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Drug Atlas · A2 Cholinergics / コリン作動薬 · 必修

ベタネコール

bethanechol

分類
Cholinergics / コリン作動薬
商品名(日本)
ベサコリン
商品名(EU)
Urecholine
科目
Pharmacology
トピック
A2: Cholinomimetics
承認適応
神経因性膀胱慢性胃炎
禁忌疾患
気管支喘息消化性潰瘍てんかんパーキンソニズム・パーキンソン病消化管の閉塞膀胱頸部の閉塞冠動脈疾患
副作用
悪心嘔吐下痢発汗徐脈低血圧縮瞳
解毒薬
アトロピン
対象疾患
尿失禁
原因となる疾患
コリン作動性クリーゼ

🧠 全体像のうち、消化管・膀胱の平滑筋を選択的に狙うという一点で(眼)や(眼・M+N非選択的)と住み分ける薬である。AChEに分解されにくくでも効果が持続するため、術後・分娩後の(尿閉)やの低緊張性膀胱に古くから使われてきた。ただし2016年のAUAコンセンサス声明は、有効性の乏しさと有害事象の多さを理由に慢性尿閉へのな使用を推奨していない——「教科書には載っているが、現在の第一選択ではない」という位置づけを正しく理解することが重要である。

薬効群の中での位置づけ

薬剤 標的部位 AChEへの抵抗性 主な使いどころ
眼()・ 中程度 緑内障、
眼(M+N受容体) 強い
消化管・膀胱平滑筋(M3優位) 強い(構造上エステラーゼに抵抗性) 術後・低下

は全身性のの中で、消化管・膀胱に対する選択性が比較的高いとされる薬。 ただし完全な臓器選択性ではなく、全身投与では心臓(M2:徐脈)・気道(M3:)・唾液腺(M3:)にも作用が及ぶため、標的臓器以外への副作用が処方を制限する一因になっている。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bethanechol'>ベタネコール</span>が膀胱<span class='jp-term jp-term-diagram' title='detrusor muscle'>排尿筋</span>の<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='M3 muscarinic receptor'>M3受容体</span>を直接刺激"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='detrusor muscle'>排尿筋</span>の収縮"]
    A --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bladder neck'>膀胱頸部</span>の平滑筋を<br>相対的に弛緩させる"]
    B --> D["膀胱内圧が上昇"]
    C --> E["尿道抵抗が低下"]
    D --> F["排尿が促進される(尿閉の解除)"]
    E --> F
    G["消化管では<span class='jp-term jp-term-diagram' title='M3 muscarinic receptor'>M3受容体</span>刺激により<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='peristalsis'>蠕動運動</span>が亢進"] --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='GI motility'>消化管運動</span>低下(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Paralytic ileus'>麻痺性イレウス</span>等)の改善"]

💡 を収縮させるだけでは排尿は起こらない。 日本の添付文書は、を収縮させて膀胱内圧を高めると同時にを緩解することで排尿を促進すると明記している1。「出口を締めたまま貯める力だけ強める」のではなく、「貯める力を強めながら出口も緩める」という排尿に必要な協調が機序として組み込まれている点が、単純な平滑筋刺激薬との違いになる。

適応

領域 使いどころ
泌尿器科 術後・分娩後の非閉塞性(機能性)尿閉2の低緊張性膀胱による1
消化器 、迷走神経切断後・術後・分娩後のなど消化管機能低下1

⚠️ 慢性尿閉に対する有効性は現在では限定的と評価されている。 AUAの2016年コンセンサス声明は、投与でにわずかな改善がみられることはあるとしつつ、有害事象の負担の大きさと有効性の乏しさからな使用を推奨しないとワークグループの見解を明記しており、を伴う男性の慢性尿閉ではαブロッカーの方が有効性のエビデンスが優れるとしている3

用法・用量

日本では通常1日30〜50mgを3〜4回に分けて食間にする1。米国添付文書は成人の通常経口用量を1回10〜50mg、1日3〜4回とする2。実際の用量は年齢・適応・で調整するため、施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • 禁忌(日本):甲状腺機能亢進症、消化管及びの閉塞、消化性潰瘍、妊婦又は妊娠している可能性のある女性、、強度の徐脈てんかん1
  • 消化管・が物理的に閉塞している患者に投与すると、収縮を強めることで閉塞部より近位の内圧が上昇し、穿孔や膀胱から腎臓への逆流を招きうる。米国添付文書も・最近の膀胱手術・消化管閉塞を禁忌としており、この点は日本・米国で共通する21
  • ⚠️ 麻痺性(機能性)イレウスには適応、には禁忌——同じ「腸管が動かない」でも原因で対応が正反対になる。 動かない原因が神経・筋の機能低下(麻痺性)なら刺激して動かす意味があるが、物理的な閉塞(機械的)であれば刺激はむしろ危険という、に共通するなポイントである
  • 重大な副作用として(悪心・嘔吐・腹痛・下痢・・発汗・徐脈血圧低下等)が起こりうる。発現時は投与を中止し硫酸塩を投与、呼吸不全があれば気道確保・を検討する1

副作用

頻度 内容
高頻度 悪心嘔吐下痢・腹痛、発汗
注意 徐脈血圧低下
重篤・まれ (上記副作用が同時多発的に出現。を伴うこともある)1

まとめ

  • で、AChEに分解されにくく消化管・膀胱平滑筋への選択性が比較的高い。を収縮させると同時にを緩解し、協調した排尿を促す1
  • 適応は術後・分娩後・による尿閉と、低下(等)の両方にまたがる。
  • ⚠️ ・機能性尿閉には有効だが、には禁忌——同じ「動かない」でも原因で対応が逆転する典型例。
  • 慢性尿閉に対する現代的なエビデンスは乏しく、AUAの2016年コンセンサス声明は有害事象の多さと有効性の乏しさからな使用を推奨していない3を伴う男性ではαブロッカーの方がエビデンスに優れる。
  • 重大な副作用はで、硫酸塩がとなる1
  • 甲状腺機能亢進症・・消化性潰瘍・てんかん・が禁忌12

出典

  1. 1.ベサコリン散5% 添付文書(医薬品医療機器総合機構(PMDA)・2023)日本の添付文書の禁忌が甲状腺機能亢進症・気管支喘息・消化管及び膀胱頸部の閉塞・消化性潰瘍・妊婦又は妊娠している可能性のある女性・冠動脈閉塞・強度の徐脈・てんかん・パーキンソニズムの9項目であること、効能・効果が消化管機能低下(慢性胃炎、迷走神経切断後、術後・分娩後の腸管麻痺、麻痺性イレウス)と術後・分娩後・神経因性膀胱等の低緊張性膀胱による排尿困難(尿閉)の両方に及ぶこと、用法・用量が1日30〜50mgを3〜4回に分けて経口投与であること、重大な副作用としてコリン作動性クリーゼ(悪心・嘔吐・腹痛・下痢・流涎・発汗・徐脈・血圧低下・縮瞳等)とその際のアトロピン硫酸塩投与を明記していることを確認した。閲覧 2026-08-10
  2. 2.URECHOLINE (bethanechol chloride) tablets — Prescribing Information(U.S. Food and Drug Administration (DailyMed)・2015)米国添付文書の適応が急性の術後・分娩後の非閉塞性(機能性)尿閉および神経因性膀胱アトニーによる尿閉であること、禁忌に機械的閉塞・最近の膀胱手術・消化管閉塞が含まれること、通常成人経口用量が1回10〜50mgを1日3〜4回であること、および本添付文書に枠組み警告の節が置かれていないことを確認した。閲覧 2026-08-10
  3. 3.Non-Neurogenic Chronic Urinary Retention: Consensus Definition, Management Strategies, and Future Opportunities(American Urological Association・2016)慢性尿閉に対するベタネコールは残尿量のわずかな改善にとどまる一方、傾眠・悪心・腹痛・頭痛や気管支痙攣・低血圧といった有害事象の負担が大きく、有効性の乏しさと有害事象を理由に日常的な使用を推奨しないという2016年AUAコンセンサス声明のワークグループ見解を確認した。閲覧 2026-08-10