脳神経内科学

脳神経内科学 · G3-12

運動過多性運動障害

G3-12: Hyperkinetic movement disorders

前提:正常
錐体外路系(大脳基底核との関連)運動機能における小脳と大脳基底核の役割。
疾患
Lafora病McLeod症候群Meige症候群Unverricht-Lundborg病シアリドーシスジストニアジストニア重積ハンチントン病むずむず脚症候群歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症進行性ミオクローヌスてんかん妊娠性舞踏病本態性振戦有棘赤血球舞踏病
症状
バリズムミオクローヌス斜頸舞踏運動
検査値
HTT遺伝子CAG反復数検査
スコア
統一ハンチントン病評価尺度(UHDRS)

🧠 全体像:は「動きの形」を記述してから原因を絞る。、、、、振戦、、を区別する。

現象学による分類

運動 見分ける特徴 代表的原因
不規則・速い・予測不能で部位間を流れる 、、薬剤、甲状腺機能亢進、SLE、妊娠
持続性または間欠性収縮による反復性捻転・ 遺伝性、脳卒中、外傷、、薬剤、
突発的で短い運動 てんかん、、低酸素、CJD、薬剤
運動または音声。があり一時的に抑制可能 Tourette症候群、持続性運動/症
振戦 リズミカルな振動 本態性、Parkinson病、、薬剤
緩徐で連続するくねる運動 、基底核病変、
大振幅で投げ出すような近位肢運動 対側周辺の脳卒中など

💡 の代表的原因であるは、のCAG反復数で発症・が決まる(26以下:正常、27〜35:、36〜39:、40以上:)。反復数が多いほど発症年齢は早く、父親からの伝達でさらに伸びやすい()1。

⚠️ 無症候のへの発症前遺伝学的検査は、動機・知識・結果の影響を確認する検査前面談を経て行い、小児・未成年への実施は原則推奨されない1。世界の4,527例のコホートでは、自殺既遂5例・21例・精神科入院18例の計44例(0.97%)に破局的事象が生じ、無症候者で検査後1年以内に事象を経験した13例中11例(84.6%)は発症リスク増加の結果を受けていた。検査前5年以内の精神科既往と無職であることがリスク因子だった2。

💡 薬剤性の運動過多症状のうちは、数か月〜年単位の後に生じる口部・舌・顎のな不随意運動を主体とする。 を行った57件ののでは、年間発症率はで6.5%、で2.6%であり、第二世代はリスクを下げるが消失させない(0.47)3。は選択的阻害薬として米国で承認されており、適応は成人のとに伴うの2つである(前者は40mg/日で開始し1週後に80mg/日へ、後者は40mg/日で開始し2週ごとに20mgずつ80mg/日へ増量する)4。

⚠️ のは「患者における抑うつと・自殺行動」の1本で、集団に限定されている。 同薬の添付文書は、阻害薬が患者の抑うつ・を増やしうるとしたうえで、を治療する臨床上の必要性とこのリスクを秤にかけること、抑うつ・・行動の変化の出現/増悪を綿密に監視することを求めている。の適応にはこのは掛からない4。

💡 Tourette症候群の頻度は小児人口で0.3〜0.9%(プール推定0.52%)とされ、地域住民ベースの調査は臨床受診例に基づく調査より高い推定値になりやすい5。は平均4〜6歳で発症し10〜12歳で最も重症となったのち、多くは思春期を通じて軽快し、成人早期までにおよそ4分の3で著明な軽快、3分の1超で消失に至る6。

⚠️ は大脳皮質起源が最も多いが、皮質下・脳幹・脊髄・を起源とするものもある7。

診断の流れ

flowchart TD
  A["異常運動を観察"] --> B["リズム・速度・持続・分布・誘発条件"]
  B --> C["薬剤、発症年齢、家族歴、感染・妊娠・代謝"]
  C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neurological examination'>神経診察</span>と動画記録"]
  D --> E["必要に応じ<span class='jp-term jp-term-diagram' title='magnetic resonance imaging'>MRI</span>、EEG、代謝・免疫・遺伝検査"]

治療の原則

むずむず脚症候群

は、安静時・夕夜間に悪化し、脚を動かすと軽快する不快感と運動衝動を特徴とする。

まとめ

  • 原因名より先に異常運動のを正確に記述する。
  • 薬剤性、代謝性、免疫性、遺伝性を系統的に探す。
  • に阻害薬を用いるときは、抑うつ・の(集団に限定)を踏まえて精神症状を監視する。
  • RLSでは鉄評価とを軸にし、のに注意する(2025年AASM指針)。

出典

  1. 1.Huntington Disease(GeneReviews(University of Washington, Seattle / NCBI Bookshelf)・2026)GeneReviewsのHuntington病の章で、HTT遺伝子のCAG反復数の区分(26以下:正常、27〜35:中間帯、36〜39:浸透率減弱、40以上:完全浸透)と、反復数が多いほど発症年齢が早くなり父親からの伝達でさらに伸長しやすいこと(表現促進現象)を確認した。また同章のGenetic Counseling節で、無症候の血縁者に対する発症前検査は動機・HDの知識・陽性陰性結果の影響・神経学的評価を確認する検査前面談を経て行うべきであること、小児・未成年への実施は原則推奨されないことを確認した閲覧 2026-08-27
  2. 2.A worldwide assessment of the frequency of suicide, suicide attempts, or psychiatric hospitalization after predictive testing for Huntington disease(American Journal of Human Genetics・1999)世界中の発症前検査センターを対象にした調査で、Huntington病の発症前遺伝学的検査を受けた4527例のコホート中44例(0.97%)に自殺既遂5例・自殺企図21例・精神科入院18例からなる破局的事象が生じたこと、無症候者で検査後1年以内に破局的事象を経験した13例中11例(84.6%)は発症リスク増加の結果を受けていたこと、検査前5年以内の精神科既往と無職であることが破局的事象のリスク因子であったことをResults節で確認した閲覧 2026-08-27
  3. 3.Tardive dyskinesia risk with first- and second-generation antipsychotics in comparative randomized controlled trials: a meta-analysis(World Psychiatry・2018)頭対頭比較を行った57件のランダム化比較試験(第一世代抗精神病薬アーム32・第二世代抗精神病薬アーム86)のメタ解析で、遅発性ジスキネジアの年間発症率が第一世代抗精神病薬で6.5%、第二世代抗精神病薬で2.6%であり、第二世代はリスクを下げるが消失させない(リスク比0.47)ことを抄録から確認した閲覧 2026-08-27
  4. 4.INGREZZA (valbenazine) and INGREZZA SPRINKLE capsules, for oral use — full prescribing information(米国FDA / DailyMed(Neurocrine Biosciences)・2026)添付文書(改訂表示は2026年4月)を開き、バルベナジンの適応が「成人の遅発性ジスキネジア」と「ハンチントン病に伴う舞踏運動」の2つであること、用量が遅発性ジスキネジアでは40mg1日1回から1週間後に80mg1日1回へ、ハンチントン病の舞踏運動では40mg1日1回から2週ごとに20mgずつ80mg1日1回へ増量するものであること、枠組み警告の見出しが「ハンチントン病患者における抑うつと自殺念慮・自殺行動」でありハンチントン病集団に限定された1本であること、その本文がVMAT2阻害薬は同患者の抑うつ・自殺念慮を増やしうるとして舞踏運動治療の必要性とリスクを秤にかけ抑うつ・自殺念慮・行動変化の出現/増悪を綿密に監視するよう求めていることを確認した閲覧 2026-09-08
  5. 5.Population prevalence of Tourette syndrome: a systematic review and meta-analysis(Movement Disorders・2015)小児におけるTourette症候群の人口有病率に関する系統的レビュー・メタ解析で、地域住民ベースの21研究を統合したプールされた有病率推定値が0.52%(95%信頼区間0.32〜0.85%)であり最終的な推定範囲を0.3〜0.9%としたこと、臨床受診例に基づく研究は地域住民ベースの研究より有意に低い推定値を示したことを抄録で確認した閲覧 2026-08-27
  6. 6.Clinical course of Tourette syndrome(Journal of Psychosomatic Research・2009)Tourette症候群のチック重症度の長期経過に関する総説で、チックの発症年齢は平均4〜6歳、最も重症となる年齢は平均10〜12歳であり思春期を通じて重症度は平均的に軽快していくこと、成人早期までにおよそ4分の3の患児でチック症状が著明に軽快し3分の1超がチックの消失に至ることをResults節で確認した閲覧 2026-08-27
  7. 7.Myoclonus: current concepts and recent advances(The Lancet Neurology・2004)ミオクローヌスの分類と概念に関する総説で、臨床的原因分類(生理的・本態性・てんかん性・症候性)に加え発生源による分類として大脳皮質が最も高頻度の起源であるが皮質下・脳幹・脊髄・末梢神経系を起源とするミオクローヌスも生じることを抄録で確認した閲覧 2026-08-27
  8. 8.Efficacy and safety of vesicular monoamine transporter 2 inhibitors for Huntington's disease chorea based on network meta-analysis(Frontiers in Pharmacology・2025)テトラベナジン・デューテトラベナジン・バルベナジンの3剤を比較したネットワークメタ解析で、舞踏運動スコア改善はテトラベナジンが最大だが有害事象発現率も最も高く、バルベナジンは重篤有害事象・脱落率で、デューテトラベナジンは全体的な忍容性で優れるという相対的な位置づけを確認した閲覧 2026-08-27
  9. 9.Behavior therapy for children with Tourette disorder: a randomized controlled trial(JAMA・2010)Tourette症・慢性チック症の9〜17歳児童・青年126例を対象とした無作為化観察者盲検比較試験で、8回・10週間の包括的行動的介入(CBIT)群はYale Global Tic Severity Scaleの改善が支持的療法・心理教育の対照群より有意に大きかったこと(ベースラインから24.7から17.1への低下 対 24.6から21.1への低下、効果量0.68)を確認した閲覧 2026-08-27
  10. 10.Treatment of restless legs syndrome and periodic limb movement disorder: an American Academy of Sleep Medicine clinical practice guideline(American Academy of Sleep Medicine / Journal of Clinical Sleep Medicine・2025)全文(PMC11701286)を取得して成人RLSの推奨文一覧を1件ずつ数えた。本ガイドラインは2024年版ではなく2025年1月のJ Clin Sleep Med 21巻1号137-152頁である。Good Practice Statementが増悪因子(アルコール・カフェイン・抗ヒスタミン薬・セロトニン作動薬・抗ドパミン薬・未治療の閉塞性睡眠時無呼吸)への対処を管理の第一歩とし、鉄補充の開始を成人でフェリチン75 ng/mL以下またはトランスフェリン飽和度20%未満なら経口または静注、75〜100 ng/mLでは静注のみ、小児ではフェリチン50 ng/mL未満とし、これらが一般人口の基準とは異なると明記していること。ガバペンチンエナカルビル・ガバペンチン・プレガバリン・静注フェリックカルボキシマルトースの4つが強い推奨(strong recommendation)で、低分子デキストラン鉄・フェルモキシトール・硫酸鉄・ジピリダモール・徐放オキシコドン等のオピオイド・両側高頻度腓骨神経刺激が条件付き推奨であること。レボドパ・プラミペキソール・経皮ロチゴチン・ロピニロールの4剤はいずれも「標準的な使用を推奨しない(conditional recommendation against standard use)」であり、4剤すべての推奨文に「短期使用による症状軽減を高く評価し長期使用の有害事象(特にオーグメンテーション)を低く評価する患者では用いてよい」という但し書き(Remarks)が付いていることを確認した閲覧 2026-09-08