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Disease Atlas · 神経 · 先天性疾患

Unverricht-Lundborg病

Unverricht-Lundborg disease

別名
EPM1ULD進行性ミオクローヌスてんかん1型
臓器系
神経
科目
Neurology
トピック
神経内科 G3-12:運動過多性運動障害神経内科 G2-29:てんかん発作とてんかん(鑑別診断・分類・原因)
上位概念
進行性ミオクローヌスてんかん
鑑別疾患
Lafora病
治療薬
バルプロ酸クロナゼパムピラセタムレベチラセタムブリバラセタムペランパネルトピラマートゾニサミド
症状
ミオクローヌス小脳性運動失調構音障害痙攣
検査値
脳波検査
禁忌薬
フェニトイン

🧠 全体像:はの中で最も頻度が高い病型で1、⭐ 「発作は薬で抑えられるのに、だけが進行して人をに追い込む」という非対称がすべてを規定する。原因はCSTBのという特殊な変異で、⚠️ 配列決定型の検査(パネル・)では原理的に検出できない——これを知らないと「遺伝学的検査は陰性でした」で診断が止まる2。⭐ が比較的保たれ、経過が緩徐で成人期まで生きる点でと正反対だが(対比表はそちらの項)、⚠️ 治療で最も重いのは足す薬ではなく外す薬である——フェニトインは神経症状を悪化させるだけでなくを加速させうる2。

遺伝——反復伸長という「見つからない変異」

⭐ 原因はCSTBのCCC-CGC-CCC-GCGの伸長である2。で、の伸長、または伸長と配列変異ので発症する2。

💡 CSTBはをコードする。 は科()の阻害因子であり、⭐ は機能喪失である——の伸長はCSTB mRNA量を対照の5〜10%まで低下させる2。

反復数 解釈
2〜3 正常2
12〜17 意義不明(不安定だが臨床的性状は不明)2
30以上 ⭐ 病的()2

💡 4〜11と18〜29という反復数は観察されていない2。中間の長さが存在しないということは、一度不安定化した反復が一気に伸びることを示唆する。

⚠️ 検出方法が診断の成否を分ける。

方法 同定できる割合
十二量体伸長の ⭐ 約90%2
約10%(フィンランド人では両者を合わせて約99%)2
⚠️ 配列決定型の・ ⚠️ を検出できない2

⚠️ これが実務上いちばんの落とし穴である。 を疑ってを出しても、最多の原因である本症は原理的に引っかからない。⭐ には専用の・、またはへの専用の情報解析を当てる1。

💡 は表現型にある程度対応する。 伸長の長さと発症年齢・重症度に相関があるとされる一方、同一家系内で反復長がほぼ同じでも重症度が異なる2。⚠️ (伸長+配列変異)の例は、発症がより早く、がより重く、発作がになることが多い2。

疫学と呼称

⭐ の中で最も発生頻度が高い21。世界中で発生するが、集積する地域がある。

地域 頻度
フィンランド ⭐ 世界で最も高い。 10万人あたり2、出生2万人に1人2(別の総説は10万人あたり1.9とする1)。💡 GeneReviewsはこの値を査読された数値ではなく個人的通信として記載している
北アフリカ(チュニジア・アルジェリア・モロッコ) が高いが、正確な数値は得られていない2

⚠️ 地名由来の旧称は使わない。 本症はかつて「バルト」「地中海」と呼ばれたが、⭐ 世界中で発生するため、これらの地名は誤解を招くのでもはや用いるべきでないとされている2。「地中海の病気」という覚え方をしない。

臨床像——発作とミオクローヌスの非対称

発症は6〜15歳で、ピークは12〜13歳である21。

flowchart TD
    A["6〜15歳で発症"] --> B["半数超:不随意の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='myoclonus'>ミオクローヌス</span>が初発"]
    A --> C["ほぼ半数:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tonic-clonic seizure'>強直間代発作</span>が初発"]
    B --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='action-induced'>動作誘発性</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='stimulus-sensitive'>刺激感受性</span><br>光・身体的労作・ストレスで誘発"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='proximal limb muscles'>四肢近位筋</span>優位・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='asynchronous'>非同期性</span><br>焦点性または多巣性"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='status myoclonus'>ミオクローヌス重積</span>に至りうる"]
    C --> G["発作は<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anti-seizure medication'>抗発作薬</span>でよく制御され<br>のちに消失することもある"]
    E --> H["最初の5〜10年で進行<br>約3分の1が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='wheelchair'>車椅子</span>"]
    A --> I["発症から数年後<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='ataxia'>運動失調</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='incoordination'>協調運動障害</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intention tremor'>企図振戦</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dysarthria'>構音障害</span>"]
    H --> J["抑うつ・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='emotional lability'>情動不安定</span><br>就学の中断"]

⭐ の性質がこの病気の本体である。 かつ(光・身体的労作・ストレス)で、優位・に出て、焦点性または多巣性を取り、連なって(意識が半ば失われる持続的な)に至りうる2。⚠️ 最初の5〜10年で進行し、約3分の1がを要する高度の障害に至る2。

💡 一方で発作のほうは制御できる。 は初期には少なく、その後3〜7年で頻度が増すが、適切なで後に完全に消失することもある2。⭐ 「発作が止まったから良くなった」と読まない——障害を作っているのはである。⚠️ には皮質下起源のものもあり、これはとくに制御が難しい2。

⭐ の記述には注意が要る。 、とくに記憶はおおむね正常範囲にとどまる2。⚠️ ただし「が保たれる」と丸めない——に依存する時間制限課題では成績が低く出る2。💡 これはによる出力の障害であって認知の障害ではないが、検査上は同じように「低下」として現れる。抑うつとは高頻度で、就学が中断されることも多い2。

診断——脳波は症状より先に異常になる

⭐ 本症のは「常に異常」であり、しかも症状が出る前から異常である2。

検査 所見
⭐ 症状発現前から常に異常。 がし、正常より遅いことがある。が著明で、の・突発を認める2
頭部MRI 正常2
遺伝学的検査 CSTBの(配列決定型検査では検出できない)2

⚠️ 発症時に最も紛らわしいのはである。 ⭐ 分ける鍵は2つ——が正常か、のが乱れていないか。 ではどちらも保たれ、予後もはるかに良い2。⚠️ 走る・スポーツをする・を使うといった動作が徐々にできなくなるという経過が加われば、良性のという枠を捨てる2。

⚠️ **KCNC1によるEPM7(MEAK)は本症と極めて類似した臨床像を示す2。💡 **こちらはなので、家族歴の型が手がかりになる。

との対比(発症年齢・進行速度・・の有無)はの項の対比表に譲る。全体の絞り込みの手順はの項が扱う。

治療

⚠️ は無く、薬物療法・リハビリテーション・が治療の柱である2。

位置づけ 薬剤・手段
第一選択 バルプロ酸——との頻度をともに減らす2
追加療法 ——に対しの承認を持つ2
⭐ 高用量2
双方に有効 ・・2
追加選択 ・2
結果が一定しない 2
非薬物 (発作を減らし、上の小脳機能を有意に改善したとの報告)2。・・、⚠️ 極端な刺激(光・・ストレス)を避けること2

⭐ ピラセタムの位置づけには用量反応の裏づけがある

⚠️ 「は効くらしい」で終わらせない。用量が決定的である。

典型的な本症の患者20例(17〜43歳)を対象とした多施設・・ので、経口1日9.6 g・16.8 g・24 gとが比較された3。

用量 結果
1日24 g ⭐ (評価尺度の補正合計スコア)で有意な改善(p=0.005)。項目でも運動障害(p=0.02)・機能障害(p=0.003)・による全般評価(p=0.002)・患者による全般評価(p=0.01)が改善3
1日9.6 g・16.8 g 機能障害については有意な改善が得られた3

⭐ は直線的で有意であり、増量すると個々の患者でも反応が改善した3。は良好で有害事象は少数・軽度・一過性だった3。⚠️ ただし最適用量にはが大きいとされている3。💡 「高用量」という表現の中身が1日24 g規模だという点が、この試験の実務的な意味である。

⚠️ 避ける薬——フェニトインは別格

⚠️ フェニトインは避ける。神経症状を悪化させるだけでなく、を加速させうる2。⭐ 本症の障害の中心が失調とであることを考えると、これは「効かない薬」ではなく「病気を進める薬」である。

群 薬剤
カルバマゼピン・・フェニトイン2
作動性薬 ・2
その他 ・2

いずれもとを悪化させうるため、一般に避けるべきとされる2。

経過観察は、Unified Myoclonus Rating Scaleによる重症度評価を少なくとも年1回行い、発作型と頻度、、、嚥下障害、体重・栄養、、就学、気分と精神症状を定期的に見る2。

予後

⚠️ かつては発症の8〜15年後、30歳未満で死亡することが多かった2。⭐ 薬物療法・・の改善により、40歳までの生存期待は対照と同等になった——ただし⚠️ 長期的にはなお不良で、主な死因はである2。別の総説は死亡年齢の中央値を53.9歳と報告している1。

💡 GeneReviewsは「40歳までは対照と同等」という記述を、査読された数値ではなく個人的通信として記載している2。⚠️ 「寿命は保たれる」と丸めない。

まとめ

  • ⭐ はで最も頻度が高い病型で、6〜15歳(ピーク12〜13歳)に発症する疾患である。
  • ⭐ 原因はCSTBの**(CCC-CGC-CCC-GCG)伸長。病的は30反復以上で、病的変異の約90%がで同定される。⚠️ **配列決定型のパネル・では検出できない——専用の検査を当てる。
  • ⚠️ (伸長+配列変異)は発症がより早く、がより重く、になりやすい。
  • フィンランドのが世界最高(10万人あたり2、出生2万人に1人)で、北アフリカ(チュニジア・アルジェリア・モロッコ)でも高い。⚠️ 「バルト」「地中海」という地名由来の旧称は誤解を招くので使わない。
  • ⭐ 発作との非対称が臨床の核。 はでよく制御されるが、は・で進行し、⚠️ 最初の5〜10年で約3分の1がになる。
  • 、とくに記憶はおおむね正常範囲。⚠️ ただしに依存する時間制限課題では成績が低く出る——認知の障害と読み違えない。
  • ⭐ は症状発現前から常に異常で、が著明。頭部MRIは正常。⚠️ との分岐は「」と「の」の2点。
  • 治療はバルプロ酸を第一選択に、・・・を重ねる。⭐ 高用量にはの裏づけがあり、で1日24 gがを有意に改善した(p=0.005、20例)。
  • ⚠️ フェニトインは別格に避ける——を加速させうる。 ・・・・も一般に避ける。極端な刺激(光・・ストレス)を避けることも治療の一部。
  • 予後は改善し、⭐ 40歳までの生存期待は対照と同等(死亡年齢の中央値53.9歳との報告もある)。⚠️ 長期的にはなお不良で、主な死因は。

出典

  1. 1.ILAE Genetics Literacy series: Progressive myoclonus epilepsies(Epileptic Disorders(International League Against Epilepsy, Cameron JM, Ellis CA, Berkovic SF)・2023)既存ノート(進行性ミオクローヌスてんかん)が全文(PMC10947580)を取得して確認済みの出典を再利用した。本ノートが依拠するのは、進行性ミオクローヌスてんかんの世界で最も多い原因がUnverricht-Lundborg病であること、フィンランドの有病率が10万人あたり1.9と報告されていること、発症のピークが12〜13歳であり認知機能が比較的保たれ死亡年齢の中央値が53.9歳であること、CSTBの十二量体反復伸長が世界の疾患アレルの90%を占めること、リピート伸長が遺伝子パネル・エクソームでは捉えられないため専用のPCR・サザンブロットまたはゲノムシークエンシングへの専用の情報解析を要すること、バルプロ酸が本症で最初に有効性が示された抗発作薬でありベンゾジアゼピンが追加療法として確立した効果を持つこと、ピラセタムが有用な抗ミオクローヌス薬であるという記載である(本ノートの担当は原文を再取得していない)閲覧 2026-09-03
  2. 2.Progressive Myoclonic Epilepsy Type 1(GeneReviews (University of Washington, Seattle)・2020)Europe PMC経由でNBK1142の全文XMLを取得して確認した(2020年7月2日最終改訂、Lehesjoki AE・Kälviäinen R)。EPM1が6〜15歳発症・刺激感受性ミオクローヌス・強直間代発作を特徴とする常染色体潜性の神経変性疾患であること、診断がCSTBのCCC-CGC-CCC-GCG十二量体反復の両アレル性伸長、または伸長と配列変異の複合ヘテロ接合で確定すること、CSTBがパパイン科システインプロテアーゼ(カテプシン)の阻害因子であるシスタチンBをコードすること・発症機序が機能喪失であり十二量体反復伸長がCSTB mRNA量を対照の5〜10%まで低下させること、反復数が正常2〜3・意義不明12〜17(不安定だが臨床的性状は不明)・病的(完全浸透)30以上であり4〜11と18〜29は観察されていないこと、病的変異の約90%が十二量体伸長の標的解析で・約10%が配列解析で同定されフィンランド人では配列解析まで含めて約99%が同定されること、⚠️ 十二量体反復伸長が配列決定型の多遺伝子パネル・エクソームシークエンシング・ゲノムシークエンシングでは検出できないこと、複合ヘテロ接合例は発症がより早く・ミオクローヌスがより重く・発作が薬剤抵抗性となることが多いこと、半数超で初発症状が不随意のミオクローヌスであり残るほぼ半数で強直間代発作が初発であること、ミオクローヌスが動作誘発性かつ刺激感受性で光・身体的労作・ストレスで誘発され四肢近位筋優位・非同期性で焦点性または多巣性でありミオクローヌス重積に至りうること、最初の5〜10年で進行し約3分の1が車椅子を要する高度の障害に至ること、発症から数年後に運動失調・協調運動障害・企図振戦・構音障害が出現すること、認知機能とくに記憶はおおむね正常範囲だが運動機能に依存する時間制限課題では成績が低いこと、脳波が症状発現前から常に異常で背景活動が動揺し正常より遅いことがあり光感受性が著明であること、頭部MRIが正常であること、発症時の鑑別として神経学的診察と脳波背景活動が正常な若年ミオクロニーてんかんを考えるべきこと、KCNC1によるEPM7がEPM1と極めて類似した臨床像を示すこと、EPM1がPMEの中で最も発生頻度が高くフィンランドの有病率が10万人あたり2で世界で最も高く出生2万人に1人と推定されること(Kälviäinenの個人的通信)、チュニジア・アルジェリア・モロッコの北アフリカ諸国でも有病率が高いが正確な数値が得られていないこと、⚠️ 旧称のBaltic myoclonus(バルトミオクローヌス)とMediterranean myoclonus(地中海ミオクローヌス)が本症は世界中で発生するため誤解を招く地名由来の呼称でありもはや用いるべきでないこと、治療としてバルプロ酸が第一選択でミオクローヌスと全般発作の頻度をともに減らすこと・クロナゼパムがミオクロニー発作に対しFDAの承認を持ち追加療法として用いられること・高用量ピラセタムがミオクローヌスの治療に有用であること・レベチラセタムとブリバラセタムとペランパネルがミオクローヌスと全般発作の双方に有効とみられること・トピラマートとゾニサミドが追加療法として用いられうること・N-アセチルシステインの結果は一定しないこと・迷走神経刺激療法が発作を減らし神経学的診察上の小脳機能を有意に改善したと報告されていること、極端な刺激(光・騒音・ストレス)を避けること、リハビリテーションと心理社会的支援が治療の柱であること、Unified Myoclonus Rating Scaleによるミオクローヌス重症度評価を少なくとも年1回行うこと、⚠️ フェニトインが神経症状を悪化させ小脳変性を加速させうるため避けるべきであること・Naチャネル遮断薬(カルバマゼピン・オキシカルバゼピン・フェニトイン)とGABA作動性薬(チアガビン・ビガバトリン)およびガバペンチン・プレガバリンがミオクローヌスとミオクロニー発作を悪化させうるため一般に避けるべきであること、かつては発症の8〜15年後・30歳未満で死亡することが多かったが薬物療法・理学療法・心理社会的支援の改善により40歳までの生存期待は対照と同等となった一方で長期的にはなお不良であり主な死因が呼吸器感染症であること(Kälviäinenの個人的通信)を確認した閲覧 2026-09-03
  3. 3.Piracetam relieves symptoms in progressive myoclonus epilepsy: a multicentre, randomised, double blind, crossover study comparing the efficacy and safety of three dosages of oral piracetam with placebo(Journal of Neurology, Neurosurgery, and Psychiatry・1998)PubMed(PMID 9527146)で抄録全文を取得して確認した。典型的なUnverricht-Lundborg病の患者20例(男性12・女性8、17〜43歳)を対象に、経口ピラセタム1日9.6 g・16.8 g・24 g(1日2回分割)とプラセボを比較した多施設・無作為化・二重盲検のクロスオーバー試験であること、各患者がプラセボと3用量のうち2用量を各2週間ずつ計6週間受け休薬期間を置かない設計であったこと、主要評価項目が刺激感受性・運動障害・機能障害・書字・医師と患者による全般評価の6項目から成るミオクローヌス評価尺度の補正合計スコアであったこと、1日24 gの投与が主要評価項目の平均合計スコア(p=0.005)ならびに下位項目の運動障害(p=0.02)・機能障害(p=0.003)・医師による全般評価(p=0.002)・患者による全般評価(p=0.01)で有意かつ臨床的に意味のある改善をもたらしたこと、機能障害については1日9.6 gと16.8 gでも有意な改善が得られたこと、用量反応関係が直線的で有意であり高用量ほど臨床的に意味のある改善を示す患者が多く個々の患者でも増量により反応が改善したこと、忍容性が良好で有害事象が少数・軽度・一過性であったこと、最適用量には個人差が大きいと結論されたことを確認した。抄録のみを閲覧しており全文は未取得閲覧 2026-09-03