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Symptoms · Published

残尿感

Sensation of incomplete emptying

別名
不完全排尿感
臓器系
腎・泌尿器
科目
UrologyGynecology
トピック
泌尿器科学 U-09:尿失禁と尿流動態検査泌尿器科学 U-10:排尿時痛と排尿困難泌尿器科学 U-20:前立腺肥大症(BPH)の症状と鑑別診断婦人科 29:腟・子宮の正常位置と異常位置(性器脱)および治療
関連疾患
骨盤臓器脱前立腺肥大症尿道狭窄馬尾症候群排尿筋低活動
スコア
国際前立腺症状スコア

🧠 全体像:「排尿してもまだ膀胱に尿が残っている感じがする」という訴えは、機序ももまったく違う複数の状態を一つの言葉で覆っている。区別の起点は、症状としてのと、超音波で実測するは同じものではないという一点であり、両者は必ずしも一致しない1(IPSS)は、頻尿と並ぶ7項目の一つとしてを問うが、これも実測したとは別に評価される症状のスコアであることに変わりはない。

定義と用語の整理

としての 実測した
何を見ているか 患者が「まだ出ていない気がする」と感じるかどうか 排尿直後に超音波・膀胱スキャン・カテーテルで測るな尿量2
両者は一致するか 必ずしも一致しない1 同上
があるのには正常 膀胱・尿道の知覚過敏(膀胱炎、前立腺炎、)でよくみられる
が多いのに無症状 慢性尿閉、では症状を欠くことがある

この乖離こそが評価の出発点である。がある=尿が残っている」と決めつけて治療を始めると、知覚過敏だけの患者に不要な処置をし、無症候の慢性尿閉を見逃す。必ずで確かめてから次を考える。

💡 はカテーテルまたは超音波で排尿直後に行う。180 mL以上のはUTIとの関連が指摘される目安として使われるが、これ自体が治療のな閾値というわけではない。

病態生理

原因は機序で3群に分けると整理しやすい。

機序 代表
① 実際に尿が残る を含む)
② 尿は残っていないが知覚が過敏 膀胱・尿道の炎症、 膀胱炎前立腺炎
③ 骨盤底の解剖学的変化で排尿の効率が落ちる 支持組織の弛緩による膀胱・尿道の変位 の前方区画(

💡 ①群は男性ではなどの、女性では神経・の機能異常が主因になりやすく、で評価する。が高度になると、あふれた尿が少量ずつ漏れる尿失禁)を合併することもある。

💡 ③群では、の前方区画で下垂したが排尿時にも十分排出されず、実際にが増える。脱出物をに押し戻して排尿するのはこのためであり、後方区画()では類似の機序で排便不完全感が生じるが、これはとは別の症状として扱う。

②群は・発熱を伴うことが多く、感染徴候の有無が①群との切り分けの手がかりになる。

⚠️ 見逃してはいけないもの

  • ⚠️ を確認せずにを処方しない。 男性のでは、が150 mLを超える患者に治療薬()を使用しないことが明記されている3。排出障害を抱える患者にを強める薬を出せば尿閉に至るため、知覚過敏だけだろうという思い込みで安易に処方しない。
  • ⚠️ 無症候のまま進む慢性尿閉は、に至るまで気づかれないことがある。慢性の貯留と膀胱内圧上昇が上部尿路障害を招く経過はでも知られており、症状の強さと腎機能への負荷は別に評価する。
  • ⚠️ 血尿を伴う・頻尿・は、を含むの膀胱刺激症状であることがある。 血尿があれば必ず・画像で精査し、「慢性膀胱炎」で片づけない。
  • ⚠️ 急性の・尿閉に・両下肢症状が伴えばを疑う。 緊急MRIと減圧の適応であり、経過観察している時間はない。

鑑別の進め方

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sensation of incomplete emptying'>残尿感</span>の訴え"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='post-void residual measurement'>残尿測定</span>(超音波)"]
    B --> C{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='residual urine (post-void residual)'>残尿</span>は多いか"}
    C -->|"多い"| D{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='decreased urinary stream'>尿勢低下</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='voiding difficulty'>排尿困難</span>を伴うか"}
    D -->|"はい"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bladder outlet obstruction (BOO)'>膀胱出口閉塞</span>を評価<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='benign prostatic hyperplasia (BPH)'>前立腺肥大</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='stricture'>尿道狭窄</span>"]
    D -->|"いいえ"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='detrusor underactivity'>排尿筋低活動</span>を評価<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='neurogenic bladder'>神経因性膀胱</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Diabetic Neuropathy'>糖尿病性神経障害</span>"]
    C -->|"少ない・正常"| G{"随伴症状は"}
    G -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dysuria'>排尿痛</span>・頻尿・発熱"| H["膀胱炎・前立腺炎を評価"]
    G -->|"血尿"| I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cystoscope'>膀胱鏡</span>で腫瘍を検索"]
    G -->|"骨盤の下垂感"| J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pelvic organ prolapse, POP'>骨盤臓器脱</span>を評価"]
    G -->|"いずれもなし・慢性経過"| K["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='interstitial cystitis'>間質性膀胱炎</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='bladder pain syndrome'>膀胱痛症候群</span>を検討"]

⭐ 順序が大事である。を最初に行うことで、以降の道筋が「実際に排出できていない群」と「知覚だけの群」に完全に分かれ、鑑別を無駄なく進められる。

対症療法の考え方

の有無で、とるべき介入は正反対になる。

  • が多い(排出障害)側:原因治療(閉塞の解除、薬物・手術)に加え、排出そのものを助けるが主軸になる。は排出をさらに悪化させるため避ける。が多いこと自体は経過観察・薬物療法のな禁忌ではないが、治療反応が乏しい可能性を念頭に置く2
  • が少ない(知覚過敏)側を減らす処置は的外れであり、への食事・薬物療法など知覚・炎症側への対応が主軸になる。

まとめ

  • 症状であり、実測したとは必ずしも一致しない。まず超音波でを測ってから次を考える。
  • 機序は①実際に尿が残る(閉塞・)②知覚過敏(炎症)③骨盤底の解剖学的変化、の3群に分ける。
  • を確認せずにを出すと尿閉を招く。無症候の慢性尿閉はに進みうる。
  • 血尿を伴えばを含む)を、鞍部症状を伴えばを必ず除外する。
  • 対症療法はの有無で正反対になる。排出障害側は排出の改善、知覚過敏側は感覚・炎症への対応が主軸。

出典

  1. 1.Feeling of Incomplete (Bladder) Emptying(International Continence Society (ICS)・2018)残尿感の定義(排尿後に膀胱が空になったと感じられないという訴え)と、この自覚症状が超音波で測定した実際の残尿量とは必ずしも相関せず、膀胱が空の状態でも残尿感を自覚しうることを確認した閲覧 2026-08-04
  2. 2.EAU Guidelines on the Management of Non-neurogenic Male LUTS — Diagnostic Evaluation(European Association of Urology (EAU)・2026)男性の下部尿路症状の評価では経腹的超音波・膀胱スキャン・カテーテル導尿による残尿量測定を行うことが強い推奨とされており、残尿量が多いこと自体は経過観察・薬物療法の禁忌ではないが治療反応不良を示唆しうることを確認した閲覧 2026-08-04
  3. 3.EAU Guidelines on the Management of Non-neurogenic Male LUTS — Disease Management(European Association of Urology (EAU)・2026)残尿量が150 mLを超える男性には過活動膀胱治療薬(抗コリン薬)を使用しないことが明記されていることを確認した閲覧 2026-08-04