脳神経内科学

脳神経内科学 · G1-13

脊髄損傷の症候

G1-13: Symptoms of spinal cord injuries

前提:正常
原始感覚の伝導路(前外側系)識別性感覚の伝導路(後索・内側毛帯系)脊髄の微細構造(顕微鏡解剖)脊髄の運動機能。脊髄反射。脊髄離断と脊髄ショック。
疾患
Brown-Séquard症候群横断性脊髄炎外傷性脊椎・脊髄損傷自律神経過反射神経因性膀胱神経原性ショック前脊髄動脈症候群馬尾症候群
症状
解離性感覚障害四肢麻痺対麻痺麻痺

🧠 全体像:では、損傷より下の運動・感覚・自律神経機能が障害される。急性期はで・となるが、回復後はが前景化する。かか、の有無、膀胱直腸障害から病変と候群を局在する。

原因と基本評価

外傷(交通事故、、スポーツ、暴力)が多いが、腫瘍、感染、変性疾患、血管障害も様の急性/亜急性症候を来す。まずを保護し、気道・呼吸・循環を評価する。脊椎で骨傷、で脊髄圧迫、浮腫、出血、靱帯損傷を確認し、反復で損傷、、感覚・運動の左右差を記録する1。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='spinal cord injury, SCI'>脊髄損傷</span>を疑う外傷/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acute palsy'>急性麻痺</span>"] --> B["脊椎保護・ABC<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='cervical spinal cord'>頸髄</span>損傷では呼吸を最優先"]
    B --> C["運動・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sensory level'>感覚レベル</span>、肛門周囲感覚、肛門収縮、膀胱機能を評価"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='computed tomography'>CT</span>で骨傷、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='magnetic resonance imaging'>MRI</span>で脊髄圧迫・出血・浮腫を確認"]
    D --> E{"進行性圧迫/不安定性があるか"}
    E -->|"ある"| F["脊椎外科へ緊急連絡<br>減圧・固定を検討"]
    E -->|"ない"| G["呼吸・循環・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pressure ulcer'>褥瘡</span>・血栓・排泄を管理しリハビリテーション"]

⚠️ 急性における急性期の高用量静注は、現在は一律の標準治療とされていない。 NASCIS III試験(受傷後8時間以内の499例)では、受傷後3時間以内に治療開始した群への24時間投与、3〜8時間以内に開始した群への48時間投与が回復に有利と報告され、この結果が広く行われる根拠となった2。しかしNASCIS II・III試験の結果をに立ち返って再解析した検討では、いずれの試験も主要な転帰指標の改善を示せておらず、の結果だけでは新たな治療標準をする根拠にならないとづけられている3。

高位による運動・呼吸への影響

主な 代表的な麻痺 機能上の特徴
C1〜C4 (C3〜5)が障害されるでは換気不全を来し、人工呼吸を要し得る。C4損傷はの代表として示される
C5〜C8 上肢機能の一部が残る。C6では肩・肘の機能を用いる代償動作が重要で、下肢・体幹機能は障害される
T1〜T12 上肢は保たれ、胸腹部・下肢の運動、体幹、自律神経が障害される。T6よりではに注意
L1以下 または下肢優位障害 L1損傷は下肢麻痺の代表。円錐/の障害では弛緩性、感覚・が目立つ

完全損傷と不全損傷

は損傷より下で運動・感覚機能が失われ、もない状態である。は損傷より下、特に領域に運動または感覚が残る。予後推定と経過観察では肛門周囲感覚、、随意肛門収縮を含むを確認する。と重症度は、主要筋・軽い触覚/針刺激・の所見からASIA機能障害尺度(AIS)を判定するASIA/ISNCSCI(国際標準分類)で評価する4。

候群 運動・感覚・自律神経所見
脊髄の横断性障害 病変以下の両側性運動・感覚・自律神経機能が急性に障害される。、圧迫、血管障害を鑑別
(Brown–Séquard syndrome) 同側の錐体路障害による筋力低下・低下、対側の痛覚/温度覚低下(数下から)を組み合わせる
前方2/3、領域 両側と痛覚/温度覚低下、後索の振動覚・は比較的保たれる。屈曲損傷や虚血で生じる
中心部、に多い 上肢が下肢より強く障害され、手指、、感覚変化を伴う。高齢者の損傷で典型
後索 振動覚・の障害と失調が中心で、痛覚/温度覚と運動は比較的保たれる
早期の膀胱直腸障害、会陰部感覚障害、下肢の対称性障害。とが混在し得る
根 、非対称性弛緩性下肢麻痺、、尿閉/失禁。緊急と原因解除を要する
一過性の脊髄機能障害 外傷後の一過性運動・感覚障害で、構造傷害を除外して経過を評価する

機能障害の内訳

運動・感覚・反射

損傷部位より下で筋力低下から麻痺までを来し、なら、/ならとなる。急性期のではとを示すが、から回復するととして、、が出現する。前角・神経根などでは、攣縮、を示す。

感覚は病変以下で低下/消失し、痛覚・温度覚、触覚、振動覚、の組合せが局在に役立つ。感覚の温存はの重要な指標である。

自律神経・呼吸・合併症

急性期のでは低血圧、徐脈、発汗調節低下、喪失を伴う。/では交感神経障害によりを来し得る。慢性期には・腸管、、、、が問題となる。

では横隔膜・が障害され呼吸補助を要する。でも咳嗽と分泌物排出が弱まり、肺炎、を起こしやすい。呼吸数だけでなく努力呼吸、咳嗽、、を監視する。

心理社会面

そのものは通常を直接障害しない。しかし併存するはを来し得る。突然の身体機能喪失により抑うつ、不安、が多いため、本人・家族への説明、疼痛・睡眠管理、精神心理支援、を組み込む。

まとめ

  • は、は胸を示し、はで最も切迫する。
  • 急性脊髄圧迫、、進行する呼吸/神経障害は緊急画像と減圧の適応である。
  • ブラウン・セカール、前脊髄、中心性、円錐、の感覚・運動・排泄パターンを区別して局在する。

出典

  1. 1.Inter-rater reliability of motor and sensory examinations performed according to American Spinal Injury Association standards(Spinal Cord・2007)脊髄損傷患者45例を対象に熟練した検者2名がASIA運動・感覚検査を行ったところ、総ASIAスコアの検者間相関係数・級内相関係数はいずれも0.96を超え強い一致を示した一方、検者間差によるばらつきは複数評価者を伴う臨床試験の計画で考慮すべきと結論づけられたこと閲覧 2026-08-27
  2. 2.Administration of methylprednisolone for 24 or 48 hours or tirilazad mesylate for 48 hours in the treatment of acute spinal cord injury. Results of the Third National Acute Spinal Cord Injury Randomized Controlled Trial(JAMA・1997)受傷後8時間以内の急性脊髄損傷患者499例を対象としたNASCIS III試験で、受傷後3時間以内に治療開始した群は24時間投与、3〜8時間以内に開始した群は48時間投与のメチルプレドニゾロン大量静注が運動機能回復に有利だったと報告され、この結果が急性期の大量メチルプレドニゾロン投与が広く行われる根拠となったこと閲覧 2026-08-27
  3. 3.Methylprednisolone for acute spinal cord injury: an inappropriate standard of care(Journal of Neurosurgery (Spine)・2000)NASCIS II・III試験結果を主要評価項目に立ち返って再解析したところ、いずれの試験も主要な転帰指標の改善を示せておらず、事後解析の結果だけでは新たな治療標準を正当化する根拠にならないと結論づけられ、24時間投与は臨床的にはなお実験的とみなすべきで48時間投与は推奨されないとされたこと閲覧 2026-08-27
  4. 4.International Standards for Neurological Classification of Spinal Cord Injury: Revised 2019(Spinal Cord・2019)脊髄損傷の神経学的高位とAISは主要筋・軽い触覚/針刺激・仙髄温存の所見から判定すること閲覧 2026-08-27