病理学

病理学 · B/29

狭心症/慢性虚血性心疾患

Angina pectoris, chronic ischemic heart disease

タグ
High-yield / ポイント
応用トピック
虚血性心疾患の臨床像と評価狭心症狭心症
疾患
虚血性心筋症慢性冠症候群(安定狭心症)

🧠 全体像:狭心症の3型は「誘因」と「心電図変化」の組み合わせで鑑別すると整理しやすい。労作時のは狭窄、安静時のST上昇は攣縮、そしてその中間で頻度・強度が増すは梗塞のである。はこの虚血が積み重なった結果としての進行性心不全と捉える。

概念

= 冠動脈供給と心筋O₂需要の不均衡。約90%はによる供給の低下が原因で、需要の増加(肥大・高血圧)やの低下が不均衡を増悪させる。4つの症候群:狭心症、AMI、慢性IHD、。

💡 (ACS)という枠組みは、・・の3つを包括する。 とは同じ病態( → → )の連続体で、(上昇)の有無だけで区別する。の導入により、かつてと診断されていた患者の多くがへ再分類されるようになった——感度の低い旧世代アッセイの時代にはの入院がを上回りACS全体の25〜50%を占めていたが、この境界は測定法の進歩とともに動いている(25〜50%は同論文のが引く先行研究の値)。時代にで入院しを受けた742例のでは、を認めたのは53%にとどまった1。

💡 「」は、現在の欧州のガイドラインでは(CCS)という枠組みで扱う。 2019年版ガイドラインがの冠動脈疾患を指す語として「」を導入し、2024年版はこれを「および/または微小循環の慢性疾患に伴う構造的・機能的変化から生じる一連の臨床像」と再定義した。長期間安定していても進行しやすく、いつでもへ不安定化しうるという位置づけで、狭窄だけでなくや微小血管機能障害も含む2。

狭心症

一過性(数秒〜10分)で可逆的な虚血が胸痛を起こす — 壊死はない。

型 誘因 機序 心電図・軽快
安定(典型) 労作・需要増加 なASプラーク >75% 、安静・で軽快
不安定(増悪) 安静時、頻度・強度増加 +部分的な血栓(を伴えば) 梗塞前の
Prinzmetal(異型) 安静時 (±プラーク) ST上昇、で軽快
  • 安定 = ST低下()、Prinzmetal = ST上昇(、攣縮)。 = → 前負荷低下 → 低下。狭心症はが第一選択治療である3。 2024も孤立性のにを推奨している(Class I)2。

💡 冠動脈にが無くても、狭心症・虚血は起こりうる(INOCA/ANOCA、)。 総説がまとめた推定では、を受けた狭心症患者の40〜70%はANOCA(有意な狭窄を伴わない狭心症)で、そのうち20〜30%はINOCA(非侵襲的検査で虚血が証明される)に該当し、ANOCA/INOCA患者の50〜70%を女性が占める。・微小血管機能障害・が背景にあり、かつて予後良好とされたが、実際には重大な心血管イベントや長期障害のリスクを伴いうる4。

慢性虚血性心疾患

  • 的な虚血性による進行性の心不全(臨床的にはとも呼ばれる)(緩徐で、予防的措置の余地がある)。
  • 原因: の瘢痕、高血圧(肥大 → 需要増加)、びまん性 → 斑状の壊死・線維化。
  • 形態: 、左室拡張+肥大、斑状の(白色瘢痕)、中〜重度の、線維性の。
  • 結果: 進行性の()、不整脈(線維化が伝導を乱す)。

💡 ポイント: 狭心症 = 可逆的虚血、壊死なし。安定(労作、>75%プラーク、、安静・ニトロで軽快)→ 不安定(安静時、プラーク破裂、梗塞前)→ Prinzmetal(攣縮、ST上昇)。CIHD = 虚血による慢性進行性の心不全 → 斑状線維化、左室拡張・肥大、不整脈。

まとめ

  • は冠動脈供給との不均衡で、約90%はによる供給低下が原因。
  • は労作時、プラーク(>75%狭窄)、、安静・で軽快。ガイドラインでは2019年版以降、(CCS)の枠組みで扱う。
  • は安静時にも生じ、・血栓症による梗塞前の。
  • Prinzmetal(異型)狭心症は安静時のによるST上昇が特徴で、が第一選択治療である。
  • (・・)は同じ病態の連続体で、の普及によっての多くがへ再分類されるようになった。冠動脈にが無くても生じる虚血・狭心症(INOCA/ANOCA、)もできない頻度で存在する。
  • は的な虚血性障害による進行性の心不全で、斑状の、左室拡張+肥大、不整脈を来す。

出典

  1. 1.Unstable Angina: Risk Stratification for Significant Coronary Artery Disease in The Era of High-Sensitivity Cardiac Troponin(Global Heart・2024)序論で先行文献を引き、高感度トロポニンの普及前は不安定狭心症の入院がST上昇型心筋梗塞を上回りACS全体の25〜50%を占めていたこと、高感度トロポニンの心筋梗塞に対する診断精度が非常に高いため、かつて不安定狭心症と診断されていた患者がNSTEMIへ再分類されるようになったことを述べている(25〜50%は本研究自身の結果ではない)。本研究自身の結果として、不安定狭心症で入院し全例が冠動脈造影を受けた742例の後ろ向きコホートでは、閉塞性冠動脈疾患を認めたのは53%で、約半数は閉塞性病変を伴わなかった閲覧 2026-08-27
  2. 2.2024 ESC Guidelines for the management of chronic coronary syndromes(European Society of Cardiology・2024)2019年版ESCガイドラインが安定期の冠動脈疾患の臨床像を指す語として「慢性冠症候群(CCS)」を導入したこと、2024年版はこれを心外膜冠動脈および/または微小循環の慢性疾患に伴う構造的・機能的変化から生じる一連の臨床像と再定義し、長期間安定していても進行しやすく、いつでも急性冠症候群へ不安定化しうるとしたことを確認した。孤立性の血管攣縮性狭心症には症状の制御と虚血・致死的合併症の予防のためカルシウム拮抗薬を推奨している(Class I、エビデンスレベルA)。Amsterdam UMC リポジトリの出版社版PDFで確認閲覧 2026-09-23
  3. 3.Management of vasospastic angina(Heart・2022)血管攣縮性狭心症は自然発作時の一過性虚血性心電図変化を伴うニトレート反応性の安静時狭心痛で臨床診断しうるが、多くはアセチルコリンによる冠攣縮誘発試験を要すること、カルシウム拮抗薬が第一選択治療であることを確認した閲覧 2026-08-27
  4. 4.ANOCA, INOCA, MINOCA: The New Frontier of Coronary Syndromes(Journal of Cardiovascular Development and Disease・2025)総説として先行研究を引き、待機的冠動脈造影を受ける狭心症患者の40〜70%はANOCA(有意な心外膜冠動脈狭窄を伴わない狭心症)であり、そのうち20〜30%はINOCA(非侵襲的検査で心筋虚血が証明される)に該当すること、ANOCA/INOCA患者の50〜70%は女性であること、かつて良性とみなされていたがこれらの病態は重大な心血管イベントや長期障害の原因になりうることを確認した閲覧 2026-08-27