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Disease Atlas · 神経 · 症候群

Weber症候群

Weber syndrome

別名
上位交代性片麻痺superior alternating hemiplegiaウェーバー症候群
臓器系
神経循環器
科目
NeurologyMacroscopic Anatomy and Embryology (Macroscopic Anatomy)
トピック
神経内科 G2-06:中脳障害の症候群解剖学 9.7:中枢神経・神経解剖:血液供給
上位概念
脳梗塞
関連疾患
Benedikt症候群Millard-Gubler症候群・Foville症候群延髄外側症候群
症状
動眼神経麻痺眼瞼下垂複視

🧠 全体像:は、中脳腹側のが虚血に陥ることで同側の動眼神経麻痺と対側のが同時に生じる、古典的な()の代表である。には下降するのと、これから交叉する皮質脊髄路(錐体路)・が隣接して走行しており、両方が同じ一つの梗塞巣に含まれることがこの「同側の+対側の」というの型を作る。中脳の中でどこまで病変が背側・内側に広がるかによって、Weber・Benedikt・Claude・Nothnagelという名前が使い分けられるが、これらは境界の曖昧な連続体であり、解剖(・・のどれが侵されたか)で理解する方が実態に近い。

責任血管と障害構造

中脳はの、の、、から灌流を受け、との孤立性梗塞がの最も多い原因である1。の線維はを貫いてで収束したのちの内側を通過するため、この経路上の梗塞は線維と皮質脊髄路を同時に巻き込む1。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='paramedian midbrain branch'>傍正中中脳枝</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='peduncular perforating branch'>大脳脚穿通枝</span>の閉塞"] --> B["中脳腹側(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='crus cerebri'>大脳脚</span>)の梗塞"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='oculomotor nerve (CN III)'>動眼神経</span>線維の障害<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='red nucleus'>赤核</span>を貫き<span class='jp-term jp-term-diagram' title='interpeduncular fossa'>脚間窩</span>で収束する部分)"]
    B --> D["皮質脊髄路・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='corticobulbar tract'>皮質延髄路</span>の障害<br>(まだ交叉前)"]
    C --> E["同側の動眼神経麻痺<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ptosis'>眼瞼下垂</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='down-and-out deviation'>下外方偏位</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mydriasis'>散瞳</span>)"]
    D --> F["対側の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hemiplegia'>片麻痺</span><br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lower face'>下顔面</span>を含む)"]
    E --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Weber syndrome'>Weber症候群</span>"]
    F --> G

臨床像

  • 同側の動眼神経麻痺:、を来し、眼球は・(いずれも支配を免れる)の作用に拮抗されずする1。中脳の上部・中部が侵されれば(由来)も障害されを伴う1。
  • 対側の:上下肢の部分的または完全な脱力を来す1。もこの高さでまだ交叉していないため、対側の()を伴うことが多い。
  • 病変がに限局していれば、感覚障害や徴候は目立たない——これが後述のBenedikt・との違いになる。

⚠️ 動眼神経麻痺がを伴わず、単独で現れることもある。 中中脳レベルの病変では、核性または束性の動眼神経麻痺が孤立して出現することが少なくないと報告されている2。典型的な組み合わせがそろわないからといって中脳病変を除外しない。

中脳症候群の位置づけ

同じ「錐体路を含むためを来す」群として、延髄内側のと対比すると局在が整理しやすい。

Weber・Benedikt・Claude・Nothnagelはいずれも中脳病変によるだが、病変が腹側から背側のどこまで及ぶかで名前が分かれる。なお、中脳の上部・下部の梗塞では局在を示す徴候を欠くことが多いと報告されている2。

症候群 主な障害部位 同側所見 対側所見
(腹側) 動眼神経麻痺 (を含む)
線維+周辺() 動眼神経麻痺 ・振戦・1
線維+・(交叉部) 動眼神経麻痺 (振戦は目立たない)1
を含む背側中脳 動眼神経麻痺を伴いうる 両側性のこともある

💡 覚え方は「腹側→背側」の一本道である。 腹側のだけならWeber(のみ)、そこから一段背側の・まで及べばBenedikt・Claude(が加わる)、さらに背側の域まで広がればNothnagelという具合に、動眼神経麻痺に何がされるかで名前が変わると理解すると覚えやすい。

鑑別:延髄外側症候群とは対照的

⭐ 同じ「脳幹の」でも、()とは症候の作られ方が正反対である。 は錐体路が病変の外にあるためを原則として来さず、の(顔面は同側、体幹四肢は対側の障害)が主体になる。対しては錐体路そのものが病変に含まれるため、対側のが主症状になる。「で対側のがあるかどうか」を一つの軸にすると、両者は良い対比になる。

診断と治療

急性発症の・・をみたら、で中脳のを確認する1。原因は脳卒中が最多だが、出血・動脈瘤・腫瘍・でも同様の局在症候群が起こりうるため、画像で病態を確認したうえで対応する1。

急性期の管理は気道・呼吸・循環の確保と迅速なを土台に、全般の(発症からの時間・重症度に応じた・)に従う。大きな梗塞で進展のリスクがある場合にはの適応を検討する1。

まとめ

  • はの梗塞(・の閉塞が最多)により、同側の動眼神経麻痺と対側の(を含む)が同時に生じるである。
  • 病変が腹側のにとどまればWeber、・まで及べばBenedikt・Claude、さらに背側まで広がればNothnagelと呼ばれる連続体として理解する。
  • 同じ脳幹のでも、は錐体路を免れるためを来さない点で対照的である。
  • 脳卒中以外に出血・動脈瘤・腫瘍・も原因になりうるため、で病態を確認したうえでを決める。

出典

  1. 1.Weber Syndrome(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)Weber症候群がHermann Weberにより52歳男性の左大脳脚急性出血による左側動眼神経麻痺と右側片麻痺の症例として初めて記載されたこと、中脳(大脳脚を含む)の主な血流供給が脳底動脈の傍正中中脳枝・後大脳動脈の大脳脚穿通枝・上小脳動脈・脈絡叢動脈であり傍正中中脳枝と大脳脚穿通枝の孤立性梗塞が本症候群の最も多い原因であること、動眼神経線維が赤核を貫いて脚間窩で収束すること、臨床像が眼瞼下垂・複視と対側上下肢の部分的または完全な脱力であり患側眼球は上斜筋・外側直筋の作用が拮抗されず下外方偏位すること、脳卒中以外の原因として出血・動脈瘤・腫瘍・脱髄疾患があること、Benedikt症候群が動眼神経麻痺に小脳性運動失調(振戦・舞踏アテトーゼ様不随意運動を含む)を伴う点で、Claude症候群が赤核・結合腕の関与により対側運動失調を伴う点でそれぞれ本症候群と区別されること、診断には拡散強調MRIで急性梗塞を確認すること、管理は気道・呼吸・循環の確保と迅速な神経学的評価が中心で大きな梗塞で進展のリスクがあれば血栓溶解療法を適応することを確認した。閲覧 2026-09-01
  2. 2.Pure midbrain infarction: clinical syndromes, MRI, and etiologic patterns(Neurology・1994)後方循環梗塞281例から選んだ中脳限局梗塞22例(8%)をMRIで検討し、中中脳レベルの病変では核性または神経束性の動眼神経麻痺が単独で(他の徴候を伴わずに)出現することが多かったこと、垂直注視麻痺・純粋運動性片麻痺・一側病変による四肢失調・感覚性運動失調性片麻痺なども見られたこと、上下の中脳梗塞では局在徴候を欠くことが多かったことを報告した。閲覧 2026-08-27