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Disease Atlas · 神経 · 疾患

歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症

Dentatorubral-pallidoluysian atrophy

別名
DRPLA歯状核赤核・淡蒼球ルイ体萎縮症Naito-Oyanagi病Haw River症候群
臓器系
神経精神
科目
NeurologyMedical Genetics and Immunology (Genetics)
トピック
神経内科 G3-12:運動過多性運動障害遺伝学 4.5:常染色体優性遺伝(AD II)
上位概念
脊髄小脳変性症
鑑別疾患
ハンチントン病
関連疾患
進行性ミオクローヌスてんかん
治療薬
レベチラセタムペランパネル
症状
小脳性運動失調ミオクローヌス舞踏運動発作発達退行
画像所見
小脳萎縮

🧠 全体像:(DRPLA)は ATN1 の CAG によるので、失調・・・・てんかん・精神症状という組み合わせで現れる1。⭐ 覚えるべき一点は「同じ病気なのに、発症年齢で別の病気に見える」ことである——20歳未満で発症すれば、20歳以降ならに似た不随意運動と認知症・精神症状として現れる1。⚠️ この分かれ目を決めているのはリピート長であり、リピート長は父から子へ伝わるときに大きく伸びる。 だから DRPLA では「家系のなかで世代を追うごとに若年化し、表現型が別物になる」ことが起こる。日本人集団に多い点も、国内の失調症・PME の鑑別で外せない理由になる1。

遺伝学

ATN1(第12染色体)のエクソン5にある CAG リピートが伸長し、伸長を持つが核内に蓄積して神経細胞を障害する。

区分 CAG リピート数 臨床的な意味
正常 6〜35 —
中間 35〜47 が減弱し、通常より軽症の表現型。⚠️ 不安定で、次世代に伝わるときにへ伸長しうる
病的() 48〜93 発症する

出典はいずれも GeneReviews による1。

⚠️ 「」にも例外がある。 51リピートを持ちながら81歳時点で無症候であった1例が報告されている1。境界域の数字を単独で断定材料にしない。

表現促進——父由来で26〜29年早まる

伸長リピートは子への伝達で著明に伸びる。その結果、父由来では罹患した父より26〜29年早く、母由来では罹患した母より14〜15年早く発症する1。

⭐ この非対称は臨床像にも出る。 てんかんを合併した DRPLA 患者では、父由来伝達の割合が母由来より高い傾向がある(2.47、95%CI 0.97〜6.27)2。⚠️ が1をまたぐので「傾向」までで止める。

💡 と同じ「父由来で伸びやすい」型のだが、DRPLA では前後する年数が桁違いに大きい。 父が50歳で失調と精神症状を出した家系の子が、10歳代でてんかんとを呈しうるということである。家族歴を「同じ病気が早く出る」ではなく「別の病気に見える形で早く出る」と読む。

疫学

  • 日本人集団で10万人あたり0.2〜0.71。日本人集団は欧州系より20〜35リピートの保有者が多く、これが伸長アレルの供給源になっていると考えられている1。
  • 全国では、の9.7%を占めて3番目に多い1。⚠️ 地域や対象の取り方で比率は変わるので、の項に載る地域集計の数字とそのまま比べない。
  • 別の日本の研究では、小児期発症のの最多原因であった1。
  • 日本以外にも存在する。ポルトガルでは10万人あたり0.33で2番目に多いであり、ポルトガルの家系は日本と同じを共有する1。South Wales では11.4%を占めるが、日本型は4家系中3家系でしか検出されず、だけでは説明できない1。

💡 「日本人の病気」と丸暗記すると、日本型を持たないを見落とす。 正しくは「日本人集団で頻度が高いが、他集団にも独立に生じる」。

発症年齢で分かれる2つの表現型

平均発症年齢は31.5歳だが、0歳から72歳までにわたる1。

若年発症(20歳未満) 成人発症(20歳以降)
CAG リピート 一般に65以上 一般に65未満
発達遅滞、進行性の知的障害、、てんかん=PME 表現型 失調および/または+
発作 (・)が早期、が後期 20〜40歳発症例にまれにみられる
認知・精神 進行性の低下 ・・・・・判断力低下・・・攻撃性
されやすい先 他の PME(・など) 、若年成人では精神疾患

いずれも GeneReviews の記述による1。

⚠️ 成人発症では「精神科入院」が診断の遅れを生む。 不随意運動と認知症が失調を覆い隠すことがあり、が前景に立つと精神疾患として扱われてしまう1。は注意・・・が落ちる一方で記憶は比較的保たれる——アルツハイマー型とは形が違う1。

  • 60歳を超える発症では、孤立性の失調、または失調+認知症で現れうる1。
  • まれな所見として・振戦・・がある1。

てんかん

⭐ てんかんは「若年発症の付随症状」ではなく、DRPLA のを左右する主役である。

⚠️ ただし「てんかんがあるほど予後が悪い」とは言えない。 同じは生存期間の中央値をてんかん合併例19年・非合併例15年と報告しており、合併群のほうがむしろ長い2。💡 てんかん合併群は発症年齢が若い(16.9歳 対 45.5歳)ので、「発症からの年数」は長く、「死亡時年齢」は若くなる。 と死亡時年齢を取り違えない。

DRPLA 患者1,191例を含む181研究のでは、てんかんを合併した患者は合併しない患者より発症年齢が若く(16.9歳 対 45.5歳)、CAG リピート数が多かった(66.7 対 59.2)2。

発作型 研究レベルの頻度
60.4%
36.0%
焦点性 15.8%
9.4%

数値はいずれも同による2。

⚠️⚠️ この表の「焦点性15.8%」を「はまれ」と読んではいけない。 同じ論文のは結果を「が高頻度に観察され(40.0〜76.5%)、とがこれに伴った(Focal seizures were frequently observed (40.0%–76.5%) alongside myoclonic and generalized tonic-clonic seizures.)」とまとめている2。⭐ 上表は「研究レベルの頻度」で、の40.0〜76.5%とは数え方が違う。 DRPLA を PME 表現型と結び付けて覚えるとを見落とすので、⚠️ は本症で普通に起こるという向きで押さえる。

⚠️ 「」の定義によって見える景色が変わる。 厳密なの定義を満たしたのはおよそ3分の1だが、およそ4分の3は発作をコントロールできないと報告されていた2。文献の「難治」という語を読むときは、どちらの数字かを確かめる。

脳波

所見 頻度
77.49%
37.98%
36.56%

数値は同による2。GeneReviews も、視覚刺激によるを伴うと、に対するを一般的所見として挙げている1。

診断

flowchart TD
    A["失調+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cognitive decline'>認知機能低下</span>+不随意運動<br>または PME 様の経過"] --> B["家族歴を3世代さかのぼる<br>(世代ごとの発症年齢と表現型を別々に聴く)"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='magnetic resonance imaging'>MRI</span>:小脳・脳幹(とくに<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Tegmentum pontis'>橋被蓋</span>)の萎縮"]
    C --> D["ATN1 CAG リピートの<span class='jp-term jp-term-diagram' title='targeted analysis'>標的解析</span>"]
    D --> E{"リピート数は"}
    E -->|"48以上"| F["DRPLA と確定"]
    E -->|"35〜47"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intermediate allele'>中間アレル</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='reduced penetrance'>浸透率減弱</span>・次世代で伸長しうる"]
    E -->|"35以下"| H["他の失調症・PME の原因を検索"]

⚠️ は、やを含む標準的な法では確実には検出されない1。「が陰性だったから遺伝性ではない」という推論が成り立たない——ATN1 のリピート数を測るを別に依頼する。これは全体に共通する落とし穴でもある。

画像

のは小脳と脳幹、とくにの萎縮で、 時の年齢と伸長 CAG リピート長の双方が萎縮の程度と相関する1。遅発成人発症・高齢発症例では、に多い小脳も記載される1。

💡 との鑑別では、この「小脳・脳幹の萎縮」が決め手になる1。で萎縮するのはであり、小脳・ではない。

治療

は無く、すべて対症的である1。

対象 内容
発作 標準的な1。では(64%)と(83%)が60%以上の研究で有効と記載され、は優先度を下げてよいと考えられた2
精神症状 適切な1
失調 とリハビリテーション1
認知症 程度に応じた環境と介護の調整1
小児 適切な教育プログラム1

⚠️ 避けるべき事項:全身麻酔は術中・術後の発作リスクを高めうる1。などの手術を計画するときに効いてくる注意である。

経過と予後

日本の22例(若年発症9例・成人発症13例)のによる3。

若年発症(9例) 成人発症(13例)
平均発症年齢 12.4±4.3歳 36.7±11.8歳
CAG リピート数 66.1±2.0(63〜68) 62.3±3.6(57〜68)
→(中央値) 3.0年 7.0年
→(中央値) 9.0年 12.0年
てんかんの頻度 100% 69.2%
  • 全例が失調とを示した3。
  • は22例中17例(77.3%)に導入され、その時期はになる時期とほぼ一致した3。⭐ 嚥下障害への備えを「になった時」と結びつけて予測できる。
  • 11例が死亡し、主な死因はと感染症であった3。
  • 別の症例集積では、が平均8年(0〜35年)、死亡時年齢が平均49歳(18〜80歳)と報告されている1。

⚠️ 数字は集団によって大きく違う。 GeneReviews が引く症例集積では成人発症の平均発症年齢が48歳1、上記22例の研究では36.7歳3である。同じく、GeneReviews は成人発症の発作を「20〜40歳発症例にまれ」と記す1のに対し、この22例では成人発症群の69.2%にてんかんがあった3。成人発症群の年齢構成が違えば、てんかんの頻度もリピート長も変わる——コホートの発症年齢分布を見ずに頻度だけを引き写さない。

別称

Naito-Oyanagi 病、Haw River 症候群、ATN1 関連とも呼ばれる1。Haw River 症候群は米国の一家系に対して別個に付けられた病名で、同じ疾患である1。文献検索でこの名を見たら DRPLA として読む。

まとめ

  • ATN1 の CAG による疾患。失調・・・・てんかん・精神症状の組み合わせ。
  • ⭐ 発症年齢で表現型が変わる。20歳未満は PME(リピート65以上が多い)、20歳以降は失調++精神症状(65未満が多い)。
  • ⚠️ が強い。父由来で26〜29年、母由来で14〜15年早まる。 家系内で「別の病気に見える形で」若年化する。
  • 日本人集団で10万人あたり0.2〜0.7、の9.7%。ただしポルトガル・South Wales にも存在する。
  • ⚠️ ・ではを確実に検出できない。 ATN1 のを別に出す。
  • MRI は小脳と脳幹(とくに)の萎縮。(萎縮)との鑑別点。
  • 治療は対症的。発作には・が有効と報告され、の優先度は下げてよい。⚠️ 全身麻酔は周術期の発作リスクを高める。
  • 予後は不良で、若年発症ほど進行が速い(からまで中央値3.0年)。死因は・感染症が主。

出典

  1. 1.DRPLA(GeneReviews, University of Washington, Seattle・2023)2023年9月21日更新版(初版1999年8月6日)の全文を取得して確認した。DRPLAがATN1のCAGリピート伸長によるヘテロ接合性の常染色体顕性疾患であり、発症年齢によらず失調・認知機能低下・ミオクローヌス・舞踏運動・てんかん・精神症状の5徴(原文はfive cardinal features)で特徴づけられること、発症年齢が0〜72歳(平均31.5歳)にわたること、20歳未満発症例はミオクローヌス・てんかん・進行性の知的機能低下を示し20歳以降の発症例は失調・舞踏アテトーゼ・認知症または精神症状を示すこと。リピート数の区分が正常6〜35、中間35〜47(浸透率減弱、通常より軽症の表現型。不安定で次世代で完全浸透アレルへ伸長しうる)、病的(完全浸透)48〜93であること、ただし51リピートで81歳時に無症候であった1例が報告されていること。発症年齢と伸長リピート長に逆相関があり、若年発症は一般に65リピート以上、成人発症は一般に65リピート未満と関連すること。伸長は子への伝達で著明に伸び、父由来では罹患した父より26〜29年、母由来では罹患した母より14〜15年早く発症すること(表現促進)。別称としてNaito-Oyanagi病・Haw River症候群・ATN1関連歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症があること。日本人集団で有病率が10万人あたり0.2〜0.7であり、日本人集団は欧州系より20〜35リピートの保有者が多いこと、全国疫学調査ではDRPLAが常染色体顕性失調症の9.7%を占め3番目に多いこと、別の日本の研究では小児期発症小脳失調の最多原因であったこと。ポルトガルでは有病率10万人あたり0.33で2番目に多い常染色体顕性失調症であり、ポルトガルの家系は日本と同じハプロタイプを共有すること、South Walesでは11.4%を占め日本型ハプロタイプは4家系中3家系でしか検出されず創始者効果だけでは説明できないこと、韓国3.4%・シンガポール3.4%・ポルトガル2〜11.2%の報告があること。若年発症型は発達遅滞・進行性の知的障害・ミオクローヌス・てんかんを特徴とし進行性ミオクローヌスてんかん(PME)表現型と呼ばれること、全般発作(非定型欠神・ミオクロニー発作)が経過の早期に、全般強直間代発作が後期にみられうること、視覚刺激による反射発作を伴う光感受性と間欠的光刺激に対する脳波上の光突発反応が一般的所見であること。成人発症型では失調および/または舞踏アテトーゼに人格変化が加わり、不随意運動と認知症が失調を覆い隠すことがあること、行動障害が妄想・幻覚・抑うつ気分・アパシー・脱抑制・判断力低下・衝動性・易刺激性・攻撃性からなり精神科入院に至って鑑別を難しくすること、認知機能低下は注意・遂行機能・意味流暢性・視覚構成能力の低下が主で記憶は比較的保たれること、20〜40歳発症例ではまれに発作がみられること、60歳超では孤立性の失調または失調+認知症で発症しうること、まれな所見としてパーキンソニズム・振戦・反射亢進・後索性感覚障害があること。ある症例集積では成人発症の平均発症年齢が48歳、罹病期間が平均8年(0〜35年)、死亡時年齢が平均49歳(18〜80歳)であったこと。診断はATN1のCAGリピート伸長の分子遺伝学的検査によること、従来は標的解析に依拠してきたが、リピート伸長は多遺伝子パネルやエクソームシークエンシングを含む標準的な次世代シークエンシング法では確実には検出されないこと。MRIの典型所見が小脳と脳幹とくに橋被蓋の萎縮であり、MRI時の年齢と伸長CAGリピート長の双方が萎縮の程度と相関すること、遅発成人発症・高齢発症例では小脳白質病変(傍虫部に多い)も記載されること。治療は対症的で、発作に標準的な抗発作薬、精神症状に適切な向精神薬、失調にリルゾールとリハビリテーション、認知症の程度に応じた環境と介護の調整、小児には適切な教育プログラムを行うこと。避けるべき事項として全身麻酔が術中・術後の発作リスクを高めうること。成人発症でHuntington病との鑑別が問題になり、失調の存在と画像上の小脳・脳幹(とくに橋被蓋)萎縮が鑑別に重要であること。閲覧 2026-09-04
  2. 2.Epilepsy in dentatorubral-pallidoluysian atrophy: A systematic review and meta-analysis(Epilepsia・2026)DRPLA患者1,191例を含む181研究のシステマティックレビューとメタ解析で、てんかんを合併した患者は合併しない患者より発症年齢が若く(16.9歳[95%CI 13.76〜20.76]対45.5歳)、CAGリピート数が多かったこと(66.7[95%CI 63.63〜69.84]対59.2[95%CI 55.67〜62.92])。発作型の研究レベルの頻度が強直間代60.4%・ミオクロニー36.0%・焦点性15.8%・てんかん重積9.4%であったこと。⚠️ ただし抄録の Results は別の数え方で「Focal seizures were frequently observed (40.0%–76.5%) alongside myoclonic and generalized tonic-clonic seizures.」と述べており、焦点発作を高頻度としているため、15.8% を「焦点発作はまれ」と読んではならないこと。抄録はまた「DRPLA patients with epilepsy showed a higher likelihood of paternal versus maternal inheritance (odds ratio = 2.47 [95% CI = .97-6.27])」および巨大体性感覚誘発電位が2例のみで27例では認めなかったことを述べていること。DRPLA関連てんかんのおよそ3分の1が薬剤抵抗性てんかんの厳密な定義を満たした一方、およそ4分の3が発作をコントロールできないと報告されていたこと。脳波では発作間欠期てんかん性放電77.49%・光突発反応36.56%・徐波バースト37.98%であったこと。レベチラセタム(64%)とペランパネル(83%)が60%以上の研究で有効と記載され、ナトリウムチャネル遮断薬は優先度を下げてよいと考えられること。生存期間の中央値がてんかん合併例19年・非合併例15年であったこと。本レビューはDRPLA全体に占めるてんかん合併の割合そのものは示していない。閲覧 2026-09-04
  3. 3.Natural History and Progression of Dentatorubral-Pallidoluysian Atrophy (DRPLA): A Retrospective Study of 22 Patients(Movement Disorders Clinical Practice・2025)DRPLA患者22例(若年発症9例・成人発症13例)の後方視的研究で、平均発症年齢が若年発症群12.4±4.3歳・成人発症群36.7±11.8歳、CAGリピート数が若年発症群66.1±2.0(63〜68)・成人発症群62.3±3.6(57〜68)であったこと。歩行障害から車椅子までの期間の中央値が若年発症3.0年・成人発症7.0年、歩行障害から寝たきりまでが若年発症9.0年・成人発症12.0年であったこと。経腸栄養が17例(77.3%)に導入され、その時期が寝たきりになる時期とほぼ一致したこと。11例が死亡し主な死因が誤嚥性肺炎と感染症であったこと。全例が失調と認知機能障害を示し、てんかんの頻度が若年発症群100%・成人発症群69.2%であったこと。閲覧 2026-09-04