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Disease Atlas · 腎・泌尿器 · 疾患

膀胱尿管逆流

Vesicoureteral reflux

別名
VUR膀胱尿管逆流症vesicoureteric reflux
臓器系
腎・泌尿器小児
科目
UrologyPediatrics
トピック
泌尿器科学 U-02:腎臓・尿管・膀胱の発生異常泌尿器科学 U-24:小児泌尿器科学小児科 44:先天性腎尿路異常(CAKUT)小児科 3-22:先天性腎尿路異常
合併症
慢性腎臓病高血圧症
続発疾患
急性腎盂腎炎・腎膿瘍
関連疾患
多嚢胞性異形成腎
治療薬
ニトロフラントインスルファメトキサゾール+トリメトプリムセファレキシン
症状
発熱背部痛腹圧排尿
検査値
クレアチニン
画像所見
水腎症尿路拡張分類
原因となる疾患
神経因性膀胱

🧠 全体像は、排尿時に膀胱内の尿が尿管・腎盂へ逆流する状態で、多くは膀胱を斜めに貫く尿管の走行が短いことによる弁機構の先天的な機能不全(原発性)で起こる。閉塞性尿路疾患やによる膀胱内圧上昇が二次的に逆流を起こすこともある(続発性)。VURそのものが症状を出すことは少なく、臨床上の焦点は発熱性尿路感染を反復させ腎瘢痕()へ進展させるかどうかにあり、診断・管理の軸は国際分類のgrade、年齢、感染既往を統合して個別化することにある。

病態

膀胱を走る尿管のトンネルが十分な長さを持たないと、排尿時に膀胱内圧が上昇してもが受動的に閉じきらず、尿が尿管・腎盂側へ逆流する。トンネルが短いほど逆流しやすく、多くの原発性VURは成長に伴うトンネルの延長とともに自然消失する。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ureterovesical junction (UVJ)'>尿管膀胱移行部</span>の<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='submucosal'>粘膜下</span>トンネル短縮<br>(原発性)"] --> C["排尿時に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ureteral orifice'>尿管口</span>が<br>閉鎖しきらない"]
    B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lower urinary tract obstruction'>下部尿路閉塞</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neurogenic bladder'>神経因性膀胱</span>による<br>膀胱内圧上昇(続発性)"] --> C
    C --> D["膀胱尿から尿管・腎盂への逆流"]
    D --> E["腎盂内の細菌が腎実質へ波及しやすくなる"]
    E --> F["反復する発熱性尿路感染"]
    F --> G["尿細管間質の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='scarring'>瘢痕化</span><br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='reflux nephropathy'>逆流性腎症</span>)"]
    G --> H["高血圧・蛋白尿・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chronic kidney disease, CKD'>慢性腎臓病</span>"]

💡 VURは「逆流そのもの」より「逆流が感染を腎実質まで運ぶ通り道になること」が問題の本体である。 無菌尿の逆流だけでは腎障害を起こしにくく、発熱性尿路感染を反復するかどうかが長期予後を左右する。

分類:国際分類(grade I〜V)

での逆流の到達範囲と拡張の程度で5段階に分類する。

grade 所見
I 拡張を伴わず尿管のみに逆流
II 拡張を伴わず腎盂・まで逆流
III 尿管・腎盂の軽度〜中等度の拡張、の鈍化はないか軽度
IV 中等度の拡張と尿管のの鈍化を伴うが乳頭陰影の大半は保たれる
V 高度な拡張と尿管の著明な、大半ので乳頭陰影が消失

⚠️ grade III・IVの境界は評価者間でが下がりやすい所見であり、grade単独で管理方針を機械的に決めない。 年齢、性別、発熱性尿路感染の既往、腎瘢痕の有無、の有無を合わせて個別に判断する1

臨床像

  • VUR自体は無症候であることが多く、多くは発熱性尿路感染の精査、または・出生後の水腎症ので発見される。
  • 主な入口は発熱を伴う尿路感染で、乳幼児では発熱以外の局在症状に乏しいことがある。年長児では痛を伴うこともある。
  • 排尿機能障害(、頻尿、など)を伴うBBDが背景にあると、逆流の持続・再発とのリスクが上がる。

診断

  • だけではVURを除外できない。 がなくても高grade VURは否定できず、逆に水腎症の多くは逆流以外の原因(生理的拡張、UPJ通過障害など)による。
  • 確定診断とgrade評価はVCUG。 発熱性尿路感染の反復、超音波異常、症候性の乳児例などで適応を選んで施行する。
  • 腎瘢痕の評価にはを用いる。腎超音波が異常、または血清クレアチニンが上昇していれば施行を検討する2
flowchart TD
    A["発熱性尿路感染 または<br>水腎症の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Follow-up Routines'>フォローアップ</span>"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='renal and bladder ultrasonography'>腎膀胱超音波</span>"]
    B --> C{"反復発熱性UTI・<br>超音波異常・症候性乳児か"}
    C -->|"あり"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='VCUG'>排尿時膀胱尿道造影</span>"]
    D --> E["国際分類でgrade I〜Vを判定"]
    C -->|"なし"| F["経過観察"]
    E --> G{"腎超音波異常・<br>Cr上昇があるか"}
    G -->|"あり"| H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='DMSA renal scan'>DMSA腎シンチグラフィ</span>で瘢痕評価"]

治療

  • 多くの低grade VURは成長に伴い自然消失する。 grade I・IIは発熱性尿路感染の既往がなければ、持続的を必須とせず経過観察も選択肢になる。
  • 1歳未満で発熱性尿路感染の既往があれば、grade を問わず持続的を検討する。 などを用いる2
  • BBDを合併する場合は、便秘治療・排尿習慣の是正・排尿姿勢の指導を並行し、抗菌薬予防だけに頼らない。
  • 外科的介入は、予防投与下の、持続する高grade逆流、腎障害の進行などで検討する。 開腹尿管新吻合術は内視鏡的注入術より短期成功率が高い(開腹98.1%対内視鏡83.0%)が、内視鏡的注入術は低侵襲であり、まずを試みてから開腹術に進む選択も広く行われる2
  • ⚠️ grade だけで「grade IIIから即手術」と機械的に判断しない。 高grade(特にIV・V)でも乳幼児期はまず経過観察や予防投与が選択されることが多く、年齢・の有無・腎瘢痕の進行を含めて個別化する。

対側腎異常との関連

VURはのこともあるが、他のと併存しやすい。では、患者の約3分の1に対側腎の異常を認め、そのうち最多のVURは患者全体の19.7%にみられ、VURを伴う症例の40%はgrade III〜Vの高度逆流であった3。片側の腎尿路異常を指摘したら、対側腎の評価も怠らない。

まとめ

  • VURはの弁機構不全(原発性)またはによる続発性の逆流で、国際分類のgrade I〜Vで重症度を評価する。
  • 逆流そのものより、発熱性尿路感染を反復させ腎瘢痕()・高血圧・へ進展させることが臨床上の問題である。
  • 確定診断とgrade評価はVCUGで行い、超音波単独では除外できない。で腎瘢痕を評価する。
  • 管理はgrade単独ではなく年齢・感染既往・BBD・腎瘢痕を統合して個別化し、低gradeは自然消失を待ち、高grade・・腎障害進行では外科的介入(内視鏡的注入術または開腹尿管新吻合術)を検討する。
  • 他のなど)と併存しやすく、片側の異常を見つけたら対側腎も評価する。

出典

  1. 1.Reliability of the Grading System for Voiding Cystourethrograms in the Management of Vesicoureteral Reflux: An Interrater Comparison(Advances in Urology・2016)国際分類は排尿時膀胱尿道造影の外観に基づき尿管のみへの逆流(第1段階)、腎盂まで達するが拡張を伴わない逆流(第2段階)、腎杯まで達し拡張を伴う逆流(第3段階)、腎杯の乳頭陰影が消失するほどの高度な拡張と尿管の蛇行を伴う逆流(第4段階)という段階で構成されること、特にgrade III・IVの判定で評価者間の一致率が下がりやすいことを確認した閲覧 2026-08-11
  2. 2.Management and Screening of Primary Vesicoureteral Reflux in Children(American Urological Association (AUA)・2017)1歳未満で発熱性尿路感染の既往があれば全gradeで持続的抗菌薬予防投与を推奨し、既往のないgrade I・IIでは予防投与を必須としないこと、内視鏡的注入術は開腹尿管新吻合術に比べ短期成功率が低い(開腹98.1%対内視鏡83.0%)一方で低侵襲であるため予防投与下の突破感染後に選択肢となること、腎超音波が異常か血清クレアチニンが上昇している場合にDMSAシンチグラフィによる腎瘢痕評価を推奨することを確認した閲覧 2026-08-11
  3. 3.Unilateral multicystic dysplastic kidney: a meta-analysis of observational studies on the incidence, associated urinary tract malformations and the contralateral kidney(Nephrology Dialysis Transplantation (Schreuder MF, Westland R, van Wijk JA)・2009)片側性多嚢胞性異形成腎の対側腎異常のうち膀胱尿管逆流(VUR)が19.7%と最多を占め、VURを伴う症例の40%がgrade III〜Vの高度逆流であったことを確認した閲覧 2026-08-11