疾患ノート一覧へ

Disease Atlas · 神経 · 外傷

外傷性脊椎・脊髄損傷

Traumatic spinal cord and vertebral column injury

臓器系
神経
科目
TraumatologyNeurologyRehabilitation
トピック
外傷学 10:脊椎・脊髄損傷の診察と手術適応外傷学 11:椎体骨折の固定と脊椎・脊髄損傷のリハビリテーション神経内科 G1-13:脊髄損傷の症候リハビリテーション 04:脊髄損傷のリハビリテーション
続発疾患
神経因性膀胱尿失禁馬尾症候群
関連疾患
外傷性脳損傷骨粗鬆症自律神経過反射褥瘡
治療薬
エノキサパリンフォンダパリヌクスバクロフェンチザニジン
症状
四肢麻痺対麻痺弛緩性麻痺麻痺尿線途絶
検査値
交感神経皮膚反応
スコア
FIM

🧠 全体像:脊椎外傷は「骨・の不安定性」と「脊髄・」を別の軸として評価する。まずcABCDEを防ぎ、損傷と完全/を国際標準ので記録し、CTで骨傷、MRIで脊髄・損傷を確認したうえで、・整復・固定の要否を判断する。急性期を乗り切った後は、・血栓・排泄管理を軸とした生涯にわたるリハビリテーションが生命予後とQOLを左右する。

初期対応と評価

脊椎損傷を疑っても優先順位は外傷初期診療のcABCDEであり、気道確保時は的に正へ保ち、低酸素・低血圧・大量出血を速やかに是正する。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='causation'>受傷機転</span>または症状から脊椎損傷を疑う"] --> B["cABCDEと<span class='jp-term jp-term-diagram' title='SMR'>脊柱運動制限</span>"]
    B --> C["運動・感覚・会陰部・肛門所見を記録"]
    C --> D["成人の適応例ではCT"]
    D --> E{"神経異常または軟部<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tissue injury'>組織損傷</span>を疑うか"}
    E -->|"はい"| F["CT後にMRI"]
    E -->|"いいえ"| G["骨折形態と不安定性を分類"]
    F --> H["圧迫・進行性麻痺・不安定性を統合"]
    G --> H
    H --> I["保存治療または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='decompression'>除圧</span>・整復・固定"]

⚠️ 長い脊椎ボードは「固定具」ではなく主に救出・器具であり、長時間載せたままにすると疼痛・を起こす。病院到着後は訓練された人員で早期に適切な搬送面へ移し、「完全固定」ではなく不要な屈曲・伸展・回旋を減らすSMRとして理解する。

の国際標準に沿い、左右の主要筋、軽い触覚、針刺激、会陰感覚・などのを記録する。完全損傷は損傷より下で運動・感覚機能が失われもない状態、は損傷より下、特に領域に運動または感覚が残る状態である。

損傷高位と症候

急性期のではを示すが、回復するととしてが出現する。

主な 代表的な麻痺 機能上の特徴
C1〜C4 (C3〜5)障害で換気不全を来し人工呼吸を要し得る
C5〜C8 上肢機能の一部が残り、C6では肩・肘の代償動作が重要になる
T1〜T12 上肢は保たれ、胸腹部・下肢の運動、体幹、自律神経が障害される。T6よりではに注意する
L1以下 または下肢優位障害 円錐/の障害では感覚・が目立つ

不完全脊髄損傷の代表像

症候群 主な障害像
運動・痛覚・温度覚が強く障害され、後索機能(振動覚・)は比較的保たれる
下肢より上肢、特に手の運動障害が強く、高齢者の損傷で典型的
病変側の運動・低下と、対側の痛覚・温度覚低下(数下から)
早期の膀胱直腸障害、会陰部感覚障害、下肢の対称性障害
痛、非対称性弛緩性下肢麻痺、、尿閉/失禁。緊急MRIとを要し得る

⚠️ 圧迫、急性脊髄圧迫、進行する呼吸・神経障害は緊急画像評価と減圧の適応である。

画像診断

検査 主な役割
単純X線 CTが利用できない場面や一部の胸評価に限られ、成人の高リスク外傷では感度が不十分
CT 骨折、内骨片、アライメントを迅速に評価する第一選択
MRI 脊髄浮腫・出血、を評価する

成人で画像が必要ならCTを基本とし、異常がで説明できる場合はCTが正常でもCT後にMRIを行う。新たな脊柱骨折が見つかったら性損傷を念頭に残りの脊柱も確認する。

手術適応と固定法

手術の目的は神経組織の、脊柱の整復と安定化、変形進行の防止、の促進である。強く考慮する状況として、圧迫病変を伴う進行性または重大な神経脱落、骨折・多柱性損傷・破裂骨折などの機械的不安定性、による不安定性、神経障害を伴う内骨片・圧迫、開放損傷が挙げられる。では、胸では胸損傷分類・重症度スコア(TLICS)を補助に用いる。

2024年のAO Spine臨床実践ガイドラインでは、成人の急性において、損傷によらず受傷後24時間以内の早期を優先すべき選択肢として推奨している。全身状態が許す限り、24時間を超えて減圧が遅れるほど回復の可能性が低下するとされる。一方、高用量などのステロイドは、有効性を示す質の高いエビデンスがなく、のガイドラインでは急性への投与を推奨しないとされており、標準治療として一律に用いない。

手術要素 代表的手技
切除、摘出、除去など
整復 ・転位と脊柱配列を安全に戻す
安定化 スクリュー、ロッド、プレート、、骨移植を用いた前方・後方または合併固定

によるセメント補強は、症性)で強い疼痛が遷延し、画像と症状の責任椎体が一致する選択例に検討するものであり、を伴う不安定な急性外傷骨折の代替にはならない。

リハビリテーションと合併症管理

flowchart TD
    A["急性期:生命維持と二次合併症予防"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='range of motion'>関節可動域</span>・呼吸訓練・体位管理"]
    B --> C["座位・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='transfer'>移乗</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='wheelchair'>車椅子</span>操作"]
    C --> D["筋力・立位・歩行または代償手段"]
    D --> E["ADL・住環境・復学復職"]
    E --> F["生涯の皮膚・膀胱直腸・疼痛・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='spasticity'>痙縮</span>管理"]

急性期は呼吸、個別化した頻度でのと皮膚観察による予防(好発部位:)、予防、・腸管の排泄計画を行う。の間隔はな時間割ではなく、感覚障害の程度、皮膚耐性、使用中のなどから個別に決める1の予防にはなどの機械的手段に加え、などのによる薬物的予防を組み合わせる。持続的な留置は尿路感染のリスクを高めるため、可能な限りへ移行する。

には残存筋力の強化、寝返り・操作を段階的に獲得し、は誘因(疼痛・感染・便秘・皮膚障害)を先に探した上でなどを用いる。

慢性合併症 要点
通常T6以上の。急な高血圧・頭痛・発汗では座位にし衣類を緩め、膀胱・腸管・皮膚刺激を探しながら緊急対応する
低圧と完全排出を目標に腎機能・尿路感染・結石を監視する
規則的な排便プログラムを食事・水分・薬剤とともに個別化する
慢性疼痛・ 病態を分け、薬物・運動・補助具・を組み合わせる

そのものは通常を直接障害しないが、併存するを来しうる。突然の身体機能喪失により抑うつ・不安・が多いため、早期から精神心理支援を組み込む。

まとめ

  • cABCDEとSMRを並行し、ASIAに沿ったを初回から記録してを追う。
  • 骨傷評価はCT、神経異常や・脊髄病変の評価はCT後のMRIが中心である。
  • 2024年AO Spineガイドラインは受傷後24時間以内の早期減圧を推奨する一方、高用量は推奨しない。
  • 急性期の呼吸・皮膚・血栓・排泄管理と、生涯にわたるなどの自己管理教育がQOLと生命予後を左右する。

出典

  1. 1.Repositioning for Preventing Pressure Injuries(National Pressure Injury Advisory Panel (NPIAP) / European Pressure Ulcer Advisory Panel (EPUAP) / Pan Pacific Pressure Injury Alliance (PPPIA)・2025)褥瘡予防の除圧・体位変換は固定的な時間割ではなく、感覚障害・可動性・皮膚耐性・使用中の支持面などを総合して個別化することが推奨されていることを確認した。閲覧 2026-08-03