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Drug Atlas · B27 Uterotonics & tocolytics / 子宮作用薬 · 必修

メチルエルゴメトリン

methylergometrine

分類
Uterotonics & tocolytics / 子宮作用薬
商品名(日本)
メテルギン
商品名(EU)
Methergine
科目
Pharmacology
トピック
B27: Drugs acting on smooth muscles. Drugs influencing uterus contractions
承認適応
分娩後出血
禁忌疾患
高血圧症妊娠高血圧腎症・子癇・HELLP症候群慢性冠症候群(安定狭心症)
副作用
胸痛

🧠 全体像オキシトシンが第一選択で効果不十分なときに使う追加のだが、という出自ゆえにオキシトシンには無い顔を持つ——も同時に収縮させる。この一点が、の治療効果と、高血圧・患者への禁忌というの両方を生んでいる。「子宮を締めるついでに全身の血管も締める」という副作用の構造を理解しておくことが、この薬を安全に使う・使わない判断の核になる。

薬効群の中での位置づけ

薬剤 分類 機序 位置づけ
オキシトシン (受容体作動) 第一選択
α受容体・5-HT2受容体作動による+血管収縮 オキシトシン無効時の追加薬。高血圧・では禁忌
(15-methyl PGF2α) PG系 (PGF2α受容体)作動 追加薬。を来すため喘息では避ける
(PGE1) PG系 PGE1受容体作動 注射薬が使えない場合や追加薬

「オキシトシンが効かなければ次はどれか」を選ぶとき、禁忌が選択を決める。 高血圧・の既往があればを避けを検討し、喘息があればを避けを検討する——禁忌のプロファイルが逆側にあることを覚えておくと選びやすい。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='methylergometrine'>メチルエルゴメトリン</span>が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='uterine smooth muscle'>子宮平滑筋</span>の<br>α受容体・5-HT2受容体を作動"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='uterine smooth muscle'>子宮平滑筋</span>の緊張・収縮頻度・振幅が増大"]
    B --> C["持続的な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ankylosis'>強直</span>性収縮(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tetany'>テタニー</span>様)"]
    C --> D["分娩第3期を短縮し出血量を減らす"]
    A --> E["同じ受容体が末梢<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vascular smooth muscle'>血管平滑筋</span>にも存在"]
    E --> F["全身性の血管収縮"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='elevated blood pressure'>血圧上昇</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='coronary vasospasm'>冠攣縮</span>のリスク"]
    G -.->|"もともと血圧が高い患者では"| H["急激な高血圧・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Cerebrovascular disease'>脳血管障害</span>を誘発しうる(禁忌の根拠)"]

💡 が低く、標的()と非標的(・冠動脈)を同時に刺激してしまう。 これはが片頭痛治療で血管を収縮させるのと同じ性質の裏返しであり、全体に共通する「効かせたい場所以外も締めてしまう」というである。

薬物動態

項目 値・特徴
筋注(標準)、経口(の継続投与)、IV は原則行わない
筋注後平均3.39時間(範囲1.5〜12.7時間)1
IV時の注意 やむを得ずIV投与する場合は60秒以上かけて血圧を監視しながら緩徐に投与する(急速静注は急激な高血圧・のリスク)1

適応

領域 使いどころ
産科 でオキシトシンに反応しない、または不十分な場合の追加

用法・用量

筋注:0.2 mgを胎盤娩出後に投与し、必要に応じて2〜4時間ごとに反復できる。経口:0.2 mgを1日3〜4回、最大1週間まで投与できる。IV投与は原則行わず、生命を救うためやむを得ない場合に限り60秒以上かけて血圧を監視しながら緩徐に投与する1。なお日本の添付文書は1回0.1〜0.2 mgの注射または0.2 mgの皮下・と定めており、静注の扱いが米国添付文書より緩い2。実際の用法・用量は施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • 禁忌(米国添付文書)高血圧症)・子癇、妊娠、過敏症1
  • 禁忌(日本の添付文書):妊婦・妊娠している可能性のある女性、児頭娩出前、への過敏症、重篤なまたはその既往歴、敗血症、および薬(HIVプロテアーゼなど)の投与中2
  • ⚠️ 強いCYP3A阻害薬との併用は禁忌。 はCYP3A4で代謝されるため、HIVプロテアーゼと併用すると血中濃度が上昇し、による脳虚血・)を来しうる。米国添付文書は強い・中等度のCYP3A4阻害薬との併用を「してはならない」とし、日本の添付文書はHIVプロテアーゼなどをに挙げている12
  • ⚠️ 血管収縮作用により、まれにによるを来しうる。 標準的な産科用量の筋注後でも報告されており、投与直後の胸痛・呼吸困難には注意する3
  • 重篤でない心疾患・閉塞性血管障害の既往がある患者では、血管収縮作用で症状が悪化するおそれがあるため慎重投与とする2
  • 妊娠中(分娩前)には子宮の性収縮・を招くため投与しない(分娩後・胎盤娩出後にのみ使用する)
  • は設定されていない——米国添付文書にはの節が無く、上記のCYP3A相互作用や急速静注の危険は WARNINGS/PRECAUTIONS に記載されている1

副作用

頻度 内容
高頻度 、悪心・嘔吐、頭痛
注意 胸痛による(まれだが標準用量でも報告あり)3
重篤・まれ 、心筋梗塞、不整脈1

まとめ

  • 系ので、オキシトシンが無効・不十分なへの追加薬として使う。
  • α受容体・5-HT2受容体を作動し性に収縮させるが、同じ受容体がにもあるため全身性の血管収縮を同時に起こす。
  • 高血圧・)・子癇では禁忌。 から急激な高血圧・を誘発しうる。日本の添付文書ではさらに重篤なまたはその既往・敗血症・強いCYP3A阻害薬の併用が禁忌に挙げられている。
  • まれに標準用量でもによるを来した症例が報告されており、投与後の胸痛には注意する。
  • IV投与は原則行わず、行う場合も60秒以上かけて血圧を監視しながら緩徐に投与する。妊娠中(分娩前)には使用しない。

出典

  1. 1.METHYLERGONOVINE MALEATE injection, solution — Full Prescribing Information(American Regent / DailyMed(U.S. National Library of Medicine、2025年8月改訂)・2025)メチルエルゴメトリンが子宮平滑筋に直接作用し緊張・律動性収縮の頻度と振幅を高めること、高血圧・妊娠高血圧腎症(toxemia)・妊娠・過敏症が禁忌であること、通常はIV投与を行わず、行う場合は60秒以上かけて血圧を監視しながら緩徐に投与すべきこと(急激な高血圧・脳血管障害を誘発しうるため)、IM投与後の消失半減期が平均3.39時間(範囲1.5〜12.7時間)であること、筋注0.2 mgを胎盤娩出後に投与し必要に応じ2〜4時間ごとに反復できること、経口では1回0.2 mgを1日3〜4回、最大1週間投与することを確認した。PRECAUTIONSに「強い・中等度のCYP3A4阻害薬をメチルエルゴメトリンと併用してはならない」との記載があり、例としてマクロライド系抗菌薬・HIVプロテアーゼ阻害剤・アゾール系抗真菌薬が挙げられ、麦角アルカロイドとCYP3A4阻害薬の併用で血管攣縮による脳虚血・四肢虚血が報告されていることも確認した。節構成はDESCRIPTIONから始まり、枠組み警告(枠組み警告)の節は存在しない。閲覧 2026-08-10
  2. 2.メチルエルゴメトリン注0.2mg「あすか」 医療用医薬品添付文書(JAPIC(日本医薬情報センター)添付文書情報/KEGG MEDICUS・2023)日本の添付文書の禁忌が、妊婦または妊娠している可能性のある女性、児頭娩出前、本剤または麦角アルカロイドに対する過敏症の既往、重篤な虚血性心疾患またはその既往歴、敗血症、およびHIVプロテアーゼ阻害剤など特定の併用禁忌薬剤の投与中であることを確認した。心疾患・閉塞性血管障害のある患者は「血管収縮作用によりこれらの症状が悪化するおそれがある」として慎重投与の扱いであり、用法・用量は1回0.1〜0.2 mgの静脈内注射または0.2 mgの皮下・筋肉内注射であることを確認した。閲覧 2026-08-10
  3. 3.Post-partum myocardial ischemia due to intramuscular methylergonovine-induced coronary vasospasm: case report(BMC Cardiovascular Disorders・2023)標準的な産科用量(筋注0.2 mgを2回)のメチルエルゴメトリン投与後、患者が投与直後に胸部絞扼感・肩への放散痛・呼吸困難を来し、高感度トロポニンIが投与約8時間後に1509 ng/Lまで上昇、心エコーで左室駆出率49%・中隔基部の壁運動低下を認めたが3か月後には完全に正常化したこと、著者らが冠攣縮を機序として結論づけたことを確認した。閲覧 2026-08-10