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Symptoms · Published

舞踏運動

Chorea

別名
舞踏病コレア
臓器系
神経
科目
NeurologyPharmacology
トピック
神経内科 G3-12:運動過多性運動障害薬理学 A22:神経変性疾患治療薬(錐体外路系・脳代謝賦活薬)
関連疾患
Lesch-Nyhan症候群バセドウ病ハンチントン病抗リン脂質抗体症候群全身性エリテマトーデス糖尿病性ケトアシドーシス・高血糖高浸透圧症候群

🧠 全体像は、不規則・速い・予測不能で、ある身体部位から別の部位へ流れるように移り変わる不である。の中では、緩徐にくねる、近位優位・大振幅のと病態生理を共有する連続体の中間に位置し、三者が混在するときは臨床的にと呼ばれる。原因は遺伝性・自己免疫性・代謝・薬剤性・妊娠随伴性の5群に整理でき、群ごとにと可逆性がまったく異なるため、「がある」で思考を止めず、どの群に属するかを最初に絞り込むことが診療の本体になる。

定義と用語の整理

患者や家族はを「そわそわしている」「落ち着きがない」「手足が勝手に動く」「踊っているように見える」と表現することが多く、医学用語としての「」に自分からたどり着く患者はまれである。軽度で目立たない場合はや単なる落ち着きのなさ、不安症状と区別がつきにくい。

は、大脳基底核のが破綻して視床-皮質路がされるという同一の病態生理を共有する連続体であり、振幅・速度・部位優位性によって呼び方が変わる。

運動 速度・性状 部位優位性
速く不規則、部位を移りながら流れるように出現 遠位優位のことが多いが全身にも及ぶ
緩徐で連続的にくねる 遠位(手指・顔面)優位
の極型で大振幅・投げ出すような動き 近位優位、片側性が典型的

💡 同一症例の経過中にからへ、あるいはが混在するとして移行することも珍しくなく、境界を厳密に引く必要はない。振幅・部位優位性による詳しい鑑別軸はのノートを参照。

他のとの対比は次のとおりである。

運動 速度・律動性 な抑制
速い、律動性を欠く 抑制できない
持続性〜間欠性の捻転・異常姿勢 抑制できない
で一瞬(100ミリ秒未満のことが多い) 抑制できない
反復的だがを伴う 一時的に抑制可能
振戦 リズミカルな振動 抑制できない

だけがと一時的な抑制を特徴とし、この一点がを含む他の不全般との最大の鑑別点になる。

病態生理

の直接の機序は、大脳基底核のが何らかの形で機能を失い、視床から大脳皮質への出力がされることに集約される。原因は機序で5群に整理すると理解しやすい。

代表疾患・状態 機序の要点
遺伝性 など 線条体のニューロンを中心とした進行性変性
自己免疫性 )、 による、またはを介した血管・基底核障害
代謝・ などの甲状腺機能亢進症、高血糖症候群 神経細胞は保たれたまま神経伝達・だけが乱れる可逆的な変化
薬剤性 、抗精神病薬()、フェニトインなどの ドパミン系の過剰刺激、または慢性後の受容体感受性変化
妊娠随伴性 既存のの素因が妊娠のホルモン変化で顕在化することが多い

💡 同じ「」というでも、遺伝性は神経細胞そのものが失われるのに対し、代謝・は細胞が保たれたまま機能だけが乱れる。後者の方が原因の是正で可逆的になりやすいと理解すると、危険度と可逆性の判断がつながる。

⚠️ 見逃してはいけないもの

  • ⚠️ を見たらの合併を探す。 先行する咽頭炎からをおいて、他の所見がすでに消退した後にだけが単独で出現することがある1。孤発例でも心エコーでの合併を確認し、としてのの適応を判断する。
  • ⚠️ の初発症状のことがある。 はSLEでは稀な徴候だが陽性例に有意に多く、他のSLE所見に先行して単独で出現しうる2を確認し、陽性であればの適応も検討する。
  • ⚠️ による)は血糖是正で可逆的な、見逃してはいけない治せる原因である。 基底核のMRI T1高信号・CTを伴うことが多く3、脳卒中や変性疾患と誤認して不要な精査に進む前に血糖を確認する。
  • ⚠️ の診断は遺伝を伴う。 HTT遺伝子ので確定するが、への影響が大きいため、は本人の自己決定と心理的支援を整えた上で行う。詳細はのノートを参照。

鑑別の進め方

flowchart TD
  A["不規則・速い・部位を移る不<span class='jp-term jp-term-diagram' title='voluntary motor function (voluntary movement)'>随意運動</span>"] --> B{"律動性・随意抑制の可否を確認"}
  B -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='voluntary'>随意的</span>に抑制できる・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='premonitory urge'>前駆衝動</span>あり"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tic'>チック</span>として評価する"]
  B -->|"持続性の捻転・異常姿勢"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dystonia'>ジストニア</span>として評価する"]
  B -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='electric-shock-like'>電撃様</span>で一瞬"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='myoclonus'>ミオクローヌス</span>として評価する"]
  B -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chorea'>舞踏運動</span>と判定"| F{"発症の経過は"}
  F -->|"急性・亜急性"| G["薬剤歴・血糖・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='preceding infection'>先行感染</span>歴を確認"]
  F -->|"亜急性〜慢性・進行性"| H["家族歴を確認"]
  G --> I{"高血糖があるか"}
  I -->|"あり"| J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='non-ketotic hyperglycemia'>非ケトン性高血糖</span>による<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='chorea (disease)'>舞踏病</span>を考慮する"]
  I -->|"なし"| K["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='preceding infection'>先行感染</span>・薬剤・<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='antiphospholipid antibody'>抗リン脂質抗体</span>を検索する"]
  H -->|"陽性"| L["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Huntington&#39;s disease'>ハンチントン病</span>を疑い<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='CAG repeat testing'>CAG反復数検査</span>を検討する"]
  H -->|"陰性"| M["甲状腺機能・自己抗体・<br>妊娠の有無を確認する"]
  K --> N["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Sydenham chorea'>Sydenham舞踏病</span>なら<br>心エコーで<span class='jp-term jp-term-diagram' title='carditis'>心炎</span>を評価する"]

対症療法の考え方

原因治療が第一であり、症状抑制薬はそれを妨げない範囲で用いる。の多くは支持療法だけで自然軽快し、は血糖是正そのものが治療になる。に伴うは、免疫が中心になる2

機能障害が強く原因治療だけでは症状が残る場合、にはなどのを検討する。、低用量のなど)も、原因を問わずそのものを軽減させる対症療法として使われることがある。

まとめ

  • は不規則・速い・予測不能で部位を移りながら生じる不で、と病態生理を共有する連続体をなす。
  • ・振戦とは、律動性とな抑制の可否で鑑別する。だけがを伴い一時的に抑制できる。
  • 原因は遺伝性・自己免疫性・代謝・薬剤性・妊娠随伴性の5群に整理でき、群ごとにと可逆性が異なる。
  • の合併を、SLE・と初発症状となりうる点を、は血糖是正による可逆性を、それぞれ見逃してはいけない。
  • の診断は遺伝を伴う点を踏まえて検査を進める。
  • 治療は原因治療が中心で、機能障害が強い場合にによる対症療法を追加する。

出典

  1. 1.Revision of the Jones Criteria for the Diagnosis of Acute Rheumatic Fever in the Era of Doppler Echocardiography: A Scientific Statement From the American Heart Association(American Heart Association・2015)改訂JONES基準がSydenham舞踏病を大基準の一つとして扱い、先行溶連菌感染から潜時をおいて他の大基準所見がすでに消退した後に舞踏病だけが単独で出現しうること、この場合も心エコーで潜在性心炎の合併を確認すべきことを確認した。閲覧 2026-08-03
  2. 2.Hyperglycemia-induced hemichorea-hemiballismus syndrome – a systematic review(Archives of Endocrinology and Metabolism・2024)高血糖誘発性の舞踏病-バリズム症候群は、重度の高血糖・舞踏様不随意運動・特徴的なMRI所見(基底核異常が89.2%、T1高信号が典型)の三徴で捉えられ、稀だが血糖是正で可逆的な病態であることを確認した。閲覧 2026-08-03
  3. 3.Chorea as a Manifestation of Systemic Lupus Erythematosus(Cureus・2023)舞踏運動はSLEでは稀な徴候(累積発生率0.6%)だが抗リン脂質抗体陽性例に有意に多く(92% 対 25%)、他のSLE所見に先行して単独で出現しうること、治療は免疫抑制療法(ステロイドなど)・抗血小板/抗凝固療法・ハロペリドールなどの神経遮断薬を組み合わせることを確認した。閲覧 2026-08-03