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Disease Atlas · 神経 · 症候群

コリン作動性クリーゼ

Cholinergic crisis

別名
コリン作動性中毒cholinergic crisis
臓器系
神経全身
科目
PharmacologyNeurology
トピック
薬理学 A2:コリン作動薬神経内科 G1-33:重症筋無力症
鑑別疾患
重症筋無力症
関連疾患
有機リン中毒
治療薬
アトロピン
原因薬剤
ピリドスチグミンジスチグミンネオスチグミンアンベノニウムベタネコールフィゾスチグミン
症状
流涎線維束攣縮縮瞳徐脈筋力低下

🧠 全体像は、の過量によりのアセチルコリンが過剰蓄積し、を同時に暴走させる状態である。臨床上の最大の実利は、同じ重症筋無力症患者が同じ「呼吸不全」で運ばれてきても、原因がクリーゼの種類によって正反対の対応を要することにある——を増やす/再開する方向、はむしろ中止する方向で対応する。取り違えは致命的である。

筋無力性クリーゼとの鑑別

重症筋無力症の患者が呼吸不全・症状でしたとき、原因は主に2つに分かれる——そのものの悪化によると、治療薬の過量によるである。どちらも同じ「筋力低下の増悪」を呈するため症状だけでは区別しにくいが、対応は正反対になる。

原因 悪化・感染や手術などの誘因 の過量
症状 目立たない 顕著(徐脈・下痢・発汗・
瞳孔 通常
通常なし ありうる
対応の方向 を維持・増量しつつ 原因薬を中止し、には

鑑別の主な手がかりは、・徐脈・発汗)の有無である。 これらを欠く筋力低下の増悪はむしろを疑わせる。

エドロフォニウム試験の位置づけ

かつては2 mgを静注し、なら筋力が一過性に改善し、ならの悪化・不整脈で判別する「Tensilonテスト」(商品名に由来する通称)が用いられた。しかし徐脈・心停止のリスクがあるうえ、現在は自体の入手性が低下しており、抗体検査・という代替手段が確立した現行の診療では標準検査として通常用いない——重症筋無力症の診断・クリーゼ鑑別いずれについても同じ位置づけである。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Cholinesterase inhibitors'>コリンエステラーゼ阻害薬</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='overdose'>過量投与</span><br>(重症筋無力症治療薬・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='voiding dysfunction'>排尿障害</span>治療薬など)"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acetylcholinesterase (AChE)'>アセチルコリンエステラーゼ</span>の阻害"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='synaptic cleft'>シナプス間隙</span>のアセチルコリンが過剰蓄積"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='muscarinic receptor'>ムスカリン受容体</span>の過剰刺激"]
    C --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nicotinic receptor'>ニコチン受容体</span>の過剰刺激"]
    D --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='drooling'>流涎</span>・徐脈・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='miosis'>縮瞳</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='airway secretion'>気道分泌</span>増加・下痢・発汗(SLUDGE/DUMBBELS)"]
    E --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fasciculations'>線維束攣縮</span> → 脱分極性の遮断による筋力低下・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='respiratory muscle paralysis'>呼吸筋麻痺</span>"]

💡 側の症状は側と機序が違う。 過剰なアセチルコリンがを持続的に刺激し続けると、脱分極性遮断(過量と同じ原理)により、最初の攣縮の後にむしろ弛緩性の筋力低下・に至る。を遮断するだけなので、この筋力低下・呼吸不全そのものは改善しない。

原因

治療

原因薬の中止・減量が最優先で、腎機能低下例ではまず腎機能を確認する。症状が強い場合はで拮抗するが、前述のとおりを介する筋力低下・には無効なため、呼吸状態を反復評価し必要に応じて気道確保・を行う。原因薬を再開する際は、の有無を確認しながら低用量から漸増する。

まとめ

  • 過量によるアセチルコリン過剰蓄積状態で、症状(・徐脈・・発汗など)と様症状(からへ)を併せ持つ。
  • 重症筋無力症患者の呼吸不全では、悪化によるとの鑑別が最大の実利で、の有無が主な手がかりになる。対応は正反対(増量・維持 vs 中止)である。
  • はかつての鑑別法だが、リスクと入手性低下により現在は標準検査として通常用いない。
  • 重症筋無力症治療薬の過量に加え、長時間作用型のは投与開始2週間以内を中心に致命的なクリーゼを起こしうる。
  • は同じ毒性症候群だが、中毒としての管理は別に扱う。

出典

  1. 1.ウブレチド錠5mg 添付文書(2023年7月改訂)(医薬品医療機器総合機構(PMDA)添付文書情報・2023)ジスチグミンによる意識障害を伴う致命的なコリン作動性クリーゼが、投与開始2週間以内を中心に報告されており死亡例もあることを確認した。閲覧 2026-08-12
  2. 2.Myasthenia gravis & myasthenic crisis (IBCC chapter)(EMCrit Project(Josh Farkas, IBCC)・2026)コリン作動性クリーゼが悪心嘔吐・下痢・流涎・発汗というムスカリン様症状と縮瞳、骨格筋の線維束攣縮・徐脈を呈すること、現代の標準的なピリドスチグミン用量(1回120 mg・3時間毎未満)の範囲では起こらず、現在の臨床では「ほぼ存在しない」とされていることを確認した。閲覧 2026-08-12