脳神経内科学

脳神経内科学 · G2-04

延髄障害の症候群

G2-04: Syndromes of medulla oblongata damage

前提:正常
延髄の微細構造脳幹の伝導路中枢神経・神経解剖:血液供給
疾患
延髄外側症候群内側延髄症候群
症状
Horner症候群解離性感覚障害吃逆球麻痺複視

🧠 全体像:延髄病変は・・小脳路が近接するため、同側の脳神経徴候と対側の体幹四肢徴候が交差する。との対比が基本である。

血管解剖と局在

はと()を分枝してへ合流する。は主に・、内側延髄はまたはの虚血で障害される。による検討では、孤立性の病変(10%)よりも自体の病変(67%)の方が高頻度に確認される1。

flowchart TD
    A["延髄梗塞"] --> B{"外側か内側か"}
    B -->|"外側:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vertebral artery'>椎骨動脈</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='posterior inferior cerebellar artery'>PICA</span>"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nucleus ambiguus'>疑核</span>、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vestibular nucleus'>前庭核</span>、脊髄路V、脊髄視床路、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inferior cerebellar peduncle'>下小脳脚</span>、交感路"]
    B -->|"内側:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anterior spinal artery'>前脊髄動脈</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='perforating artery (perforator branch)'>穿通枝</span>"| D["錐体、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='medial lemniscus'>内側毛帯</span>、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypoglossal nerve'>舌下神経</span>線維"]
    C --> E["嚥下障害+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='crossed sensory disturbance'>交代性感覚障害</span>+同側失調・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Horner syndrome'>Horner症候群</span>"]
    D --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='contralateral hemiparesis'>対側片麻痺</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='deep sensation (proprioception)'>深部感覚</span>低下+同側舌麻痺"]

主要症候群

症候群 同側所見 対側所見
顔面痛低下、、失調、めまい・眼振、嚥下障害・嗄声 体幹四肢の低下
、舌は病変側へ偏位 、振動覚・低下。はので、痛覚・温度覚が保たれる点がとの鑑別になる2
、舌の病変側偏位 。の・錐体路優位の表現として扱われる。
・・迷走神経系に応じ、めまい、眼振、失調、嚥下障害 病変範囲により異なる。腫瘍、炎症、血管病変なども原因となる。

病変の嚥下障害・嗄声は(CN IX・X)障害による。嚥下障害は患者の51〜94%に何らかの程度でみられるとされ、機能的回復は一般的である一方、高齢と急性期の嚥下障害は1年後の転帰不良の独立した予測因子(2.46)と報告されている13。典型例では麻痺や対側低下は目立たない。を伴うこともあり、または隣接するの関与によると考えられている1。まれに自律神経性のが障害され、無呼吸や致死的な中枢性(中枢性症候群)を来すことがある——既報19例の検討では1か月以内の死亡が26.3%に達したが、が換気維持に有効とされる4。

背側優位のでは・・の障害に応じ、めまい、眼振、失調、嚥下障害が前景に立つ。なお、「」という症候名だけで一過性めまいを説明せず、、、四肢失調、などの局在徴候と血管画像を組み合わせて・脳卒中を評価する。

両側延髄病変は呼吸・循環調節、球機能、錐体路を同時に損ない、呼吸不全、、意識障害を来しうる。急性の、構音・嚥下障害、めまいは脳卒中として直ちに評価する。

まとめ

  • は「同側顔面+対側身体」の障害と症状が核となる。
  • 内側延髄は同側、、対側低下の三徴で捉える。
  • 動脈名の暗記より、障害構造と左右差から局在する。

出典

  1. 1.Lateral Medullary Syndrome (Wallenberg Syndrome)(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2026)外側延髄症候群の責任血管は後下小脳動脈(PICA)よりも椎骨動脈自体の病変(67%、孤立性PICA病変は10%)の方が高頻度であること、錐体路(皮質脊髄路)が延髄内側を通り外側の梗塞巣の範囲外にあるため四肢麻痺が典型例では目立たないこと、嚥下障害は患者の51〜94%に何らかの程度でみられ機能的回復は一般的であること、持続する吃逆は疑核または隣接する呼吸調節中枢の関与によると考えられていること、自律神経障害による呼吸不全(無呼吸・死亡)はまれだが起こりうることを確認した。閲覧 2026-08-27
  2. 2.Medial Medullary Syndrome(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2026)内側延髄症候群の責任血管が前脊髄動脈の傍正中枝(椎骨動脈または脳底動脈由来)であること、古典的3徴(対側片麻痺=皮質脊髄路、対側振動覚・位置覚低下=内側毛帯、同側舌偏位=舌下神経の下位運動ニューロン障害)を確認したこと、内側症候群では痛覚・温度覚が保たれることが外側延髄症候群との鑑別点として明記されていることを確認した。閲覧 2026-08-27
  3. 3.Dysphagia May Be an Independent Marker of Poor Outcome in Acute Lateral Medullary Infarction(Journal of Clinical Neurology (Seoul, Korea)・2015)韓国の単一施設で発症7日以内に入院した外側延髄梗塞患者157例を後ろ向きに検討し、1年後の転帰良好(modified Rankin Scale ≤1)が93例(59.2%)であったこと、高齢と急性期の嚥下障害が1年後の転帰不良と独立に関連すること(嚥下障害のオッズ比2.46、95%信頼区間1.04〜5.84、p=0.041)を報告した。閲覧 2026-08-27
  4. 4.Efficacy of tracheostomy for central alveolar hypoventilation syndrome caused by lateral medullary infarction(Journal of Nippon Medical School・2014)外側延髄梗塞による中枢性肺胞低換気症候群(CAHS-LMI)の自験2例と文献既報17例を合わせた19例の検討で、発症1か月以内の死亡が5例(26.3%)、発症1年以内の死亡が7例(36.8%)であったこと、気管切開を施行した12例のうち多くが人工呼吸器から離脱できており、気管切開がCAHS-LMIの換気維持に有効な処置と考えられることを報告した。閲覧 2026-08-27