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Symptoms · Published

尿線途絶

Urinary intermittency

別名
尿線断続
臓器系
腎・泌尿器
科目
Urology
トピック
泌尿器科学 U-20:前立腺肥大症(BPH)の症状と鑑別診断泌尿器科学 U-09:尿失禁と尿流動態検査泌尿器科学 U-10:排尿時痛と排尿困難
関連疾患
外傷性脊椎・脊髄損傷神経因性膀胱前立腺肥大症多発性硬化症尿道狭窄排尿筋低活動
スコア
国際前立腺症状スコア

🧠 全体像で見るべき軸は「勢いが弱いか」ではなく「完全に止まるかどうか」である。は弱いなりに流れ続けるのに対し、は排尿の途中で流れが一度以上完全に止まり、また出始める。IPSSでは両者が別項目(は項目3)として独立に問われるのも、この「止まる」という現象が単なる勢いの延長ではなく、の収縮を最後まで維持できているかという別の軸を反映しているからである。

定義と用語の整理

断続)は、1回の排尿の最中に尿の流れが1回以上完全に途切れ、その後また出始める症状を指す。(IPSS)は「排尿中に尿の流れが途中で止まり、また出始めることがあるか」という設問で頻度を問う。

と同じ排出(排尿)症状の1つで、頻尿というというのいずれとも機序が異なる。と合併することは多いが、「弱いまま流れ続ける」ことと「一度止まって再開する」ことは別の現象であり、混同しない。

病態生理

が収縮を開始できるかではなく最後まで維持できるかという視点で機序を4群に分けると整理しやすい。

機序 代表 手がかり
高い抵抗に抗して収縮を続けるうちが疲労し、いったん途切れてから再収縮する
、加齢 抵抗は正常でも収縮そのものが持続しない。を伴いやすい
脊髄病変( の収縮中にが不随意に収縮し、機械的に流れを遮る
物理的な弁機構 の一分類)、 可動性の異物が出口を間欠的にふさぐため、体位で症状が変わるのが特徴

💡 上の3群は「の収縮を維持できない」という共通の土台を持つが、DSDだけは自身は正常に収縮しているのに括約筋が逆に閉じる点で機序が異質であり、後述のとおり危険度もまったく違う。

⚠️ 見逃してはいけないもの

  • ⚠️ を機能性の一亜型として片づけない。 脳橋よりの脊髄病変で生じるが頻度は病変により差があり、では病変レベルにより最大95%、ではおよそ35%とされる。頻度が低いでも、・排尿時の膀胱内圧を高めて水腎症・という上部尿路障害に進みうる点は変わらず、他の機序と危険度が違う1
  • ⚠️ による間欠的なは、へ進行しうる。 体位で症状が変わる、血尿を伴うといった手がかりを見落とさない。
  • ⚠️ に会陰部の知覚障害・下肢筋力低下など新規の神経症状が伴えば、慢性のではなく脊髄そのものの急性病変を疑い、画像評価を急ぐ。

鑑別の進め方

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='urinary intermittency'>尿線途絶</span>"] --> B{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neurological'>神経学的</span>所見はあるか<br>会陰部知覚障害・下肢筋力低下など"}
    B -->|"あり"| C["脊髄病変によるDSDを疑い<br>神経泌尿器科的評価を急ぐ"]
    B -->|"なし"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='post-void residual volume (PVR)'>残尿量</span>を測定"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='uroflowmetry'>尿流量測定</span>で波形を確認<br>間欠的パターンか"]
    E --> F{"体位で変化するか<br>血尿を伴うか"}
    F -->|"はい"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bladder stone'>膀胱結石</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='blood clot'>血塊</span>による<br>間欠閉塞を疑う"]
    F -->|"いいえ"| H{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='invasive treatment'>侵襲的治療</span>を検討するか"}
    H -->|"はい"| I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pressure-flow study'>圧尿流検査</span>で<br>閉塞と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='detrusor underactivity'>排尿筋低活動</span>を鑑別<br>必要なら<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cystoscope'>膀胱鏡</span>で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mechanical (organic) obstruction'>器質的閉塞</span>を確認"]
    H -->|"いいえ"| J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='benign prostatic hyperplasia (BPH)'>前立腺肥大症</span>など<br>背景疾患の評価を継続"]

は初期評価では弱い推奨にとどまり、は全例には行わずの検討など個別の適応に限って選択する2

対症療法の考え方

そのものを直接抑える対症療法はなく、背景にある排出障害の評価が本体になる。が主体ならで扱う治療(など)に委ね、DSDが主体なら上部尿路の保護を最優先に神経泌尿器科的に管理し、が主体なら除去そのものが治療になる。

まとめ

  • は1回の排尿中に尿流が完全に止まり再開する症状で、弱いまま流れ続けるとは別物であり、IPSSでは独立した項目として問われる。
  • 排出症状の1つで、頻尿・などのとは機序が異なる。
  • 機序は①の疲労)、②、③、④によるの4群に分けられる。
  • DSDは脊髄病変で起こり、上部尿路障害に進みうる点で他の機序より危険度が高い。
  • 鑑別は所見の有無→の波形→必要に応じたの順に進める。
  • そのものへの対症療法はなく、背景にある排出障害の評価と治療が本体になる。

出典

  1. 1.EAU Guidelines on the Management of Non-neurogenic Male LUTS — Diagnostic Evaluation(European Association of Urology (EAU)・2026)尿流量測定は初期評価では弱推奨、薬物・侵襲的治療の前には強推奨とされ、150mL以上の排尿量で結果が普段の排尿パターンを反映しているか確認すべきこと、圧尿流検査(urodynamics)は侵襲的治療の再検討など個別の適応がある患者にのみ選択的に行うべきこと、神経疾患を有する患者はEAUの神経泌尿器科ガイドラインに従って評価すべきとされていることを確認した閲覧 2026-08-04
  2. 2.EAU Guidelines on Neuro-Urology — The Guideline(European Association of Urology (EAU)・2026)脳橋より下位の脊髄病変のうち、脊髄損傷では病変レベルにより排尿筋過活動・排尿筋括約筋協調不全(DSD)が最大95%、排尿筋低活動が最大83%に生じる一方、多発性硬化症ではDSD合併率が35%と脊髄損傷より低いこと、蓄尿・排尿時の膀胱内圧を安全域に保つことが泌尿器学的原因による死亡率を大幅に低減させること(脊髄損傷患者の生存後死因は歴史的に腎不全が主体であったこと)を確認した閲覧 2026-08-04