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Disease Atlas · 循環器 · 疾患

慢性冠症候群(安定狭心症)

Chronic coronary syndrome (stable angina)

別名
CCS安定狭心症安定冠動脈疾患
臓器系
循環器
科目
CardiologyInternal MedicinePathology
トピック
循環器内科 A-19:虚血性心疾患の臨床像と評価循環器内科 A-20:狭心症内科学 L-02:狭心症病理学 B/29:狭心症/慢性虚血性心疾患
鑑別疾患
急性冠症候群
続発疾患
心室性不整脈(心室頻拍・心室細動)
関連疾患
末梢動脈疾患
治療薬
アセチルサリチル酸アトルバスタチンロスバスタチンメトプロロールビソプロロールアムロジピンジルチアゼムベラパミルニトログリセリンイバブラジントリメタジジンラミプリルイソソルビドモノニトラートモルシドミンニフェジピンペリンドプリル
症状
悪心安静時痛狭心痛胸痛呼吸困難失神発汗不安定プラーク
検査値
高感度心筋トロポニン
画像所見
血管石灰化
組織像
心筋肥大と慢性虚血性心疾患(HE染色)
下位分類
虚血性心筋症
原因となる疾患
2型糖尿病アテローム性動脈硬化症高血圧症
禁忌薬
アセクロフェナクエフェドリンエルゴタミンエレトリプタンコカインジクロフェナクスマトリプタンスルプロストンセビメリンピロカルピンフェブキソスタットフレカイニドベタネコールメチルエルゴメトリン

🧠 全体像は、と対をなすのもう一方の極で、「症状の特徴」「」「または冠動脈病変の証明」を組み合わせて評価する。診療の骨格は常に同じ2つの柱——症状緩和予防——であり、ISCHEMIA試験以降は「安定していればを急がず、まず(OMT)」という原則がいっそう明確になった。

概要・病態

  • CCSはかつて「」と呼ばれていた病態を含む概念で、無症候性CADから後の低下例まで、急性血栓イベントのないの連続体を指す。
  • という視点では、CCSはACSと対極にある——冠動脈硬化によるを来す病態が中心だが、プラーク不安定化が起きればいつでもACSへ移行しうる(を参照)。
  • の機序は一様ではなく、①固定狭窄による労作時虚血、②)、③微小血管機能障害()に大別される。閉塞性CADを認めないANOCA/INOCA(angina/ischemia with non-obstructive coronary arteries)は女性に多く、②③の機序を含む。

臨床像・分類

  • 典型的なは、の圧迫感・が労作や精神的ストレスで誘発され、安静または短時間作用型で軽快するという3要素で特徴づけられる。・肩・頸部・顎・への放散、呼吸困難・発汗・悪心を伴うことがある。高齢者・女性・糖尿病患者ではや無痛性虚血もある。
  • 重症度は分類で表現する。
分類 労作制限
I 強い・長時間の労作でのみ
II が軽度制限される
III が高度に制限される
IV 安静時にも起こり、が困難
  • 病態別の特徴を区別すると評価の方向性が定まる。
病態 典型的特徴 診断の要点
再現性のある労作時症状 冠動脈CTまたは負荷画像で解剖・虚血を評価
夜間〜早朝、安静時、発作性ST変化 ECG、必要時専門施設で誘発試験
症状があるがが乏しい ・微小循環機能を評価

⚠️ 新規発症、、増悪傾向、持続痛、・失神・呼吸困難・循環不安定を伴う胸痛は、CCSとして扱わず直ちにACSを疑って評価する。

診断

flowchart TD
    A["胸痛でCCSを疑う"] --> B["バイタル・12誘導ECG・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='high-sensitivity troponin (hs-cTn)'>高感度トロポニン</span>でACSを除外"]
    B --> C["貧血・甲状腺機能亢進・頻脈・高血圧・AS など<span class='jp-term jp-term-diagram' title='supply-demand mismatch'>需給不均衡</span>の原因を確認"]
    C --> D["年齢・性別・症状・危険因子から危険因子補正後の臨床的可能性を推定"]
    D --> E{"臨床的可能性が非常に低い"}
    E -->|"はい"| F["追加検査を省略し他の原因を検討"]
    E -->|"いいえ"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='coronary CT angiography'>冠動脈CT血管造影</span>または負荷画像を選択"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='high-risk findings'>高リスク所見</span>・治療抵抗性症状では侵襲的<span class='jp-term jp-term-diagram' title='coronary angiography'>冠動脈造影</span>"]
  1. まずバイタル、12誘導ECG、でACSを除外する。
  2. 貧血、甲状腺機能亢進、、重症高血圧、など、を来す心臓外・心臓内要因を確認する。
  3. 年齢、性別、症状の性質、危険因子、既知の動脈硬化から閉塞性CADの臨床的可能性を見積もる。危険因子を組み込んだ評価モデルにより、従来の年齢・性別・症状だけの表よりも多くの患者が「臨床的可能性が非常に低い(目安5%以下)」に分類され、これらでは追加の画像検査を省略できる。
  4. 臨床的可能性が低〜中等度以上であれば、(CCTA)または負荷画像検査(など)を、石灰化の程度、腎機能、運動能力、施設の経験に応じて選ぶ。CCTAは非閉塞性CADの検出とに優れ、負荷画像は症状と虚血の対応づけに強みがある。
  5. と症状評価には有用だが、閉塞性CAD診断の精度は負荷画像やCCTAに劣り、単独で全例の第一選択とはしない。
  6. 、薬物治療抵抗性の症状、などでは侵襲的を検討する——造影は症状のだけで自動的に決めるものではない。
  7. ECGまたはで一過性ST変化を捉え、臨床リスクに応じで閉塞性CADを除外したうえで、必要なら専門施設で誘発試験を検討する。など機能的指標で評価する。

治療

心血管イベント予防

  • 禁煙、運動、体重管理、血圧・血糖の管理という是正がすべての土台になる。
  • など)を基本としたLDLコレステロール低下療法。
  • 確立した動脈硬化性CADでは低用量などの療法を検討するが、出血リスクと併存するを踏まえて個別化する。
  • ACE阻害薬/ARB(など)は高血圧、心不全、糖尿病、腎疾患などの併存に応じて用いる。

抗狭心症治療

  • 単剤で十分な症状緩和が得られないことが多く、複数のを機序に応じて組み合わせる個別化アプローチが現在の基本方針で、「β遮断薬またはCa拮抗薬を必ず先に」という一律の段階的な手順をに適用しない。
薬剤群 主な使い方・注意
β遮断薬(など) 心拍数と収縮力を下げる。徐脈、に注意
Ca拮抗薬(など) β遮断薬が不適または症状残存時。では中心的治療
短時間作用型 または予測される労作前に使用。との
長時間作用型 症状予防に用いるが、耐性を避けるため(nitrate-free interval)を設ける
その他 ・頻脈で)、などを心拍数、血圧、LVEF、併存症に応じて選択

血行再建

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='optimal medical therapy'>至適薬物治療</span>を実施"] --> B{"症状が生活を制限する程度で残存"}
    B -->|"いいえ"| C["薬物治療・危険因子管理を継続"]
    B -->|"はい"| D{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='left main (coronary artery)'>左主幹部</span>・近位LAD病変、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='extensive ischemia'>広範虚血</span>、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='left ventricular dysfunction'>左室機能低下</span>など高リスク解剖"}
    D -->|"あり"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='heart team'>ハートチーム</span>でPCIまたはCABGを検討"]
    D -->|"なし"| F["症状緩和目的のPCIを個別に検討"]
  • LVEFが保たれ、や近位左に高度病変を伴わないCCS患者では、単独に比べて生命予後を改善するという明確な根拠はない(ISCHEMIA試験)。は主に難治性症状の緩和、高リスク解剖、などを理由に検討する。
  • 、糖尿病の有無、、患者の希望を統合してPCIとCABGを選択する。糖尿病を伴うではCABGが優先されやすい。

ACSへの移行を疑うサイン

  • 症状パターンの変化(頻度・強度の増悪、安静時発現、の延長)は、CCSからACSへの移行を示唆する重要なである。このような変化があれば、外来管理を継続せずの評価経路(緊急ECG、)へ切り替える。

まとめ

  • CCSはACSと対をなすの安定側で、症状の特徴・・虚血または病変の証明を組み合わせて評価する。
  • CCS分類で重症度を、危険因子補正後の臨床的可能性で追加検査の要否を判断し、CCTAまたは負荷画像を個別に選ぶ。
  • 治療は禁煙・脂質・血圧・によるイベント予防と、複数のを組み合わせる症状緩和を並行して行う。
  • は生命予後改善が目的ではなく、難治性症状や高リスク解剖への対応として個別に検討する。
  • 症状パターンが変化すればACSへの移行を疑い、評価経路を切り替える。