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Disease Atlas · 神経 · 疾患

有棘赤血球舞踏病

Chorea-acanthocytosis

別名
VPS13A病舞踏病有棘赤血球症
臓器系
神経血液
科目
Neurology
トピック
神経内科 G3-12:運動過多性運動障害神経内科 G2-18:大脳基底核系の障害
鑑別疾患
McLeod症候群ハンチントン病
治療薬
テトラベナジンボツリヌス毒素バルプロ酸レベチラセタムフェニトイン
症状
舞踏運動有棘赤血球構音障害嚥下障害発作末梢神経障害
検査値
クレアチンキナーゼ

🧠 全体像:は、進行性の・・行動変化というそっくりので始まるの変性疾患である。しかし他のには無い所見が2つある——食べようとすると舌が性に突出して食物を口の外へ押し出してしまうと、舌・口唇を噛み続けて重い感染に至る性の・である1。名前が「」であるにもかかわらず、⚠️ のは感度が低く、無くても否定できない。この2点——口の所見で疑い、赤血球所見に頼らない——がこの疾患の掴みどころになる。

ハンチントン病との対比

臨床像が重なるため、両者は常に並べて考える。

項目
遺伝形式 (VPS13A、9q21.2) (HTTの)
家族歴 同胞発症。親世代は無症状のことが多い 世代を貫く。を伴う
平均発症年齢 約30歳 成人が中心
約半数。初発症状になりうる まれ1
口舌の所見 ・性の/ 目立たない
ほぼ全例で消失() 保たれることが多い
大多数で上昇 通常は正常1
末梢血の 通常5〜50%(無いこともある) 通常みられない

⭐ 鑑別の実務では「けいれん・消失・上昇」の3点が効く。 を疑ってHTTのCAG反復数を測り正常だったとき、この3点が揃っていればへ舵を切る1。

神経有棘赤血球症候群という枠組み

は単独で覚えるのではなく、という枠の中でと対にして覚える2。両者は・・末梢神経障害・・・精神症状という臨床像を共有し、でもXK蛋白がVPS13Aと複合体を形成する3。

項目 ()
遺伝子・遺伝形式 VPS13A(9q21.2)・ XK(Xp21.1)・X連鎖性(罹患するのはほぼ男性)
血液型 正常 欠如・の発現減弱(McLeod)
心病変 まれ 約60%に・心房細動・3
5〜50%。欠如することがある 通常8〜30%。ほぼ全例に存在
溶血・肝脾腫 目立たない がほぼ全例。約1/3に肝脾腫3

⚠️ では輸血が危険になりうる。 に対するを持つとで強い反応を起こすため、Kx陰性血または・適合血を用いる3。またが早期死亡の主要因であり、診断がついた時点で心機能の評価が要る。

症候

flowchart TD
    A["VPS13A(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chorein'>コレイン</span>)の欠損"] --> B["線条体を中心とする<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neurodegeneration'>神経変性</span>"]
    A --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='erythrocyte membrane'>赤血球膜</span>の変形(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acanthocyte'>有棘赤血球</span>)"]
    B --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chorea'>舞踏運動</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dystonia'>ジストニア</span>"]
    B --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cognitive decline'>認知機能低下</span>・精神症状"]
    B --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='seizure'>けいれん発作</span>"]
    D --> G["口舌に強く出ると<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='feeding dystonia'>摂食ジストニア</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='self-harm'>自傷</span>性の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tongue biting'>咬舌</span>"]
    A --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='axonal neuropathy'>軸索性ニューロパチー</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='myopathy'>ミオパチー</span>"]
    H --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Achilles reflex'>アキレス腱反射</span>消失・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='muscle wasting (muscle atrophy)'>筋萎縮</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='creatine kinase (CK)'>クレアチンキナーゼ</span>上昇"]
  • 運動症状:全身ので始まることが多い。約1/3ではを伴う(・・)が優勢な病像へ移行する1。
  • ⚠️ 口舌の所見が診断の鍵。 摂食時に舌がに突出して食物を押し出すは、食べたいのに食べられないという特異な訴えになる。持続的な・はに至り、重篤で治療に難渋する感染症を起こしうる1。
  • ⚠️ 頭部のは突然のを起こし、頭頸部外傷のリスクになる1。
  • は約半数にみられ、運動障害に先行して初発症状となることがある。が多い1。
  • 末梢神経・筋:ほぼ全例でが消失し、半数以上で・筋力低下を伴う1。
  • 認知・精神:記憶との進行性低下に加え、約2/3で・抑うつ・・・が現れる1。

診断

⚠️ が無いことで除外しない。 末梢血のは通常5〜50%だが、欠如する例や病初期には出ず経過中に出現する例がある1。しかも塗抹の判読自体が脆く、保存から塗抹作製まで6時間を超えるとによる変化が生じ、ほぼ全ての赤血球に均一な突起が分布して判別できなくなる2。赤血球形態そのものの読み方はのノートに委ねる。

  • :大多数で上昇する。の鑑別でルーチンには測らない項目なので、意識して出す。
  • MRI:萎縮との拡大、体積の減少。の合併が多い1。
  • 確定診断:VPS13Aの遺伝学的検査による。補助として赤血球のでVPS13A()蛋白の欠如・著減を示せるが、⚠️ では蛋白量が保たれるため、正常でも否定できない1。
  • の除外:男性例では Kell/Kx 血液型の検査と心機能評価を並行する。

治療と予後

は無く、多職種による対症的管理になる1。

標的 対応
、
(口舌を含む)
バルプロ酸・・フェニトイン
嚥下障害・ 、必要に応じて、補助機器
精神症状 抗うつ薬・抗精神病薬
(・) 歯科などによる物理的保護と感染の管理

死亡年齢は28〜61歳と幅があり、原因不明の突然死や中の死亡が複数報告されている1。けいれんの管理と誤嚥・感染の予防が、そのまま生命予後の管理になる。

まとめ

  • はVPS13A()の疾患で、平均約30歳に・・行動変化のhuntingtonismで発症する。
  • ⭐ 他のに無い所見は、摂食時に舌が突出して食物を押し出すと、に至る・である。head dropと(約半数)も特徴的。
  • との鑑別は、けいれん・消失・上昇の3点で切る。
  • ⚠️ は5〜50%と幅があり欠如もするため、無いことで除外しない。確定はVPS13Aの遺伝学的検査で、の正常も否定材料にならない。
  • とはとして対になり、X連鎖性・欠如と減弱・約60%の心病変・輸血時のという点で区別する。
  • 治療は対症的で、死亡年齢は28〜61歳。突然死とけいれん時死亡の報告があり、けいれん管理・誤嚥予防・感染の管理が予後を左右する。

出典

  1. 1.VPS13A Disease (Chorea-Acanthocytosis)(GeneReviews(University of Washington, Seattle)・2023)VPS13A病の平均発症年齢が約30歳で、進行性の運動障害・認知機能低下・行動変化という「huntingtonism」の三徴を呈すること、摂食時に舌が動作誘発性にジストニア性の突出を起こして食物を口外へ押し出す摂食ジストニアが特徴的であること、行動的強迫またはチック・舞踏運動による持続的な咬舌・咬唇が自傷に至り重篤で難治な感染症を起こしうること、けいれん発作が約半数にみられ初発症状となることがあり全般強直間代発作が多いこと、ほぼ全例でアキレス腱反射が消失し半数以上で筋萎縮・筋力低下を伴うこと、約2/3に無気力・抑うつ・易刺激性・強迫行動・自殺念慮などの精神症状が出ること、約1/3ではジストニアを伴うパーキンソニズム(固縮・動作緩慢・姿勢反射障害)が優勢となること、頭部の脱力(head drop)で頭頸部外傷のリスクがあること、血清クレアチンキナーゼが大多数で上昇すること、末梢血の有棘赤血球は通常5〜50%だが欠如する例や病期後半にのみ出現する例があること、MRIで尾状核萎縮と側脳室前角の拡大・被殻体積の減少・高頻度の海馬硬化がみられること、原因遺伝子が9q21.2のVPS13A(コレイン)で常染色体潜性遺伝であること、赤血球のウエスタンブロットでVPS13A蛋白の欠如・著減を検出できるがミスセンス変異では蛋白量が保たれるため正常でも否定できないこと、根治療法は無く運動症状にドパミン拮抗薬・テトラベナジン・ジストニアへのボツリヌス毒素、けいれんにフェニトイン・バルプロ酸・レベチラセタム、嚥下障害に言語療法と胃瘻、精神症状に抗うつ薬・抗精神病薬という対症的な多職種管理を行うこと、死亡年齢が28〜61歳で原因不明の突然死やけいれん時の死亡が複数報告されていること、鑑別ではMcLeod症候群がhuntingtonism・摂食ジストニア・head dropを共有しKx抗原欠如とKell抗原減弱・心病変で区別されること、ハンチントン病ではけいれんがはるかに少なくクレアチンキナーゼ上昇と有棘赤血球が通常みられずアキレス腱反射消失も少ないことを確認した。閲覧 2026-09-03
  2. 2.Acanthocytosis(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)神経有棘赤血球症候群の主要な2型が常染色体潜性の舞踏病有棘赤血球症とX連鎖性のMcLeod症候群であり、舞踏運動・ジストニア・末梢神経障害・ミオパチー・けいれん発作・精神症状を共通の臨床像とすること、これらに伴う溶血性貧血は通常軽度だが輸血を要することがあること、echinocyteは有棘赤血球より小型で均一な突起を持つ点で区別されること、末梢血塗抹は新鮮な標本で判読することが決定的に重要で保存から塗抹作製まで6時間を超えて遅れるとEDTAによる棘状変化が生じほぼ全ての赤血球に均一な突起が分布することを確認した。閲覧 2026-09-03
  3. 3.McLeod Neuroacanthocytosis Syndrome(GeneReviews(University of Washington, Seattle)・2021)McLeod症候群がXp21.1のXK遺伝子によるX連鎖性疾患であること、発症は18〜61歳で多くは40歳未満に症候化すること、進行性の舞踏運動・認知機能低下(半数以上で前頭葉型)・精神症状(経過中に80%)を三徴とし約40%にけいれん発作、深部腱反射消失を伴うこと、赤血球のKx抗原が欠如しKell血液型抗原の発現が減弱するというMcLeod血液型表現型を示し、同種抗体により不適合輸血で強い反応を起こすためKx陰性血または自己血・適合同種血を用いる必要があること、約60%に拡張型心筋症・心房細動・頻脈性不整脈などの心病変が生じ頻脈性不整脈が早期死亡の主要因であること、罹患男性の全例で血清クレアチンキナーゼが上昇し(最高4,000 U/L)有棘赤血球は通常8〜30%でほぼ全例に存在し、約1/3に代償性溶血に由来すると考えられる肝脾腫を認めること、XK蛋白がVPS13Aと複合体を形成する脂質輸送関連蛋白であり両疾患が分子経路を共有すると考えられることを確認した。閲覧 2026-09-03