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Disease Atlas · 神経 · 症候群

内側延髄症候群

Medial medullary syndrome

別名
Dejerine症候群デジェリン症候群
臓器系
神経循環器
科目
NeurologyMacroscopic Anatomy and Embryology (Macroscopic Anatomy)
トピック
神経内科 G2-04:延髄障害の症候群解剖学 9.7:中枢神経・神経解剖:血液供給
上位概念
脳梗塞
関連疾患
Millard-Gubler症候群・Foville症候群延髄外側症候群
症状
片麻痺解離性感覚障害

🧠 全体像:()は、延髄の内側——のが灌流する領域——の梗塞により、同側の・対側の・対側のという古典的3徴を来す。核心は、すぐ隣り合う()とほとんど正反対の症候を示すという対比にある——外側はを免れて・を侵し、内側は(錐体)を含むため、同じ延髄の梗塞でも「があるかないか」が両者を分ける最初の一手になる。

責任血管と障害構造

内側延髄は(から分岐)のが灌流し、この、あるいは・ののが最も多い原因である1。このには(皮質脊髄路線維)・・とその線維という3つの構造が集まっており、この3つの脱落がそのまま古典的3徴に対応する1。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anterior spinal artery'>前脊髄動脈</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='paramedian branch'>傍正中枝</span>(または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vertebral artery'>椎骨動脈</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='basilar artery'>脳底動脈</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='paramedian branch'>傍正中枝</span>)の閉塞"] --> B["内側延髄の梗塞"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pyramid'>延髄錐体</span>(皮質脊髄路)"]
    B --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='medial lemniscus'>内側毛帯</span>"]
    B --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypoglossal nucleus'>舌下神経核</span>・線維"]
    C --> F["対側の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hemiplegia'>片麻痺</span>"]
    D --> G["対側の振動覚・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='position sense (proprioception)'>位置覚</span>低下<br>(痛覚・温度覚は保たれる)"]
    E --> H["同側の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypoglossal nerve palsy'>舌下神経麻痺</span><br>(舌は患側へ偏位)"]

古典的3徴と、それが揃わない現実

⭐ 古典的3徴は「同側(舌は患側偏位)」「」「対側の(振動覚・)」である1。

症状 障害される構造 側性
(皮質脊髄路) 対側
(振動覚・低下、痛覚・温度覚は保存) 対側
(舌は患側へ偏位) ・線維 同側

⚠️ 教科書どおりに3徴がそろう例は少数派である。 この古典的3徴が確認されるのは実際には一部の患者に限られる1。だけが目立ちが軽微な例、逆にが前景に立ち舌の偏位が見逃される例など、部分症候での受診が珍しくない。

⚠️ 延髄外側症候群とは症候が正反対に近い

💡 「錐体路が病変に含まれるか」で三者を並べると整理できる。 本症と中脳のはいずれも錐体路を含むためを来すが、は錐体路が病変の外にあるためを原則として来さない。

⭐ 同じ延髄でも内側と外側では、障害される構造の組み合わせが入れ替わるため症候がほぼ逆転する。

(本症) ()
自体の病変(単独より高頻度)
(錐体) 含まれる→が主症状 病変の外にあり温存される→は原則として起こらない2
感覚障害の型 対側の振動覚・低下、痛覚・温度覚は保存 顔面は同側・体幹四肢は対側の痛覚・温度覚低下(触覚・は比較的保たれる)
脳神経徴候 同側(舌は患側偏位) 症状(嗄声・嚥下障害)、、めまい・眼振、同側失調

💡 「があるか」を最初のにする。 では錐体路が病変の範囲外にあるためが原則として起こらない2。したがって、急性発症のでが主体なら内側、の感覚障害・嚥下障害・・失調が主体でを欠くなら外側、とまず振り分けると効率がよい。感覚障害の質も逆になる点——内側は触覚・が落ちてが残り、外側はが落ちて他が残る——も、両者を混同しないための補助線になる。

両側性梗塞

まれに両側の内側延髄が同時に梗塞に陥り、・・呼吸不全を来す重篤な病型がある。両側性内側延髄梗塞28例の検討では、11例に嚥下障害またはを認めた1。画像ではで左右の錐体・病変が特徴的な形に描出される。

診断と治療

とで内側延髄の高信号病変を確認する1。急性期の対応は全般の管理に準じ、発症3〜4.5時間以内であればの投与を検討する1。と嚥下障害の組み合わせはのリスクを高めるため、経口摂取開始前のを早期から組み込む。

まとめ

  • ()はの梗塞により、同側・・対側の(振動覚・)という古典的3徴を来す。ただし3徴すべてがそろう例は少数派である。
  • 錐体路()が病変に含まれる点がとの根本的な違いで、の有無を最初の鑑別点にできる。
  • 感覚障害の型も対照的で、内側は痛覚・温度覚を残してを失い、外側はを残して痛覚・温度覚を失う。
  • まれに両側性梗塞を来し、・・呼吸不全を伴う重篤な病型になる。
  • 診断はで確定し、治療は全般の急性期管理(適応があれば)との早期導入が中心になる。

出典

  1. 1.Medial Medullary Syndrome(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2026)内側延髄症候群がDejerine症候群とも呼ばれ内側延髄の梗塞により生じること、責任血管が前脊髄動脈(椎骨動脈から分岐)の傍正中枝であり最も多い原因が前脊髄動脈・椎骨動脈・脳底動脈いずれかの傍正中枝の血栓性閉塞であること、障害される構造が延髄錐体(皮質脊髄路線維)・内側毛帯・舌下神経核とその線維であること、古典的3徴(同側舌下神経麻痺と舌の患側偏位、対側片麻痺、対側の振動覚・位置覚を含む深部感覚脱失)が実際には少数例でしか揃わないこと、対側の振動覚・位置覚低下がよくみられる一方で痛覚・温度覚は通常保たれ、これが延髄外側症候群との鑑別点になること、両側性内側延髄梗塞28例の検討で11例に嚥下障害または軟口蓋麻痺を認めたこと、拡散強調画像・T2強調画像で内側延髄に高信号病変を認めること、治療として発症3〜4.5時間以内の静注組織プラスミノーゲン活性化因子投与が含まれることを確認した。閲覧 2026-08-11
  2. 2.Lateral Medullary Syndrome (Wallenberg Syndrome)(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2026)外側延髄症候群の責任血管が後下小脳動脈または椎骨動脈自体の病変であること、錐体路(皮質脊髄路)が延髄内側を通るため外側の梗塞巣の範囲外にあり四肢麻痺が典型例では目立たないこと、これが対側片麻痺を来す内側延髄症候群との対比点になることを確認した。閲覧 2026-08-11