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Symptoms · Published

Horner症候群

Horner syndrome

別名
ホルネル症候群Bernard-Horner症候群
臓器系
神経眼科
科目
NeurologyAnatomyPulmonology
トピック
神経内科 G1-01:瞳孔支配の障害解剖学 8.3:頸部:血管と神経神経内科 G2-04:延髄障害の症候群神経内科 G3-17:腕神経叢損傷症候群呼吸器学 30:肺癌の診断と病期分類
関連疾患
延髄外側症候群神経芽腫・ウィルムス腫瘍神経節芽腫頭蓋底腫瘍肺癌腕神経叢損傷

🧠 全体像という一所見の並びではなく、眼交感神経路のどこで途切れたかを追う3段階の局在診断である。視床下部から脊髄・を経てに沿って眼窩へ向かう経路を中枢性(1次)・(2次)・(3次)ニューロンに分け、の分布と点眼試験の反応から病変の高さを絞り込む。麻痺やなどの異常とも紛れるため、「暗所で悪化する」という交感神経障害に特徴的なパターンをまず確認することが出発点になる。

定義と用語の整理

(Horner syndrome、、Bernard-)は、片側の眼交感神経路が障害されたときに生じるの三徴である。は上眼瞼を挙上する(平滑筋、交感神経支配)のによるもので、主要な挙筋である支配)は保たれるため、麻痺のよりも軽度にとどまる。同じ機序で下眼瞼にもわずかな挙上障害が起こり、が狭くなることで眼球が奥に引っ込んで見える「」を伴うことがあるが、眼窩そのものの容積が変わる真の陥凹ではない。

所見 紛らわしい隣接病態
瞳孔 、暗所でが増大 麻痺(、明所でが増大)
軽度(のみの 麻痺(高度、も障害)
随伴所見 の分布で局在を推定できる 消失、は相対的に保たれる)

💡 生理的なは明暗どちらでも差がほぼ一定に保たれる。差が暗所でだけ開大するかを確認するだけで、交感神経障害を疑うべきかがほぼ判断できる。

病態生理

眼交感神経路は3つのニューロンを乗り継いで眼窩へ到達する。

flowchart TD
    A["視床下部後外側野"] --> B["脳幹・脊髄<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lateral funiculus'>側索</span>を下行"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ciliospinal center'>毛様脊髄中枢</span><br>C8-T2"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='apex of the lung'>肺尖部</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='subclavian artery'>鎖骨下動脈</span>周囲を通過し上行"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='superior cervical ganglion'>上頸神経節</span>"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='internal carotid artery, ICA'>内頸動脈</span>周囲交感神経叢<br>頭蓋内へ上行"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dilator pupillae'>瞳孔散大筋</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Müller&#39;s muscle'>Müller筋</span>・顔面汗腺"]

どのニューロンが障害されたかで、代表的な原因との分布が変わる。

障害部位 経路 代表的な病変 の分布
中枢性(1次ニューロン) 視床下部→脳幹→ )、病変 同側顔面〜体幹まで広範
(2次ニューロン) 周囲→ 損傷、甲状腺・頸部手術、小児では 同側顔面に広範
(3次ニューロン) 周囲→眼窩 限局(前額のみ)〜なし

⭐ 顔面の発汗を支配する線維はに沿って分布し、瞳孔・眼瞼へ向かう沿いの線維とはですでに分岐している。病変の多くは周囲だけで生じるため、顔面の発汗は保たれたまま瞳孔・眼瞼の症状だけが出る。このの分布の違いが局在診断の実用的な手がかりになる。

💡 交感神経はのメラニン産生にも関与するため、出生時〜乳児期に発症した先天性では患側のの色が薄くなるを伴うことがある。成人発症では色調の変化は起こらないため、の左右差の有無は発症時期(先天性か後天性か)を推定する手がかりになる。

⚠️ 見逃してはいけない病態

⚠️ :急性発症の頭痛に、顔面のを伴わないが合併したら、を最優先で疑う。解離はに先行しうる神経救急であり、の所見だけを見て良性と判断せず、頸部〜頭部の血管画像を急ぐ。

⚠️ 小児の新規発症:既往のない乳幼児・小児に新たにが出現したら、による圧迫を必ず除外する。異色を伴う場合は周産期のなどによる先天性の可能性もあるが、新規発症例ではまず悪性腫瘍の除外を優先する。

⚠️ :肩〜上肢痛、の筋力低下・感覚障害など型の症状にを伴えば、肺癌を疑う。単なる疾患やとして整形外科的に対応しない。

⚠️ 中枢性病変(損傷)などや、外傷による損傷は、同側の失調・嚥下障害・感覚障害などを伴う中枢性を来す。単独所見に見えても随伴する神経徴候を必ず探す。

鑑別の進め方

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anisocoria'>瞳孔不同</span>+軽度<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ptosis'>眼瞼下垂</span>を確認"] --> B["暗所で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anisocoria'>瞳孔不同</span>が増大するか"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='apraclonidine'>アプラクロニジン</span>点眼で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anisocoria'>瞳孔不同</span>の逆転を確認"]
    C --> D{"陽性か"}
    D -->|"陽性:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Horner syndrome'>Horner症候群</span>を確認"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anhidrosis'>無汗症</span>の分布を評価"]
    D -->|"陰性だが発症早期"| F["偽陰性を考慮し<span class='jp-term jp-term-diagram' title='clinical signs'>臨床所見</span>を優先・時間を置いて再検"]
    E -->|"顔面広範"| G["中枢性・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='preganglionic'>節前性</span>を疑う<br>胸部CT・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cervical spinal cord'>頸髄</span>MRIを検討"]
    E -->|"限局〜なし"| H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='postganglionic'>節後性</span>を疑う<br>頭頸部血管画像を優先"]
    G --> I["急性・有痛性なら<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ICA dissection'>内頸動脈解離</span>を最優先で除外"]
    H --> I

点眼試験の現在の位置づけは次のとおりである。

点眼試験 目的 現在の位置づけ
診断の確定(の逆転) 入手しやすく第一選択になりつつあるが、発症直後はが未成熟で偽陰性になりうる
診断の確定(正常側でより 歴史的な基準だが、管理薬物としての入手・保管のから実施できる施設が減っている
の鑑別(ならが乏しい) 病変の局在に有用だが、実施できる施設は限られ、発症早期は判定が難しい

対応の考え方

そのものに対する特異的治療はなく、局在診断で絞り込んだ原因病態への介入がすべてである。が疑われる急性期は、の所見だけで経過観察とせず、直ちに血管画像評価と脳卒中に準じた対応へつなげる。など腫瘍性病変が原因なら、自体は腫瘍への治療(手術・化学療法・放射線療法)に伴って改善しうるが、圧迫が長期化した病変ではなどの外見上の変化が残ることもある。美容目的のなどの対症的介入は、原因検索と原疾患の治療を終えたうえで検討する。

まとめ

  • ・軽度の三徴で、暗所で悪化するが交感神経障害を示す手がかりになる。
  • 眼交感神経路を中枢性(1次)・(2次)・(3次)ニューロンの3段階に分け、の分布(広範か限局か)で局在を絞る。
  • 急性発症+同痛・頭痛のは、として最優先で除外する。
  • 小児の新規発症を、成人の)を必ず検索する。
  • 先天性では異色を伴いうるが、成人発症ではの色調は変化しない。
  • 診断の確定には点眼(現在の第一選択)または点眼を、/の鑑別には点眼を用いるが、発症早期はいずれも偽陰性になりうる。
  • 治療の中心はそのものではなく、局在から絞り込んだ原因病態への介入である。