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Disease Atlas · 神経 · 症候群

Millard-Gubler症候群・Foville症候群

Millard-Gubler and Foville syndrome

別名
Millard-Gubler症候群Foville症候群ミラール・ギュブレル症候群腹側橋症候群
臓器系
神経循環器
科目
Neurology
トピック
神経内科 G2-05:橋障害の症候群神経内科 G1-04:中枢性不全麻痺症候群の局在診断
関連疾患
Weber症候群延髄外側症候群内側延髄症候群
症状
顔面神経麻痺片麻痺外転神経麻痺共同注視麻痺複視

🧠 全体像:この2つを別々に覚えない。⭐ どちらも「橋のが壊れると、脳神経は同じ側・手足は反対側が麻痺する」というの型であり、腹側だけか背内側まで及ぶかの違いしかない。はの病変で〈同側の+〉、は背内側のまで及んだ病変で〈それに病変側へのが加わる〉12。⭐ 原則をひとつ持てば全部が導ける——「同側の+対側の=病変は脳幹、しかも障害された脳神経の高さ」。 顔面神経なら橋、なら中脳()、なら延髄内側()、・迷走神経なら延髄外側()である。

なぜこの2つを1ノートで扱うか

⚠️ 似ているのではなく、同じ動脈系の隣り合う枝が作る対である。

  • どちらも1858年に、フランスの別々のが同じ年に記載した12。
  • どちらも橋尾側の性病変で、共通項は〈同側の〉と〈〉である。
  • 分かれるのは病変が内側背側のまで届いたかどうかの一点だけで、それがの違いにそのまま対応する。

⭐ 「Millard-Gubler+=Foville」と覚えれば足りる。 独立した2疾患として並べるより、1つの病変が背側へ広がると何が加わるかという形で持つほうが、試験でも診察でも使える。

交代性片麻痺という原則

flowchart TD
    A["同側の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cranial nerve palsy'>脳神経麻痺</span> + 対側の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hemiplegia'>片麻痺</span>"] --> B["病変は脳幹<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pyramidal decussation'>錐体交叉</span>より<span class='jp-term jp-term-diagram' title='upper'>上位</span>)"]
    B --> C{"どの脳神経が<br>侵されているか"}
    C -->|"CN III(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='oculomotor nerve (CN III)'>動眼神経</span>)"| D["中脳<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='Weber syndrome'>Weber症候群</span>"]
    C -->|"CN VII(顔面神経)"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ventral pons'>橋腹側</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='Millard-Gubler syndrome'>Millard-Gubler症候群</span>"]
    C -->|"CN VII + <span class='jp-term jp-term-diagram' title='horizontal conjugate gaze palsy'>水平共同注視麻痺</span>"| F["橋の内側背側<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tegmentum'>被蓋</span>まで<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='Foville syndrome'>Foville症候群</span>"]
    C -->|"CN IX・X(嚥下・嗄声)+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='crossed sensory disturbance'>交代性感覚障害</span>"| G["延髄外側<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='Wallenberg syndrome'>Wallenberg症候群</span>"]
    C -->|"CN XII(舌)"| H["延髄内側<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='Dejerine syndrome'>Dejerine症候群</span>"]

💡 なぜ「」になるのか。 皮質脊髄路が交叉するのは延髄下端()である。病変がそれより上にあれば、皮質脊髄路はまだ交叉しておらず対側の手足が麻痺する。一方で脳神経の線維は核を出てそのまま同側へ抜けるので、脳神経徴候は同側に出る1。⭐ の所見を見たら、それだけで「病変は脳幹」と言い切れる。

2つの症候群

病変部位 () 橋尾側1/3の(下部内側橋)
の の
同側の脳神経 顔面神経(CN VII)の() 顔面神経(CN VII)+/
眼の所見 ⚠️ 原著ではは含まれない。内側へ及べば同側の外転障害と ⭐ 病変側への水平
対側の所見 (皮質脊髄路) (皮質脊髄路)
感覚 通常保たれる(脊髄視床路・は温存) 通常保たれる。重症例では障害されうる

12

⚠️ 「=CN VI+CN VII+」と書いてある教科書がある。 原著の症例集積には含まれておらず、CN VIは内側構造なので、があること自体が「病変が内側へ広がった」という追加情報である1。所見を丸暗記せず、どの構造が内側でどれが外側かで考える。

💡 単なるとは別物である。 の線維が切れれば同側眼が外転できないだけだが、またはが壊れると、両眼とも病変側へ動かせないになり、⭐ ()でも正中を越えられない2。の「麻痺」はここに由来する。

⭐ は末梢性()型で、額のしわ寄せを含む上ともに侵され、が消え、できなくなる12。対側のと組み合わさるので、「顔だけ反対側でない」ことが局在の決め手になる。

原因——年齢で入れ替わる

⚠️ 「橋の=」と決めてかからない。

年齢層 主な原因
若年 腫瘍、細菌感染(・結核)、ウイルス性、脱髄()、などの
高齢 のと。橋前部のやによる圧迫、の出血

1

では、のがの起始部へ及んで閉塞するが典型で、高血圧・・喫煙・糖尿病といった危険因子と強く結びつく2。

頻度の目安として、の脳卒中はの最大25%を占め、橋の脳卒中は全脳幹脳卒中の20%・全の7%とされる1。孤立性のに限れば全の3%である2。⚠️ いずれも各書が文献から引用している値であり、母集団の取り方(橋の脳卒中か、孤立性か)が違うので並べて比べない。

診断

⭐ まず脳卒中として動く。 の所見を見た時点での経路に乗せ、否定されるまで止めない1。

  1. … 出血の有無と、の適応判断のために最初に撮る。⚠️ 病変そのものを描出する感度は不十分である12。
  2. 頭部MRI … では より鋭敏で、急性期はで高信号・で低信号となる。⚠️ は起こす障害の重さに比べてが小さく、薄いスライスを指定しないと初回画像で写らないことがある1。腫瘍・を探すには造影が要る。
  3. / … の狭窄・閉塞の確認12。
  4. と危険因子の検索 … 心電図(心房細動)・心エコー、、空腹時脂質・血糖または2。

鑑別は2段構えで考える。局在の鑑別は他の橋症候群——(は同側・対側の・)、(上部。⭐ 「上部」とも呼ばれ、Fovilleは「下部」と呼ばれることがある)、(外側橋)、(橋尾側、同側CN V・VI・VII・VIII+対側感覚障害)、(同側+)12。病態の鑑別としては、と四肢の運動・感覚障害が同時に出る・曝露・・・が挙がる2。

治療

原因治療が本体であるが、大半はとして扱われる1。

  • 急性期:発症(または)から4.5時間以内なら。⚠️ 小血管の虚血にはは通常推奨されない2。
  • :とスタチンを入院時から開始し、高血圧・糖尿病・の管理と禁煙を進める2。
  • ⚠️ 眼の保護を忘れない。 でできないので、日中はなどの点眼、夜間は、で乾燥と異物・外傷から守る1。麻痺の派手さに気を取られて角膜を失う。
  • :・を含む多職種のリハビリテーション2。

予後は原因と病変の広がりで決まる。281例のの研究では、傍正中動脈領域の脳卒中の多くがmodified Rankin Scale 2未満の良好な予後をたどった2。孤立性のは早期に診断・管理されれば予後良好でありうる1。

まとめ

  • ⭐ (同側の+対側の)を見たら、病変は脳幹であり、しかも障害された脳神経の高さにある。皮質脊髄路が延髄下端でしか交叉しないことから導ける。
  • =(の)で〈同側の+〉。⚠️ は原著に含まれず、あれば「内側へ広がった」という追加情報である。
  • =(の)で〈Millard-Gublerの所見+病変側への〉。⭐ ・が壊れるので、外転障害ではなくになり、でも正中を越えられない。
  • 感覚は通常保たれる(脊髄視床路・は温存される)。は末梢性で上とも侵される。
  • ⚠️ 若年では腫瘍・感染・脱髄が主因、高齢では脳卒中が主因という入れ替わりがある。若年例を反射的にとして扱わない。
  • 診断は(出血と適応判断)→ (⚠️ が小さく写らないことがある)→ ・の順。治療はの標準に従い、⚠️ できない眼の保護を必ず組み込む。

出典

  1. 1.Millard-Gubler Syndrome(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2026)Europe PMCのbookXMLで全文を確認した(2026年1月版)。Millard-Gubler症候群が1858年にフランスの医師Auguste Louis Jules MillardとAdolphe-Marie Gublerが記載した古典的交代性脳幹症候群で、橋底部(腹側橋)の一側性病変により顔面神経(CN VII)の核下線維が同側で、皮質脊髄路が対側で障害されること、その結果として同側の末梢性顔面神経麻痺と対側片麻痺を来すこと、外転神経(CN VI)は内側構造であるため原著の症例集積には含まれておらず、CN VIの障害は病変が内側へ及んだことを意味すること、病変が錐体交叉および脊髄視床路の交叉より上位にあるため脳神経徴候が同側・四肢徴候が対側という交代性の形になること、若年者では腫瘍・細菌感染(神経嚢虫症・結核)・ウイルス感染(菱脳炎)・脱髄疾患(多発性硬化症)・神経Behçet病などの免疫介在性炎症が主因で、高齢者では後方循環の出血性・虚血性脳卒中が最多であること、虚血性の場合の責任血管が脳底動脈の短回旋枝であること、脳底動脈の傍正中枝の閉塞によるものはFoville症候群であり内側背側構造が保たれる点でMillard-Gubler症候群と分かれること、Foville症候群が橋尾側1/3の内側橋被蓋の一側性病変により同側顔面神経麻痺・水平共同注視麻痺・対側片麻痺を呈すること、脊髄視床路と内側毛帯は通常保たれるため感覚症状を欠くのが通常であること、末梢性顔面神経麻痺により表情筋の弛緩性麻痺と角膜反射消失を来し閉眼できなくなるため人工涙液・眼軟膏・眼帯による角膜保護が必要であること、Babinski徴候が対側にみられうること、後方循環の脳卒中が脳血管障害の最大25%を占め、橋の脳卒中が全脳幹脳卒中の20%・全虚血性脳卒中の7%を占めるとする報告があること、頭部CTは出血の検出と血栓溶解療法の適応判断に用い病変同定の感度は不十分でMRIの拡散強調画像が最も鋭敏であること、脳幹梗塞は小さく初回画像で描出されないことがあり薄いスライスを要すること、Raymond症候群(古典型:同側外転神経麻痺・対側中枢性顔面神経麻痺・対側片麻痺、通常型:同側側方注視麻痺と顔面を除く対側片麻痺)、Raymond-Cestan症候群(上部橋背側)、Marie-Foix症候群(外側橋、脳底動脈の穿通枝または前下小脳動脈)、Gasperini症候群(橋尾側被蓋、同側CN V・VI・VII・VIIIと対側感覚障害)、Brissaud-Sicard症候群(同側顔面攣縮と対側片麻痺)が鑑別に挙がること、孤立性橋梗塞は早期に診断・管理されれば予後良好でありうることを確認した。なお「橋の脳卒中が全虚血性脳卒中の7%」は本書が文献から引用する値である閲覧 2026-09-02
  2. 2.Foville Syndrome(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2026)Europe PMCのbookXMLで全文を確認した(2026年1月版)。Foville症候群が1858年に解剖学者・精神科医Achille Louis Francois Fovilleが記載した稀な下部内側橋症候群で、原著が一側性の水平共同注視麻痺と同側顔面神経麻痺および交代性片麻痺を呈した43歳男性を記述したものであること、古典型が同側外転神経麻痺・顔面神経麻痺・対側片麻痺の三徴であること、変異型として顔面の知覚低下・末梢性難聴・Horner症候群・運動失調・疼痛・温度覚低下が報告されていること、主因が橋梗塞であり出血・肉芽腫・橋腫瘍も報告されていること、孤立性橋梗塞が全虚血性脳卒中の3%を占め通常はアテローム性分枝閉塞症によること、脳底動脈のアテローム斑が傍正中橋枝の起始部へ及んで閉塞・梗塞を生じること、傍正中橋梗塞では背側から腹側へ外転神経核・橋内顔面神経線維・皮質脊髄路が障害され、重症例では内側縦束・傍正中橋網様体・三叉神経脊髄路核・内側毛帯・前庭核・中小脳脚求心線維・下行性交感神経線維も障害されうること、外転神経核または傍正中橋網様体の障害では単なる外転障害ではなく病変側への共同注視麻痺となり前庭眼反射でも正中を越えられないこと、内側縦束の障害を伴えば核間性眼筋麻痺が加わること、顔面神経麻痺が上下顔面ともに侵される末梢性(下位運動ニューロン)型であること、高血圧・脂質異常症・喫煙・糖尿病といった動脈硬化の危険因子と強く関連すること、評価が頭部CT(出血と虚血の鑑別・血栓溶解の適応判断)・MRI(腫瘍や炎症性病変の検索)・CT/MR血管撮影・心原性塞栓源の検索(心電図・心エコー)・凝固検査・脂質・血糖であること、治療が発症4.5時間以内であれば血栓溶解療法、小血管病では血管内治療は通常推奨されず、抗血小板薬とスタチンを入院時から開始し危険因子を管理することであること、Zhaoらの281例の橋梗塞の研究で傍正中動脈領域の脳卒中の多くはmodified Rankin Scale 2未満の良好な予後であったこと、症候の鑑別にギラン・バレー症候群・神経毒曝露・多発性硬化症・Wernicke脳症・詐病・Brissaud-Sicard症候群が挙がること、Raymond-Cestan症候群が「上部Foville症候群」、古典型Foville症候群が「下部Foville症候群」と呼ばれることがあることを確認した。なお孤立性橋梗塞が全虚血性脳卒中の3%という値は本書が文献から引用する値である閲覧 2026-09-02