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Disease Atlas · 神経 · 症候群

延髄外側症候群

Lateral medullary syndrome

別名
Wallenberg症候群ワレンベルグ症候群
臓器系
神経循環器
科目
NeurologyAnatomy
トピック
神経内科 G2-04:延髄障害の症候群解剖学 9.7:中枢神経・神経解剖:血液供給
上位概念
脳梗塞
症状
Horner症候群吃逆嚥下障害嗄声小脳性運動失調眼振めまい解離性感覚障害

🧠 全体像)は、たった1か所の梗塞巣がなぜこれほど多彩な症状を一度に起こすのかを解剖がそのまま説明してくれる、局在診断の教材のような疾患である。またはが灌流する延側には、・脊髄視床路・・下行交感神経路・という性質のまったく異なる6つの構造が密集しており、その一つ一つの脱落がそのまま個々の症状として現れる。核心は「錐体路(皮質脊髄路)は延髄の内側を通るため、外側の梗塞では原則として四肢の麻痺が起こらない」という点で、を来す(Dejerine症候群)や中脳のと対比すると理解が深まる。

責任血管

外側延髄は主にまたはである。血管撮影による検討では、孤立性の病変(10%)よりも自体の病変(67%)の方が高頻度に確認される——臨床名は「症候群」と呼ばれることもあるが、実際には病変が主因であることが多い1

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vertebral artery'>椎骨動脈</span>または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='posterior inferior cerebellar artery / PICA'>後下小脳動脈</span>の閉塞"] --> B["延<span class='jp-term jp-term-diagram' title='extramedullary'>髄外</span>側の梗塞"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='spinal trigeminal tract'>三叉神経脊髄路</span>・核"]
    B --> D["脊髄視床路"]
    B --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nucleus ambiguus'>疑核</span>"]
    B --> F["下行交感神経路"]
    B --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vestibular nuclei'>前庭神経核</span>"]
    B --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inferior cerebellar peduncle'>下小脳脚</span>"]
    C --> I["同側顔面の痛覚・温度覚低下"]
    D --> J["対側体幹四肢の痛覚・温度覚低下"]
    E --> K["嗄声・嚥下障害・吃逆"]
    F --> L["同側<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Horner syndrome'>Horner症候群</span>"]
    G --> M["回転性めまい・眼振"]
    H --> N["同側失調"]

症状と障害構造の対応

を暗記表としてではなく、「どの構造が通っているか」から症状を導く練習をすると再現性が高い。

症状 障害される構造 側性
顔面の痛覚・温度覚低下 ・脊髄路核 同側
体幹・四肢の痛覚・温度覚低下 脊髄視床路(既に対側交叉済み) 対側
嗄声嚥下障害(カーテン徴候:へ引かれる) (CN IX・X) 同側
・無汗) 下行交感神経路 同側
回転性めまい眼振
同側失調・側方 (および直接のへの血流) 同側
持続する吃逆 または隣接する

顔面と体幹で左右が入れ替わる解離性感覚障害が最大の特徴である。 顔面の痛障害は同側(がまだ交叉していない)、体幹四肢の痛障害は対側(脊髄視床路は脊髄レベルで既に交叉済み)という、他のどの局在パターンとも異なる「顔と体幹で左右が食い違う」型を示す。この一点だけで延側病変とほぼ確定できる1

⚠️ 四肢の麻痺は原則として起こらない。 錐体路(皮質脊髄路)は延髄の内側を通り、が灌流する外側の梗塞巣には含まれないため温存される。実際、「脱力はLMSでは比較的まれな所見であり、しばしば診断の見落としにつながる」ことが指摘されている1。四肢の同側麻痺を伴う例は、延髄尾側でより下方(=皮質脊髄路の線維がすでに交叉し終えた位置)に梗塞が及ぶ稀な例外(Opalski型)に限られる。この点が、を来すまたは傍正中枝の閉塞、痛覚・温度覚は保たれる)や、中脳の(同側麻痺+)との根本的な違いになる2

診断

急性発症の感覚障害、めまい、嗄声・嚥下障害、、同側失調のいずれかの組み合わせをみたら、の脳卒中として直ちに評価する。MRIで延側の急性期梗塞を確認し、頭頸部血管画像(MRA・CTA)での閉塞・狭窄・解離を評価する。

⚠️ 「循環不全」という症候名だけで一過性のめまいを説明せず、・四肢失調・感覚障害などの局在徴候を伴うかを必ず確認する。

治療と経過

急性期の全般の管理に準じ、発症からの時間・重症度・血管病変(動脈硬化性か解離性か)に応じて・抗血栓療法・の適応を判断する。この症候群に特有の管理として重要なのは、嚥下機能の評価を治療の早期から組み込むことである。障害による嚥下障害に直結するため、経口摂取開始前に嚥下評価を行い、必要に応じて代替栄養を検討する。

を伴わないため一見軽症に見えることがあるが、めまい・失調による、嚥下障害による誤嚥、に伴う症状など、機能面での支援を要する点は他の脳卒中と変わらない。

まとめ

  • )はまたはの閉塞による延側梗塞で、としては自体の病変の方が単独病変より多い。
  • 顔面は同側、体幹四肢は対側というの解離性感覚障害が最大の特徴で、他に症状(嗄声・嚥下障害・吃逆)、、前庭症状、同側失調を伴う。
  • 錐体路は延髄内側にあり外側梗塞の範囲外のため、は原則として起こらない——これがを来すとの根本的な違いであり、見落としの一因にもなる。

出典

  1. 1.Lateral Medullary Syndrome (Wallenberg Syndrome)(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2026)責任血管が後下小脳動脈(PICA)または椎骨動脈であり、血管撮影では椎骨動脈病変(67%)が孤立性PICA病変(10%)より高頻度であること、各臨床所見と障害構造の対応(同側顔面痛温覚障害=三叉神経脊髄路、対側体幹四肢痛温覚障害=脊髄視床路、嗄声・嚥下障害=疑核、同側Horner症候群=下行交感神経路、めまい・眼振=前庭神経核、同側失調・側方突進=下小脳脚、持続する吃逆=疑核または隣接呼吸中枢、同側味覚障害=孤束核)、四肢麻痺が典型例では目立たない特徴であり錐体路(皮質脊髄路)が延髄内側に位置し外側の梗塞巣の外にあるため温存されること(延髄尾側・錐体交叉以下の梗塞でのみ同側片麻痺を来すOpalski型という例外があること)を確認した。閲覧 2026-08-11
  2. 2.Medial Medullary Syndrome(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2026)内側延髄症候群の責任血管が前脊髄動脈の傍正中枝(椎骨動脈または脳底動脈由来)であること、古典的3徴(対側片麻痺=皮質脊髄路、対側振動覚・位置覚低下=内側毛帯、同側舌偏位=舌下神経の下位運動ニューロン障害)を確認したこと、内側症候群では痛覚・温度覚が保たれる("pain and temperature sensation usually remain intact")ことが外側延髄症候群との鑑別点として明記されていることを確認した。閲覧 2026-08-11