETM、重度症候群(治療抵抗性の吃逆・悪心・嘔吐)が特徴的な臨床像である。
  • 診断は2015年IPND基準を用い、陽性か陰性・不明かで要件が変わる。抗体陰性例の一部はMOGADという別疾患として区別する。
  • ⚠️ MSのはNMOSDを悪化させるため使用しない。 急性期はステロイドパルス+・サトラリズマブ・リツキシマブなどB細胞・補体を標的とする薬剤を用いる。

出典

  1. 1.International consensus diagnostic criteria for neuromyelitis optica spectrum disorders(International Panel for NMO Diagnosis (IPND) / Neurology・2015)6つの中核的臨床的特徴(視神経炎・急性脊髄炎・最後野症候群・急性脳幹症候群・症候性ナルコレプシーまたは間脳症候群・症候性大脳症候群)を定義し、抗AQP4抗体陽性例は中核的特徴1つ以上で診断できる一方、陰性・不明例は異なる部位にまたがる2つ以上の中核的特徴(うち1つは視神経炎・LETMを伴う脊髄炎・最後野症候群のいずれか)と追加のMRI要件を満たす必要があること、3椎体以上に及ぶLETMの定義、いずれの場合も他疾患の除外を要することを確認した。閲覧 2026-08-11
  2. 2.Recent progress in maintenance treatment of neuromyelitis optica spectrum disorder(Journal of Neurology・2020)PREVENT試験(エクリズマブ)で再発が96例中3例対プラセボ47例中20例(HR 0.06)、SAkuraSky/SAkuraStar試験(サトラリズマブ)で有意な再発リスク低下、N-MOmentum試験(イネビリズマブ)で174例中21例対プラセボ56例中22例(HR 0.27)と有意な発作抑制を示したこと、RIN-1試験でリツキシマブ群の再発が72週間でゼロだったこと、インターフェロンβ・フィンゴリモド・アレムツズマブ・ナタリズマブなど多発性硬化症の治療薬はNMOSDで重篤な増悪(catastrophic exacerbation)と関連することを確認した。閲覧 2026-08-11
  3. 3.Myelin Oligodendrocyte Glycoprotein Antibody-Associated Disease (MOGAD): A Review of Clinical and MRI Features, Diagnosis, and Management(Frontiers in Neurology・2022)MOGADが抗AQP4抗体陽性NMOSDとは別個の疾患単位として定義されること、発症年齢(MOGADは小児〜若年に多い)・性差(MOGADはほぼ1:1、AQP4陽性NMOSDは女性9:1)・再発率(MOGADは約半数が単相性)・回復(MOGADは重症発作後も比較的良好なことが多いのに対しAQP4陽性NMOSDは回復が不完全なことが多い)の違いを確認した。閲覧 2026-08-11