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Drug Atlas · B8 Antianginal drugs / 抗狭心症薬

硝酸イソソルビド

isosorbide dinitrate

分類
Antianginal drugs / 抗狭心症薬
商品名(日本)
ニトロールフランドル
商品名(EU)
IsoketIsordil
科目
Pharmacology
トピック
B8: Drugs influencing the oxygen demand and oxygen supply of the heart. Drugs improving microcirculation
承認適応
慢性冠症候群(安定狭心症)急性冠症候群慢性心不全
禁忌疾患
大動脈弁狭窄症肥大型心筋症閉塞隅角緑内障脳内出血(非外傷性)貧血
副作用
頭痛低血圧めまい顔面紅潮失神
相互作用
シルデナフィルタダラフィルバルデナフィルリオシグアト

🧠 全体像:は、で大部分がされ、生じたが実際の作用を担う「」である。が20%程度しかないという弱点を、舌下・スプレー・静注・貼付というを迂回する剤形の豊富さで補ってきた。同じ骨格でもが「代謝のを消して慢性期に安定して効かせる」設計であるのに対し、はから慢性期まで一つの成分で剤形を選べるのが持ち味。そしての中で唯一、との固定用量併用として心不全の予後改善が証明された薬でもある。

薬効群の中での位置づけ

薬剤 主な剤形 役割
() 受ける(約20%)1 舌下・スプレー・経口・・貼付・静注 も慢性期も。併用で心不全の予後改善
ほぼ受けない(約100%)1 経口(速放・)のみ 慢性期のに特化
大きく受ける 舌下・スプレー・静注・貼付 急性発作の第一選択
— 経口 耐性が問題になる例の代替

⭐ はのである。 2剤のの違いはどこで代謝のを引き受けるか——を投与して肝に任せるか、代謝後の分子を直接投与するかにある。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='isosorbide dinitrate'>硝酸イソソルビド</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dinitrate'>二硝酸体</span>)"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='oral'>経口投与</span>"]
    A --> C["舌下・スプレー・静注・貼付"]
    B --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hepatic first-pass effect'>肝初回通過効果</span>で大部分が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='denitration'>脱ニトロ化</span>"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='active metabolite'>活性代謝物</span><br>2-<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mononitrate'>一硝酸体</span>・5-<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mononitrate'>一硝酸体</span>"]
    C --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='first-pass'>初回通過</span>を迂回し<br>未変化体が直接循環へ"]
    E --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='in vivo'>生体内</span>でNOを遊離"]
    F --> G
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='soluble guanylyl cyclase'>可溶性グアニル酸シクラーゼ</span>を活性化"]
    H --> I["細胞内cGMPが上昇"]
    I --> J["静脈系優位の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vascular smooth muscle relaxation'>血管平滑筋弛緩</span>"]
    J --> K["前負荷が低下し<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='myocardial oxygen demand'>心筋酸素需要</span>が減る"]

💡 この図が禁忌の理由をそのまま説明する。 阻害薬はcGMPの分解を止め、本剤はcGMPの産生を促す。同じ物質を両側から押し上げるためが破局的に増強される——添付文書もこの機序を根拠に挙げる2。

薬物動態

項目 値・特徴
約20%(による)1
半減期 は約1時間と短い。効果を支えるのは半減期5〜6時間の1
到達 経口25.6分(Cmax 5.8ng/mL)、舌下18.2分(Cmax 35.7ng/mL)2
代謝・排泄 により2-・5-となり尿中へ2

⭐ 「半減期1時間の薬がなぜ数時間効くのか」の答えがである。 舌下では未変化体の血中濃度が経口の約6倍になる2——同じでもでが別物になる。

適応

場面 位置づけ
狭心症・心筋梗塞・その他の 日本の添付文書上の効能・効果。経口は慢性期、舌下はに用いる2
心不全 米国では単剤でもが1。との固定用量併用は自認するアフリカ系アメリカ人の III-IV度で死亡率を改善する3

⭐ との固定用量併用(A-HeFT試験)はで唯一の予後改善エビデンスである。 III度・IV度で心室が拡大した黒人患者1,050例を標準治療にした試験で、プラセボ群の死亡率が有意に高かったため早期中止となった(10.2%対6.2%、P=0.02)。は43%減少(0.57)、心不全による初回入院は16.4%対22.4%(相対33%減)であった3。

用法・用量

日本の添付文書では、経口は1回5〜10mgを1日3〜4回、舌下は時に1回5〜10mg(以外は1回5〜10mgを1日3〜4回)である2。心不全に対するとの固定用量併用は、37.5mg・20mgを1日3回から開始し、を見て最大75mg/40mgを1日3回まで増量する4。実際の用量は製剤・適応で変わるため添付文書で確認する。

⚠️ 耐性を避けるは用量が大きいほど長く要る。 1日40mgでは12時間、80mgでは18時間、120mgでは24時間の空白が必要とされる1。等間隔に割り付けると血中濃度の谷間が消え、数日で効果が減弱する。

禁忌・注意

副作用

頻度 内容
高頻度 頭痛(10%超。で継続により軽減する)1
注意 、起立性低血圧、めまい・失神、1
重篤・まれ 阻害薬併用時の高度低血圧、(代謝で遊離したがヘモグロビンを酸化する)1

まとめ

  • を受けるで、のが効果を支える。は約20%。
  • 舌下・スプレー・経口・・貼付・静注と剤形が広い。は経口専用で慢性期に特化する。
  • 日本の効能・効果は狭心症・心筋梗塞など。経口は1回5〜10mgを1日3〜4回、舌下はに1回5〜10mg。
  • との固定用量併用(A-HeFT試験)がで唯一の予後改善エビデンス。37.5mg/20mgを1日3回から最大75mg/40mgを1日3回まで。
  • ⚠️ 阻害薬・との併用は禁忌。 cGMPの産生促進と分解抑制が重なる。
  • 前負荷依存の循環(・・重症)では危険。は用量に応じ12〜24時間要る。

出典

  1. 1.Isosorbide(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)Pharmacokinetics の節で、二硝酸体は初回通過効果により経口バイオアベイラビリティが20%へ低下し半減期が1時間であるのに対し、一硝酸体は初回通過効果を受けず経口バイオアベイラビリティ100%・半減期5〜6時間であること、舌下投与が初回通過効果を回避すること。Indications の節で、二硝酸体のFDA承認適応が冠動脈疾患による狭心症の予防・治療とうっ血性心不全の治療であり、アカラシア・びまん性食道痙攣が適応外使用であること。Administration の節で、舌下2.5〜10mg(作用時間10〜60分)・経口10〜40mgを1日3回・舌下スプレー1回1.25mg・徐放製剤という剤形の幅と、休薬時間が40mgで12時間、80mgで18時間、120mgで24時間必要になること。Contraindications の節で、PDE5阻害薬・リオシグアトとの併用に加え、右室梗塞では前負荷低下により右室拍出がさらに悪化すること、肥大型心筋症では左室容積の低下により左室流出路閉塞が悪化すること。Adverse Effects の節で、頭痛が10%超と最多であること、反射性頻脈・起立性低血圧・失神が0.1〜10%であること、代謝時に遊離する硝酸イオンがヘモグロビンを酸化して稀にメトヘモグロビン血症を起こすこと。あわせて、二硝酸体20mgとヒドララジン塩酸塩37.5mgの固定用量配合剤がアフリカ系アメリカ人の心不全治療に承認されていることを確認した。閲覧 2026-08-20
  2. 2.ニトロール錠5mg 電子添文(医薬品医療機器総合機構(エーザイ株式会社)・2022)「4. 効能又は効果」が狭心症・心筋梗塞・その他の虚血性心疾患であること、「6. 用法及び用量」が経口では成人1回5〜10mgを1日3〜4回、舌下では狭心発作時に1回5〜10mg・発作時以外は1回5〜10mgを1日3〜4回であること、「2. 禁忌」が重篤な低血圧または心原性ショック・閉塞隅角緑内障・頭部外傷または脳出血・高度な貧血・硝酸/亜硝酸エステル系薬剤への過敏症の既往・ホスホジエステラーゼ5阻害作用を有する薬剤(シルデナフィル、バルデナフィル、タダラフィル)またはグアニル酸シクラーゼ刺激作用を有する薬剤(リオシグアト)を投与中の患者であること、併用禁忌の機序が「本剤はcGMPの産生を促進し、一方、ホスホジエステラーゼ5阻害作用を有する薬剤はcGMPの分解を抑制することから、両剤の併用によりcGMPの増大を介する本剤の降圧作用が増強する」と説明されていること、経口投与では25.6分でCmax 5.8ng/mL、舌下投与では18.2分でCmax 35.7ng/mLに達すること、尿中に遊離型の2-一硝酸イソソルビドおよび5-一硝酸イソソルビドとして排泄されることを確認した。閲覧 2026-08-20
  3. 3.Combination of isosorbide dinitrate and hydralazine in blacks with heart failure(New England Journal of Medicine・2004)抄録のMETHODSに、NYHA III度またはIV度の心不全と心室拡大を有する黒人患者1,050例を、標準治療に加えて硝酸イソソルビドとヒドララジンの固定用量併用またはプラセボへ無作為割付したこと、主要評価項目が全死亡・心不全による初回入院・生活の質の変化に重み付けした複合スコアであることが記載されている。RESULTSに、プラセボ群の死亡率が有意に高かったため試験が早期中止されたこと(10.2%対6.2%、P=0.02)、複合スコアが実薬群で有意に良好であったこと(-0.1±1.9対-0.5±2.0、P=0.01)、全死亡が43%減少(ハザード比0.57、P=0.01)、心不全による初回入院が相対的に33%減少(16.4%対22.4%、P=0.001)したことが記載されている。抄録のみ取得。閲覧 2026-08-20
  4. 4.Hydralazine(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)Administration の節で、心不全に対する固定用量併用がヒドララジン37.5mg・硝酸イソソルビド20mgを1日3回で、最大用量が75mg/40mgを1日3回であること、Indications の節で、駆出率が低下したNYHA III度・IV度の重症心不全のアフリカ系アメリカ人において、ACE阻害薬/ARB/ARNIとβ遮断薬を既に受けている患者へ長時間作用型硝酸薬とヒドララジンの固定用量配合を上乗せでき、死亡率の改善が示されていることを確認した。閲覧 2026-08-20