検査値ノート一覧へ

Lab values · Published

残尿量

Post-void residual urine volume

別名
残尿PVR排尿後残尿量
臓器系
腎・泌尿器
科目
Urology
トピック
泌尿器科学 U-09:尿失禁と尿流動態検査泌尿器科学 U-10:排尿時痛と排尿困難
関連疾患
馬尾症候群排尿筋低活動

🧠 全体像は、という患者本人の症状とは別に、超音波()またはによって実測するな尿量である。両者は評価している対象がそもそも異なり、症状の強さと実測値の大きさは必ずしも並行しない。⚠️ は単一の絶対値では決まらず、急性か慢性か・症状の有無・腎機能によって解釈が変わる——が多い=ただちに」ではない

どう測るか

  • 超音波(×左右径×上下径×0.52ので膀胱内容量を推定する非侵襲的な方法。携帯型のブラダースキャナーは短時間で測定できるが、機器の・測定手技に精度が依存する1
  • による実測:カテーテルで排出した尿量そのものであり、の基準とされる。侵襲的で時間もかかるが、超音波との間に統計的有意差はないと報告されている1
  • 測定のタイミングが結果を左右する。 排尿直後に測定するのが原則で、排尿から測定まで10分以上空くと有意な過大評価につながる——時間が経つほど腎から膀胱への尿の再貯留が進むためである1

目安となる量とその意味

⚠️ 単一のは存在しない。 何を「有意に高い」とするかは性別を問わず合意が無く、報告間で数値が食い違う1。EAUガイドラインも、検査再検査変動が大きく転帰研究が乏しいため治療判断のための閾値はまだ確立されておらず、これは研究の優先課題だと明記している2。以下は目安であり、症状・腎機能・感染の有無と併せて判断する。

目安 範囲 臨床的な位置づけ
少量 100 mL未満 正常範囲
少〜中等量 100〜200 mL 許容範囲内、単独では異常としない
中等量 200〜300 mL 排出不良を示唆
大量 300〜400 mL 尿閉を示唆
きわめて大量 400 mL超 尿閉とみなされる目安1

⭐ 男性のLUTS評価では、50 mLをとした場合のの予測は63%・52%にとどまり単独では確定できない一方、ベースラインのが350 mL以上だと症状進行のリスクが高いという関連が(MTOPS・ALTESS)で示されている2

における方法(か)の選択に関わる量と、解除後ののモニタリングはに譲る。

⭐ 高値(大量残尿)の意味 — 機序で群にまとめる

機序 代表例
尿道・の物理的な狭窄・圧迫 、膀胱・前立腺の腫瘍、)、便秘による直腸からの圧迫
そのものの収縮力低下 加齢に伴う、術後の一過性
排尿を制御する神経経路の障害 パーキンソン病1
薬剤性 刺激などによる収縮・の阻害 など)、オピオイド(モルヒネなど)、など)、など)

💡 4群は排他的でなく、高齢者ではに薬剤性が重なって初めて顕在化することが多い。

⚠️ 測定上の注意

  • 超音波の誤差要因:腹水・などの・腹部の瘢痕・機器の不良により、超音波でのは9%に達しうる1。体格(肥満)・組織の浮腫・既往の腹部手術も、の精度を落とす要因である3
  • :携帯型ブラダースキャナーは重度の腹水・・妊娠中の使用には不向きとされ、腹水はむしろ測定値を偽性に上昇させる。大きなと紛れて測定値を乱しうる1
  • 排尿直後でない測定は前述のとおり過大評価につながる。「排尿してすぐ」ではなく「排尿を我慢していた状態」で測ると全く別の値になる。
  • 単回値の変動が大きい。個人内でも測定ごとにばらつくため、1回の値だけで「が多い」と決めつけない。
  • 小児は成人と基準が異なる。20 mL超で、年齢により程度は異なるが異常とみなされ、成人の目安(100/200/300/400 mL)をそのまま当てはめない1

経時変化とモニタリング

単回値ではなく反復測定で判断する。・手術(に対するなど)・の導入といった治療の前後でを追跡することで、効果判定に用いられる1。⚠️ が多いこと自体は、経過観察や薬物療法のな禁忌ではない——治療反応が乏しい可能性を示唆するにとどまる2。数値だけで「が必要」と決めるのではなく、症状の強さ・腎機能・尿路感染の有無を併せて介入の必要性を判断する。

まとめ

  • または超音波で実測するな尿量で、という症状とは別物である。
  • 量が確定値、超音波(超音波)は非侵襲的だが誤差を持つ。測定は排尿直後に行い、10分以上遅れると過大評価になる。
  • は単一の絶対値ではなく、症状・腎機能・急性か慢性かの文脈で解釈する。目安として100/200/300/400 mLの区分があるが、合意された基準はない。
  • 高値の機序は・薬剤性の4群に整理できる。
  • 超音波は肥満・腹水・で不正確になりやすく、単回値の変動も大きい。小児は成人と基準が異なる。
  • 単回値でなく反復測定で治療効果を判定する。が多いこと自体は直ちにを要する根拠にはならず、症状・腎機能・感染の有無で介入を決める。

出典

  1. 1.Bladder Post Void Residual Volume(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2024)Procedures節でカテーテル導尿による実測が残尿量測定の基準(gold standard)とされる一方、携帯型ブラダースキャン・経腹的超音波(前後径×左右径×上下径×0.52の楕円体近似式)は非侵襲的な代替法であり両者の測定値に統計的有意差がないこと、排尿後10分以上の遅延で有意な過大評価が生じるため排尿直後の測定が重要であること、Normal and Critical Findings節で成人では100mL未満が正常・200mL以下は許容範囲・200mL超は排出不良を示唆・300mL超は尿閉を示唆・400mL超は尿閉とみなされる目安が示される一方、両性で何が「有意に高い残尿」かの合意は無く矛盾するデータがあると明記されていること、小児では20mL超が年齢により異なる程度で異常とみなされ成人と基準が異なること、Interfering Factors節で腹水・卵巣嚢腫や子宮筋腫の嚢状変性などの骨盤内腫瘤・瘢痕・機器校正不良により超音波での偽陽性率が9%に達しうること、携帯型ブラダースキャナーは重度の腹水・子宮脱・妊娠中の使用には不向きで腹水はむしろ測定値を偽性に上昇させうること、大きな膀胱憩室が測定に影響しうること、Potential Diagnosis節で高値の原因を神経因性(脊髄損傷・馬尾症候群・糖尿病性膀胱障害・パーキンソン病・多発性硬化症など)・機械的(前立腺肥大症・尿道狭窄・腫瘍・膀胱瘤・便秘など)・薬剤性(抗コリン薬・オピオイド・三環系抗うつ薬など)に分類していること、Indications/Clinical Significance節で残尿量測定が前立腺肥大症などの治療効果を経時的に追跡する用途で有用とされることを確認した閲覧 2026-08-04
  2. 2.EAU Guidelines on the Management of Non-neurogenic Male LUTS — Diagnostic Evaluation(European Association of Urology (EAU)・2026)残尿量測定の節で、経腹的超音波・ブラダースキャン・導尿のいずれで評価してもよいという強い推奨が示されていること、50mLをカットオフとした場合の膀胱出口閉塞予測での陽性的中率63%・陰性的中率52%という報告があること、MTOPS・ALTESS試験でベースラインの残尿量が350mL以上の場合に症状進行リスクが高いと関連づけられたことが示される一方、検査再検査変動が大きく転帰研究が乏しいため治療判断のための残尿量閾値はまだ確立されておらず研究の優先課題とされていること、残尿量が多いこと自体は経過観察・薬物療法の禁忌ではなく治療反応不良を示唆するにとどまるとされていることを確認した閲覧 2026-08-04
  3. 3.Male Urinary Retention: Acute and Chronic(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2024)Evaluation節で、ベッドサイド超音波は体格(肥満)・組織の浮腫・既往の腹部手術・腹水・瘢痕により不正確になりうると述べていることを確認した閲覧 2026-08-04