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Disease Atlas · 神経 · 症候群

内側側頭葉てんかん

Mesial temporal lobe epilepsy

別名
MTLEmesial temporal lobe epilepsy syndrome
臓器系
神経
科目
Neurology
トピック
神経内科 G2-29:てんかん発作とてんかん(鑑別診断・分類・原因)神経内科 G2-13:辺縁系神経内科 G2-30:てんかんの臨床管理
上位概念
てんかん
鑑別疾患
心因性非てんかん性発作
関連疾患
海馬硬化
治療薬
カルバマゼピンオクスカルバゼピンレベチラセタムラモトリギントピラマート
症状
既視感焦点性発作自動症発作
画像所見
内側側頭葉のFLAIR高信号
スコア
ILAE分類

🧠 全体像:(MTLE)は、の3段階(発作型→→)でいう「」の代表例として読む——発作型は焦点性(多くはを伴う)、は焦点性てんかん、そして特徴的な・の連続・所見・所見が揃って初めて「MTLE」という症候群診断に至る。最も頻度の高い病理学的基盤はだが、MTLEはの名前であり、はその病理所見の名前という区別を保つ——このノートは前者(発作型・診断・治療方針)を扱い、病理の詳細はのノートに譲る。臨床的なは一貫している:内科的治療に反応しにくい一方、外科的切除で高確率に発作が消えるため、を早期に認識し外科評価へつなぐことが要点になる。

発作型と前兆

MTLEの発作は、特徴的な()から始まることが多い。上腹部から込み上げる感覚()、悪心、嗅覚性・、そしてやといった心理的な感覚が典型である1。

に続いて、・凝視が生じ、口部の(舌なめずり・・・嚥下)と同側の(同じ動作の反復、まさぐる動作など)が出現する。ときにへ進展することがある1。

flowchart TD
  A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='aura'>前兆</span>:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='epigastric rising sensation'>上腹部上昇感</span>・悪心・嗅覚/味覚<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hallucination'>幻覚</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='déjà vu'>既視感</span>"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='behavioral arrest'>動作停止</span>・凝視"]
  B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='oral automatism'>口部自動症</span>(舌なめずり・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mastication'>咀嚼</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sucking (sucking reflex)'>吸啜</span>)"]
  C --> D["同側の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='manual automatism'>手の自動症</span>"]
  D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='postictal amnesia'>発作後健忘</span>"]
  D --> F["まれに<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bilateral tonic-clonic seizure'>両側性強直間代発作</span>へ進展"]

ILAE分類での位置づけ

MTLEをの3段階に当てはめると、次のように整理できる。

段階 MTLEでの当てはめ
① 発作型 、多くはを伴う(を伴う運動症状)
② 焦点性てんかん
③ (多くはを病理学的基盤とする)

脳波所見

  • :前で位相反転する・鋭波が優位に出現する。一部でTIRDA(temporal intermittent rhythmic delta activity、間欠性律動性デルタ活動)を認める1。
  • :前・前下またはsphenoidal電極から始まるリズミックなθ活動で発作が始まり、緩徐に広がっていく1。
  • の化:焦点側で化が目立つことが多く、最大70%の症例で焦点の側性を決める手がかりになる1。

画像診断

の3T/7T で(高信号・体積減少・内部構造消失)を検出することが診断の柱になる1。を認めた場合、急性のとのを鑑別する視点は病理側のノートに譲る。

💡 病理の詳細は別ノートで扱う。 ILAE(Type 1〜3、no-HS)や、との関連といった病理学的な内容はのノートにまとめてある。ここでは「としてのMTLE」に焦点を絞る。

診断・治療の基本方針

第一選択のとして、カルバマゼピン・・・・などが用いられるが、率は29〜41%にとどまる1。⚠️ MTLEはとくにになりやすいである。 患者のうち、1年を超えてを維持できるのは25%未満という報告があり、てんかん全体の率よりも見通しが厳しい1。

薬剤抵抗性の診断基準と外科評価への紹介

⭐ 「2剤で無効になってから」ではなく、が確定した時点で紹介する。 ILAEの委員会の合意は、が確定した時点で年齢70歳までのすべての患者に外科評価の紹介を提示すべきとし、のような病変がある症例では1剤の適切な使用で無効だった段階でも紹介を支持する意見が多数を占めた2。早期紹介を裏づけるRCTでは、1年後に意識を障害する発作から自由であった割合は手術群58%・8%(P<0.001)だった3。外科切除の成績は術後2年時点で60〜80%がを達成する1。⚠️ 合意の詳細な数値根拠・具体的な術式選択・合併症の内訳・長期追跡データはのノートで扱っている(本ノートはとしての紹介基準の要点にとどめる)。

鑑別診断

が主要な鑑別対象になる。・様の動きが発作でもみられることがあり、モニタリングを伴う発作記録(ビデオ)が最終的な鑑別に用いられる。

まとめ

  • MTLEは、(・・嗅覚/味覚)→・凝視→→というな経過をたどる焦点性である。
  • の3段階では、発作型は焦点性(多くはを伴う)、は焦点性てんかん、としてMTLEが位置づけられる。
  • はに前優位の、に前からのリズミックθ活動、の化が側性の手がかりになる。
  • での検出が画像診断の柱で、病理の詳細はのノートに譲る。
  • (カルバマゼピン・・・・など)での率は29〜41%にとどまり、1年を超えるの維持は25%未満という報告がある。
  • ILAEの合意はが確定した時点での外科評価紹介を推奨し、のような病変がある例では1剤無効の段階での紹介という回答がの7割を超えた。無作為化試験では手術群の率がを大きく上回った(58% 対 8%)。
  • 主要な鑑別はで、による発作記録が鑑別の決め手になる。

出典

  1. 1.Mesial Temporal Lobe Epilepsy(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2026)2026年3月23日改訂版で、前兆が上腹部上昇感・悪心・嗅覚性/味覚性幻覚や既視感・離人感を含むこと、口部自動症(舌なめずり・咀嚼・吸啜・嚥下)と同側の手の自動症が動作停止・凝視の後に出現し両側性強直間代発作へ進展することがあること、発作間欠期脳波が前側頭部に位相反転するspike/sharp waveを示し一部でTIRDA(temporal intermittent rhythmic delta activity)を認めること、発作時脳波は前側頭部・前下側頭部またはsphenoidal電極から始まるrhythmic theta活動で開始し緩徐に広がること、発作後の徐波化(postictal slowing)が最大70%でlateralizing featureになること、高分解能3T/7T MRIで海馬硬化を検出しILAE分類(Type1:CA1+CA4優位、Type2:CA1優位、Type3:CA4優位)で評価すること、内側側頭葉てんかん患者の25%未満しか1年を超える発作消失を維持できないという報告があること、早期に薬剤抵抗性を認識しレベル3・4のてんかんセンターへ紹介すべきとされること、第一選択の抗発作薬としてカルバマゼピン・オクスカルバゼピン・レベチラセタム・ラモトリギン・トピラマートが挙げられ長期寛解率が29〜41%であること、外科切除により術後2年時点で60〜80%が発作消失を達成するが長期成績はより低下することを確認した閲覧 2026-09-07
  2. 2.Timing of referral to evaluate for epilepsy surgery: Expert Consensus Recommendations from the Surgical Therapies Commission of the International League Against Epilepsy(Epilepsia(International League Against Epilepsy)・2022)28か国61名によるDelphi法の専門家コンセンサス(本文が「診療ガイドラインではなく専門家の合意である」と明記)で、薬剤抵抗性が確定した時点で年齢70歳までのすべての患者に外科評価の紹介を提示すべきとされたこと、病変のある症例では薬剤抵抗性の証明は紹介の前提ではなく、抗発作薬1剤の適切な使用で無効だった段階でも72%が紹介すると答えたこと、海馬硬化・海綿状血管奇形・グリオニューロン腫瘍のような病変は早期の外科介入に値しうると本文が述べていること、活動性の物質乱用があり治療に協力的でない患者だけが紹介を控えるべき唯一の状況とされたことを確認した閲覧 2026-09-07
  3. 3.A randomized, controlled trial of surgery for temporal-lobe epilepsy(The New England Journal of Medicine・2001)抄録で確認:側頭葉てんかん80例を手術群40例と1年間の抗発作薬治療群40例に無作為割り付けした試験で、1年後に意識を障害する発作から自由であった累積割合が手術群58%・薬物群8%(P<0.001)、生活の質も手術群で有意に良好であったこと、手術群の4例(10%)に手術による有害事象が生じ、薬物群で1例が死亡したこと(全文は未取得で有害事象の内訳は確認していない)閲覧 2026-09-07