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Disease Atlas · 腎・泌尿器 · 病態

神経因性膀胱

Neurogenic bladder

別名
神経因性下部尿路機能障害NLUTD
臓器系
腎・泌尿器神経
科目
NeurologyTraumatologyUrologyPediatricsInternal Medicine
トピック
神経内科 G1-32:排尿・排便障害外傷学 11:椎体骨折の固定と脊椎・脊髄損傷のリハビリテーション泌尿器科学 U-24:小児泌尿器科学泌尿器科学 U-20:前立腺肥大症(BPH)の症状と鑑別診断神経内科 G1-13:脊髄損傷の症候小児科 44:先天性腎尿路異常(CAKUT)内科学 I-09:尿路感染症:無症候性細菌尿・膀胱炎・前立腺炎
鑑別疾患
前立腺肥大症
合併症
慢性腎臓病
続発疾患
尿路感染症尿路結石症尿失禁膀胱尿管逆流
関連疾患
自律神経過反射排尿筋低活動
治療薬
オキシブチニンソリフェナシンボツリヌス毒素タムスロシン
症状
失禁頻尿尿勢低下尿意切迫感腹圧排尿尿線途絶膀胱膨満
検査値
クレアチニン
画像所見
水腎症
元疾患
糖尿病性自律神経障害
原因となる疾患
横断性脊髄炎外傷性脊椎・脊髄損傷神経管閉鎖不全(二分脊椎・無脳症)脊髄係留症候群多発性硬化症
適応薬
ジスチグミンベタネコール

🧠 全体像は「漏れるか否か」ではなく、・排出という膀胱機能全体を統御する神経路(排尿中枢S2〜S4・末梢神経)のどこが障害されたかで臨床像が決まる病態である。病変によって「橋より(協調は保たれた)」「橋との間()」「・末梢()」の3類型に整理でき、では急性期の)からへ段階的に移行する。管理の到達点は失禁の解消ではなく「低圧での」と「完全な排出」であり、これを怠るとによる高圧が水腎症・・腎不全という不可逆的な上部尿路障害を招く。を基盤とし、腎機能と上部尿路を生涯にわたり監視することが治療の骨格になる。

概要

は単一の疾患ではなく、・排出を制御する中枢または末梢の神経路が障害された結果として生じる膀胱機能障害の総称である。原疾患は多岐にわたり、・パーキンソン病・認知症のような中枢から、脊椎・のような脊髄病変、などの先天性脊髄奇形、糖尿病性神経障害や骨盤内手術に伴うまで幅広い。「どの型の失禁か」ではなく「膀胱がためられるか・空にできるか」という機能全体を評価することが臨床上の出発点になる。尿失禁としての現れ方(の分類と個別治療)は別ノートに譲り、ここでは神経支配・病変・上部尿路保護を中心に扱う。

蓄尿・排尿の神経支配

時は(交感神経、Th11〜L2起始)がを弛緩させを収縮させる。排尿時には排尿中枢(S2〜S4)を介して、(副交感神経)による収縮と、)による弛緩を協調させる。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='urine storage (bladder filling)'>蓄尿</span>:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypogastric nerves'>下腹神経</span>(交感神経)"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='detrusor muscle'>排尿筋</span>弛緩・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='internal urethral sphincter'>内尿道括約筋</span>収縮"]
    C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pontine micturition center'>橋排尿中枢</span>"] --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sacral'>仙髄</span>排尿中枢<br>S2〜S4"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pelvic nerve'>骨盤神経</span>(副交感神経)<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='detrusor muscle'>排尿筋</span>を収縮"]
    D --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pudendal nerve'>陰部神経</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='somatic nerve'>体性神経</span>)<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='external urethral sphincter'>外尿道括約筋</span>を弛緩"]

💡 は「の収縮」と「の弛緩」を同時に指令する協調役である。橋より下・より上でこの経路が遮断されると、と括約筋が別々に不する(DSD)が生じる。

病変高位による類型

は、障害された神経路のによって3つの型に整理できる。

病変 代表疾患 機能異常
橋より 、パーキンソン病、認知症 の協調路は保たれるためDSDは伴わない
橋との間 に加え、を伴う。橋との協調路が絶たれと括約筋が同時に収縮しうる
・末梢 、骨盤内手術 。膀胱の低コンプライアンス化・無緊張を来し、を生じやすい

⚠️ の急性期はによりが弛緩しを呈するため、この時期の病像だけで最終的な型を判定してはならない。が解除されるにつれ、が保たれたではを伴うへ移行する。

管理の目標:低圧蓄尿と完全排出

の管理目標は失禁の解消ではなく、「低圧での」と「完全な排出」である。DSDやの低コンプライアンス化により期の膀胱内圧がに上昇すると、や水腎症を介して腎へ進行しうる。逆に、見かけ上「漏れていない」状態でも高圧が続いていれば上部尿路は危険にさらされている。

💡 この目標は水腎症という不可逆的な合併症を避けるための到達点であり、症状の改善だけを治療の成功指標にしないことが実地の要点になる。

評価

  • ・排出パターンと失禁の有無を記録する。
  • で排出効率を評価する。
  • 漏出時圧・膀胱コンプライアンス・DSDの有無を評価する。腹圧性/の鑑別で行う一般的なとは異なり、ここでは上部尿路への危険度を評価する目的が中心になる。
  • 上部尿路の画像(超音波、必要に応じ造影検査)とクレアチニンなどの腎機能を定期的に監視する。
  • 尿検査でと症候性感染を区別する。

⚠️ 中の患者や例では、尿はに細菌にさらされており、症状を伴わない細菌尿()だけを理由に抗菌薬を投与しない。治療対象は発熱・の悪化・全身症状など症候性感染に限る。

小児ではに伴うがCAKUT()の重要な原因になる。出生早期からのと、・上部尿路超音波による・水腎症の定期監視がの鍵であり、女児の失禁ではなど解剖学的原因との鑑別も欠かさない。

治療

を基盤に、病変に応じて薬物療法・手技を組み合わせる。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neurogenic bladder'>神経因性膀胱</span>と診断"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='urodynamics'>尿流動態検査</span>で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='urine storage (bladder filling)'>蓄尿</span>・排出機能を評価"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='clean intermittent catheterization'>清潔間欠導尿</span>を基盤に開始"]
    C --> D{"低圧<span class='jp-term jp-term-diagram' title='urine storage (bladder filling)'>蓄尿</span>・完全排出が<br>達成できるか"}
    D -->|"できない:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='detrusor overactivity'>排尿筋過活動</span>・DSD"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Anticholinergics'>抗コリン薬</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='beta-3 agonist'>β3作動薬</span><br>不十分なら膀胱壁<span class='jp-term jp-term-diagram' title='botulinum toxin'>ボツリヌス毒素</span>注入"]
    E --> F["DSDには<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Alpha-blockers'>α遮断薬</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sphincterotomy'>括約筋切開</span>を追加検討"]
    D -->|"できない:難治性"| G["膀胱拡大術・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='urinary diversion'>尿路変向</span>を検討"]
    D -->|"できる"| H["定期的な腎機能・上部尿路の監視を継続"]
    F --> D
治療 位置づけ
治療の基盤。を防ぎ膀胱内圧を下げる
など) を抑え圧を下げる
膀胱壁注入 薬物療法が不十分な・DSDに追加する
など)・ DSDによる出口抵抗を下げる
膀胱拡大術・ 難治例・に対する外科的選択肢

⚠️ 長期は尿路感染・結石・尿道損傷などの合併症が多く、他の方法が実施困難な場合に限る最後の手段である。

合併症

反復性尿路感染、・停滞尿を背景にを形成しやすい)、高圧・DSDに伴う水腎症、進行すればに至る。Th6よりでは、などの刺激で急激な高血圧・徐脈・発汗・頭痛を来すに注意する。

鑑別

疾患 ポイント
尿失禁 の一表現型。の分類と個別治療は同ノートを参照
高齢男性のの代表的鑑別。DREで前立腺性状を確認し、両者は併存しうる
特発性 の証拠を欠く・既往歴で鑑別する

まとめ

  • ・排尿を制御する神経路の障害の総称で、病変により橋より、協調は保たれる)、橋との間(+DSD)、・末梢()の3型に整理する。
  • 急性期はによるを呈し、その後へ移行するため、急性期の所見だけで型を確定しない。
  • 管理目標は失禁の解消ではなく「低圧での」と「完全な排出」であり、上部尿路(腎機能・水腎症・)の保護が核心である。
  • を基盤に、、DSDへの、難治例の膀胱拡大術・を組み合わせる。長期は合併症が多く最後の手段とする。
  • 反復性尿路感染・結石・(Th6以上の)・が主要な合併症で、定期的な腎機能と上部尿路の監視が生涯にわたり必要になる。