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Imaging findings · Published

内側側頭葉のFLAIR高信号

Medial temporal lobe FLAIR hyperintensity

別名
内側側頭葉高信号海馬のFLAIR高信号medial temporal lobe FLAIR hyperintensity
臓器系
神経
科目
NeurologyNeuroanatomy
トピック
神経内科 G3-26:自己免疫性脳炎神経内科 G3-02:ヘルペスウイルスによる神経疾患神経解剖学 23:大脳辺縁系(核と伝導路)
関連疾患
ウイルス性脳炎海馬硬化自己免疫性脳炎

🧠 全体像:内側のFLAIR/T2高信号は、それだけで「」と読んではならない所見である。同じ場所は感染()、後の一過性変化、梗塞、腫瘍、代謝性疾患でも光る。がまず答えるべきは良悪性でも診断確定でもなく、のない鑑別()を先に外し、次に何を出すか(髄液・・自己抗体)を決めるという行動である。最初の分岐は片側性か両側性か、限局か周囲への広がりを伴うかに置く。

所見の定義

内側は海馬・を含む)から成り、の記憶・情動症状の解剖学的基盤になる構造である。FLAIRはに脳脊髄液()の信号を抑制するを加えた撮像法で、脳脊髄液に近接する脳表・脳室周囲・海馬周囲の病変が髄液信号に紛れず検出しやすくなる。この特性のため、内側のように)に接する構造の浮腫性変化はFLAIRで最も鋭敏に描出される。

では以下を必ず記載する。

  • 分布:片側性か両側性か
  • 範囲:海馬・に限局するか、まで進展するか
  • 性状:出血・の有無

モダリティと写り方

写り方・使いどころ
FLAIR を抑制し、内側の浮腫性変化を最も鋭敏に描出する中心的シーケンス
FLAIRと合わせて信号変化の性状を確認する。脳脊髄液も高信号になるため境界がFLAIRより不明瞭になりやすい
ADC低下を伴う(虚血・重度の炎症性壊死)を示唆し、ADCが正常〜高値のと分けて評価する
の程度を反映する。では発症から1週間近く遅れてが出現しうる1
FDG-PET MRIが陰性の症例でも代謝異常が先行することがあり、特になどMRI所見に乏しい病型で補助的価値を持つ

リスクを上げる形態

  • 両側対称で内側に限局する変化を支持する所見で、のDefinite判定を支える支持所見の1つになる2
  • 片側優位で出血・強いを伴い、へ進展する所見を強く示唆する。の融解性・に特徴的とされる1
  • の遅れでは初回MRIでを欠いても否定材料にならない1
  • な萎縮への移行:急性期の浮腫性変化が様の萎縮へ転じる例があり、初回1回の画像で経過を断定しない

評価の進め方

flowchart TD
    A["内側<span class='jp-term jp-term-diagram' title='temporal lobe'>側頭葉</span>にFLAIR/T2高信号を検出"] --> B["過去画像があれば必ず比較する"]
    B --> C{"新規の急性〜亜急性変化か"}
    C -->|"新規"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='HSV encephalitis'>HSV脳炎</span>を除外できるまで<br>経験的アシクロビルを先行開始"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cerebrospinal fluid PCR'>髄液PCR</span>・培養・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='electroencephalography, EEG'>脳波</span>を提出"]
    E --> F{"感染を合理的に除外できたか"}
    F -->|"できた"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='CSF pleocytosis'>髄液細胞増多</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='electroencephalography, EEG'>脳波</span>所見・<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='autoantibody testing'>自己抗体検査</span>を評価"]
    F -->|"できない・不明"| H["アシクロビル継続・再評価"]
    G --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Graus criteria'>Graus基準</span>へ当てはめる"]
    C -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='old (healed/chronic, e.g. old MI)'>陳旧性</span>・経過観察中の既知病変"| J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hippocampal sclerosis'>海馬硬化</span>などの慢性変化として評価"]

⚠️ の結果を待たずアシクロビルを開始する。 はアシクロビル投与開始が48時間を超えて遅れることが不良な転帰と関連するとされ、内側の高信号を見た時点で片側優位・出血・の有無を確認しながらを先行させる1

⚠️ 紛らわしいもの

  • ・頻回の一過性変化:発作そのものが辺縁系構造を中心に可逆性のFLAIR/T2高信号・を来しうる。307例のコホートでは、この変化の46%が追跡MRIで完全に消失し39%が減弱する一方、29%は皮質萎縮へ移行し、この変化を認めた群は率・治療抵抗性が高かった3発作の結果である画像所見を、記憶障害・意識変容の原因と取り違えやすいのが最大の落とし穴であり、臨床経過(発作が先か、辺縁系症状が先か)を必ず確認する
  • :萎縮を伴う慢性の所見で、急性期の浮腫性変化とは区別する。になりうるが、それ自体は今回の急性〜亜急性の鑑別に含めない
  • :海馬と視床の間に生じる境界明瞭なの嚢胞性構造で、周囲の浮腫やを伴わない正常亜型
  • 高齢者の周囲の小さなや、薄いスライスでのを病的な高信号としない
  • 正常の左右差:わずかな左右非対称は健常者でも見られ、片側性の変化と決めつける前に他のシーケンスでも整合するか確認する
  • との分布の違い:主にの皮質下白質に両側性・対称性に及び、内側限局とは分布パターンが異なる

まとめ

  • 内側のFLAIR/T2高信号はの同義語ではなく、感染・変化・梗塞・腫瘍・代謝性疾患まで原因が幅広い。
  • FLAIRはを抑制するため、内側のように髄液腔に接する構造の浮腫性変化を最も鋭敏に描出する。
  • 両側対称・限局はのDefiniteを支持し、片側優位・出血・を伴いへ進展する所見はを強く示唆する。
  • 内側の高信号を見たらを除外できるまで経験的アシクロビルを先行させ、除外後に髄液・へ進む。
  • 後の一過性変化(多くは可逆性だが萎縮へ移行しうる)となどの慢性変化を、急性期の炎症性変化と混同しない。

出典

  1. 1.Autoimmune Encephalitis Criteria in Clinical Practice(Neurology: Clinical Practice (American Academy of Neurology)・2023)2016年のGraus基準でDefinite辺縁系脳炎と判定するには、亜急性の辺縁系症候に加え「両側の辺縁系脳炎様変化」を含む複数の支持所見のうち1つを満たせばよいとされること(本文はTable 1として基準原文を再掲しており、そこで両側性の辺縁系変化という表現を確認した。Table自体は画像形式でMRI・脳波・髄液所見の並記までは本文引用として確認できていない)。閲覧 2026-08-04
  2. 2.Herpes Simplex Encephalitis(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2024)単純ヘルペス脳炎のMRIでは側頭葉が片側性または両側性に侵され、初期は白質の信号変化として現れて出血を伴うことがあり、辺縁系に沿って前頭葉眼窩面・島皮質へ進展すること、側頭葉内側に融解性・出血性変化がしばしば見られること、造影効果は発症から1週間近く遅れて出現しうること、アシクロビル投与開始が48時間を超えて遅れることが不良な転帰と関連した後方視的研究があることを確認した。閲覧 2026-08-04
  3. 3.Association of Peri-ictal MRI Abnormalities With Mortality, Antiseizure Medication Refractoriness, and Morbidity in Status Epilepticus(Neurology (American Academy of Neurology)・2023)てんかん重積状態307例の単施設コホートで、発作周辺期のMRI異常(PMA)は主に辺縁系構造・視床・脳梁膨大部に及ぶこと、追跡MRIでPMAの46%が完全消失・39%が減弱と大半が可逆的である一方、初回のPMA局在の29%で皮質萎縮への移行を認めたこと、PMA陽性群はPMA陰性群に比べ院内死亡率(27% 対 11%)・治療抵抗性てんかん重積(71% 対 33%)が高く発症後の機能的自立(21% 対 48%)が低かったことを確認した。閲覧 2026-08-04